シルバーセカンド開発日誌
 ここはゲーム開発者SmokingWOLF(スモーキングウルフ)の開発日誌です。
 【現在の目標】→ シル学リファインしてDLsite販売! & 『片道勇者2』の開発!
開発日誌 7/25

2017-06-03 (土)   ゲームタイトルを振り返る
【これまで作ったゲームタイトルを振り返る】

前回は「私のゲームタイトルの付け方」だったので、
今回はこれまでの私の主要作品に付けてきたゲームタイトルを
振り返って自己レビューしてみます。



今回は、私が作ってきた主要作品に対して、
<名前から推測されるイメージ><実際のゲーム内容>
2つについてそれぞれ述べていきます。
「名前から推測されるイメージ」は、私がタイトルだけを見た場合に
どんなゲームだと予想するか、という主観です。



●レジェンドオブレストール(アドベンチャーゲーム)

<名前から推測されるイメージ>
レジェンド(伝説)とあるので、レストールという人物による
壮大な物語のRPGっぽい印象があります。
あるいは大陸以上の世界を股に掛けたシミュレーションRPGかもしれません。
何にせよ戦いが多そうなイメージです。

<実際のゲーム内容>
これはゲーム一覧の古いところに置いてある私の処女作です。
耳長の青年レストールが主人公の、マッチョや亜人やモンスターと共に
一つの街で繰り広げる日常コメディADVです。ほとんど街から出ません。
タイトル命名の際は、「誰に向けて送り出すか」といった一切の考慮はなく、
ただひたすら雑に決められたタイトルです。
当初は友達にしか見せないつもりのゲームでしたから。

せめてかっこよくしようと思ったんですが、
今では「レジェンドオブ~~」はありきたりすぎてイマイチかもしれません。



●シルフェイド見聞録(アドベンチャーゲーム)

<名前から推測されるイメージ>
『見聞録』なので、『シルフェイド』という地での冒険もののようです。
新たな地での出会いや発見が多そうなRPG、
あるいは紀行物ADVっぽい印象です。

<実際のゲーム内容>
実際は『シルフェイド』という世界で、
ノーマ学院に入学した医者を目指す少年エシュターが
学校内で繰り広げるドタバタコメディが中心になっているADVです。
『見聞録』的な場面まで行ってないので、少し名付けを失敗してしまった感があります。

いずれ旅に出る予定があったり、話のコアに
『見聞録』が関わる予定だけはありましたが、
作り始めたときはそんなことを一切考えていませんでした
これはたぶん、前作がレジェンドオブレストール(レストールの伝説)
というタイトルにも関わらず
割とほのぼの生活コメディものだったので、その流れを汲んだものと思われます。
要するに、「かっこよさそう」というだけで名前を決めました。

あと、当時の私は背景のグラフィックがほとんど描けなかったので、
ほとんどの物語を学院内で進行せざるを得なかったというのも理由の一つにあります。
「劇中で行ける範囲」の制約は、そのまま「私が作れる素材の種類と量」に
左右されていたのです。



●シルフェイド幻想譚(RPG)

<名前から推測されるイメージ>
『シルフェイド』世界のお話っぽいですが『幻想』なので
ファンタジー世界のお話のようです。
人によってはファンタジー童話の物語系なゲームにも見えるかもしれません。
たぶんADVかRPGのどちらかだと思いますが、幻想って付くゲームはRPGが多いかも?

<実際のゲーム内容>
シルフェイド世界の浮遊島を舞台にした半フリーシナリオRPGです。
おおよそ内容から外れていないタイトルだと思っています。

ただこのタイトル名には少し問題があって、一部の漢字変換ソフトだと
『譚』の字がなかなか出ない場合があるらしく、それで
正式名称の普及力が少し低下してしまった感じがあります。
それでも、「シルフェイド」や「シル幻」といった略称のおかげでだいぶ救われました。
当時はSNSがそんなに流行っていなくて、掲示板時代だったせいもあるかもしれません。
(掲示板の名前を見て語り場を探しに行くことはあっても、
自分から打つ機会は今より多くなかったため)



●シルエットノート(アドベンチャーゲーム)

<名前から推測されるイメージ>
「シルエット」はおそらくファンタジーというよりは
「現代」や「未来」を感じさせる用語で、
「ノート」という単語から、これも現代感や、何かを調べるゲームである雰囲気が
予想されるかもしれません。アドベンチャーで
探偵ものっぽく感じられるかもしれませんね。

<実際のゲーム内容>
近未来の海上都市アクアフロートで繰り広げられる、ときどき魔法少女もので
ときどき学園ものでときどきサスペンスなアドベンチャーゲームです。
登場キャラクターはある程度シルフェイド系に登場したキャラを元にしており、
シルフェイド系列であることをほんのり示すために、
「シル」から始まる単語を選びました。

あえて『シルフェイド』と付けなかったのは、初の有料ゲームだったということもあり、
シルフェイドの名前に頼らずいくら売れるか挑戦したかった、という理由でした。



●モノリスフィア(マウスアクションゲーム)

<名前から推測されるイメージ>
モノリス(石柱、四角っぽいイメージ)とスフィア(球体)を繋げた名前から察するに、
どことなく幾何学感があるので、前知識なしだと
パズルゲームっぽい印象があるかもしれません。
というか、一番最初はパズルゲームのつもりで作ってたんですよ。

<実際のゲーム内容>
実際は女神モノリスが力の源である
(モノリ)スフィアを集めにいくアクションゲームです。
前回の「新ブランドなら分かりやすい名前の方がいいかも」という話の筋からすると、
あまり直感的じゃないゲームタイトルかもと個人的に思っている一本です。
だったらどう名付ければより効率的か、というのも、すぐ思いつかないんですけれどね。

語感の面では、『モノリスフィア』は割とよく付けられた方だと思います。
英語では『Monolith Sphere』となっています。
英語名だとこの矛盾したような名前に「おっ?」と思えるかもしれないので、
個人的に好きです。
日本語だとその効果を活用しきれていない気がします。



●シルフドラグーンゼロ(シューティングゲーム)

<名前から推測されるイメージ>
「ドラグーン」という単語がいかにもシューティング風なので、
これは多くの人がシューティングゲームだと推測できると思います。
かつて『シルフィード』というシューティングゲームも家庭用にあったので、
「シルフ」部分もシューティングゲームを想起させるかもしれません。
また、「ゼロ」と付いていれば竜に乗った
ファンタジーものだと誤解する人は減るでしょう。
(「シルフドラグーン」だけだと「風の竜騎士」みたいに
捉える人もいるかもしれません)

「ドラグーン」はその語感から、日本では「竜に乗った騎士」みたいな意味で
使われるケースも多いらしいのですが、
元の意味は「竜騎兵」→「銃で武装した騎兵」のことだそうです。
作中でも、近世ヨーロッパの竜騎兵から名前を借りて航宙戦闘機に付けている、
といった記述を入れています。

<実際のゲーム内容>
航宙戦闘機ドラグーンを駆って戦う1画面全方位シューティングゲームです。
だいたいゲームタイトル通りな感じがしますが、
全方位シューティングっぽさはさすがに出せませんでした。

これは『シルエットノート』の作中ゲーム『シルフドラグーン』が元で、
本作はその続編なのですが、そもそも元の方に「シルフ」を付けたのは
「シル」シリーズの系列であることをアピールしたかったからだったと記憶しています。

あと「ゼロ」が付くと、ゲームタイトルのかっこよさが
簡単にいくらか増える感じがしたので、
開発開始時にはとりあえず「ゼロ」を付けることを決めていました。
ストーリーも、この『ゼロ』のタイトルに合わせて作られています。



●シルフェイド学院物語(育成シミュレーション)

<名前から推測されるイメージ>
『シルフェイド』という学院で繰り広げられるお話を描いたゲームのようです。
アドベンチャーか、RPGか、といった感じでしょうか。
『物語』と付いている場合、個人的にはアクションゲームっぽさを感じにくくなって、
ターン制など非リアルタイム進行のゲームっぽさを感じます。

<実際のゲーム内容>
実際は、このゲームは『シルフェイド』島の学院で1年を過ごす、
近未来世界の育成シミュレーションゲームです。
タイトルだけ見ると『シルフェイド』の学院のお話っぽいので、
これこそ学園内のお話が多かった『シルフェイド見聞録』に
本来付くべき名前だった気もしますね。

『シルフェイド』と名前が付くゲームを並べてみると、
登場キャラやトーテムという存在や世界観が近いだけで、
結局のところベースとなる世界や時代は毎回変わってるので、
『シルフェイド』の定義とは一体何なのか考えさせられます。



●片道勇者/片道勇者プラス(ローグライクRPG)

<名前から推測されるイメージ>
ゲームタイトル名から察するに、「片道」なので出発したきり二度と帰って来られない、
「勇者」の冒険を描いたゲームのようです。

「勇者」と付いているので、ジャンルはいかにもなスタンダードRPGを想像させます。
クラシックな画面に大きいドットのキャラクターが歩き回ってるような、
そんなゲームかもしれません。


<実際のゲーム内容>
このゲームは『闇』によって画面左から世界が呑み込まれていく中、
二度と戻ることのできない一方通行の冒険を繰り広げるローグライクRPGです。
主人公が勇者だったり、魔王を倒しに行ったりするゲームなので、
ほぼタイトル通りの内容かもしれません。ドットはそこまで大きくないですけれど。

『片道勇者』は伝わりやすい名前ですし、
人によってはほんのり悲壮感も伝わってとてもいい名前だと思います。
(とても鉄砲玉っぽいあたりが)
これほど短く、かつ何かを想像させられそうな名前はもう付けられない気がします。



●プラネットハウル(マウスアクションゲーム)

<名前から推測されるイメージ>
「プラネット」という名前が付いてるので少しSFっぽい気がします。
「ハウル」は分かる人には分かる「遠吠え」という意味の単語なので、
分かれば動物っぽいニュアンスを掴めるかもしれません……が、
多くの人にはあんまりピンと来ないかもしれませんね。

SF感が伝わる一方、ジャンルは分かりにくいと思われます。
惑星を股に掛けたSFアドベンチャーか、異色のSF RPGか、アクションゲームか、
あるいは星ごとどうにかする惑星シミュレーションゲームかもしれません。

<実際のゲーム内容>
獣人系のキャラがいっぱい出てくる、
宇宙を舞台とした変則操作の機体を操るマウスアクションゲームです。

タイトル案として『アストロ・ケモノーツ』
(「アストロノーツ=宇宙飛行士」にかけた名前)
という案が一瞬出たのですが、開発に関わる人が完全に私一人だけだったら
もしかしたらそう名付けていた可能性もいくらかあったかもしれません。
ちょっとお間抜け感があるので厳しい世界観には合わない感じもありますけれど、
アクションゲームっぽさが出るのと、獣人が出ることが非常に分かりやすいからです。

もう一つは『星の遠吠え』というタイトル案もあって、
「SF小説みたいなタイトルになるね」と共同開発者の方と話していました。
結局、アクションゲームっぽさを重視して『プラネットハウル』に決定した気がします。
日本語名のタイトルだと、あんまりアクションゲームっぽくない気がしたもので。



という感じです。いかがだったでしょうか。

ジャンルが伝わりそうなタイトルもあれば、全然分からないものもあります。
特に変則操作アクション系はジャンルが分かりにくい名前だったので、
タイトルで変則操作アクションっぽいアピールができれば、
そういうのが好きな(おそらく少数派の)人がもっと見つけてくれたかもしれません。

この多ゲーム時代、タイトルそのものが詳細情報を見てくれる確率に影響するのは
ほぼ間違いないので、今後もますますゲームタイトルの名付けは
重要になってくる気がしています。

たくさん作っていても、タイトルを付けるのはいまだに難しいことです。
中身が面白いことは大前提ですが、
「見ただけでおいしそうに見えるゲームタイトル」が付けられれば最高です。
中身が味なら、ゲームタイトルは香りの一部なのですから。

ゲームタイトルは普段あまり他人と比べないところなので、記事を書いていて、
「せめて自分に刺さるタイトルを見つけたらメモしておこう」と思い直しています。
ゲームタイトルは人にゲームをアピールするにあたって重要なパーツなので、
これまで以上によく考えていきたい部分です。



他にもし何か「こんな話題を聞いてみたい!」というお話がございましたら、
ぜひ拍手コメントからお送りください!
すでにいくつかいただいております、ありがとうございます!
答えられそうなものはどんどんお答えしていきます。

← 今回のような記事を
 1冊の本にまとめたゲーム開発本、
 『ゲーム開発者の地図』、
 Kindleで好評発売中です!
 2017-06-03 (土) web拍手 by FC2 カテゴリ: 開発日誌




2017-05-27 (土)   私のゲームタイトルの付け方
【私のゲームタイトルの付け方】

ご要望をいただいたので、今回は「ゲームタイトルの付け方」について、
個人的に意識していることをお話しします。


※人形とおもちゃの世界に飛ばされてしまった愛称ラッシー(仮本名ラーシア)の少女が
重量比の軽い人形軍団を蹴り飛ばしたりトランプの兵隊を四つ折りにしたりして
「これで暴力の快感に目覚めたらどうしよう……」などと不安になりながら元の世界に帰るべく旅をする物語で、
マウスだけで遊べるジャンプ方向アナログな「地上戦ベースのモノリスフィア」みたいになる予定でした。



といっても「タイトルの決め方」ってあまりに感覚的な話なので、
私も断定できるようなことはほとんどありません。
基本的には、私がこれまでやってきて「うまくいったかな」と思うことや、
私が開催しているゲームコンテストを見ていて感じたことなどを記していきます。
方向性としては、
「なるべくゲームのポテンシャル限界まで普及させる・人気を取る」ために
私が目指している内容です。


主な内容は以下の通りです。

●「英語」や「難しい漢字」を避けて覚えやすい名前に。
覚えやすいほど普及力の面で有利になりそう。

●『内容が伝わりやすいゲーム名』は、ライバルが多い中ほど有利そう。

●『前に遊んだゲームの関連作品だと分かる』よう、
ブランドを意識して名前を付けると長続きするかも。

●同じゲーム名がないか調べておく。


ネットを検索すれば他の方もたくさん似たような話をしておられるので、
これだけ読んで全部分かる人には飛ばしてくださっても大丈夫だと思います。

ここからは、各内容の詳細説明です。



【「英語」や「難しい漢字」を避けて覚えやすい名前にすると
普及力の面で有利そう】


もうこれは誰もが言っている話なんですが、「SNSなどでの普及力を上げる」目的なら、
「英語」や「難しい漢字」を使うのを避け、
覚えやすいゲーム名を目指す方が普及力の面で効率的です。

「打ち込みにくい文字」「誤字を誘発する単語」「長い名前」は、

●見た人がゲーム名を記憶することが難しくなる。
●情報を拡散してくれる人がゲーム名を打ち込むためのコストも増大する


ことから、人の頭に入るのも、場に出てくる回数も減ってしまいます。

逆に入出力コストが小さければ小さい名前であるほど、
人々への「ゲームタイトル」の記憶回数と出現回数は増えます。
「覚えやすく、入力しやすく、短い名前」というのはそういう点でとても有利で、
「正式名称の普及度」が段違いに上がります。

ユニーク(単一)な名前を目指す目的でも、難しすぎたり、
打ちにくい単語はあまり使わない方がいいだろうと今は考えています。

私の付けたゲーム名だと、『片道勇者』が覚えやすさと入力しやすさの面で
最もうまくいった例になりそうです。

一方、『シルフェイド幻想譚』は昔、
「譚」が漢字変換ソフトで出ないケースがあったり、
読み方が分からない人が一定数いらっしゃったので、
その点がちょっとマイナスに働いたかもしれないと感じているケースです。

なお、長いゲーム名でも「略称」がうまく流行すれば
普及の面での問題は小さくなります。
が、うまいことインターネットの検索対策をしないと
「略称」を検索してもサイトが見つからないことがあるので、
ゲームの公式サイトがあるなら公式ページ内に必ず略称も入れた方がいいと思います。

私のツール『WOLF RPGエディター』では、一時期「ウディタ」と入れても
直接サイトが見つからなかったので、公式サイトの先頭にも
「ウディタ」という略称を書いたという経緯があります。


<日本でリリースする場合、英語は不利かも?>

日本でアピールするにあたって、
「英語のゲーム名」は注意した方がいいかもしれません。
『Elona』ほどに誤字が発生しにくく
短いゲームタイトルなら全く問題ないと思いますが、
以下の条件に当てはまりそうなものは普及力の面で不利になると考えています。

●7文字以上のスペルの英単語が含まれる。
●スペルをまちがえそうな単語である(flightなど難しめです)。
rとlで迷う、erやorなどが入る英単語、など。


こういった単語が含まれる名前だと、SNSなどでは
「ゲーム名を間違えるリスク」などから名前を気軽に入力されにくくなってしまうので、
カタカナを使う場合より普及力が一定以上低下すると思っています。
日本で出す場合は、せめてその英語のタイトルを
そのままカタカナにした方が有利かもしれません。

たとえば「Celestial Silfade Story」は
私が雑に付けた『シルフェイド幻想譚』の英語名ですが、
もし正式名称がこの英語名の方だったら、
掲示板などで滅多に入力されなかったと思います。
特に「Celestial」の部分! 長い! エルとアールがややこしい部分もある!
ので、まだカタカナで『セレスティアル シルフェイドストーリー』
にする方がいいかもしれません。
それでも長すぎてあんまりですけれどね!



【『内容が伝わりやすいゲーム名』は、
ライバルが多い中ほど有利そう】


今はフリーゲームどころか、企業さまが送る
基本無料ゲームでさえもあまりに大量に出ていて、
ゲームのタイトルを覚えることも、全ゲームの詳細情報をチェックするのも
大変な時代になってしまいました。

こんな状況になると、個人開発のゲーム、あるいは企業製の「新作ブランド」も、
「一つ一つが注目される確率」は相対的にかなり低下すると私は考えています。

では、過去の資産に頼れない新作ブランドで売り出す場合は、
一体どんな名前にするのが普及させるにあたって効率的でしょうか?
そう考えた場合、だいぶ昔ながらの命名法である、

●ジャンル名やゲーム内容が強く伝わるゲーム名

を付けることは、割と強力な策なのではないかなと思っています。
というのも、

●現在はゲームの数が多すぎて、「名前のみ表示された一覧ページ」から飛んで
「詳細ページ」まで見てくれる人が割合的に減っているため


です。サイトにもよりますが、ダウンロードサイトで多くのゲームが並んでいる場合、
まず一番最初の一覧に出るのは「ゲーム名」と
「バナー・アイコン」(+あって短い紹介文)が主で、
「詳しい紹介内容」はそのゲーム名をクリックして飛んだ先で表示されます。
現実世界の店舗で棚に置いてもらう場合も、ほぼ同様でしょう。

その中で少しでもお客さまに見てもらおうとするなら、
「ゲーム名」と「バナー・アイコン」だけでなんとか自分の作品に
注意を割いてもらうべく、情報を届けることが最重要です。

たとえば今のSteamでは、一日20~30件ずつゲームがアップされるので、
うちみたいな宣伝力に圧倒的に劣るところが何かゲームを出した場合、
「見ただけで興味を引く可能性がある名前+バナー・アイコン」でないと
ほとんど注目されずに流れてしまうリスクがあると考えています。
「ゲーム一覧」に並んでいる時点でお客様を引き寄せるかなりの努力をしないと、
そもそもゲーム詳細ページまで開いてくれないでしょう。

1日何十本もゲームがリリースされている中で、
あなたがたまたま「ゲーム詳細ページ」まで飛んだゲームがあるのでしたら、
それは作者様やパブリッシャー様が「ゲーム一覧」の時点で
うまくお客様を引き寄せる仕事ができている、ということなのだと思います。


<たとえばどんな名前を付ける?>

たとえば名前が決まっていないファンタジーのシミュレーションゲームがあるとします。
それは、重厚で練り込んだ世界観がバックにあるゲームですが、
そこであえてジャンル名重視の
「タクティクスナイツ」という名前で売り出すことを考えてみます。

『タクティクスナイツ』なら、ファンタジー系シミュレーションRPGに興味がある人なら
ゲームタイトルだけ見て「もしかしたら好みに合うヤツかな?」と思われるでしょうし、
そのまま詳細説明ページまで見てもらえる確率も上がりそうに思えます。
もちろんその際、同時に表示されるであろうバナーやアイコンも、
雰囲気の方向性を伝えるのに役立つでしょう。

一方で、これが『タクティクスナイツ』という名前でなく、
ゲーム世界の名前から取って『クロモア・ロコマ』なんて名前にしていたら、
その名前だけではシミュレーションRPGを探している人は
クリックしなくなるかもしれません。

代わりに、「独特なアート系の雰囲気のゲーム」を探している人には
クリックされやすくなる名前かもしれませんし、アイコンの雰囲気と名前から
「世界観重視のRPG」を期待する人もいるかもしれません。
そういうお客様は、詳細ページを見て期待と違うゲームだと気付いたら
前のページに戻ってしまうかもしれませんけれどね。

「ゲーム名」は多くのプレイヤー候補を獲得するための「第一の網」です。
自分の欲しい作品を探している人に少しでも見つかりやすくなるよう、
「タイトル」で中身のジャンルや方向性などを表現できれば強力です。

先の『クロモア・ロコマ』の例を取っても、名前の付け方一つで、
「第一の網」にかかるお客様の層が恐らくガラっと変わってしまうので、
私としては一番興味を持ってもらえそうな人に届くよう名付けたいと思います。


それと、「バナーやアイコン、画面にこだわっておけば
タイトルはザツでもいいんじゃ?」

と思われることもあるかもしれません。
しかし、SNS上では
画面やアイコンなしでゲームタイトルの文字だけが挙がる
ことが一番多いので、そこで名前を見た
潜在ユーザさんに興味を持ってもらうためにも、
「ゲームタイトルそのもの」の重要度はとても大きいと考えています。


<分かりやすさ重視の弱点>

「分かりやすさ重視のゲームタイトル」は、もっぱら
「新しいゲーム性を持った作品」に使いやすい方法かもしれません。
ただこの発想で命名する場合、失敗するとタイトルがかっこ悪くなりがちだったり
あるいは雰囲気を伝えにくくなりがちなのが難点という気がしています。

たとえば前の方のイラストにある例の『ジャンプガールラッシー』は、
ジャンルの分かりやすさと引き替えに、メルヘン感の伝わり方が
だいぶ削れてしまっている印象があります。

一方で『片道勇者』は、「内容が伝わる名前」という方向性においては、
「かっこよさ」は微妙ながら「王道っぽさ」「RPGっぽさ」「戻れないゲーム性」は
伝わりやすいと思うので、そういった意味では
バランスがよい名前にできたと考えています。



【『前に遊んだゲームの関連作品だと分かる』よう、
ブランドを意識して付けると長続きしそう】


これはさっきの「内容を表現したゲームタイトルを付ける」とは
少し別の方向性になるかもしれません。
こちらは、私の経験談やブランドについてどう考えてきたか、
ということをお話しします。

私が本格的にインターネット上でゲーム制作者として活動し始めたとき、
長くやっていくことを前提にしていたので、
『ブランド』を確立していくべきだと考えていました。
最初に意図していたのは、以下の点です。

●タイトルを見ただけで同じ開発者が作ったということを分かるようにしたい。

→ たとえば私が最初に意図していたこととして、『シルフェイド』という世界を、
私が開発するゲームの共通の世界観として使うことで、
今後もタイトルを使い回しできるようにすることや、
連作にしてプレイヤーさんに続けて興味を持ち続けてもらうことを考えていました。
遊ぶ人は「作った人の名前」ではなく先に「ゲームタイトル」を見るはずなので、
同じ人が作ったということを示すなら
それをタイトルに込めた方が有効だと考えたのです。



『シルフェイド』という名前は当時、
競合がないオリジナルな名前であるにもかかわらず、
割と覚えやすく、たまたま私が思いついた名前の中では最高のものでした。
それもあってか、今では割と多くの人に認知されて感謝の限りなのですが、
仮にうまくいかなくても、
基本的には共用世界観としてずっとこの名前を使っていくつもりだったのです。

そして実際のところ、『シルフェイド見聞録』と『シルフェイド幻想譚』までは、
この発想はうまくいったように思えます。
今でも、『シルフェイド』と付いていれば
それだけで興味を持ってくださる潜在プレイヤーさまも、
たぶん少なくないと思います。時間経過と共に、徐々に減ってはいるでしょうけれどね。


<ブランド付けの分岐点 方向性が違うゲームも同じブランドにすべき?>

そしてあるとき、『シルフェイド』のブランド付けの分岐点が訪れました。
私が初めてアクションゲームを作ろうとしたときに、
そのゲームに『シルフェイド』と付けることも考えたのですが、

『ジャンルが大きく違う場合は完全に別のゲームタイトルを付けた方がいいかも』

と立ち止まることになりました。
プレイヤーさんから、以下のような感じ方をされるかもしれないからです。

●『シルフェイド』って名前が付いていたから、
これまでに近いゲーム性を期待して始めたのに、
いざやってみたら完全に人を選ぶアクションゲームじゃないか! なんだこれは!


これは、それまでアドベンチャーやRPGとして
2作出していた『シルフェイド』シリーズの次に、
マウスアクションゲーム『モノリスフィア』を作る際に私が想像していたことで、
「あまりにゲーム性が違う場合は同じ名前を付けるのは危ないかな」と考えていました。

それまでに、『シルフェイド』という名には
「とりあえずほぼ誰でも遊べるゲーム」という印象が
根付いてきた感じだったので、それはそれで大事にしたいなと私は思いました。
もしここで『シルフェイド』という名前に対し、
「この名には人を極めて選ぶゲームも含まれる」
という警戒感を持たれてしまったら、
安心感という意味でのブランド価値は一定量落ちてしまうでしょう。
それはちょっと今後を考えるともったいないかな、と私は考えました。

その結果、私は新作のアクションゲームに、
まったく別の名前である『モノリスフィア』と名付けることにし、
世界観も新たなものにしたのです。


<同じ名前を、大きく異なるジャンルで使えるか?>

ちなみに、家庭用ゲームの世界では
「元がアクションやシューティングゲームだったシリーズの世界観を
シミュレーションゲームとして出したりしてうまくいっている例」

などもあったので、「アクションにするから別の名前にしよう」という発想が
よかったのかどうかは、今になっても分かりません。

例えば家庭用ゲームにおいて、●●という名のアクションゲームが、
「●●ウォーズ」というリアルタイムストラテジーゲームになったり、
▲▲というシューティングゲームが
「▲▲タクティクス」という戦略シミュレーションゲームになったり、
といった事例が過去に存在しています。それなりにうまくいっていました。

ただ、このケースでは「リアルタイム進行」のアクション/シューティングゲームから
ある程度進行がゆっくりめまたはターン制のシミュレーションゲームになっていたので、
その部分もある程度うまくいっていた理由なのかもしれません。
理屈を付けるとしたら、以下の通りです。

●「激しいアクションゲームができる人が、シミュレーションゲームを遊べる可能性」
はそれなりに高いと予想される。

●逆に「シミュレーションゲームしか遊ばない人が激しいアクションを遊べる可能性」
は低そうな気がする。
(仮にアクション化するなら、ゆるめで素直なゲームの方がよさそう?)


上記の推測はたぶん、ある程度は合っていると思うのですが、
こういった仮説の上では、『モノリスフィア』に
『シルフェイド』系の名を付けようとした例のように、
「ターン制ゲームのシリーズと同じゲームタイトル」を付けて
「人を選ぶ変則操作のアクションゲーム」を出すのは危険すぎる
気がしています。

結果として、それまで『シルフェイド』という名前を使っていたけれど、
変則操作マウスアクションゲームに『モノリスフィア』という
新たな名前を付けたことには、今でも満足しています。

そして、もし違うジャンルでブランドを使い回す場合は、
「アクションゲームのブランドをターン制ゲーム化する」
(ゆるい方向に変化させるのはOK)
という方向性で使った方がいいかもしれない、と今は思っています。

私はこういった発想で、ブランド面を意識したゲームのタイトルを付けてきています。


<現状のブランド>

今のところ、私の作るゲームでは、以下のような使い分けで
ブランド化していくことを考えています。

●『シルフェイド』シリーズ
 → 攻略法を知れば割と誰でもクリアできる、
お話が多めの固定ステージ進行のターン制ゲーム。
ランダム生成なゲームはあまりこの名を使わないようにしたいと考えています。

●『片道』シリーズ
 → 腕前を問われる、お話少なめのアドリブ重視ターン制ゲーム。現在次回作開発中。
これも最初は、『シルフェイド』と付けてしまうと
「なんだこれは!」と言われそうだったので、
『シルフェイド』の名は使わず、別名として『片道勇者』と付けました。

●その他:オリジナル名の変則アクション
 → 人を選ぶ、変わった操作性のアクションゲーム。もちろんリアルタイム進行型。
シリーズ・ブランド化する前提としては部分的にでも
「世界観の共有」が必要だと思うので
毎回世界観が変わるアクションではブランド化はなかなか難しそうです。

ちなみに、アクションゲームではそこまでギチギチに物語を詰めなくてもいいので、
私のネタの中で使われずに浮いている短いストーリーや
世界観を突っ込むのに便利に使わせていただいております。

●それ以外のゲーム
 → 世界観が違っても、付けられそうならとりあえず「シル」だけでも
名前の先頭に付けてみて、うちのゲームっぽさをアピールします。
すごい雑な発想ですが、『シルエットノート』もその考えで名付けられました。
『シル』と先頭に付いたゲーム名を見たとき、ごく一部の人でいいので
なぜか私のことを一瞬思い出せるくらいには
印象に残せるといいなという期待があります。



という感じです。ブランドを考慮して名前を付けられれば
それまでの「知名度資産」とでもいうべきものを活かしやすくなるので、
ゲーム開発人生を長続きさせやすい気がしています。
長く続けていきたいとお考えの方は、よければぜひご一考を。



【同じゲーム名がないか調べておく】

最後に。すごく当たり前ですが、思いついたタイトルは必ず検索エンジンでかけて、
同名の既存作品がないか調べておきましょう。

といっても、今回述べた中の「内容が伝わりやすい名前」を付ける場合、
「ありきたりな単語」だけで分かりやすいゲームタイトルを組もうとすると、
かなりの確率ですでに同名のゲームが存在するんですよね!

さっき挙げた『タクティクスナイツ』などは偶然にも
日本語ゲームにはまだなさそうですが、
こんなシンプルな名前ほど、
すでにその名前のゲームが存在していることが多いはずです。
『片道勇者』なども、こう名付けられたのはたまたま運がよかっただけです。

もしまだ誰も名付けていない
「非常に分かりやすく内容を表せるゲーム名」を思いついたのなら、
誰かとかぶってしまう前に、早く発表したほうがいいかもしれません。
できれば念のため、「商標」も検索しておくとよさそうです。



ということで、私がぼんやり考えている、
「なるべく普及させる/長続きさせるつもりで考えているタイトルの付け方」
として意識していることを一通り紹介させていただきました。

ゲームタイトルは潜在ユーザさんに興味を持ってもらう第一の網である都合上、
名前が違っていればここまで遊ばれなかっただろうな、と思うゲームも、
私が開発してきた中にはあります。
一方で、名前がイマイチで私が作ったことに気付かれていなかったり、
覚えにくかったりしたであろうものもあるので、
中にはゲームタイトルが普及の足を引っ張ってしまったものもあると思います。

「違うタイトルで同じゲームを出す」ことはできないので、
ゲーム名の差による効果を検証することはなかなかできません。
なので、今回お話ししたこともどれだけ有用か、私にはあまりハッキリしません。

最終的には皆さんのお好きなように付けてくださればいいと思っていますが、
寄せられる範囲で、
「潜在ユーザさんに興味を持ってもらえる確率が高まる」よう意識してみたり、
「ゲーム開発を長く続けることも考慮に入れて名付けてみる」ことで、
ゲームのポテンシャルを最大限に引き出す結果を出せるかもしれません。


できれば私も、他の人のも並んだゲーム一覧を眺めて、
ゲームタイトルやバナー・アイコンを見ただけで
「これは商品ページを開きたくなる」「これはそうではなさそう」
と直感できるセンスも鍛えていきたいですね。

私の場合はSteamをときどき見ているんですが、
つくづく「分かりやすいタイトルは強いな!」と感じます。
私が詳細ページまで飛ぼうと思えるゲーム名は、

●内容が想像できる、自分の興味と合うゲーム名
●どこかの記事ですでに見たことがあるゲーム名


の2つだけでほぼ100%になります。
皆さまのゲーム選びにおいても、これと近い基準の方は多いかもしれません。

自分のゲームも、せめて「詳細ページ」まで見てもらえるよう、
興味を持ってもらえるゲーム名にすることを心がけたいです。



来週はこのお話のおまけとして、私の各ゲームの名前について
簡単に自己レビューしていこうと思います。

そして「こんな話を聞いてみたい」などの拍手コメントをお寄せくださっている皆さま、
いつも本当にありがとうございます! お答えできそうなものは、
ぜひ今後の記事で取り上げさせていただきたいと考えております。


← 今回のような記事を
 1冊の本にまとめたゲーム開発本、
 『ゲーム開発者の地図』、
 Kindleで好評発売中です!
 2017-05-27 (土) web拍手 by FC2 カテゴリ: 開発日誌




2017-05-13 (土)   楽しくて学べるゲームの作り方
【楽しくて学べるゲームの作り方】

前回から引き続き、今回もゲームの作り方のお話です!

前回の記事でご紹介した『完成させるための作り方』は、
「あまり楽しくない部分もあるので、たぶん経験者向けです」と私は言いました。

では、初心者におすすめな「楽しくて、かつ経験値を多く得られる作り方」には、
どんな方法があるでしょうか?

今回お話しするのは、あくまで私の体験を元におすすめするやり方ですので、
だいぶ主観が強いですし、どれほどの人にお役に立てる話かは分かりません。
また、このやり方は「完成させること」を前提にしていませんので、
それも念頭に置いた上で、読み進めてくだされば幸いです。





【初心者向けの作り方、まずどんな『方向性』?】

前回の最後にも言いましたが、「一つ一つのものを面白く作るコツ」さえ
よく知らない状態でいきなり大きなものに挑むと、
10個作ったもののうち、1~2個くらいしか面白く作れない
かもしれません。
そうなった場合、たとえ完成しても辛い結末しか待っていないのは明白です。

よって初めてのうちは「大きなものを完成させる」ことよりも、別の方法で
多く経験値を得て、一つ一つのものを面白く作れるようになったり、
その他の経験を積むことを優先した方がたぶん効率的ではないか、と考えています。

そこで今回ご紹介するやり方の大きな方向性は、以下の通りとなります。


< 『楽しくて得るものが大きい作り方』の方向性 >

●作る面白さや短期的な満足感を重視して作る。
●なるべく素早く、多く評価してもらえる形態で作る。
●プレイヤーからのフィードバックをすぐに反映できる形で作る。
●完成させることは考慮に入れない。



それぞれについて、少し詳しく説明します。


●作る面白さや短期的な満足感を重視して作る。
→ あなたが初心者の人なら、ここはもう当然外せないところです!
といってもどんなことでも、たぶん無意識に取りかかると、
自然と面白さ重視の方向性になってしまうと思います。


●なるべく素早く、多く評価してもらえる形態で作る。
→ よりテンポ良く、たくさんの回数評価してもらう方が
当然、経験値の溜まり方が早くなります。
最短でたくさん評価してもらうにあたって、よさそうな方法を目指します。


●プレイヤーからのフィードバックをすぐに反映できる形で作る。
→ プレイヤーの人から送られてきた意見を取り入れ、実験してみるのは重要です。
「これがダメなら、一体どうやれば君たちは満足するんだ! これか!?」
と腹の内で思いつつ、色々試して、何度も見てもらうやり方を目指します。


●完成させることは考慮に入れない。
→ 今回のやり方では、「完成させる」ことは二の次とします。
「完成させるように作る」だけで作る面白さが相当に削がれるためです。

というのも、完成させようとすると、計画性が要求されたり、
追加の不安が生まれたり、素材作成へのコスト配分やペース配分も必要だったりで、
思考にかかる総コストが大幅に上がってしまう割に、
部分部分への満足感が減ってしまいやすくなります。

なので慣れない間は「楽しいところだけ最低限の手間で味わってもらう」ということで、
今回のやり方は完成させることを考えずにとにかく「作る面白さ」を重視します。
もちろん、最終的に完成してしまう分には全く問題ありません!

あと、私はゲーム作りに初めて触れてからの最初の数年間、
「完成を目指そうとしてしまって、ずっと詰まっていた」ので、
それも「最初は完成させない」ことをおすすめする理由の一つです。

私と似たタイプの人だと、たぶん、ただ「完成させる」という要求を入れるだけでも、
簡単に何年も完成させられない状態になってしまうことでしょう。
きっと、「よいものを出さねば」と思っている人ほど、そうなってしまうと思います。

あの頃は、「人にお見せするからには『よいもの』でないといけない」
と内心では思っていながらも、
最初から上手に作ることなどできなかったので、
作ってみた一個のものにさえ満足できず、
ずっとゴールのない『練習』や『試行錯誤』をし続けて、
先に進まなくなってしまいました。

具体的には、完成品を作る気概だけはあったものの、
全然進まないまま細部を何度も作り直してみたり、
ドットやマップやイベント作りを色々試したりするだけになってしまい、
結局いま振り返れば、何年もかけて完成させるふりをして
「経験を貯める作業」に従事するだけ
になってしまっていたのです。

ですが、こうなるくらいなら、最初からもっと
効率的に経験を貯めることを目的にしたほうが、
人生の時間を無駄にせずに済むかもしれません。
それに、一人で悩んでいたことの7割くらいは実は大した問題ではありませんでしたし、
本当に大事なことは、
「実際に人に見せて意見をもらって、初めて気付いた点」の方が
圧倒的に多かった
のです。


私は上記の経緯で一度挫折した後、たまたま新たな取り組み方を選んだのですが、
それは偶然にも、レベルアップする目的において非常に効果的なやり方でした。
今回はそれをご紹介します。



【初心者の人におすすめする作り方】

ということで、いよいよ本題の「初心者の人におすすめする作り方」です!

早速ですが、「面白さや満足感を重視」「素早く多く評価してもらう体制」
「フィードバックを反映してすぐ試せる」「完成させることは考えない」
の4つが揃った、私がゲーム開発初心者の人におすすめするゲームの作り方は、
以下のようなやり方です。



<1.何も考えずに、前から順に『全力の質』で作る>
全力でゲームを前から作る。素材やテキスト全てに対し、
後先を考えずに全身全霊で労力やネタを詰め込んでいいものとする。
ゲームシステムも、動くならまずは一部分からだけで構わないとする。

<2.一定以上できたら、そのたびに必ず『見てもらう』>
作ったものが「少し」できたら、必ず人に見せて意見や感想をもらう。
「少し」のペースは、数週間から一ヶ月程度、最大でも三ヶ月くらいが望ましい印象。
見せるのは友達でもSNSの知り合いでも一般公開でも、範囲や対象は自由。

<3.『やる気が尽きるまで1→2を続ける。飽きたらやめる>
ひたすら1→2の手順を繰り返してゲームを大きくしていく。
やる気が尽きたり飽きたりしたら、完成していなくてもそこで終わってよい。
あるいは、1→2の手順が1回で終わる
「ミニゲームをいくつも完成させ続ける」やり方もOK。



一言で言うと、
「小さい単位で全力で作って、少しずつ人に見てもらう」というやり方です。
連載形式で出していくやり方や、徐々にアップデートしていく方式、
あるいはミニゲームをポンポン出していくような形になるでしょう。

実は、前回の記事で最初に「完成させられなかった失敗例」として挙げた
「全力で前から順にひたすら絵やデータを作っていく」というやり方は、
「一番早く開発の満足感を得る」ことにおいては非常に効率的な方法でした。

そして今回ご紹介した上のやり方は、その「一番早く満足感を得る方法」に加えて、
「たくさんの経験値を得るため」の工夫として『見せる』手順
混ぜた方法となっています。

私の場合は、最短で多くの経験値を得られる『修行』を楽しくやるにあたって、

「全力で少しずつ作る連載形式を取り、
1話分をアップデートしたらそのたびに見てもらう」


というやり方をこれまで3回ほど使いました。

その3回中、2回は未完になってしまいましたが、とにかくこのやり方の一番重要な点は、
『完成させるためのペース配分だとか後先をまったく考えずに、
全身全霊で自分の力をぶつけて好きなものを作って』

そしてそれを『見せて』いくことです。

『見せる』の部分が特に重要ですので、
いくら恥ずかしくても絶対にそこは外さないでください。
私も相当な勇気がいりましたが、そのとき誰かに何度も『見せて』いなければ、
今の私はここにはいなかったでしょう。

どのくらい勇気がいるかというと、公衆の面前で
下着を全開にして見せるくらい恥ずかしいです。
さらに『物語』のように、見られるのが自分の『内面』だったりすると、
もしかしたら全裸になるくらい恥ずかしいかもしれません。
創作はそもそも自分の見えない部分をさらす行為なので、どうか耐えてください。

といっても私の場合は運がいいことに、最初は学校の友達だけに見てもらって、
そこで「これなら次は広い場で見てもらっても大丈夫かな?」と自信をもらった上で
インターネット上に公開する流れを取ることができました。
内気で恐がりだった私では、一人だと
インターネット公開までできなかったでしょうから、
いい友達に巡り会えたのも今ここにいる理由だと思います。



この『少しずつ全力で作っては見せる』やり方には、
私がゲーム開発者としての初期段階の栄養を得るために
とても大きな利点がありました。

このやり方で私が得ることができたものを、以下に挙げていきます。



【質の最大値を知ることができる】

まずペース配分や後先を考えずに全力で挑むことで、
自分が作れる「質の最大値」を知ることができます。
絵だけはすごくきれいに作れるとか、お話だけは面白く作れるとか、
快適なインターフェースが自作できる、キャラのドット絵がすごく動く、など、
何かしらの点であなたのピーク値を出せるはずです。

「完成させる」方向でいくと、どうしても労力やアイデアを
ある程度配分せざるをえなくなり、
『あとさき考えずにやたら全力で作る』といったことがやりにくくなるため、
「どこまでも遠慮なく質の最大値を試し続けられる」のは
「完成させない」前提だからこその最大のメリット
です。

もちろん「全力を出した結果、どういう評価をもらえるか」
という点に着目するのはもっと重要です。
期待通りの反応を得られてその技にもっと自信を付けられるかもしれませんし、
あなたが得意だと思い込んでいた技術が
実はそれほど評価を得られないかもしれません。

あるいは、自分としては平凡だと思っていたことが
なぜか異常に評価されたりして、自分の新たな『素質』を知る
かもしれません。
この話は、2つ後ろの項目でも述べていきます。



【量の限界を知ることができる】

限界の質で作り続けていれば、いつかやる気の減少や飽きなど何らかの原因で
続けられなくなるでしょうから、そこで開発を終わりにします。
(これに備えて、プレイヤーさんにはいつ開発を打ち切るか分からないことを
あらかじめ伝えておくといいでしょう)

開発を続けられなくなった時点で、
「あなたが最大値の質を出し続けた場合に、一体どのくらいの『量』を作れるのか」
ということが分かるはずです。これは後々、貴重な情報になります。

たいていの場合、意外と多くのものを作れないことを知るかもしれません。
「よく動くキャラクターのドット絵を描けるが、いざやると10体くらいが限界だった」
「無限に書けると思っていたが3時間プレイできるくらいの
テキストを書くのが限界だった」
などです。

この『量』に関しては、『期間』と言い換えてもいいと思います。
最初に情熱を持って始めて一本を開発するにあたって、
一体どのくらいの期間までなら飽きずに続けられるか。
それはあなたにとっては三ヶ月かもしれませんし、一年かもしれません。
それが分かっていれば、本格的に一本作るときに、
無理のない計画を立てやすくなります。

私の場合はとても意欲的な状態でも、1年くらい経った辺りから
気力が目に見えて減少し始めるようなので、
できる限りそれまでに決着を付けられるようにするか、
あるいはコアのところを開発し終われるように意識しています。

たいてい、この『期間』をオーバーすると
作れるものの質が急激に低下していく
と思うので、
密度の高いゲームを作りたいならば、開発期間の設定は重要です。



【自分の素質や弱点、高コストな部分を知ることができる】

作ったのがほんの一部分であれど、一定以上の人に見てもらうことで、
「あなたが平凡だと思っていた成果物なのになぜか評判がよかったもの」、
言い換えると、
「あなたが通常攻撃やパッシブスキルみたいなつもりで使ってるのに、
実は大きな成果を発揮できていた『素質』」

に気づく機会も増えるはずです。

というのも、自分にとって一番得意なことってたいてい
「無意識にやれてしまう」ことなので、
自分自身では気付けないことが多いと私は考えています。
なので「普通に作っただけなのになぜか高い評価をもらった」部分というのは
おそらくあなたにとっての強い『素質』であり、
それは今後もずっと多用できる武器になります。
なにせ、「低コストで高い結果を出せる」んですからね。

それ以外にも、
「作るのは好きなんだけど、なぜか不評ばかりな部分(苦手な技)」
「ウケはすごくいいんだけど、作るのが大変な部分(MP消費が激しい強い技)」
などに気付くこともあるでしょう。
早期にそれらを学べれば、今後の「自分の使い方」を考えるにあたって重要な材料になります。

たとえば、新たなゲームを作るときにも、

●「低コストで大きな効果が出せていた」技をなるべく多用できるような設計にする。
●「MP消費が激しいけどウケはいい部分」は要所ごとに使うようにする。
●「どうがんばってもウケが悪かった部分」はそもそも多く作らずに済むようにする。


といった風に、周りからの評価によって自分を知れば知るほど、
「自分を最大限に活かせるゲーム開発」ができるようになっていくはずです。
「他者からのウケがいい技」を中心に使って作ったゲームは、
そりゃ基本的には良い品質になります。自分の強みは遠慮なく活かしましょう。

私の場合、人からの評価で
「自分はキャラ作りやセリフを書くのが得意なのかも」と感じましたが、
後に、それをメインに据えると期待した量が全然作れないことを知りました。
実は、それをメインの武器にするにはMP消費が大きすぎたのです。
一部の小説家の人のように、ものすごい量の文章を
バリバリ生産し続けることはできません。

今はそういったMP消費が多い技は、なるべく要所要所だけに使うか、
あるいは量が足りなさそうな場合は他の人の手を借りるように意識しています。



【自分の作ったもので喜んでもらえることを知る】

「一部分だけを作って誰かに喜んでもらう」ということは、
実は「完成品を見て喜んでもらう」ことよりもある程度簡単
だと私は考えています。
なぜかというと、一部分だけに最高の情熱とアイデアを詰め込んで作った「密度」は、
ほとんどの場合、「完成品」よりも高くなるからです。
何より、1回あたりの挑戦のコストが段違いに少なくて済みます。

そしてゲーム作りの原体験として、
「自分の作ったものが、一部分といえど喜んでもらえた」
という経験を少しでも早い内に得ておくのは、後々とても大事になります。
喜んでもらえるかどうかは運次第とはいえ、見てもらう回数を増やせば、
それだけ「自分の力で喜んでもらえる部分」を発見するチャンスが増えるはずです。

「誰かに喜んでもらえた部分」は、今後も自信を持って作れるようになると思います。
ゲーム開発では大きな我慢が必要になることもたびたびありますが、
経験に裏打ちされた「たぶんここは喜んでもらえるだろう」という自信は、
心をとてつもなく折れにくくします。
その「自信」は開発におけるほぼ全ての面において、あなたを助けるでしょう。

なお、最初はその自信を得た影響でいくらか
『慢心』してしまうこともあると思うんですが、
どこかで怒られたり、慢心のせいで失敗したりすることで、
いずれバランスの良い『自信』に調整されていくはずです。

大人になるまで、生きててずっと自分の存在意義を
確認できなかった私のような人の場合、
「自分の意志で始めたことで誰かに喜んでもらえた」という体験をしてしまうと、
嬉しすぎて何年かおかしくなってしまいます。でもきっと、いつか通る道です。



【細かい部分への肌感覚を学ぶことができる】

「小さく作る」のに比べ、「完成品を作る」ことで
逆に不利になってしまう点があります。
その中でも『評価や意見、感想をもらうこと』に関しては、
完成品の方に以下の不利な点があるのではないかと私は考えています。

●完成品を一気に見てもらっても、含まれている要素が多くて
目立つところしかコメントされないことが多く、
細部のどこがよかったかがあいまいになりやすい。


ほとんどの場合、完成品をまるっと見せたときには、
プレイヤーさんはゲーム全体のうちで最も気になったところの
いくつかしかコメントしてくれないことが多いはずです。

そしてたいてい、一番目立ついい点、あるいは悪い点に
注目が集まってしまって、その影響で他の
細かな「いい部分」「悪い部分」を教えてもらい損ねてしまうこともあるでしょう。

たとえば「完成品」を見せて、
劇中のワンシーンや物語のどんでん返しが非常によかったとしたら、
そこだけがみんなの主なコメントとして挙がってしまって、
せっかく作ったゲームシステムや細々としたキャラクター、
小ネタなどの細部についてはコメントされにくくなると思います。
それによって、街の住人にもいっぱい面白い会話を作ったのに、
どれにも何のコメントがない
、なんてことは日常的に起こりえます。

すごく丁寧にレビューしてくれる人や、凄くたくさんの人に遊ばれたなら、
細かい点にコメントしてもらえることもあるのですけれど、
私の印象的には、完成品を一回見せてコメントをもらえる部分はたいてい
「全体の10%にも満たない場所から」で、
作った内の残り90%の部分はコメントに挙がりません


一方、「小さな部分ごとに見せて評価してもらう」ようにすれば、
作った単位ごとにコメントをもらうことができ、
善し悪しを細かく把握しやすくなります

また、もし足した「小さな部分」の中であなたが「新たな挑戦」をしたならば、
「その挑戦した部分だけ」の善し悪しをプレイヤーさんに
評価してもらえる可能性も上がります。
そしてそこに問題があれば、そのたびに直して、見せて、次の評価を待てばよいのです。

「新たに作った部分や改善した点について、一つ一つフィードバックをもらえる」
という状況は、ゲーム開発についてまだ何も知らない状態から、
色々試行錯誤してみたり、ゲーム開発の知見を得るにあたってものすごく強力です。
プレイヤーさんも、見るものが少なければ新たな範囲だけを
注視してコメントしてくれるので、
例えば「5%分」を作って見せれば、
うち半分の2.5%分くらいに意見をもらえる可能性があります。

そうやって細かく見せたことで、最終的に100%分作ったうちの合計50%の部分について
何かしらのコメントがもらえたとしたら、
完成品から10%のコメントをもらう場合に比べ、
単純計算でなんと5倍の速度で経験値が溜まるのです!
これらの数値は仮のものですが、得られる情報はまちがいなく何倍にもなります。

私にとっては、そうやって得てきた様々な肌感覚が今でも非常に役に立っていますし、
細かい部分への配慮について学ぶきっかけにもなりました。


逆に、「見てもらう」ことをしていなかった期間は
ずっと自分の力に対して疑心暗鬼のままで、
「自分が何をすれば人に喜んでもらえるのか」を知ることができないまま
でした。
本当に、ただ『人に見せる』ことをするようになった瞬間から
急激に世界が開けたのです。

私の見て来た中では、ゲーム開発の初期の成長が早かった人は、だいたい何らかの形で、
「小さいものを作って、早いサイクルで人に見てもらう」
という体験をしている人が多いような気がしています

実は、彼らが持っていたのは「短期間で多くを学べる才能」ではなく、
「自分の『育成』の仕方が、とてつもなく効率がよかった」だけかもしれません。


なお、細かい部分についての反応を見たいならば、
今では「実況配信プレイをしてもらう」という方法も強力です。
(実況配信プレイ:ゲームをプレイしながら声でもコメントしつつ
映像配信するプレイのこと)
友達に実況配信でテストプレイしてもらうだけでも、
たくさんの情報を得られるはずです。

昔は、ゲームへのコメントを得る方法といえば、
掲示板などに書き込まれる「自発的に言ってもらう発言」しかありませんでしたが、
実況プレイなら細かい部分への不満や、楽しめている点も把握しやすいので、
小さい単位での情報収集が以前よりも容易になっていると思います。

とにかくどんな手段でもいいので、細かい部分への反応を収集することに
どん欲になることが、レベルアップのためには一番重要なことだと私は考えています。

耳が痛い意見もたくさん飛んできますが、
そのたびにそれまで気付かなかったことに気付いたり、
または自分とプレイヤーの感覚が微妙に違うことを知ったり、
あるいは意見への対応がうまくいかなくて大変な目にあう経験もするでしょう。
しかしそれを繰り返していくうちに、
だんだんとうまく作れるようになっていくはずです。



ということで、
「完成させる前提を持たずに、全力で少しずつ作っては見せていく」やり方の
利点をまとめると以下の通りです。

●自分が出せる『質』の最大値を知ることができる。
●その質で作れる『量』の最大値を知ることができる。
●気づかなかった自分の『素質』、『弱点』を知ることができる。
●『自分の作りたいものを作って喜んでもらえる』ことを知ることができる。
●作ったものごとにプレイヤーがどう感じるかという、
『細かな部分への肌感覚』を知ることができる。


私が未完にさせてきてしまった作品によって得た上記の情報は全て、
今でもずっと私の支えになっていますし、
より良い成果物を作る重要なヒントになっています。

未完の連載ADV『シルフェイド見聞録』は、1話を公開後、
短い方だと1~3ヶ月くらいのスパンで新しい話を作って
皆さんに見てもらっていたと思います。

普通、ゲーム開発ではそんなスパンで新作をリリースしたり、
感想をもらえることはありませんが、『シルフェイド見聞録』では
途中で自作の戦闘システムを入れたり、物語の見せ方を少しずつ変えてみたりと、
やりたいことも織り交ぜて色んな感覚を掴んでいくことができました。

意外とプレイヤーさんは期待通りには遊んでくれないことや、
同じ課題でもできる人とできない人がいることや、
同じ内容に対してもつまらないと思う人や面白いと思う人がいることや、
自分がこういう意図で作ったものは賛否両論だったけど、
こういう意図で作ったものは多くの人に受け入れられやすいとか、
「自分の手の動かし方」に対する様々な知見をこの身で感じることができたのです。

たとえ頭では分かっていることでも、
「自分がどう考え、どう手を動かしたか」というインプットと
「皆さんの反応」というアウトプットの組み合わせが大量にそろって、
初めて理解できた
ことは山ほどあります。
これまで開発日誌に書いてきた数々のことも、まさにそうして得たものです。

初めて完成させられた中編RPGの
『シルフェイド幻想譚』で運良く良い評価を得られたのも、
その前に「小さなものを早いサイクルで見てもらっていた」ことで
多くの経験を得られたからこそだと私は考えています。



【この方法、『完成品』に対しても使えます】

復習ですが、前回はレベル1「最低限の骨を作る」→
レベル2「肉付けをする(短編完成)」→レベル3「成長させる」、という順に進め、
レベル3でやる気や時間がなくなったら終わり、という方法をご紹介しました。

そして今回の「少しずつ作っては見せる」やり方は、
前回の「完成させる作り方」のレベル3「成長させる」だけを抽出して、
そこに『小さい単位で見てもらう』工程を挟んだもの
ということもできます。

つまり、『完成させる作り方』でレベル3まで達した後、
徐々にアップデートしながら小さい単位ごとに『見せる』方法にすれば、
今回の利点をほぼそのまま得ることができる
のです!

「早期アクセス(アーリーアクセス)」や「リリース後に随時アップデート」
といった形でリリースしているゲームは、そういったやり方に近い気がします。
開発者側もプレイヤーさん側も楽しみやすい上に、
開発の経験値も溜まりやすくて、一石二鳥です。

私の場合は、『片道勇者プラス』のベータ版を公開した後などがそれに近い状態でした。
ほぼ毎日のようにバグ修正や微調整を計10~20点くらいやっては、
そのたびに皆さんに見てもらうという大変なサイクルを繰り返していたのですが、
当時はその大変さを乗り越えられてしまうほどに、
「修正に対してフィードバックをもらえるループ」が楽しかったと思います。
そしてもちろん、その過程で得られた知見も山ほどありました。

ある程度熟練した開発者の人でも楽しくやれる上に、さらなる成長もしやすい!
私は今になっても、『少しずつ作って見てもらう』というのは
素敵なやり方だと感じます。


<まとめ>

小さい単位ごとに見せることで、『細かく反応や意見をもらう』というのは、
小さく作って見せていく最大の利点であり、
大きな完成品を一度に見てもらうことではなかなか得られないことだと思います。

ゲーム作りが初めてで、何もかもが未知である状況下では、
この方法を使ってまず自分の能力について知ったり、肌感覚を学んだり、
自分の力で作ったものが誰かに喜んでもらえる機会を増やすのが、
きっと楽しくて、最終的には自分の強化にも繋がるのではないかなと私は考えています。

何より、何も知らない状況で最初から大きなものを作ろうとすると、
致命的に見当違いのものを作ってしまう可能性が高くなってしまいます。

まず少しの労力を色んな方向に使ってみて、あなたの力で喜ばれる方向性を学んで、
効率的に喜ばれる方法が分かったら、その方向により大きく力をそそげばいいのです。
大きなものを完成させるのは、色々なことを掴んでからでも遅くないと思っています。

……と、私は考えているのですけれど、いかがでしょうか。



【おまけ 昔の話とこれからの話】

最後に、私が初めて人にゲームを見せたときの、昔の話をします。

私は子供時代からずっと「ゲームは完成させないとダメだ!」と思っていましたが、
結局、何年間も何も完成させられままでした。
ゲーム作り自体はずっと続けていたものの、
あるとき、目標にしていたゲームコンテストが終了してしまい、
目指す場所を失った私は絶望にくれてしまいました。

ある日、完全に吹っ切れた私は、何だかんだでたった5分間しか遊べない
レジェンドオブレストール1の「1話だけ」を作って友人に見せたのですが、
それが思った以上に喜んでもらえました。
「誰にも指図されず、完全に自分の意志だけで生みだしたもの」で、
なんと友達に笑ってもらえたのです!

そのとき、「すごいものを作らなくても楽しんでもらうことはできるんだ!」
という、当時の自分にとって衝撃的な事実を私は生まれて初めて知りました。
その原体験は今でも、私の開発における心の支えになっています。
それ以後、その友人たちに対してレジェンドオブレストール1を「連載」し続け、
それが一段落ついたあたりでこのサイトが生まれることになりました。

私にはこういう経験があったので、初心者の人や自信のない人は最初はぜひ、
「量はほんの少しでもいいから、自分が全力で作れるものを作ってみて、
それを見てもらって、運が良ければ喜んでもらう」

という挑戦をおすすめしたいと思っています。

そして、その繰り返しの中であなたの自信が溜まったら、ようやく、
一本を完成させるつもりで作り始めてもいいかもしれません。


私自身も今後、手探りで始めていかねばならない新たなことをすることになったら、
「いつ打ち切るか分かりません!」と叫びながら少しずつ全力で作ってみて、
細かく意見をいただきながら学んで、力尽きた時点で終わるという、
今回のやり方を使うことになりそうな気がします。
もちろん途中で終わるにしても、打ち切り三回目ともなればある程度マシな終わり方に
できるようになっていることを期待したいんですけれどね。


ゲームを完成させるのは難しいことです。
私は、一番最初にゲーム開発に触れてからその10年後に至るまで、
一本も中編を完成させられないままだったので、
人によっては「一定以上のサイズのものをただ完成させる」ことでさえ、
まず多くの経験を重ねることが必要になるかもしれません。

しかし、完成させられないこと自体は、それほど嘆く必要はないと考えています。
最初から「完成品を作る」ことだけに意識を取られてしまうよりは、
「規模にかかわらずあなたの作ったもので誰かが喜んでくれるのだ」ということや、
「自分がどんなものを作れば人に喜んでもらえるか」を学ぶ
ことの方が、
より重要なことだと私は思っています。

皆さんが持っている創作の『武器』は、最初はみんな『未鑑定』です。
自分の武器が全部「???」の状態ではいきなりボス戦に挑みたくはないと思うので、
最初は色んなシチュエーションの小さな戦いを繰り返して、
数多くの自分の武器の性能を知ることが先決です。

そしてある程度、自分の武器についての知識を得て、いくらかの戦い方も知ったなら、
そのときこそいよいよ長くて大きな戦いに挑むときです!
己の武器に適した戦いを選べばきっと大きな壁でも打ち破れるはずですし、
運が良ければ高い成果を得ることもできるでしょう。

評価してもらえるかどうかは、最後は運です。
でも、歩いて行く道のりは、あなたが選ぶことができます。
私が紹介させていただいた方法に限らず、あなたにとって、
いつか一番いいやり方が見つかることを祈っています。



以上、長くなってしまいましたが、私なりの
「楽しくて学べるゲームの作り方」について紹介させていただきました。

今回の方法は、
「私がやってきた中で、たまたま、楽しみながら一番経験値を得られたやり方」
というだけなので、合理性を追求して試行錯誤してきた結果ではありませんし、
人によっては合わない可能性もあると思います。

他にももっといい方法があると思いますが、今回のやり方が、
よりよい方法にたどりつくための一つの手がかりにでもなれば幸いです。



他にもし何か語って欲しいことや、開発において聞いてみたいこだわり部分などが
ございましたら、ぜひ拍手コメントからどうぞ! 


← 今回のような記事を
 1冊の本にまとめたゲーム開発本、
 『ゲーム開発者の地図』、
 Kindleで好評発売中です!
 2017-05-13 (土) web拍手 by FC2 カテゴリ: 開発日誌




2017-05-06 (土)   ゲームを完成させる作り方
【ゲームを完成させる作り方】

>ゲームを最後まで作り終えるコツを知りたいです!

というコメントをいただいたので、
現時点での私の「完成させるゲームの作り方」をまとめておきます!

ちなみに私には、最後まで作り終えられなかったゲームとコンテンツが計2つあります。
凍結中となっている連載ADVゲーム『シルフェイド見聞録』と、
半分打ち切り気味に終わったテキストコンテンツ『<自家製>片道勇者TRPGリプレイ』です。

どちらもお話としては半端な状態で終わっており、
続きを楽しみにしてくださっていた方には本当に申し訳ございません。

まず、どうしてそれらを作り終えることができなかったかについて、
自分の考えを述べていきます。



【私の失敗例 完成しなかったゲーム/コンテンツ】

まず参考として、私が体験した「完成まで作れなかった失敗例」を挙げます。

私がゲーム作り初心者だった頃は、
「前から順番に全力で画像やお話を作っていって、根性と気合で
最後まで作っていって、最後の最後にようやくラストシーンを作って開発終了!」

という流れで作ることを考えていました。

これだけ聞いて「あ、それは危ない!」と思われた方は、
たぶん色々と経験済みのゲーム開発者さんではないかなと思います。

というのも実はこのやり方、おそらく結構な確率で完成にいたりません。
このやり方で私がどんなことになったかというと、

1.最初は気合を入れて全力でグラフィックやシーンなどを作っていく。

2.しかしどんどん「モチベーション」や「作業の新鮮味」や「ネタ」といった
リソースが消耗されていき、それまでと同じ熱意で
グラフィックやシーンなどを作ることができなくなる。

3.いずれかのリソースが消耗されきった果てに、開発が進められなくなる。
あるいは質が激しく低下していく。

4.そして最終的に取りかかる気力がなくなって挫折へ……。


という感じになりました。私が何かのコンテンツを
打ち切りにしてしまった大きな理由は、
だいたいの場合、『自分のモチベーションや作業への新鮮味、
使いたいネタがどの辺りで尽きるかをよく把握できていなかったから』
です。

ADV『シルフェイド見聞録』連載は全体のプロットさえ考えずに
永遠に作るつもりで書いていましたし、
『<自家製>片道勇者TRPGリプレイ』連載も
永遠に続けられるつもりで作っていましたが、
最後はどちらもネタと気力がなくなって開発中断を迎えてしまいました。

しかし未完に終わったとはいえ、今考えると、これらの作品を経て得られたものは、
普通にゲームを完成させてリリースした場合よりも大きなものでした。
どちらの未完作品も、私にとっては終わりまでとても真剣に挑むことができ、
皆さんのご意見を細かくいただけて自信と経験を得られたので、
皆さんに見てもらえたことは私にとって大きな糧になっています。

今は、この「完成させられなかったやり方」自体にも、
当時の私のようなゲーム開発初心者にとっては大きな利点がある
と考えています。
それも次回の記事としてまとめる予定ですので、気になる方はご期待ください。



【ゲームを完成させるための作り方】

ということで、いよいよ本題! 先の失敗例をふまえた上で、
『個人開発』で『一本のゲームを完成させる確率を上げる作り方』を考えていきます。

これからお話しすることは「私の現時点のやり方」というだけで、
向いてる人とそうでない人がいるはずですし、今後新たな方法に変化していく可能性も、
私が把握している『弱点』もあります。その辺りは、あらかじめご了承ください。



まず前述の失敗を元に、今の私はちょっと見方を変えていて、
「モチベーション切れや時間切れがいつ起きるか分からない前提で開発を行うべき」
という発想でゲームを作ることを考えています。

すでに一度作ったことのあるジャンルでさえ、
自分のモチベーションがどこまで持つかはハッキリしません。
もしかしたら同じものを作るのに飽きてて、次は前より長持ちしないかもしれません。

そういったモチベーション切れのリスクに対応すべく、
開発を重ねる中で私の「完成させるやり方」は、
徐々に以下の条件を満たすやり方になっていきました。

●何のデータや素材がどのくらい必要なのか、早期に把握できるようにする。

●肉付けは全体の量を把握してから始める。

●残りモチベーションや残り時間が不安定になる開発後半は、
「いつ開発をやめても問題ない状態」を維持しながら開発する。


そしてこれらの条件を満たせるやり方として、
今は以下のレベル1~3の順に開発を行うようになっています。
最近だと『片道勇者』の開発時に、このままの順序で開発しています。



<レベル1 最低限の骨を作る プロトタイプ> (『片道勇者』ではアルファ版)

ゲームシステムに加え、最初からエンディングまで通しで遊ぶための
「ありえないほど小さい」と考えられる規模の「骨」だけのゲームを作る段階。
ゲームシステム、スタートやエンディング、街やダンジョン一つずつなど、
絶対に外せない要素のみここで開発する。

ゲームシステムが自作の場合はそれを最重視して、なるべくしっかり固めておく。
データに関しては、見た目や内容は雑だったり仮でいいのでここでは量を確保する。
かつ、街やダンジョンなど作業量が一気に増える要素の数はここでは最低限にする。
物語系RPGなら、ダンジョンや街は本当に必要な数個くらいを作ることを
メドにしてみる、など。


<レベル2 肉付け 短編の完成>
(『片道勇者』では無印版のアルファ~ベータ間辺り)

大きな要素は増やさず、レベル1の「骨」に対して見た目や内容を肉付けしたり、
画像やゲームバランスをブラッシュアップしたりする段階。

いらなかった場所を切ったり、作りかえたり、
プレイ途上で足りないと感じた細かいデータを
足すのは「肉付け」に含めるが、入れることで逆に作業項目が一気に増えてしまう
大きな「骨」となる要素を増やすのは次のレベル3までなるべく我慢する。
たとえば、物語系RPGなら街やダンジョンは基本的に増やさないようにする。
これが終わった段階で、ひとまず最初から最後まで遊べる、
『公開可能な』短編ゲームが完成する。


<レベル3 さらなる成長> (『片道勇者』では無印完成版とプラス版)

作りたかった要素がきっとまだ残ってるはずなので、
レベル2の質を維持しつつ、「入れて面白くなると思う順」に
「骨」も含めて追加していく。

たとえばRPGなら、合間のストーリーやダンジョン、またはクリア後の新ストーリーや、
元々なかった「図鑑」といったおまけのシステムなど。
ここからはいつでも切り上げられるように意識して作業を進めつつ、
やる気が尽きるか、期限が来るか、ネタ切れするまでこれを続ける。
終わったときが、そのゲームの完成!



「レベル1 最低限の骨を作る」→「レベル2 肉付けする」→「レベル3 成長」の
レベル順にゲームを開発していけば、少なくともレベル2の段階を突破できれば
あとはモチベーションや時間が尽きた瞬間にいつでも
「完成!」と宣言することができます。

このやり方は、「モチベーションがあるうちにコアになる場所だけ作っておいて、
いつでも開発終了できるようにするやり方」
と言ってもいいかもしれません。

私が明らかにこの手順で開発したと言えるのは、
ADV『シルエットノート』とRPG『片道勇者』の2本です。

『シルエットノート』は流れ上、
たまたま開発手順がそうなってしまっただけなのですが、
「締め切りが決まっていたので作る量を最初に決めていて、
『枠』を作ってから肉付けした」のと、
「リリース後に追加データを足した」という順に開発したことから、
この手順にほぼ該当すると考えています。

一方で『片道勇者』は、最初から上記の手順を意識して開発していました。
まず最低限、スタートから終わりまで遊べる
「データが各1~2種しかないアルファ版」を作り、
それに肉付けをし、その後に入れたかったものを色々足して
「無印版」を完成させました。
また運に恵まれて、無印版のリリース後にさらに「レベル3」を続行し、
『片道勇者プラス』という拡張版も作ることができました。


それではレベル1~3のそれぞれの段階について、詳しく解説していきます。



【レベル1 最小限の骨を作る】

レベル1は「骨」だけを作る段階です。
ゲームシステムだけはじっくり作っていいものとしますが、
それ以外の「データ」に関しては最初から最後の分まで最小限かつ
一通りかなり雑に作っていきます


レベル1の最重要目的は、

●「作ったゲームシステムに素質や将来性がありそうか」を確認すること。
●「全体的にどのくらいのデータや素材の量が必要か」をおおまかに把握すること。

の2つです。

レベル1まで完成した段階のゲームは
「雑に作っただけのつまらない短編」かもしれませんが、それでもこのレベル1では
「一つ一つの質を上げるのを我慢して量を作り続ける」ことがとても重要です。
時間をかけて一つずつ素材やデータを作ると、
多くの場合、レベル1さえ達成できません。

一つずつの質を上げるのは、レベル2まで必死で我慢します。

この段階では、作るデータは最小限にします。
たとえばストーリーRPGなら、データは
「仮オープニング」、「スタートの街」、「途中のダンジョン」、
「途中の街」、「ラストダンジョン」、「仮エンディング」、
各1つくらいのデータ量を目標に作るといいと思っています。
「ありえないほど少ない」くらいの量がちょうどいいです。

このレベル1では、キャラ絵も
「雑なシルエットにキャラ名だけ描いた仮の立ち絵」だって構いませんし、
ダンジョンごとの敵キャラもたった1~2種類ずつで構いません。
アイテムも各数種類でいいですし、キャラクターチップは
サンプルのチップを使って構いません。
全て仮のデータ、仮の画像で行くくらいの覚悟の方が、
レベル1を達成しやすいでしょう。

ただし、画像の『サイズ』だけはこの時点で決定しておくと、レベル2が楽になります。
画像のサイズが途中で変わると、
インターフェースや画面デザインを
何度も作り直す必要が出てきてしまう
からです。
私は、既存の素材や自分の過去作の素材を拡大縮小して配置して、
ゲーム画面の構成を考えることが多いです。

この「レベル1」の段階までできたものを、
私は「アルファ版」や「プロトタイプ」と呼んでます。
画像も仮ですし、データ量も、調整も十分ではないため、
遊んでも面白いものではありません。
誰にも褒めてもらえないゲームの状態が続くので、やる気の維持には苦労します。

もしここで挫折してしまったら、プロジェクトは終了です。
その場合、たぶんレベル1として計画した「骨」が大きすぎると思うので、
小さくして再挑戦する方がいいかもしれません。

あるいは、作ってみたゲームシステムが面白くなくて、
これからの期待が持てなかったのかもしれません。
それならそれで、中断することは立派な判断ですし、必要なことだったはずです。
私もシステムだけ作ってみたら、
思ったより将来性が見いだせなくてボツにしたことがあります。

<レベル1のコツ>
・ゲームシステムはしっかり作っておいて、面白さの素質がどれだけありそうか知る。
・最初からエンディングまで最小限の「骨」を作り、
どの程度のデータや素材量が必要か把握する。
・モンスターやらアイテムやらのデータ量も最小限でOK。素材も仮の画像でOK。
ただし画像の『サイズ』だけは確定させておいた方がレベル2以降が楽。




【レベル2 使える労力を配分して肉付け】

レベル2では、使える労力を『配分』して肉付けを行っていきます。
レベル1で必要最低限の「骨」となる要素を作れたなら、
「どのくらいの量のデータや画像を追加・ブラッシュアップしなければならないか」
という感覚がおおよそ掴めている
はずです。

キャラの数やダンジョンの数、必要な画像、テキスト、
必要そうな敵の種類、あるいは戦いを面白くするための新しい技やアイテムなど、
具体的な数を書き出してみると、意外とたくさんのものが必要だと分かると思います。
そのリストを見るたび、「もしこの全てを一つずつめちゃめちゃ凝って作っていたら、
果たしてレベル1の量だけでも作れたか……」
とゾッとしてしまうのが私です。

たとえば、もしレベル1の時点で技のアニメーションにすごく凝ってしまったら、
「このクオリティで今後も行くとなると、技の数が増やしにくい」となってしまって、
ゲームを面白くするために必要だった「多くの新しい技」を作ることが
心理的に困難になってしまうかもしれません。

その結果、技を増やすことができず、
「アニメーションはすごいけどバトルの選択肢が少なくてつまらない……」
なんて結末になると悲しいことになるので、とにかくレベル1で
「何がどのくらいの量、必要になるか」を先に知ることはとても大切だと考えています。

そしてまた、レベル1で作った量に対して、
「残りの使える労力」を配分して全体をブラッシュアップしようとすると、
「意外と大したものが作れない」
と思われるかもしれません。

たとえばキャラのドット絵だけでも、レベル1で必要になりそうな量を
全てオリジナルで作るとなると、10体か20体か分かりませんが、
きっと非常に大変でしょう。
自作するか、できあいの画像を使うか……それを考え直せるタイミングが、レベル2の開始時です。

ゲームを完成させようと思った場合、
「あなたが満足できるほど一つ一つのものに凝る」
というのは、実はとても難しいことです。

びっくりするほどの短編でさえ、全ての箇所を凝るときっとヘトヘトになるでしょう。

なのでたぶん、ある程度は「質」の密度を
薄く引き延ばすことが求められる場面もあるはずです。
「最初で敵のギミックのネタを使いすぎると後半が何もなくなるから、
ネタを温存して後半に回そう」、
「キャラ絵1枚1枚に気合いを入れすぎると描ききれないから、量産できる質で描こう」
といった具合です。

そういった「労力」や「やる気」の配分に失敗するとやっぱり挫折するので、
慣れないうちはレベル2もきっと難しいことでしょう。
それでも、何も情報がない状態でひたすら前から順番に作っていくよりは、
レベル1を作ってある方が遙かに見通しがよくなります。

特に、レベル1で作ってある「骨」のおかげで、
「レベル2が今どのくらいまで進んでいるか分かる」というのは非常に大きな利点です。
いつ終わるか分からない作業というのはたいていとても辛いものですが、
「ゴールまであと何割か」が目に見えて分かると、人はより長く耐えることができます。
さらにいくらか進めば、作業項目を処理する速度もだいたい把握できるので、
「あと何日で終わるか」がおおよそ計算できるのもこのやり方の強みです。

そしてそういった苦労の末、何とかこのレベル2の
肉付け・ブラッシュアップまで完了させられれば……
「スタートから終わりまで遊べる、満足感が程々に高いであろう短編」が完成です!

この段階で、あなたは「どのくらいのクオリティのものを
どのくらいのペースで作れるか」が
分かってきているはずですし、何より今後はいつゲームをリリースしても
それなりに許される状態になっていることでしょう。
仮とは言えゴールを迎えられたことで、だいぶ安心感が出てくると思います。

ここまでたどり着ければ、ひとまず第一の完成です。

<レベル2のコツ>
・使える労力を配分して、レベル1の「骨」にデータ追加や
画像付けやバランス調整など肉付け。
・入れることで新たな作業が増える「骨」となる部分は、なるべく増やさない。
・「最初から最後まで遊べる短編ゲーム」としてリリース可能な状態に
するのがレベル2のゴール。




【レベル3 気力や時間の限り増やしたり磨いたりする】

レベル2が終わった時点でまだ余裕があれば、これまでと同じ要領で
レベル3のデータ追加やブラッシュアップの段階に入っていきます。
「入れて面白くなると思う順」に、「骨」となる部分も含めて追加していきましょう。

追加のゲームシステムを入れるもよし、物語に関わる仲間を増やすもよし、
追加ストーリーやダンジョンを入れるも良し、クリア後の何かを作ったりするもよし、
より面白くなるよう調整するもよし、エクストラメニューなどを作るもよしです。
個人的には、このレベル3の工程が一番ゲームが面白くなる部分だと感じています。

ただし、なるべく
いつでも「完成!」と言えるような状態を維持しつつ作業していくのがコツです。
風呂敷は一気に広げるのでなく、少しずつ、少しずつです。

新たな仲間キャラクターを物語に増やしたりした場合など、場合によっては
整合を取るためにエンディングやオープニングの修正も必要になるでしょう。
そうやって一定量を増やすたびに全体の整合性の修正も行うと、
不安になりくくて済みます。

また、レベル2の状態ができあがっていると、
レベル3の作業にはかなり余裕と安心が生まれます。
「完成するか分からない状態で続ける」よりも作りやすいし、
気力が長持ちすると感じるかもしれません。
レベル1~3の中だと、レベル3が一番楽しいのではないかと個人的に思っています。

実は、「完成にたどり着けるか分からない」という『不安』は、そこにあるだけで
自分の体力や精神力をスリップダメージのように削っていきます。

(少なくとも私にとっては)

そういった意味でも、「ひとまずの完成」を早期に持ってきて、
「完成するか分からない不安」をさっさと倒してしまうのは、
ゲーム開発という長期戦においてとても効率的だと私は考えています。

そしてこのレベル3の作業を続けているうちに、いずれやる気が尽きてしまうか、
期限が近付いてきてしまうと思うので、そのタイミングが来たら、
そのときがおそらくあなたの作品のゴールになるでしょう。
そうなったら、あとは作りかけの部分の整合が取れるよう、
最終仕上げをやって完了です。

お疲れ様でした、いよいよプレイヤーの皆さんにゲームを届けるときがやってきます!


それと、この「レベル3」の作業は、リリース後に行うこともできます。
レベル2ができた時点で、「この先は評判がよかったら開発を続行してみよう」
といった判断でとりあえずリリースすることもできるので、
まだまだいくらか作り続ける事を宣言して公開するのも素敵なやり方でしょう。

そのやり方は、プレイヤーさんの興味を持続させられるので長く展開しやすく、
楽しく開発できるかもしれません。

<レベル3のコツ>
・気力や時間がある限り「骨」も含めたデータを追加していく。
・「完成!」と言える状態をなるべく常に維持できるよう、広げるのは少しずつ。
・このレベル3はリリース後にやってもOK!




【この方法の利点  ダメなら気軽に切り上げられる】

このやり方はレベル1の段階で、
「ゲームが面白くなりそうな期待があまり持てない」とか、
あるいは「レベル2の終わりまで気力が持たなさそうだ」と感じたなら、
その時点で気軽に開発を終了してしまえるのが一つの利点です。
一つ一つをブラッシュアップしていない段階なので、たぶんまだ損切りができます。

もしこれがきれいなグラフィックや、オリジナルの素材などを色々用意した後だと、
開発を中断するのがとても辛くなってしまうでしょう。

その場合、さらにまずいのが、

「ゲーム部分はつまらないけど、絵を色々作っちゃったから心理的にボツにできない」

となってズルズル作り続けてしまい、さらに時間が経った末に、

「ここまで時間をかけたのを開発中断したくない。
でも完成させてもつまらなさそうだし作る気力も出ない」


と続き、作りかけの作品を手放せないまま、そのまま創作家としても
フェードアウトしてしまう状況が発生する可能性があることです。
「ごめーんボツった!」とさらっと言うのが難しい、
ある意味で責任感の強い人においては、
これはそこまで珍しくない例のような気がしています。

「未来が不透明な間は、気軽に撤退できる状態のままで進める」
というこのやり方には、こういった危険を避ける効果もあると考えています。
見た目が全然面白くなさそうな状態のゲームであれば、
たぶん作者さん自身も含めて、開発を中断しても大きく悲しまずに済むでしょう。

そして同時に、その「なくなっても悲しまないもの」を作り続けなければならないのが、
このやり方におけるレベル1の一番辛いところ
でもあります。



【このやり方の注意点】

このやり方には、一つ注意があります。
実はこれ、ちょっと上級者向けの方法だと私は考えています。

というのもこのやり方には問題があって、それは
「あまり面白くないやり方かもしれない」ということです。

特に、さっきも言っていますが
「レベル1」の「骨だけを作る段階」って面白くないことが多いんですよ!
「見た目もしょっぱい状態で最低限の挙動と最低限のデータを作り続ける」というのは、
つまり「誰にも褒めてもらえない状態のモノを作り続ける」ということなので、
「最終的には面白くできるから、今は面白くなくても大丈夫だ」
と信じられるほどの経験から湧き出る自信がないと実行が難しいことだと考えています。


そして「レベル2」に入れても、
全体を肉付けするために労力を「配分」しなければならない都合上、
完遂させるにはあなたの想像する「理想形」をいくらか妥協することになる
ケースが多いと思います。
「自作画像にしたかったけど、既存画像にしなきゃ作りきれない」
などといった事情です。
そういう状況もまた、ときにあなたの気力を奪う原因になるでしょう。
「ゲームを完成させるには、時に目標を下げることも必要だ」という経験則を
持っていなかった場合、理想と現実のギャップにショックを受けるかもしれません。

そんなわけで、この完成させ方はあくまで、
「あんまり面白くないかもしれないけど完成させられる確率は上がる」
という、一定以上経験者向けの方法
だと私は感じています。
それは、心に留めておいてください。



ということで、ゲームを完成させるための確率が高いと考えている
私の現時点のやり方を紹介させていただきましたが、いかがだったでしょうか。

自分も似たやり方だという人も多くいらっしゃるでしょうし、
他にも探せば色んなやり方があると思います。

何度も言いますが、この作り方は、
「ゲームの開発が終わるのは『全ての項目を作り終えたとき』でなく、
『自分のモチベーションが尽きたとき』である」

という考えに基づいています。

「作りたいものを全て作り終えられる」ことを前提とせず、
「一定ラインを越えたらいつでも終われるようにする」のがこの方法のコツです。

言い換えると、単純に
「完成のライン」を最後じゃなくてもっと前に持ってくるだけなんですが、
やり方をアレンジする場合も、そこさえ意識していれば
完成させるための効用はほぼ変わらないと思います。



<次回予告  初心者向けのやり方は?>

私がゲーム開発初心者の頃だったら、この方法を使っても成功しにくいと思っています。
「仮に完成させられたとしても、よい評価をもらえる確率が低そう」
という意味でもです。

「一つ一つのものを面白く作るコツ」さえ
よく知らない状態でいきなり大きなものに挑むと、
10個作ったもののうち、1~2個くらいしか面白く作れないかもしれません。
そうなった場合、たとえ完成しても辛い結末しか待っていないのは明白です。

よって初めてのうちは「大きなものを完成させる」ことよりも、別の方法で
多く経験値を得ることを優先した方がたぶん効率的
だと私は考えています。

ということで、来週の記事は、私が初めての人におすすめしたいと思っている、
「今回よりも楽しくて、得るものが多いゲームの作り方」
についてご紹介したいと思います。

先に予告しておくと、そのやり方とはほぼ
「私が完成させられなかったやり方」なのですが、
その中には短い時間で経験値を大量に獲得するためのコツがいくつかありました。

最終的に完成させられなかった方法であるにも関わらず、
そのやり方には一体どういった利点があったのか?

次回はそのやり方と、それについての私見をお話ししていきます。
よければぜひ、お楽しみに!

→ 次回「楽しくて学べるゲームの作り方」
 2017-05-06 (土) web拍手 by FC2 カテゴリ: 開発日誌




2017-04-22 (土)   初RPG制作で意図したこと2
【初RPG制作で意図したこと 後半】

先週の記事(前半)から続けての内容です!
今回は、12年前の2005年にリリースしたRPG『シルフェイド幻想譚』を振り返り、
当時考えていたであろう「意図」について引き続き整理していきます。

前回は大きな意図について述べましたが、今回は細々としたものが多めです。
『シルフェイド幻想譚』を私好みのゲームにするにあたって、
一体どういう意図があったのか、よければぜひご覧ください。

今回の話題一覧↓
【判断するために必要な情報をいくらかオープンにした】
【全ての報酬は十分以上に&失敗しても何かを得られるようにした】
【フィールドでは1画面あたり1つくらいの施設を用意した】
【内部マップのサイズをできるだけ最小限にし、
反応のない装飾品は置かないようにした】
【購入可能な武装のレパートリーを最初の街で全部見せるようにした】
【パズルが解けない人もいるので飛ばせるようにした】
【初めてクリア評価を入れた】




【判断するために必要な情報をいくらかオープンにした】

『シルフェイド幻想譚』では、従来の普通のRPGを遊んでいるときに
「この情報がないと判断しようがないんだけど!」と私が感じていた部分に、
「判断するための情報」をいろいろ明示するように意識しました。

<バトル時の相談>


たとえば『シルフェイド幻想譚』では、バトル中でも「相談」コマンドが使用できます。
使ってもターンは進みません。この「相談」で何が聞けるかというと、主に、
「その戦闘から逃げられるか、逃げられるなら逃走率はどのくらいか」
「敵と自分との強さの差はどのくらいか」
の二点です。

これは、
「相手が強いなら逃走することを判断に入れて欲しかった」
という自分の要望を入れたかったのと、
「プレイヤーさんは強い相手だったら逃げようと思っているかもしれないのに、
そもそも相手が強いか見た目だけじゃ分からない」

という問題を回避する二つの目的があったからだと記憶してます。

特に後者の「強さ」に関しては、当時の私はだいぶ気にしていまして、
「RPG慣れしてしまった人ほど見た目から敵の強さを
判断しなくなってしまうのではないか」

という考えを持っていました。

たとえば、何かのRPGの中盤で出てくる「ワイバーン」と、
後半に出てくる「ファイアドラゴン」がいるとしたら、
仮に似た大きさ・見た目だったとしても
バランスの都合で後半で出る「ファイアドラゴン」の方が普通は強いはずです。

それどころか、バランス調整の問題で「後半で出てくるネズミみたいな敵」が
前述の「ワイバーン」より強かったりする場合さえありますから、
相手の強さを誤解のない手段で伝えるのは重要な課題だと考えていました。

特に本作は最初から好きな場所に移動できてしまうゲームなので、
いきなり極端に敵が強いエリアに踏み込んでしまう可能性もあります。
そういった可能性もある中、戦闘において実際にぶつかる前の「相談」ができれば、
プレイヤーさんもより安心して偵察ができるはずです。

何より、「おおまかな逃走成功率」が事前に分かれば、
「逃げにくいのでいちかばちか戦う」や、
「必ず逃げられるからギリギリまで戦ってみる」
など、新たな判断が生まれます。
そういう点も、面白みが生まれていいんじゃないかと考えていた部分でした。

さらに『シルフェイド幻想譚』では、道をふさがれていたり、
明らかに退路がない場面以外ではボスからでも逃走することができます

「相談」コマンドで逃走できる可能性を示したのは、
従来のRPG的な常識に従ってしまって、
「ボス戦に入ってしまったときに、不利な状況にもかかわらず死ぬまで戦ってほしくはなかった」
からというのもありました。

「逃走コマンドって、強い相手にこそ一番使いたいコマンドのはずですよね! 
使えるときは逃走成功率の大小を教えますのでぜひ判断の上で『逃走』してください!」

という主張が、当時の自分のどこかにあったのかもしれません。
そして、今でも割とそう思っています。
逃げることが重要な判断の一つになるRPG、好きですよ。



【全ての報酬は十分以上に&失敗しても何かを得られるようにした】

イベントの報酬をどういう形にするか、開発当時はだいぶ悩んでいました。

『シルフェイド幻想譚』は「物語に興味がない人でも楽しく考えて遊べるように」
という前提で作っていたので、完全にストーリーを取っ払っても楽しめるよう、
「全てのイベント報酬は必ず一定以上のゲーム的利益に繋がる」ように意識していました。

ここでの「ゲーム的な利益」とは、
「一定以上のお金や、装備・仲間などの意味のある強化」や
「クリアするために必須のフラグ(最終ダンジョンへのカギなど)」
を指します。
時間制限があるゲームなのでイベントを無視するケースも増えると思いますが、
かけた時間以上に必ずいいものがもらえるならば、
きっといくらかは挑戦してくれるでしょう。

というわけで、もらっても仕方がない3桁くらいの金額の金銭報酬や、
報酬が感謝の言葉だけというケースは、基本的に
ほとんど入れてなかったと思います(忘れてるだけかもしれませんが)。

そしてもう一つ注意したこととして、労力さえつぎ込めば、
たとえイベントに失敗しても何かしらの報酬が得られる
ように意識しました。
たとえば、以下のような具合です。


●とある村が襲撃されるのをうまく防衛できればクリアフラグがその場で手に入るし、
仮に失敗しても仲間が一人増える。

●敵の砦を攻略したとき、ゲーム開始から時間が経ちすぎていたら
仲間が加入する可能性がなくなる代わりに大金を得られる。



イベントに失敗ルートがある場合は、ほぼ必ず
こういった別報酬が手に入るようにしていたので、
「失敗ルートでも徒労に終わらないようにしたい」
という意識が強くあったように思います。

ただ全てに配慮はしきれていなくて、一部のイベントは
リソースの投入タイミングが遅れると何ももらえなくなってしまいます。
(病気の姉弟など)
こういう場合は、リソースを投入した分だけは
何か見返りをくれる
ようにすればよかったですね。

何はともあれ、
「失敗した場合に何も得られなくて
ゲーム内時間を損失するだけなら、やらない方が効率的」

という発想がプレイヤーさんの意識に根付いてしまったら、
それが一番作り手からすると面白くない結果なので、
なるべくそういった状況を避けられるように、
チャレンジをうながすような造りにしようと心がけていました。

「挑戦してくれたこと自体に報酬をあげたい」という考えは、
12年経った今でも特に大事にしていきたい「意図」です。



【フィールドでは1画面あたり1つくらいの施設を用意した】

最後の調整段階に入ったとき、フィールドマップがスカスカに感じたので、
できるかぎり「1画面あたり1つ」くらいの施設を置くつもりの意図で、
何もなかった場所に施設をいろいろ追加したり、
後半に作った施設の配置を変えたりしていました。

<赤い点が予定通り作った施設、青い点が後で追加したり移動させた施設やイベント地点>
青い点が、赤い点の隙間や、何もなかった場所を埋めるように配置されています。



上の図の「青い点」が後半に追加した部分や場所に迷っていた部分です。
その中には、埋めるために無理矢理ネタをひねり出したものもあります。

たとえば、「負けてもゲームオーバーにならない強めの敵が守る宝物庫ダンジョン」や、
「封印された扉を開けるカギを売っている人の家」
「滅ぼされた何もない家」といった具合です。
特に「負けてもゲームオーバーにならない強めの敵が出る宝物庫」に関しては、
「いつでも戦える、今は倒せない強い敵」に一度でもぶつかってもらえば、
それを目標にして勢いよくゲームを進めてもらえるのではないか、
と考えていたようで、割と序盤のエリア付近にも設置しました。

フィールド上の施設やイベント地点を
「1画面あたりおおよそ1つ」という密度にしたのは、
当時の言い分だと単純に「スカスカだとつまらない」という理由になるのですが、
今の自分が言い換えるなら、「フィールドを探索すればだいたい一定のペースで
何かが見つかるという期待を感じて欲しかった」
からだったような気もしています。

「労力を投入したが何も得られず徒労に終わる」というのが
ゲーム内で一番面白くない
ことで、
それが続くと以後、『プレイヤーさんが積極的に調べてくれたり、
期待感を持ってくれなくなってしまう』可能性が高くなってしまいます。

そんなわけでマップ探索に関しても、とにかく
「一定以上動けば定期的に『新しい場所』」が見つかる」ように意識していました。
そして、もし何もないように見える場所があるとすれば、
「そこには隠された何かがある」という感じで、秘密のありかをほのめかしています。
また、最後までどうしても空白地帯ができてしまう場所には「立て札」を置いて
プレイヤーさんを不安にさせないようにしました。

今になって思うと、私にとって「どちらにいけばいいか心配になる距離」が
だいたい1画面分くらいだったのかもしれませんね。狭い!



【内部マップのサイズをできるだけ最小限にし、
反応のない装飾品は置かないようにした】


フィールドマップには「約1画面あたり1つ」という密度で
施設やイベントを置くようにした一方、
街での用事はなるべく最短で終わるようにすべく、
「街のサイズは最小限」にするよう心がけました。

『シルフェイド幻想譚』の街はおおよそ3~5画面程度の大きさで、
階層を移動しない限りは画面切り換えもありません。
人の家もたったの6x6マスだったりします。

たとえば、以下は最初の街のマップです。他の街も、ほぼこれに近い大きさです。

<最初のサーショの街 全体図>


基本的にマップは大きければ大きいほど作るのが大変になるので、開発側としても、
「目的を果たす最低限の大きさなら自分も楽ができるだろう!」
と考えていたことは確かです。

ですがそれ以上に、
「移動してもゲーム内時間が進まない場所での『広さ』はゲーム的に意味がないので、
それなら無駄なリアル移動時間を使わせない方が親切だろう」
という考えもありました。
つまり、「入口から宿屋まで3秒! よし、効率的!」という発想で
街を見ていたのです。

また、マップサイズを最小限にすると同時に、
「家の装飾品は『調べたときに情報を得られるもの』だけを置く」ように心がけました。
タンスやクローゼットを置く場合は、調べたときに必ず反応があるようにしたのです。

たとえば病気の姉弟がいる家でタンスを調べたときには「質素な服が入っている」
といった情報を出したりして、住人の生活や雰囲気を伝えることができるので、
この辺りは物語やキャラ好きの人に楽しんでもらえる部分に
なるだろうと考えていました。

逆に、「調べても反応がないもの」はとにかく置きませんでした。
これも同様に「物語やキャラ好きの人」に対しての配慮で、
「調べても何も出ないことがあって徒労に感じる」ことを徹底的に避けたかった
からです。

何を調べても必ず反応があるなら、住人たちの背景を知りたいプレイヤーさんであれば
どんどん細かいところまで探してもらえるかもしれません。
フィールドマップでもそうでしたが、内部のマップ探索においても、
「かけた労力が無駄にならず、必ず何らかの反応が与えられる」
形にすることを意識していました。



【購入可能な武装のレパートリーを最初の街で全部見せるようにした】

皆さんには、次のような経験がないでしょうか。
たとえばお金を貯めて武器を買ったら、すぐ行ける場所で
次のグレードの武器が販売されていてガッカリしてしまったり、
あるいはそうなることを心配していつ装備の換装をすればいいか
分からなくなったりしたことなど、一度くらいあるかもしれません。

「これから先にもっとコストパフォーマンスのいい武装や、
より強い武器が出たらどうしよう、ここで買っていいのかな?」

という発想でお金を温存するハメになると、結局お金が使えなかったり、
仮に買ってもすぐ新製品が出たりして損した気分になる
のではないかな、
と私は考えました。
システム的なところでゲームへの不安を感じさせるのは、
なんとなくもったいない気がします。

もちろん、そういった「将来どうなるか分からない中での対応方法」も
ゲームのうまさだよと言われればそうなのですけれども、
今どきは育成スキルツリーも初期状態で全て公開されてることが多い時代ですし、
先々の強化方針を計画してもらうためにも、「強化のコストと強くなれる度合い」
くらいは最初に見せた方がフェア
な気がします。

そこでゲーム的に安心できる形にするために、『シルフェイド幻想譚』では、
『買える武装のレパートリーは全て最初の街に並べる』ことにしました。
こうしておけば、「どの段階で何の装備の換装を行うのが最適か」という点について、
おのおの自分のペースで考えてもらえるかもしれません。

何より、「強い装備を買うにはお金が全然足りない」ことを最初に示せば、
以後、お金を手に入れられるチャンスに敏感になってくれる可能性が上がるでしょう。
そうやって「足りない感」を感じてもらうのも、ゲームのやる気に繋がる大事な点
だと私は考えています。
「あと1000シルバ貯めれば●●が買える!」と思っている状況で
そのゲームを二度とやらなくなるプレイヤーさんって、
あまりいらっしゃらないと思いますしね。

なお、最初の街には全ての購入可能武装が売っていますが、
次の街ではなんと全ての基本的な理力(魔法)が購入可能になっています。
店で主人公を強化できる機会は、最初と次の街でほぼ完結しているので、
「どういった成長ができるか」という情報は、かなり早期に提供を済ませています。
あとは、お金と必要パラメータ次第です。
(といいつつ、隠し魔法ショップも存在していますが)



【パズルが解けない人もいるので飛ばせるようにした】

『シルフェイド幻想譚』には一カ所だけパズルを解いて突破する場所があります。

といってもRPGのパズル部分は、解けない人や、
そもそもやりたくない人もいるだろうなと思ったので、
パズル自体は入れはしたものの、同時に飛ばせる配慮も入れました。

具体的には、「パズルに苦戦していると判断できる状態」になったら、
アドバイザーが「ゲーム内時間」を消費して突破する手段を提案
してくれます。
それを採用した場合、時間を使って壁を破り、パズルを無視することができます。

これは『シルフェイド幻想譚』が時間の概念を持つRPGだからできたことですが、
普通のRPGでも「お金を使えばパズルを無視できる」
という感じにしてもいいかもしれません。



「苦手なことを無視できるか、別リソースを消費したり別の手段で通過できる」
という配慮は、多くの人に遊んでもらいたいゲームを目指すならば
大事な点かもしれないと今は思っています。

特に『シルフェイド幻想譚』は、「時間制限付きのRPG」という
ただでさえ人を選びそうな内容ですから、変なところで詰まったりしないようにと、
なおさら注意しようと思っていたのかもしれません。

何はともあれ、人によってはずっと攻略できなさそうな課題は、
無視できるようにするか、
他の課題で補えるようにすると親切そうです。
……といいつつ、クリアできるか怪しい最難関ミッションとか、
やっぱり一個くらい入れちゃうんですけどね!



【初めてクリア評価を入れた】

私が「クリア評価」を初めて導入したのは、この『シルフェイド幻想譚』からでした。

これは「リプレイ性を高くするため」と、「どのくらいのものを見たか」
プレイ後に少しでも把握できるようにする目的です。
「クリアにかかった日数」や、「強い敵とどれだけ戦ったか」、
「仲間にできるようになったキャラの数」、
「人々を救った度合い」などが評価されます。

詳細な内容は、旅を共にしたアドバイザーキャラクターが主にコメントしてくれます。
プレイの傾向をキャラクターが評価してくれるとちょっと嬉しくなるだろう、
と考えたからです。
というか私がそういうのを求めていますので、
皆さまにもどんどん採用していただきたいですね!

また、ここで「他のプレイ方法もあるんだよ」というのを
示すきっかけにもなりますから、
リプレイ性の高いゲームにはこういった「クリア評価」は相性がいい要素だと感じます。
他にも、こういう評価画面で「知らない間に失敗した点」や、
「まだ見てない点」についてのヒントも出せるかもしれません。
「実はX日以内にXXすると●●できるんだよ」とか、
「仲間は最大で●人いるよ」といった情報です。

それと、もう一つ意識した点として、クリア評価のコメント内容は、
評価が仮に最低ランクでも、「初めてならこれが普通です!」
「今度やったらもっとうまくいける!」と言ってくれるようにしたり、
他にも戦闘評価が低かったら
「強すぎる相手と戦うのは避けて慎重に戦ったんだね」という具合に、
なるべく遊ぶ人がションボリしない、前向きな言い方にすることを心がけていました。
といっても初めてだったので、今と比べればやや雑な感じはあります。
この技術は、これからもどんどん磨いていきたいと考えています。


そして本作のクリア評価、実は確か
全てSランクのパーフェクト評価にすることはできません
全部を最高評価にしようとしても、どれかが一段階以上抜けるようになっています。

例えば、最高評価の日数で急いで進むと、
人々を救う評価が最大にならない、といった具合です。
これは確か、「完璧な答えはないよ」と示す意図でこうしていた気がします。

これはこれでシブくて、今でも個人的に好きな発想だとは思うのですが、
開発経験を重ねた今となっては、そもそも「A」~「C」ランクのような「優劣」でなく、
「早い旅」「慎重な旅」などといった「傾向」を評価する形の方が
よかったかもしれない、と思うようになっています。

たとえば「最低限しか戦わずにクリア!」も偉大な挑戦のはずですし、
悪いことができるなゲームなら「邪悪プレイ」も
試してもらえると私にとって嬉しいはずなので、
善人プレイだから「優れている」という評価を示して
そのコースばかり遊んでもらうのは、
果たして開発側にとってお得なことなんだろうか? と感じるところもあるのです。

なので、最終的に「色々試してもらうこと」を目的とするなら、
「優劣」でなく、「傾向」評価の方が合っていた
のかもしれません。
たとえばクリアにかかった「日数」の評価なら、A~Cというランクを出すのでなく、
「超特急!」「慎重な旅!」「バランス!」という表現にするといった具合です。

一方でシューティングゲームなど、「うまくなってもらうこと」を
最終的な目的とするゲームの場合は、A~Cランクのような
「優劣」の方が望ましい
のかなと思います。

より高みを目指して欲しいところは「優劣」評価で、
色々試して欲しいところは「傾向」評価にしよう、という考え方は、
全方位シューティングゲーム『シルフドラグーンゼロ』あたりに
よく反映されていたと思います。
確か「スコア」や「強化のケチり具合」は「優劣」の評価として
A~Cなどランクが付けられるのですが、
「多く使った機体」や「好みの武装」に対しては
「傾向」についての感想コメントがあるだけで、
「優劣」のランクは付かないようになっているのです。


評価の仕方も、いま振り返ってみると色々と考えさせられるところがあります。
プレイヤーさんも開発者側も、お互いが幸せになれるような
よりよい評価手段を模索していきたいです。



ということで、以上、『初RPG制作で意図したこと』、後編でした!

いま『シルフェイド幻想譚』に対して思い出せる「意図」はこんな感じとなります、
いかがだったでしょうか。後半はやや地味だったかもしれませんね。

ここまでの前編・後編の内容をざっくりまとめると、
主な意図は以下の四種類くらいに整理できそうです。

●キツくはしたくなかったが緊張感を持たせたかった。
→ 比較的余裕のある時間制限を設けたり、
死亡回数に余り気味な制限を持たせた。

●好みが分かれそうなところは、見たくない人は見ずに済むように、
やりたくない人はやらずに済むようにした。

→ オープニング削減や相談コマンドの搭載で、ストーリーやキャラに
興味がある人とそうでない人に両対応化した。
→ フィールド上の戦闘のエンカウント場所を限定した。
→ リソースを消費してパズルを飛ばせる配慮を入れた。

●不安に感じそうなところは不安を軽減させる工夫を入れた。
→ 戦闘時、判断するために必要な情報をいくらかオープンにした。
→ 買える装備のメニューを最初から全部見せるようにした。
→ 時間制限付きのゲームなので進行度の目安を見せるようにした。

●投入した労力そのものや、プレイ傾向を評価するようにした。
→ 内部マップでは反応のない装飾品は置かず、必ず何か反応があるようにした。
→ フィールドではできるかぎり1画面あたり1つくらいの施設を用意した。
→ クエストでは成功しても失敗しても程々以上の報酬を得られるようにした。
→ クリア評価を搭載し、どんなプレイでもなるべく前向きな表現でコメントした。


締めるところはキュッと締めて、ゆるくすべきところはゆるくして、
かつ安心して遊んでもらいつつ、チャレンジにはしっかり見返りを用意する。
そうまとめてみると、本当にどれも当たり前の話かもしれません。
ですがそういった当たり前のことをするのが難しいのもまた、ゲーム開発です。

『シルフェイド幻想譚』を作った当時の私は、今よりはるかに未熟でありながら、
今でも使える重要な考え方もいくつか持っていた気がします。
そしてまた、その中には今の自分でさえたまに忘れがちなことも含まれています。

ゲーム開発における「意図」は、良いゲームを再現するための大切な武器です。
次のゲームでも、これらの「意図」が使えそうな部分があれば
忘れずに使っていきたいですね。





以下は前編の記事に対する気になった拍手コメントです。
皆さまの拍手コメント、いつも本当にありがとうございます!


>【『シルフェイド幻想譚』では、「システム上、2人以上の仲間を同時に  .
>迎え入れることができない」という制限】に対し、仲間キャラクターの   .
>一部に、それぞれに特有で納得のいく理由づけがあって、当時とても  .
>感心させられた思い出があります。アルバートには             .
>「他の仲間キャラとは意思疏通が不可能で、戦闘時に支障が出るから」
>という至極当然な理由づけが。オーバは「トリオが嫌いだから」という、 .
>本人の性格的にも読み取れそうで単純明快な理由が。セタには     .
>「信用できる人間が主人公のみだから」という、ストーリー面でも     .
>重要で合点の行く理由がある点などですね。(中略) ところどころの  .
>状況説明に納得がいくのも、遊んでいて気持ちがよかったところです。 .


こういう観点のコメントは初めていただきました、ありがとうございます!
仲間の人数をオーバーしたときのメッセージはうまく思いつかなくて、
割と必死で考えていた気がします。

できれば『片道勇者』における「闇」のように、ゲームシステムに関わる部分には
もっとらしい世界観上の理由もしっかり付けたいなと考えているのですが、
全部は全部そうすることができないのでまだまだ力不足を感じます。

うまいこと説明できればゲームにも世界観にも入りやすくなるので、
これからもできる限り、システムとストーリーは
リンクさせていきたいなと願っています。
 2017-04-22 (土) web拍手 by FC2 カテゴリ: 開発日誌




2017-04-15 (土)   初RPG制作で意図したこと1
【初RPG制作で意図したこと 前半】

新作開発を進めるにあたって知見を整理しておこうと思い立ったので、
今回は12年前の2005年にリリースしたRPG『シルフェイド幻想譚』を振り返り、
当時考えていたであろう「意図」について整理してみることにしました。

当時は「何となくこうやった」としか説明できなかったことも、
今なら明文化して説明することができるようになっているはずです。

と思って書いていたら長くなったので、今回の記事は前半分の「前編」となります!
よければぜひ、ご覧ください。前編の話題は以下の通りです。

【『シルフェイド幻想譚』はどんな人をターゲットにしていたか】
【まず開始時のオープニングが長かったので、分けた】
【物語への「興味が薄い人」と「興味がある人」、両対応にしたかった】
【フィールドのエンカウント戦闘がストレスだったので場所を限定した】
【(余り気味だが)リソースに限度があることを示して緊張感を増した】
【どのくらいのペースで進めばいいか分からず不安になるので、
ペースメーカー的な存在を入れた】






【『シルフェイド幻想譚』はどんな人をターゲットにしていたか】

まず、『シルフェイド幻想譚』とは私が初めて作ったRPGです。
このゲームは、15日以内に世界を救うために天空島を冒険するRPGで、
移動したり休んだりするごとにゲーム内時間が経過していきます。
敵を含むメインキャラクターたちは、日数が経過するたびに
各々の目的のために島を移動したり、抱えている使命を進めていきます。
たとえば、あんまり放っておくと敵の側が伝説の武具を回収したりするのです。

このゲーム、当時は私が未熟であったがゆえに
「どういう層に向けて作るか」といったことを
ほとんど意識できていなかったため、ひとまず仮想ユーザは私であり、
「私の好み」を大いに反映したRPGとなっています。

このゲームで反映した「私の好み」、つまり「想定ターゲット」は、
おそらく以下の通りだと考えています。

<ターゲット>
・常に行動に判断を問われるようなゲームが好きな人
・多すぎるザコ戦はちょっと遠慮したいという人
・なるべくフェアなプレイ感で遊びたいと思ってる人
・ストーリーを押しつけられたくないと思ってる人
・ゲーム面の楽しみや最適化を重視する人
・リプレイできるRPGを楽しみたい人


もし似た感じのターゲットを想定されている開発者さまなら、
これからお話しする中にも何か使いやすい工夫があるかもしれません。



【まず開始時のオープニングが長かったので、分けた】

すでに遊ばれた方にしか分からない言い方になってしまいますが、
実は『シルフェイド幻想譚』のオープニングは今の分だけではなく、
元はもっと長いものでした。
「世界には目的のために動いている仲間がいるんだよ」ということを伝えるために、
他の仲間キャラの演出もオープニングに含めようと考えていたのです。

ただ、『シルフェイド幻想譚』は当初から「何度もリプレイする可能性があるゲーム」に
仕上げるつもりでした。そうなると何度も見るであろうオープニングが
長いと邪魔だよなあ、と思った末、私は、
「作りかけていた仲間キャラの演出をオープニングから分離」
することにしました。

分離した分のオープニングはどこへ行ったのかというと、
「街の人から聞ける話」という立ち位置に変え、
最初の街のイベントに移しています。その話は後でも述べています。

何はともあれ、
「オープニングで出るはずだった情報を、
プレイヤーが任意に見られる場所に移動させる」

ことで、「短いオープニングですぐゲームに入れるようにできる」というのは、
初めてRPGを作った自分からすると画期的な手段に思えました。

なにより『シルフェイド幻想譚』は
「ストーリーにあまり注目しない人」もターゲットです。
私も割とそっち寄りなんですが、そんな方々にとっては
長いオープニングは価値が低い時間です。
彼らはおそらく「必要最小限のゲーム的な情報だけ与えて始めさせてよ!」と
おっしゃると思います。というかそれがまさに私です。

そんなわけで、最終的にできあがったオープニングの
メッセージ量は以下の通りとなりました。
(ここでは1文=1メッセージウィンドウ分として計算するものとします)

「主人公の性別選択・名前指定・トーテムの選択」
15文 (プレイヤー自ら開ける詳細情報テキストを除く)

「シーン転換、ゲームに必要な情報の説明」
17文(15日以内に災いを見つけること・15回まで復活可能であることなど)

「依頼者の誠意が多少感じられるおまけの会話と、プレイヤーの意思確認」
選択肢によって5文か8文

「重要アイテム入手メッセージとトーテムの挨拶」
9文くらい


キャラメイク含め、最低限通過するテキストは約50文ほどで、
名前とトーテム(他RPGでいう「クラス」のような要素)をすばやく選択すれば、
おそらく1分くらいでオープニングが終わると思います。

そしてスタート地点から見える最初の街に入ると、すぐに
兵士が「大ニュース大ニュース!」と叫びながらぶつかってきて、
兵士詰め所に入っていきます。
一周目のプレイヤーさんなら、たぶんその人に話を聞いてみることでしょう。

そこで話をすると発生するイベントは1分くらい続く長いシーンだったと思いますが、
実はあれこそが、元「仲間紹介を目的としたオープニング部分」だったのです。



【物語への「興味が薄い人」と「興味がある人」、両対応にしたかった】

これも、先ほどの「オープニングを切った」という話に関連する内容です。

私を含む「ストーリーにあまり注目しない人」が
オープニングやデモシーンに出くわして困るのが、
「聞かなくてもゲームプレイそのものには
影響しない世界観説明などの内容がほとんどなのに、
『重要なゲーム的情報』がそのシーンに混ざっていることがある」
場合です。

たとえばめちゃめちゃ長い世界観説明の後に、最後にちらっと
「ここで別れよう、おまえは南の砦で竜のカギを探すんだ!」
と言うゲーム的指示が出ていた場合、うっかりデモシーンを飛ばしたり、
テキストを読み飛ばしたりしてしまうと次への行き先が分からなくなってしまいます。

このような場合、飛ばすとゲームプレイに支障が出てしまうので、
「ストーリーにあまり注目しない(がゲーム部分にだけは注目する)人」にとっても、
たとえ興味がなくても全部しっかり見ないといけません。
となると、中には少し苦痛に感じる人も出てくるかもしれません。
私自身でさえ、自分で作ったお話が万人に対して面白いとは考えていませんしね。

開発者の方や「ストーリーに興味がある人」からしたら
「けしからん! 物語もしっかり見なさい!(見せなさい!)」
と言われてしまいそうですが、
ストーリーに興味が持てない場面がしばしばある私にとっては、
ストーリーに興味がない人にも、興味がある人にも、両対応にした
「強制演出シーン」にできるのが望ましいなと思います。

ではシルフェイド幻想譚でどうやってその両対応を実現しようとしたかというと、
以下の手段を採用しました。

●先のオープニングのように、強制的に見る内容は
「ゲーム的指示」に絞ることを心がけた。

●「ストーリーやキャラクターに注目したい人」向けの配慮として、
「相談」コマンドを用意した。
→ 「相談」は今一緒にいる仲間やアドバイザーキャラとどこでも会話ができる機能で、
「場所」や「経過日数」に応じて会話の内容が変化します。

●世界観に興味がある人なら街のNPCキャラなどにも話しかけてくれるでしょうから、
その辺りでもある程度は欲を満たしてもらえる期待がありました。
切ったオープニングも、街のNPCキャラの方に入れたわけですしね。


これらの意図を言い換えると、以下のような感じになるでしょうか。

●キャラクターや物語に興味を持てない人に対しては、
「強制テキストにはゲーム的に必要な情報が主に出るんだよ」と
最初からアピールすることで、強制テキストだけは
以後もしっかり読んでもらうようにする。

●ストーリーやキャラに注目したい人のために、
自発的に見られる会話パートを用意する。

『シルフェイド幻想譚』ではこうすることで、両方のタイプのプレイヤーさんが
不満を感じにくい構成にしようと意図していました。
当時、自分のストーリーには自信がありませんでしたから、
「遊ばれる人にとって見るに堪えないものだったら、見なくても済むようにしよう」
という考えも強かったのかもしれません。いまだにストーリーには自信はありません。

ただ、『シルフェイド幻想譚』ではこういった両対応を意識していたものの、
私の他のゲームだとあまりうまくいってないこともあります。

たとえばマウスアクションゲーム『モノリスフィア』のストーリーの入れ方は、
個人的にはちょっと微妙な評価です。
「ゲーム開始時やステージ間に、たまに割と長めの会話パートが入る」
という形式なのですが、あれこそ強制テキストを短めにして、
任意のタイミングで実行できる『相談』コマンドを入れた方が
スマートだったような気がします。

なお、最近のゲームは次にこなせるミッションやクエストが
リストで確認できるようになっており、
強制演出シーンを飛ばしたり忘れても問題ない造りになっていることが多いはずです。

『シルフェイド幻想譚』は12年前のゲームなので
そのトレンドに乗ってはいませんでしたが、
一方で、クエストリストが存在しないことで「やらされている感」を
感じさせない造りになっていた可能性もある
ので、
そういうのがあった方がよかったのか、そうでなかったのかは今も分かりません。
これが長編だったら「クエストを忘れることによる不便さ」が上回るでしょうから、
まちがいなくクエストのリストを搭載したと思います。



【フィールドのエンカウント戦闘がストレスだったので場所を限定した】

これは私が一般のRPGをプレイしているときによく思っていたことなのですが、
単純なランダムエンカウント方式はストレスが溜まりやすい方式だと感じていました。
たぶん、特に予定も覚悟も期待もしてないのに
何の前触れもなく突然戦いが始まるというのが、
ほんのり理不尽に感じていたのかもしれません。

なのでフィールド上での戦闘もいっそのことなくしてしまおうかと考えたのですが、
フィールド上で手軽に野良の敵に戦いを挑めなかったり、力を手軽に試せなかったり、
通過にあたって能力不足を感じられる場所がないというのは
RPGとして面白くないかもしれないとも思います。

そこで、「力試しやレベルアップがすぐできる」、「戦わなくてもある程度進める」
の両方を成立させられる方式として、以下の仕組みを導入しました。それが、

「フィールドでは、『森』の中でしかランダムエンカウント戦闘が発生しない」

という方式です。
これなら移動したいだけの人は気楽に移動できますし、
戦いたい人は自ら戦いにおもむくことができます。

私が過去に見た、エンカウント場所が限定されているシステムが
採用されているゲームは『ポケットモンスター』で、このゲームでは
「草むら」に入らない限りはランダムエンカウント戦闘が
起きないようになっていました。

ポケットモンスターは、「すでにそのエリアのポケモンを回収済み」などの理由で
「戦う意味がない」場面が多いからこそのこの配慮だと思いますが、
普通のRPGでも戦いたくないときは多いので、これは素晴らしい方法だと考えています。
平均的なRPGで「プレイヤーがフィールドマップに出ている状況」というのは、
半分以上は「移動・探索」を主目的としている場合でしょうからね。
(残り半分が「戦闘」)

そしてまたこれを採用した結果、
「歩くだけでゲーム内時間を消費する」というシステムとあいまって、
「フィールド移動時はなるべく『森』部分を積極的に通って、
経験値を稼ぐ方が有利だと感じられる人が増えた」

というのが個人的に面白かったところです。
もちろん戦う価値がなくなれば森を通らなければいいので、面倒くささもありません。
「感じられる面白さ」だけを上げることができるということであれば、
この「限定された場所のランダムエンカウント」を採用しない手はありませんでした。

なおフィールドの後半では、部分的に「森」を通らざるを得ないところもあります。
これは「戦闘能力が低すぎる状態で先に進んでも大変なことになる」ので、
通行する心理的負担を大きくすることで、
他のところを先に回ってもらうことを推奨する意図でした。
ある程度強くなった状態であれば、あっさり倒せるくらいの敵しか出ませんけれどね。

また敵との戦闘に入っても、たしか空を飛ぶ敵や水中など悪条件での戦闘でない限りは
逃走成功率を100%にしていた気がします。敵と戦うのもだいたい自由なゲームです。



【(余り気味だが)リソースに限度があることを示して緊張感を増した】

『シルフェイド幻想譚』ではゲーム内時間に「15日間」という時間制限がある他、
命の数も予備が「15個」と制限されています。つまり、

「それなりに次の行動を考えて時間を節約しなければならないけれど、
むやみに突っ走って死にまくるのは損」


ということをゲームシステム側で示しています。
急ぎつつ慎重に進まねばならないということで、なかなかのジレンマです。

といっても実際のところ、このゲームは変な詰まり方をしなければ
ゲーム内時間10日もかからずにクリアできる上、
死亡回数が5回を超える人も割合的にはかなりの少数だと思われます。
つまり、リソースは実はだいぶ余り気味に設定されているのです。

これは「日数にふさわしい量のイベントを用意できなかったから」
というのもありますが、
もう一つ、「できればクリアはしてほしい」けれど「無思考になってほしくはなかった」
という私の要求を解決するために導入した方法でした。

この「無駄なことをしなければほぼ確実に突破できるくらいの制限時間」という、
最終難易度にはほとんど影響がなさそうな制限を付けるというのは、
「プレイヤーさんに全力で取り組んでもらう」目的においては非常に効果的な手段です。
シルフェイド幻想譚ではもっぱら「緊張感を持ってもらう」ための機能として、
これらのリソース制限を設定しています。

ただ、今振り返ってみると反省もあります。
あとどのくらいでゲームが終わるか分かりにくいので、
「前半は慎重に進んで、後半追い上げるぞ!」とか、
「後半で時間の余裕を持てるように前半は急ごう」
「時間があるからここで溜めよう」といった
全体的な戦略があまり持てない形式だったということです。

この点に関しては、次の項目で話している「ペースメーカー」的な存在を
用意することでなんとかカバーしようと試みていますが、
もう一歩欲しかったかもしれません。

もし次に同じような感じのゲームを作るなら、
「全体マップを最初に見せたり踏破率を出して、今どのくらいの探索ができているかを
もっと分かりやすくする」
といった配慮も入れればいいのかな、
と今になって思っています。
言い換えると、「現在の進行度が何%か明確に分かるようにしたかった」というのが反省点です。
そうすれば、プレイヤーさんももっと先を見据えた判断ができそうです。

また、時間制限や死亡数制限を設けるもう一つの問題として、
「ゲームが苦手な人がクリアできない」という可能性が出てしまいます。
この点は対策を諦めてしまったのですが、いちおうサポートの一つとして、
「たとえ時間切れでゲームオーバーになっても、稼いだ成長のためのポイントを
そのまま引き継いで再プレイができる」
ような配慮を行っています。

ですがそれ以前の問題として、フリーゲームRPGという立ち位置の場合、
ゲームが苦手で挫折する人の数よりも、モチベーションが尽きて
途中であきらめる人の方がはるかに多いだろう
、と私は考えていました。

その一方で、ゲーム内に制限時間があれば、
とりあえず1回時間切れするまでは遊んでくれる可能性が上がりそう
な気がします。
そういう期待も制限時間を設けた理由の一つで、
「実は少し厳しい世界の方が、プレイ時間の平均値が伸びるのでは」
と考えていたのです。

実際、私も時間制限があるゲームなら、
「とりあえず時間切れが来るまで挑んでみよう」と思うことが多いタイプです。
制限内でどこまでいけるか、楽しみになっているところもあるのかもしれません。

もちろんその場合、いざ時間切れでゲームオーバーになってしまったら、
次プレイへの期待がない限りはもう二度と遊ばない確率が高いと思います。
そこで『シルフェイド幻想譚』では、
「開始時にプレイスタイルを選べる『トーテム』の選択ができるようにした」のと、
前述した通りの「ゲームオーバーになっても一部経験値を引き継ぎできる仕組み」
搭載することで、2回目に挑んでもらえる確率を上げるような配慮を試みています。



【どのくらいのペースで進めばいいか分からず不安になるので、
ペースメーカー的な存在を入れた】


前述の通り、『シルフェイド幻想譚』にはゲーム内時間が設定されており、
フィールドやダンジョンで一歩あるくたび、
あるいは宿屋で寝るたびに時間が経過していきます。
そしてゲーム内で15日が経つと、世界が滅んでゲームオーバーになってしまいます。

時間制限があると緊張感を持たせられるのがよい一方で、こういうシステムの場合、
「どれくらいの速度で攻略せねばならないか分からなくなってしまう」ため、
プレイヤーさんは「本当に必要最低限のこと」だけこなして、
脇目もふらず必死でただひたすら前進していくプレイになってしまうかもしれません。

開発者である私も、プレイヤーさんには
「考えて効率的に行動して欲しい」と思っているものの、
さすがに「そこまで急かしたくはない」と考えていました。
何より、ゲームシステム側の問題でむやみに不安を与えるのは、
ゲームの形としてはあんまりだと思っています。

そこで、ある程度は時間の猶予があることを示すために、
「推奨する進行度」を表す「ある旅人」を日ごとにフィールド上を移動させて、
それを指標にしてもらうことにしました。

<マップで見える「焚き火」が、ペースメーカーたる旅人のいる場所です>


ゲーム内では、「この旅人と同じところまで来ていれば進行度的に大丈夫だよ」と
教えてくれるので、街のそばにその旅人がいる限りは、
比較的安心してその近くの探索や強化を行うことができるわけです。

ただ、当時はペースメーカーを付けたことをそこまで重要なことだと思っておらず、
後で評価されてようやく重要度に気付いた点だったので、
「ペース配分が分からないゲームシステムなら、ゲーム側からの
進行度の目安を示すのはとても重要なことかもしれない」

と考えさせられた一件になりました。

これは、リソースをどんどん消耗していく形式のRPGにも言えることかもしれません。
ダンジョン攻略時、今が何%くらいの進行状況なのか分からないことには、
進むべきか退くべきかの判断もできません。
(そしてたいていは情報不足から退くことになります)
アイテムを大量に持ち込めるゲームならいいですが、
慎重な配分が要求されるゲーム性なら、
「進行状況」を表す指標がどこかにあると、私も楽しく作戦を考えて楽しめそうです。
情報がない場合、とにかく継戦重視や安全重視のセッティングしかしなくなって、
プレイが一辺倒になってしまうことも多いですからね。


そして話が戻りますが、この「進行度の目安を示す」方法、
『シルフェイド幻想譚』では一つ失敗したところがありました。
実は旅人のいるマップで「相談」コマンドを使わないと、
「この人と同じペースで行けばいい」という情報を
得ることができないようになっていたのです。

「旅人が進行度の目安である」という情報は
今になってみると相当に重要な話だったので、
もっと積極的に、強制に近い形で教えてあげるようにすればよかったなと考えています。
物語やキャラに興味のない人は「相談」コマンドを使わない可能性があったので、
判断にも関わる重要なゲーム的情報は強制メッセージで出すべきだったのです。

こういった情報の重要度の見定めも、これからもっと
上手にやっていきたいなと考えさせられたところでした。



ということで以上、まだまだ続きますが、
ここまでが 『初RPG制作で意図したこと』 の前編です!
今回はここで一旦区切らせていただきます。

残り半分はこちらから!↓

【初RPG制作で意図したこと 後半へ】




← 今回のような記事を
 1冊の本にまとめたゲーム開発本、
 『ゲーム開発者の地図』、
 Kindleで好評発売中です!
 2017-04-15 (土) web拍手 by FC2 カテゴリ: 開発日誌




2017-04-01 (土)   エイプリル 片道続編?
【エイプリルヒストリー!】

ということで、2017年のエイプリルフールは新しいネタを用意できなかったので、
2007年から2016年までのエイプリルフール総集編となりました。

【2017年 エイプリルヒストリー ページへ】


いざ振り返ってみると、この10年間で色んな出来事がありました。
上のエイプリルページの最後にもチラっと書きましたが、
現在、『片道勇者』の続編ポジション
ゲームを構想&プロトタイプ作成中です。

まずはプロトタイプを作ってみてからですが、面白く作れそうな素質がありそうなら
リリースに向けて本格開発されると思います。よければほんのりご期待ください。



【片道勇者続編 目標】

前回と同じく、今回も『片道勇者続編』の目標をここに挙げておきます。

・「強制横スクロールローグライク」の部分は素直に踏襲。

・相変わらず「リプレイ性」を高くすることを目指す。

・「目標」の数を増やす=ストーリー要素を前回より多めにする?
または目標を後からどんどん増やせる仕組みにする。
『片道勇者』は後から足しやすい構造じゃなかったので。

・相変わらず画像素材が自作じゃなくても泣かない。

・スマートフォン展開も視野に入れた(ゲーム)デザインを目指す。

→ スマホ展開を考慮すると基本的な
ゲームシステムにもだいぶ変化が出そうです。
これについて考え中の案があるので、
プロトタイプにして試してみたいと考えています。

→ こちらはちょっとあきらめ気味です。ビジネス面でも開発面でも
簡単に両用を目指すものじゃなかった!

・バグが起きにくいような形式を強く意識して作る
→ この点に気をつけないと、『片道勇者プラス』みたいに
修正点が計700個以上になったりして後からデータやシステムを足すのが
激しくおっくうになるので、今度は気をつけたいです。
多少いじっても安心な形なら、安心して拡張できますしね。


ということで目標は前回のプラスアルファという感じですが、
『片道勇者開発記』の執筆によってローグライク開発のコツがだいぶ整理できたので、
それを活かしてもう一度、面白く遊べる
ローグライク作りに挑戦したいという欲があります。

『片道勇者』が一作目、『片道勇者プラス』が実質二作目なら、
この続編が「こなれた三作目」か「番外編」か「片道シリーズの悲しい末路」くらいの
立ち位置になるのではないでしょうか。

要求されるプレイスキルの方向性はそのままにするつもりですが、
システム自体は片道勇者からだいぶ変わると思います。
判断重視ゲー寄りだったり、次元倉庫でゴリ押しできたりする部分は
相変わらずにする予定ですので、その辺りはご安心ください。

ただ、『片道勇者』の正当続編を期待されている方からすると
「なんだこりゃ、別ものだ!」と言われるかもしれないので、
『片道勇者2』と名付けるのは避けるべきかどうしようか、と考えています。
→ ※ 2017/06/27追記 結局『片道勇者2』になりそうです!

もっとも、プロトタイプを作ってみて素質や将来性がないと思ったら
片道勇者のときと同様、遠慮なくボツにする勢いで挑みます。
まずは考え中のアイデアをひとまず動く形にしてみて、
どれだけ実用に耐えうるかチェックする段階から始めていきます。

もちろん今日はエイプリルフールですので、
ぜひその点も加味して以上のお話を聞いていただけますと幸いです。

それでは、今年度もよろしくお願いいたします!
 2017-04-01 (土) web拍手 by FC2 カテゴリ: 開発日誌




2017-03-25 (土)   遊ぶ人に技量アップしてほしい!
【ゲームプレイの技量をレベルアップしてもらいたい!】

今回は自分の「アクションゲーム」を作るときに考えている
「遊び手の技量アップを考慮したステージ作成」についてご紹介します。
というところから始まって、途中からRPGの技量アップの話をし始めています。
今回はちょっと長いです。

・アクション作り――最初に『技量のレベル分け』をしよう!
・この「技量順にステージを考える」方法、RPGでも使える?
・じゃあRPGでプレイが上手になってもらえる方法ってある?






【アクション作り――最初に『技量のレベル分け』をしよう!】

皆さんはアクションゲームを作るとなったら、どんな意図でステージを作るでしょうか。

「世界観やストーリーをドラマチックに展開できるステージ?」
いいですね、私はまだそこまでの配慮に自信がありません!

「最初はゆるゆるで、徐々に求められる精度が上がっていく感じ?」
はい、私もおおよそそうです。でも、その「精度」の部分をもう少しだけ細かく考えています。

私が「アクションゲームを作りたい!」と思ったとき、
そのゲームはだいたいの場合、変わった操作性のものです。
代表的なのは『モノリスフィア』と『プラネットハウル』で、
『モノリスフィア』はマウスを引っ張ってその反動で飛ぶ感じのゲーム、
『プラネットハウル』は変則操作の宇宙船を苦労して操るゲームとなっています。

そんな変な操作性のアクションゲームは
「ほとんどの人が初めてこの操作性に触れる」ことが容易に推測できたため、
「急に求められる技量が上がったりすると絶望的なことになるだろうな!」
と考えていました。
つまり、慎重に「要求技量」を上げていかないと、突然「壁」ができてしまう
だろうと考えました。
「いきなり難易度が跳ね上がりすぎて攻略できない場所」、
アクションゲームでたまにあります。

なので私はそういう事態をできるかぎり避けられるよう、
アクションゲームを作る際は基本的な挙動を楽しめるプロトタイプができた時点で、
最初に『要求技量のレベル分け』を行い、それを元にステージを作ることにしました。

たとえば、『モノリスフィア』ではおおよそ以下のような感じで、
プレイヤーさんへの『要求技量のレベル分け』を行っていました。


【モノリスフィア開発開始時に想定していた要求技量のレベル】

 レベル1 時間をかけてもいいので「おおよその方向」に飛べるようになる
 レベル2 時間をかけてもいいので「狙った一点」に飛べるようになる
 レベル3 敵の攻撃をタイミングよく回避できるようになる
 レベル4 すばやく何度も「おおよその狙った方向」に飛び続けられる
 レベル5 あいまいな精度で移動してそこそこタイミングよく攻撃ボタンを押せる
 レベル6 高い精度で移動してタイミングよく攻撃ボタンを押せる
 レベル7 敵の激しい攻撃を回避しながら精度の高い移動をしつつ攻撃ボタンを押せる
 レベル8 すばやく何度も「精密な方向」に飛び続けられる


私はまず最初にこれらのレベル分けを行った後、
ほぼこの要求技量の順番で技術を要求されるステージを作成したり、
あるいは最後の調整時に「ステージの登場順」を注意深く並び替えしたりしていました。

各技量のレベルに応じて、どんなステージを作ったか紹介していきます。



【レベル1 時間をかけてもいいので「おおよその方向」に飛べるようになる】
最初のステージ。敵もおらず、最も困難な課題でも
「細い道を移動する」くらいで、ダメージは受けない。
ただし挑戦したい意欲がある人向けに、
レベル4「素早くおおまかな操作」を求める課題も
ステージ内に置いていたりする。これはクリアしなくても先に進める。

【レベル2 時間をかけてもいいので「狙った一点」に飛べるようになる】
小型の蛇を倒すステージ。
同じルートを行き来する蛇に横から上手に当たることが求められる。
といっても、よほど隙だらけな行動をしない限り
蛇はこちらを積極的に攻撃しないのでゆっくり狙える。
(蛇は頭上に行くと上に飛び跳ねてくるが、
横から慎重にいって触れることで安全に倒せる)

【レベル3 敵の攻撃をタイミングよく回避できる】
ボス蛇を倒すステージ。
「敵の攻撃を誘発するいい位置にたどり着く」ための正確さに合わせて、
そこで敵の攻撃をタイミングよく回避できれば倒せる。回避方向はおおざっぱでよい。

【レベル4 すばやく何度も「おおよその狙った方向」に飛び続けられる】
レースで他のニワトリたちより早く先にゴールするステージ。
とにかくすばやい移動が求められ、一定以上コースをずれると速度が落ちて不利になる。
多少のミスや精度不足は許容されている、というか最下位でも先に進める。

【レベル5 あいまいな精度で移動してそこそこタイミングよく攻撃ボタンを押せる】
「移動しながら狙って右クリック」をして消火活動をするミッションや、
水バリアを張ったまま溶岩を抜ける場面や、固定目標に火の攻撃を行う場面。
それまで移動だけだったモノリスフィアにおいて、
「攻撃」という新しい概念に慣れる段階。

それらの本番として火や水の世界の「ボス戦」があり、
「敵が動くが、比較的大きいので狙いが甘くてもどこかに当たる」、
あるいは「相手が動くし攻撃もしてくるがヒットさせるまでの時間に多少の猶予がある」
といった状況の戦闘シーンが繰り広げられる。ボス戦辺りはレベル5と6の中間くらいかも。

【レベル6 高い精度で移動してタイミングよく攻撃ボタンを押せる】
草原の世界のボス戦や、それ以後の世界で炎の能力を使って敵を倒すシーン。
「ゆっくり来る攻撃や一定のリズムで動く敵」をかわしながら
「すばやい精度で敵本体に攻撃を当てること」が求められる。
そういったシーンで使う炎の攻撃は「正確な移動方向でないと当てることができず」、
「持続時間も短い」ので、「高い精度」と「タイミング」と
「ほどほどの回避力」の3つが同時に要求される。

【レベル7 敵の激しい攻撃を回避しながら精度の高い移動を行いつつ攻撃ボタンを押せる】
冥府の世界のボス戦や隠しボス戦など。激しい敵の攻撃をかいくぐりつつ、
敵の小さな弱点やすばやく動く小さな敵に高い精度で攻撃を当てなければならない。
すばやい移動と精度の両方が求められ、戦闘の最終段階にふさわしい忙しさになる。

【レベル8のステージ すばやく何度も「精密な方向」に飛び続けられる】
「(細い道で)15秒以内に壁に触れずに全ての黄色クリスタルを集める」など、
全くミスが許されない精密操作の課題。これはできない人もいると思ったので、
クリアしなくてもストーリーを進められるところにおまけミッションとして入れていた。



という感じでした。基本的には、
「より早く」「より精密に」「やることが多くなる」のが
順当な要求技能のレベルアップだと思います。

各レベルの要求技量の設定は、あくまで「『初めて見るステージ』のレベルが
この順番になるように並べる」
という目的で使っており、
たとえばレベル1が終わっただけなのに、レベル2~4を飛ばして
いきなりレベル5が「クリアに必須」になるステージを出したりはしません。

でも、「前のレベルの課題が後の方にも出てくる」ことはあって、たとえば
技量がレベル5まで行っても、
レベル1や3の高難易度版のステージを間に挟んだりします。
これは「飽きさせない」目的で、
「前と似ているけれどより難しい課題」に挑んでもらう意図です。

そしてもし「技量のレベルを飛ばして課題を出す」場合は、
できる限り「無視しても進めることができるサブミッション」として用意
します。
これを用意しておくのもたぶん重要で、そうすることで、
「順番通りに進めるのが退屈だと感じかけていた熟練者あるいは挑戦者の人」が
「あ、ゲームがうまい人や挑戦者にも配慮してくれてるな」と感じてくれると思うので、
そういった人達にも続けて遊んでもらえる確率が
上がるんじゃないかなと私は考えています。

RPGでも、「今すぐ攻略しなくてよい、現段階だと攻略が難しい課題」が
早い内にポンと置かれてると興奮しませんか?
それはたぶん、あなたが熟練者あるいは挑戦者の心を
お持ちだからではないかなと私は考えます。
どう工夫すれば無理矢理に突破できるか、それを考えるのは私も好きです。



【この「技量順にステージを考える」方法、RPGでも使える?】

この技量別にステージや課題を作っていくやり方は、
「RPG」などでもまったく同じ文法が使えると思います。

たとえばRPGの要求技量として、
「集中攻撃して危険な敵から1体ずつ減らせる」「敵を倒す効率的な順序を考えられる」
「補助魔法を使いこなせる」 「最小のコストで勝てる作戦が立てられる」

などの知識や技量を求められるように敵の出し方を工夫すれば、
似たような技能習得ができるかもしれません。

……が、今その考えに至ったとき、RPGのようなターン制バトルゲームで
「プレイが上手になったと感じた経験」が私にはあまりなく、
作る側である私としても、これまで遊び手にそういった訓練をさせることを
ほとんど意識していないことに気付きました。
「植物の敵には火炎属性が有効」などそういった「ゲームごとの知識」の面では
よく教えられましたが、「持ってる技を組み合わせて最適化をする」などの
「うまさ」の面で鍛えられた記憶があまりないのです。

たとえば「補助魔法は大人になってから」と知り合いに言われましたが、
まさに私もそうで、自分も年を取って複雑な計算ができるようになって、
ようやくまともに補助魔法を使うようになったのです。
(ただ、昔のゲームは効果説明があいまいだったり
説明がなかったりする場合も多かったので、
この件を議論するには時代の影響も考慮する必要がありそうです)

あなたはRPGを遊んでて「うまいこと補助魔法などを使えるようになったゲーム」を
思い出せるでしょうか?
「補助魔法を使わないと絶対死ぬ」ゲームもあると思いますが、
これ以外にも、あなたはいつ
「技をどう使えばもっともコストが安くダンジョン攻略できるか」
などを考えるようになったでしょうか?

こういうことを考えているうちに、私は
「RPGにおける最適な戦術を、果たしてゲーム内の教育だけで
身に付けてもらうことはできるのだろうか?」と考えるようになってきました。

もちろん、私が開発者の皆さまが作ってくださった工夫に全然気付かず、
自然と戦術を習得させられてきた可能性は十分にあると思います。
いいゲームほど、気付かないうちに自然と技術を習得させてしまいますからね。

ただ同時に、RPGの場合は以下のゲーム性になっているために
「自分の技量」の影響度があいまいになっているところも
あるのかなと感じるところもあります。


●勝てない理由が強化不足か戦術が甘いせいかの判断が付きづらい

→ 基本的にRPGはレベルアップや装備の更新をし続けることが求められるので、
ある段階で勝てないとき、「自分の戦術面での技量不足」に原因があるのか、
「そもそも強化不足でゲーム的にクリア不可能な状態なのか」の区別が
付かない場合があります。



要するに、「自分の戦術を改善するだけで勝てるようになるのかが分かりにくい」
という意味で、何が結果に影響したかがあいまいになっており、
RPGはアクションゲームよりも
「ゲームプレイが上手になるきっかけ」を得にくいのかもしれません。
そもそも日本のRPGは「戦術」と「蓄積(装備やレベル等)」の両面を足したのが
総合的な強さになるゲームなので、あいまいなのは当然なんですけれどもね。

アクションゲームはうまいやり方ができるようになるとステージを突破できたりして、
うまいプレイに対するご褒美が割と即座に分かりやすく出ますが、
RPGではテクニカルかつ効率的に戦っても反応が地味なケースも多い気がします。
それをどうにかする意図で、たまに戦闘ごとに評価をしてくれるRPGもあると思います。

個人的な希望としては、勝てたのが「自分の戦術でうまくやれたから」なのか、
「溜め込んだ力が想定より多かったから勝った」のかを教えてくれる

ゲームが好きですし、私もそういうゲームを作りたいと願っています。
ついでにプレイヤーさんのプレイ技量が上がってくれるとなおよしで、
初心者の人をゲーム中級者に引き上げられれば、
彼らが遊べるゲームはもっと増えるでしょう。

ちなみに『片道勇者』のようなローグライクRPGでは、自ら使おうとしない限りは
「溜め込んだリソース(倉庫の中身)」を使えないことが多いので、
プレイの結果のどの部分が「溜めたリソース」によるもので、
どの部分が「自分の技術」なのかが、
ほどほどに区別できるようになっている気がします。
こういう形にできると、より私好みに近付きます。



【じゃあRPGでプレイが上手になってもらえる方法ってある?】

RPGのプレイ技量を上げる方法には、どんなものがあるでしょうか。
自分の場合、どう上手になってきたかを思い出せない、というか
年齢にしたがって自然と身に付いたような感じもあって、
はっきり思い出せない状況です。

私が初めてまともに「補助魔法の使い方」を意識したのは
いつだったかなーと記憶をたどってみたところ、
ある変わったシステムのコンシューマRPGを遊んだときだったことを思い出しました。
そのゲームでは、
「レベルがストーリー進行に従ってのみ上がり、それ以外は一切成長しない」
というシステムだったのです。

そのゲームでは「ある時点でのプレイヤー側の強さ」には
どうがんばっても限度があるので、
ボスに勝てない理由があるとしたら確実に
「自分の戦術不足」だと知ることができました。
実質的にほとんどパズルゲームになっていたのかもしれませんが、
「自分のやり方に改善の余地がある」ことにさえ気付ければ改善は容易でした。

そういうことを考えると、RPGでの学習がうまくいってないのは、
「各要素を使ってもらうための圧力が弱い」、言い換えると
「ゲーム側からの強い動機を持たせてない」ケースが多いからかもしれません。
もっと言い換えると、「補助魔法を使わないとクリアできない難易度を
ぶつければいいんだね!」
と過激なことになっちゃうんですけれどもね。

問題が一つあるとしたら、そこまで要求技量を強制すると、
今度はゲームを投げられてしまう可能性が高くなることです。
「補助魔法を使ってようやく勝機が見えるゲーム」も
とあるゲーム会社さんのRPGには多かったりしますが、
一方で挫折する人を減らしたい気持ちもあるので、
ゴリ押しの余地は残したい気がします。
ひどく優柔不断に思われるかもしれませんが、それが私のRPG開発スタイルです。

そんなことを私が考えているとき、プレイヤーさんに
補助魔法の使い所を意識してもらうにあたって、
いいほのめかし方があるとコメントをいただきました。
その一例が、昔のRPG『ドラゴンクエスト3』に登場した
「じごくのハサミ」というカニ型の敵です。


<敵に自分たちと同じ技を使わせるテクニック>

ドラゴンクエスト3の「じごくのハサミ」は大量に出てきて、
敵全員を硬くする防御アップ魔法「スクルト」を使ってくる敵です。

この敵、戦闘開始時は打撃でも(たしか)少しダメージが通るのですが、
元の高い防御力に補助魔法「スクルト」重ねがけの効果が合わさると、
なんとほぼ全く物理攻撃のダメージが通らなくなってしまうのです!

この体験から私も「スクルト強いな! いつか自分も使ってやる!」と感じさせられ、
補助魔法の使い方がとても印象に残った敵だったので、
いま考えると、このやり方はすごくいいほのめかし方だったように思います。

敵が 『自分たちが使うのと同じ名前の魔法』 を効果的に使ってプレイヤーを困らせる

この方法は、「いつかあの魔法を覚えて自分も同じ戦法で有利に戦ってやる!」
と感じさせてくれる、とてもいい手段だと思います。
特にこれ、「うっかり敵専用の技を作ってしまわない」
のが重要なコツの一つかもしれません。
容量に余裕がある今の時代なら、
カニが使う防御アップ技をうっかり「硬化」なんて専用技に
したくなるところを、あえて
「主人公が覚えうる魔法と同じ『スクルト』」にするのです。

遊んでいるときは全然意識していなかったことですが、
こうやって振り返ってみると、うまいやり方が使われていたんだなあと感心します。
私のRPGは普段、そこまでいじわるな敵キャラが出てこないらしいので
歯ごたえがないと言われがちなのですが、
これからはプレイヤーさんを困らせる敵を出すついでに、
こういった技の使い方のほのめかし方も混ぜていきたいなと考えています。

そしてまた、私の気付いてないところでこうやって
たくさん教えられてきたのかもしれません。
そう思うと、己の未熟さを恥じるばかりです。



【補足 最終的にゴリ押しできてもいい】

この話の主題と矛盾するように思われるかもしれませんが、
私の作ったゲームが最終的に「うまい戦い方を覚えなくてもゴリ押しでクリアできる」
というプレイができたとしても、それはそれで全く問題ないと私は考えています。

子供時代の私のように、どうやってもうまい戦い方ができない人は必ず出るでしょうし、
そういう人達にも楽しんでもらえるよう
リソース(『片道勇者』なら「強い武器」など)をためて
クリアできるようになっている分には、それはそれですばらしいことだと思っています。
「技能の違う様々な人が、人それぞれにできることをしてクリアへたどり着ける」
というのは、ゲームのあり方として素敵なことだと思っていますから。

もちろん、「開発側として一番楽しんでもらいたいやり方」で挑むほど、
お得感や達成感が味わえるように作るのは大前提です。
それに加え、ゲーム開発者としては「ゲームがより上手になれるきっかけ」や、
「プレイヤー自身が気付いたと感じられるヒントの出し方」
があるなら
どんどん採用したいなと、次回作を控えた今になってますますそう思っています。
これからも「新しいルールのゲーム」を次々に作っていくにあたって、
その技量はきっとどれだけあっても足らないでしょうからね。



以上、プレイヤーさんの技量をレベルアップしてもらうきっかけを作るのは難しいなあ、
という話題でしたが、いかがだったでしょうか。

この記事で挙げた以外にも、「こういう形で俺は補助魔法の使い方を学べた!」とか、
「敵の各個撃破の重要性を学んだのはこのゲーム(のあの部分)だったなあ」
みたいな話があれば、情報をお寄せくださると幸いです。
ぜひ今後の開発の参考にさせていただきます。



それと、ビックリするかもしれませんが、私が初めてRPGを遊んだとき、戦闘では
「仲間キャラクターそれぞれで別々の敵を攻撃する」という遊び方をしていました。
つまり各個撃破を狙う「集中攻撃」を全然しなかったんですね。

なぜかというと、当時の私は「各グループの敵を一人以上で相手しないと、
囲まれて不利になったりするんじゃないか」
と考えていたからです。
近接武器でのリアルな戦闘風景をイメージしたとき、
「他の敵からの攻撃を受けるのを無視してでも、味方全員で敵一人に集中攻撃する」
ってのはなんだかおかしな気がしたんですよ。

実はそのゲームではそんなことを意識する必要など全くなかったのですが、
初めてゲームを遊ぶ人ほど、まず「ゲームルールに応じた効率化をすべき」という
ルールを学ぶまでが遠いのではないかとも感じます。

どこまで初心者の人に配慮するかは開発者さま次第ですが、
「安心して他の人にもおすすめできるゲーム」を目指すならば、
そんな昔の私にも上達してもらえる気配りをしたゲームを作りたいなと考えています。



他にもし何か語って欲しいことや、開発において聞いてみたいこだわり部分などが
ございましたら、ぜひ拍手コメントからどうぞ! 

← 今回のような記事を
 1冊の本にまとめたゲーム開発本、
 『ゲーム開発者の地図』、
 Kindleで好評発売中です!
 2017-03-25 (土) web拍手 by FC2 カテゴリ: 開発日誌




2017-03-04 (土)   キャラ作りで意識すること2
【キャラ作りで意識すること2】

今回も前回に引き続き、キャラ作りについて意識していることや感じていることを
思いついたまま書いていきたいと思います。
今回のテーマは以下の三つです。

・性格を描こう! でも簡単じゃない!
・周囲のキャラクターにゲーム的機能と課題を持たせよう。
・キャラクターが「役職」でも呼べると強い!






【性格を描こう! でも簡単じゃない!】

物語で描かれるキャラクターの「性格」って割と簡単に描けてしまうと思いがちですが、
「性格」を描くのは私にとってはかなり難しい部分だと思っています。

もしTRPGをプレイしたことがある方ならお分かりになるかもしれませんが、
たとえば試しに「好きな性格のキャラ」を作ってみたら、
演じるのがものすごく難しかったりするのです!

例えばTRPGで「キャピキャピな女キャラ」を作ってみたはいいけど
実は「使命に忠実な朴念仁キャラの方がよっぽどやりやすかった」とか、
あるいは「ルーニー」と呼ばれる
「ウケ狙いのことばかりするキャラ」の方が合ってたとか、
そういうのもよくある話だと思います。奥ゆかしいキャラをやってみるにも、
実際に本人の性格のどこかに奥ゆかしさがないと、そうそううまく演じられません。
TRPGはほぼリアルタイムにセリフを生産する必要がありますから、
そういった性格適性がモロに出てしまいます。

そしてゲーム開発やお話作りにおいても同様に、描こうとするキャラクターが
「自分が演じやすい性格」であるほど扱いやすいはずです。
というか、「経験が浅い間ほど自然とそうならざるを得ない」気もしますが、
もしなんとなくでも「セリフを作りまくれるキャラクター」がいるなら、
きっとそのキャラはあなたの性格で演じやすいタイプなのだと思います。

私の場合、未完ですが『シルフェイド見聞録』では、
主人公エシュター、友人アルバート、教頭ロベルトが
扱いやすいキャラクター三大巨頭です。
この三キャラクターはうまいこと印象深いキャラとして名を連ねていたので、
効率的に演じられていたのかもしれません。

最近なら『片道勇者』の仲間キャラの一人、フリーダ王女も描きやすいタイプでした。
劇中のテキストは短めながらも、エネルギーを込めやすかった感じがします。

他にも描きやすいキャラはちょくちょくいるのですが、
ごく一部のキャラ以外はがんばって想像しないとセリフが出ない感じです。
「自分にとってより扱いやすい性格」である方がキャラがイキイキするのは当然なので、
物語を描くなら、できればセリフがホイホイ思いつくキャラや、
一言一言を重くできるキャラを中心に据えたいなと私は考えています。

前述のTRPGの例にも挙げたように、
「作りたいキャラ」と「やりやすいキャラ」は違うかもしれません。
それでも、自分の適性を最大限活かせる
「やりやすいキャラ」の方が自然と一言一言の質が高くなるので、
なぜかキャラのウケがよくなってしまうことが多いのかなと経験的に思います。

私はレジェレスのときから割とそんな感じで、
「ありあわせの素材で雑に一回作ってみた」ことが、
「自分の描きやすいキャラのタイプに気付ける」きっかけになった気がします。
自分が扱いやすいキャラは、他の人が扱いにくいキャラかもしれません。
「自分にしか作れない高品質なもの」を作るなら、
やはり「自分のやりやすいキャラ」を探してメインに使うのがより効率的だと感じます。



【周囲のキャラクターにゲーム的機能と課題を持たせよう】

これは過去の自分の反省点でもあるのですが、
仲間や協力者のキャラクターを印象的に作るのは意外と難しいと感じています。
私は、ゲームのキャラクターには主に「ゲーム的機能」と「抱える課題」が
備わっているのかなと考えているのですが、
そのうち片方が欠けてしまうことが多かったのです。

それぞれについて、話していきます。


<「ゲーム的機能」を付けよう!>

仲間になるキャラクターの場合は、
戦闘能力など何かしらゲームに関わる「機能(能力)」を
自然と持っていることが多いので、その点については特に言うことはありません。
ここで話すのは、「仲間になるほどでもないキャラ」の扱いです。
たとえば、「家で主人公の帰りを待つヒロイン」などですね。

そしてここで言う「ゲーム的機能」とは、
「買い物ができる」とか、「回復してくれる」とか
「セーブしてくれる」といった機能です。サブキャラクターの場合、
ゲームシステムに関われる機能を持っていると印象深さが段違いに上がります

たとえばRPGにおいてたまに出てくる「家で主人公の帰りを待つヒロイン」のことを
忘れかけてしまった人って、結構多いんじゃないでしょうか。
でも、「帰るとタダで泊まれる」、「帰るとレベルアップできる」、
「長く帰らないとヒロインが化け物になってしまう」など、
そういったゲームシステムに関わる要素があったならば、
帰りを待つキャラにも大きな存在感が出るはずです。
(ソウルシリーズの火守女(ひもりめ)さんは、話せば成長ができるので最高ですね)

他にも、ただ一時的についてくるだけの護衛対象のキャラでも、
ダメージの低い補助攻撃をしてくれたり、回復をしてくれたりしたら、
ゲーム面でより印象深くなるはずです。

そしてたいていの場合、「ストーリーを語る部分」より
「ゲームを進行する部分(戦闘や移動)」の方がだいぶ時間が長い
ので、
それを考えればゲーム進行部分の振る舞いのほうが
より目に焼き付くのは当然のことかもしれません。
特に物語に興味のない人も、システム的なところからは目を離せませんしね。

とにかくそういう観点で、仲間にならないキャラクターにも、
もう少し機能や能力を付けてあげたかったなあ、と反省するところが
これまでの自分のゲームのところどころにもありました。
「戦う力のない一般人を助けるイベント」だって、
イベントが終わったらお役御免じゃなくて、
その後もたまに訪れると何かしてくれるような要素が欲しかった気がします。
RPG『シルフェイド幻想譚』のシン・シズナ姉弟などは
実質的にアイテムの届け先になっていただけで、
接する時間は短い、ほとんどの時間では全く意識しない、以後は何もナシと、
結果的にあまり目立たないキャラになってしまいましたからね。


あと逆説的な言い方ですが、「ゲーム的機能」が設定されていると
「(むりやり)仲間キャラの一人にできる可能性が出る」というのも一つの利点です。

余談ですが、RPG『シルフェイド幻想譚』では最初、
「目の見えない少女を戦わせたり冒険の仲間にする方法なんてないよな」
と思っていましたが、そのキャラが死んだ場合に幽霊キャラとして
参戦させることで戦う能力を与え、仲間にできるようにした経緯があります。
ルートの関係上、周回を重ねればたいてい助かるので
仲間にならないことも多いんですが、
「一緒に旅させたい場合は、無理にでも何かゲームに
役立つ能力を持たせないと難しいんだな」
と感じた一場面でした。

家で主人公の帰りを待つヒロインだって、たまに帰ってみたら
主人公のために冒険に出られるくらいのムキムキボディに鍛え抜かれていて、
同行できるルートがあっても面白いかもしれませんよ。
え、セーブやレベルアップをさせてくれるだけでいいって!?


<「抱える課題」って何?>

こちらは上と違って、仲間キャラクターにも重要な話です。
といいますか、仲間キャラクターほど重要な話かもしれません。

まず物語の面において私は、「『課題』を備えたキャラクターであるほど、
それらを解消する面白みが出るのかな」と思うようになってきています。

特に、ゲームだと「キャラ別クエスト」などを作る場合もありますから、
キャラクターごとの課題が必要だというのはもはや言うまでもないことかもしれません。
とにかく、色んなキャラクターが「問題を抱えて」いて、
プレイヤーキャラクターがそれを格好良く解消していくのです。

こういう考え方で行く場合、仲間キャラクターなどを出す場合は
最初にそのキャラクターの「課題」を考えておけば、
先々の話のネタが出しやすくて楽になります。
たとえば、キャラクターごとに以下のような課題があると思います。

・何らかの理由で一緒にいるが、主人公とうまくつきあえない → 徐々に仲良くなる
・自分が数日後に魔王に殺されることを知っている → 主人公がそれを守る
・そのキャラ固有の使命がある → 主人公が手伝う
・主人公を倒したい → 主人公が返り討ちにしたり最終的に仲間にしたりする
・誰にも話せない過去がある → 仲良くなって、主人公が過去を許す
・主人公を救う使命がある → 主人公に出会い手を差し伸べてくれる


これらは「目的」と呼んでもいいんですが、
「そのつもりもないけど仲良くなった」みたいに
特に狙わずに解決するものもあるので、そういう意味で「課題」と呼んでいます。
基本的には、これら課題が解決していく様子を描写すると
物語として面白くなるのかなと私は考えています。

しかし慣れない内はキャラクターを何のために出すのか
考えずに作ってしまうことも多く、
意外と扱いに困ることがあります。というか、そうなっていたのが私でした。
そのせいで、せっかく作ったのに全然目立たないキャラになったり、
いてもいなくても変わらないキャラになってしまう
こともあります。
それはちょっともったいないですよね。


<できれば両方付けたい、「ゲーム的機能」と「抱える課題」>

キャラクターの「ゲーム的機能」だけだと
「性能面だけの仲間」という感じで深みがないし、
「抱える課題」だけだと「ゲーム面での存在感」が薄くなりがちなので、
「ゲーム的機能」と「抱える課題」は両方そろってる方が
面白くなりそうだと考えています。

キャラクターを作る際は、まずこの2つを考えておくと、
あとあとしっかり活躍させやすいかもしれません。
私の場合、だいたいどっちか片方だけに偏ったりして
うまく活躍させられないことも多かったので、
もう少し、この辺りを強く意識していきたいなと考えているところです。



【キャラクターが「役職」でも呼べると強い!】

なかなかキャラの名前を覚えられない私みたいな人間でも、
キャラクターを「役職」(あるいは一般名詞)でも呼べるように配慮されていると、
とりあえずは役職で覚えればいいのですごく助かります。
このようにキャラクターを「役職」でも呼べるようにしておくと、
プレイヤーさんの記憶コストを大きく減少させることができます


役職といっても、単純に
「王様」「勇者」「大臣」「パン屋」「上司」「狙撃手」といったものだけでなく、
「父親」「母親」「ヒロイン」「おじいちゃん」
「委員長」「妖精」「メガネ」「最初の弓兵」
「初期騎兵の赤い方」「緑の弟」「獣人」「セーブ屋」なども含まれます。
ゲーム中でそう呼んでほぼ一人しか該当しなければ、
役職がそのままプレイヤー間でのキャラの呼び方として使えます。

特に「名前と役職を繋げて表記する」やり方は役職と名前が常に把握でき、
遊ぶ人の記憶力に応じて「役職」部分だけでも覚えれば他のプレイヤーさんと
話ができるようになるので、便利でいいなと思い始めている方法です。
たとえば、以下のような名前はどうでしょうか。

・ヴィクター王
・フリーダ王女
・薬師ネムリ
・黒騎士デュークガルツ
・妖精イーリス


この場合、SNSなどで「王様が強いなー」とか、「王女のエピローグが悲しかった」とか
「今日のキャンペーンで黒騎士がもう溶岩に落ちてるんだけど!?」
「妖精のアドバイスがXXが●●だったんだけどおかしくない?」
と言っても何の不都合もなく他の人に伝わるのです。これは強い!

実際、「役職」名だけを使ってそう投稿してくださった方も多かったので、
「キャラの名前までは覚えてないけど感想を伝えたい人」が
SNSにメッセージを投げて下さる確率はけっこう高まっていた気がします。

「役職」は、単純に「キャラの識別を容易にする」
「記憶するコストを下げられる」のに加え、
「プレイヤー同士の交流の用語としてそのまま使える」、と多くの用途で
効果を発揮するため、ものすごく強力な武器です。

個人的に、「役職」が最も機能している例として一番顕著だと思っているのが、
学園もののお話における「(学級)委員長」です。
委員長はどう転んでも委員長ですし、普通は二人以上出てこないので、
たとえ名前を忘れても「委員長」で通じるのが凄いところです。
むしろ作品によっては「委員長」という役職だけが覚えられていて、
名前の方を覚えられてない
場合さえあります。
あの委員長キャラ、本名はなんて名前でしたっけ?

ということで「役職」でキャラを覚えられるようになっていると、
キャラの名前をなかなか覚えられない私としてもとても助かります。
逆に、役職分けが困難な創作物だと、キャラを覚えるのが個人的にはちょっと大変です。

例えば最近はゲームのアニメ化などで、
1話から女の子ばかり10人くらい出てくる作品がたまにリリースされており、
「アヒィッ! 覚えられない!」となる場合があったりします。
(ファンの方々ごめんなさい!)

たぶん「ツンデレ」「天然」「お姉さん」「わがまま系」など、
単なる「女の子」カテゴリの中にも
会話に使えるさらなる細かい役職分けがあるのだと思いますが、
私の瞬発的な役職分け能力はそこまで洗練されていないようです。

でも、もしこれが、

「主人公」、「(女の子)ヒロイン」、「(メガネ男)友人」、「先生」

くらいの組み合わせだったら
当面はこの役職分けだけ覚えればひとまずは話の流れを掴めるので、
記憶コストが安上がりです。
あと、役職が違うと名前の「それっぽさ」が
ほぼそのままキャラの特徴を表せていることが多いので、
ストーリー中で名前が出たときに繋げやすいというのもあります。

たとえば上の4人が、それぞれ熱血主人公「バーン」、女の子ヒロイン「リラ」、
メガネ友人「レオナルド」、先生「グランマ」なんて名前なら、
初めて見た1話の劇中で名前が出ても、
すぐに誰がどの役か思い出せそうです、たぶん。
どうでしょうか。

あっ! でもこれ、他のキャラにレオナルドが
「レオ」なんて愛称で呼ばれてたりすると、
主人公と区別が付きにくくなるやつかもしれませんね。
「バーン」と「レオ」だと、「何となく勇猛そう」という名前的属性が似てて、
見ている方が混乱しそうな気がします。
となると「レオナルド」の名前は要改善です。
何か、そう、もっとメガネ男っぽい名前に……。


何はともあれ、「役職」を付けられるようにすると様々な利点があるので、
今後もチャンスさえあれば「キャラクターの役職呼び」ができるように組むことを
意識していきたいなと私は考えています。


それに、物語を楽しむ練度が上がっている方々はまだしも、
よほど意識したり入れ込んだりしない限りは、
一度楽しんだ作品の「キャラの名前」まで
正確に覚えてくださっているプレイヤーさんって
意外といらっしゃらない気がしています。

「有名なあのアニメ映画の主人公の名前って覚えてる?」と最近ブームになった映画を
ご覧になったご家族の人がいらっしゃったら聞いてみてください。
たぶん、時間が経った影響も加味すれば、普通の人が一度楽しんだ創作物の
キャラクターの名前って7割以上の人は答えられないような気がします。
感想について語ったりするにあたって検索したりして、ようやく意識する感じではないでしょうか。

世に出る作品の数もだいぶ増えてしまっている現状、
話題に取り上げてもらうためにも、「役職」でキャラを呼べるようにする工夫は
思った以上に効果が高いのではないかなと今の私は考えています。



ということで、つらつらと雑多な話を述べてきましたがいかがだったでしょうか。

キャラの作りの点については、いまだに未熟さを感じるままですが、
より印象深く描ける効率的な手法を模索して、今も考え続けています。



他に聞いてみたいことや、私の想像力を試したい内容、
この記事へのコメントやご感想などあればぜひ拍手コメントからどうぞ!
お答えできそうなものは随時お答えしていきます。

← 今回のような記事を
 1冊の本にまとめたゲーム開発本、
 『ゲーム開発者の地図』、
 Kindleで好評発売中です!
 2017-03-04 (土) web拍手 by FC2 カテゴリ: 開発日誌




2017-02-25 (土)   キャラ作りで意識すること1
【キャラ作りで意識すること1】

今回もいただいた拍手コメントにお答えしていくコーナーです!
コメント、いつも本当にありがとうございます!

>エシュター・アルバート・ネムリ・サラなどなど、覚えやすく魅力的な   .
>キャラクターを多数生み出されていますが、彼、彼女らはどういった経緯を
>経て誕生する事が多いのかが、とても気になっています。 私も趣味で   .
>小説を書いているのですが、最も悩むのがストーリーや世界観よりも、   .
>キャラクターです。名前一つ考えるだけでなかなかしっくりくるものがなく、 .
>どうしても無理矢理とって付けてしまう様な感じがしてしまいます。      .
>何か、キャラクターを考える際のこだわりなどがあれば、お聞きしてみたいです。


キャラクター作りは私も悩みがちな部分です。
その辺りのコツはこれまであまり自覚したことがなかったので、
今回は今まで自分の作ってきたキャラの傾向から逆算して、
キャラクターの作り方やこだわりを整理してみたいと思います。

ということで今回はキャラ作りのお話の「外面」編として、

・最初に決めるのは「見た目」(※個人的理由)
・「形」も大事? キャラクターに名前を付けよう!


の二本でお送りします!
今回は感覚的な話が多いので、全体的にモヤっとした語り口になると思いますが、
その点はどうかご容赦ください。
数値の効率の話と違って、断定できることがあんまりない話ですからね。





【最初に決めるのは「見た目」(※個人的理由)】

私の場合、100%ではありませんが、
キャラの名前より先に外見を決めることが多いです。

というのも私の場合、お絵かきの技術不足で
「顔の雰囲気を希望通りに描けない」場合が多かったので、
作業の流れ的にどうしても「描けてしまった顔グラフィック」に合わせて
性格や名前を調整する
ことになりがちだからです。

開発においてはどんな場面でも基本的に、
「技術不足で制御できなかったり希望通り出てこない方に、
動かしやすい他の部分を合わせる」
ほうがうまく行くはずですから、
「伝えたイメージを完全に希望通り実現してくれるほどの
すごく腕が立つイラストレーターさん」に頼むのでない限りは、
個人的には「キャラの特徴」から「見た目」を作って、その「見た目」に合わせて
最終的に性格やセリフを調整する方が違和感が出にくいと考えています。

ではどうやってキャラクターのどうやって「見た目」を決めるのか?
「見た目」の作り方に関して思いつくコツはあまり多くないんですが、
基本的にはできるだけ「プレイヤーさんと共有しやすいイメージ」を
取り入れて作りたいなとは考えています。
「髪色」の設定の仕方を一例に取って、私の頭の中の流れをご紹介します。



<パーツに備わるイメージ>

たとえばキャラクターの「髪の色」を設定するとき一つ取っても、私の中では
「庶民的なキャラなら茶髪や黒髪」、「高貴なキャラなら金髪系や薄い色」、
「異国キャラや不思議・神秘的な感じを持たせたいキャラなら薄い色や変わった色」、
にすると分かりやすいかな、といったイメージを持っています。

たぶん皆さんも、このうちいくつかは似たイメージを持っておられるか、
あるいは他の創作物にも似た傾向を見いだしたことがあるのではないでしょうか。

たとえば、私以外の方が作られた創作物において
実際に上の傾向が採用されている例として、
ファンタジー世界でモブキャラ(メインではない名無し村人系キャラ)を
登場させる場合は、なんとなく「茶髪」が採用されるケースが多そうに感じます。
これもおそらく「ファンタジー世界における茶色の髪」というのは、
他の人にとっても共通して庶民的な雰囲気を感じやすいからではないかなと考えます。

そんな感じで、なるべく他の人とも共有しやすそうな
「パーツに備わる最大公約数のイメージ」を
うまく活用できれば、効率的にキャラクターの個性を伝えられるはずです。
言い換えれば、単純に「設定に合ったそれっぽい見た目にする」
(あるいは見た目に合った中身にする)
という、
ビックリするほど当たり前な話なんですけれどね。

ただ私が未熟な頃には、「オリジナルさを上げたい!」という欲に目がくらんだのか、
全く人に伝わらない外見のキャラを考えまくっていた黒い歴史もあるので、
その頃に比べれば「効率的」にはなったのかなと思っています。



<服装について>

「見た目」といえば髪や顔だけではありません。「服装」も大事な一要素です。
ただ私の場合、服装はあまり得意ではないのと、
やはり明文化できるほど意識して作れていません。
「それっぽい衣装を着せたいなら、検索して資料集めるとよりそれっぽくなるかも」
というくらいですかね。当たり前ですって? そうですね!

あと「服」は「職業」を表すのに便利なパーツなので、
「割とベタベタな服装にする」のは分かりやすくする上でとても有効そうです。

名前も役職も伝えずにキャラの絵だけ見せて「これなーんだ?」って聞いてみて、
分かってしまいそうなくらいの衣装が、
時間が足りない昨今においては望ましい気がしています。
明らかに勇者っぽいとか、王様っぽいとか、
お姫さまっぽいとか、大臣っぽいとか、そんなのですね。
学園ものだと個性化はなかなか難しいですけどね!

他に服装で気にしてることといえば、
RPGの場合はドット絵から男女の区別が困難になってしまうので、
「RPGでは遠目にも分かるよう女性キャラにはスカートを着けることが多い」
というくらいでしょうか。
もちろん性差別の意図は全くなく、これは見せやすさや分かりやすさの都合で、
見た目が左右されるというケースです。



<「見た目」についてのまとめ。多少かぶってても大丈夫かも?>

ということで「見た目」についてすぐ思いついた分はこれくらいです。
いかがでしょうか。

何はともあれ、自分のゲームにおいては、キャラクターに付くあらゆる「タグ」は
できるだけ「識別・区別・理解しやすくする」ことを
重視して設定するよう心がけています。
特に理由がなければ、見て分かりやすければ分かりやすいほど
見る人の理解のスピードも上がって効率的です。

ただ、私の未熟さによるところもありますが、
キャラが増えると好みが出すぎたり(私が)描き分けができなかったりして、
見た目がかぶってしまうこともよくあります。
特に何作も創作物を作ってると、まっとうにキャラを作っているだけでは
キャラ被りをどうしても回避しきれなくなってきます。

そんな中、私は「キャラ被りは悪だ! いけないことだ!」と考えていたのですが、
年を追うごとに、「見た目が少しかぶってしまうこと」自体は、
「急に突飛な見た目のキャラばっかりになる」よりは遊ぶ方の期待に応えやすい
ので、
それはそれでいいのかなと最近は考えるようになってきています。

というのも、たとえば
「従来作とのキャラのデザインや雰囲気がかぶる」のを恐れたのか、
「主役級キャラがどんどん突飛な見た目のキャラばかりになった」
シリーズものの作品を一度くらいはご覧になったこともあるのではないでしょうか。
それを見て、ファンの方が
「昔のキャラっぽいのが好きでやってたのに、最新作は合わない……」
と感じてしまったケースも、もしかしたらあるかもしれません。
私も経験上、何度かあります。

しかし、シリーズや作者のファンとして遊んでおられる方々は、
「これまでのキャラなどの雰囲気や方向性が好きでファンになった」方々なのですから、
前述のような不満が発生してしまうことを考えれば、実はそこまで必死に
「登場させるキャラの雰囲気を変えなくてもいい」のかなと思うことがあります。
元はカレー屋だったのに、飽きられることを危惧して無理して
牛丼を出さなくてもいいのです。
カレーが一番上手に作れるなら、
カレーのトッピングを変えてみるくらいでもいいかもしれません。

ただしこれは、決して「似すぎているものを出し続けろ」という意味ではなく、
「変に突飛になってしまうくらいなら前と似ててもいいじゃん!」
くらいの意図ですからその辺りはどうか誤解なさらぬよう!

なお私の場合、キャラがかぶりすぎると判断した場合は
旧作のキャラをそのまま使い回すこともあります。
それが使えない場合は、「血縁っぽい見た目のキャラ」などでもいいかもしれません。
そうすることで、先ほど述べた「パーツに備わるイメージ」を再利用できるので、
どんなキャラかを見た目で伝えるにあたっては非常に効果的なはずです。
それでいて性格は元と全く同じじゃなくてもいいので扱いやすい! おすすめです。



【「形」も大事? キャラクターに名前を付けよう!】

<名前のイメージ>

見た目に続いて「名前」も、基本的には「既存のイメージに乗る」方向で決めています。

「過去の他人の創作物」からでも「実在の人物」でも
「音の感じ」でも何でもいいですが、
ある「名前」にはすでにいくらかのイメージが備わっているはずです。
基本的には、その名前に備わったイメージをそのまま継承する方が、
遊ぶ人の記憶する負荷が軽くなるのでいいだろうと考えています。

たとえば、私の昔のゲームですが『シルフェイド見聞録』の主要人物の名前は
以下のような発想で命名されています。


「アルバート」:正当派っぽい名前に感じたので、
まじめなキャラに合うと思っていました。

「シーナ」:「シイナ」という発音は東洋人にもありそうな名前の「音」なので、
黒髪キャラに使うにはちょうど合いそうだと思っていました。

「セト」:音が他キャラと違うので異民族っぽいキャラに合うと思っていました。
神様の名前が付いてると、未知や神秘性があるというのもあるかもしれません。

「ガゼル」:サバンナの動物の名前なので、
野生味のあるキャラに合いそうだと思っていました。


こんな感じに、これらの例では全体的に「それっぽい」と感じた
既存の名前をキャラクターに付けています。

他に「それっぽい名前」の面白い例としては、
「ミカエル」というと高貴そうな名前に聞こえるかもしれませんが、
同じスペルで「マイケル」と読むと、「よー俺マイケル!」なんて言ってそうな
ジョーク好きな黒人男性っぽいイメージになるという笑い話もあります。
あくまで日本人向けの話ですけど、おおよそ間違ってないんですよね。

このように「名前に備わった印象」は「覚えやすさ」に
大きく影響する部分だと思うので、
使えそうなら「既存の名前」をバンバン
借りてくる方がきっと効率的だと私は考えています。

逆に、「オリジナルな名前」や「見慣れない名前」は、
「名前に備わった印象」が物語の開始時点では全くないので、
覚えるのが大変になってしまう可能性もあると私は思います。
よって「できればオリジナルの名前はごく一部に使うようにして、
なるべくイメージが分かりやすい既存の名前を使う方が効率的」だと
私の頭の中では考えているようです。

「オリジナルの名前」「見慣れない名前」は、
「主人公」や「メインキャラのごく一部」など、
「頻出するキャラにピンポイントで使用」するならばアリかもしれません。
「エシュター」などは、あまり見慣れない名前だと思いますが、
主人公に使えば何とか覚えてもらえるかなと考えていました。



<名前の『形』>

そして名前といえば大事だと思っているのが「名前の形」
テキストやゲームで表示する都合上、いつからか
「名前の形」には特に意識的にこだわるようになりました。

「名前の形」とは何かというと、以下のような違いです。

アルバート → ■■■-■
シーナ → ■-■
エシュター → ■■o■-
ガゼル → ■■■
セト → ■■


この名前の、大文字「■」、小文字「o」、横棒「-」の組み合わせの違いを、
ここでは便宜上、「名前の形」と呼ぶことにします。

この「名前の形」が違うと、一瞬目に入ったときの
「キャラ名の区別しやすさ」が段違いに上がります。
特にメインキャラの名前に関しては可能な限り
「形かぶりを避けよう」と考えていますし、
TRPGをプレイする際なども、チャンスがあればプレイヤーの皆さんに
「できる限り名前の形が異なるよう」に設定してもらうように要望しています。

TRPGの商業リプレイなどをよく見ると、この辺りの配慮が
よく行き届いているのに気付くときがあります。
当然、できれば文字の「音」も違うほうが理想的なので、
先頭一文字がかぶったりしないようにも注意しています。

一例としては、たとえば人物名が「リメロ」と「リオラ」と「レオナ」だと
音も形も似てるので覚えるのが少し大変かもしれませんが、
「バーン」「リラ」「レオナルド」だったらとりあえず長さから覚えればいいので、
読者の記憶力のコストが軽くなる期待ができると考えています。いかがでしょうか。

どうでもいいですが、私の印象だとレオナルド君は
なんとなくメガネを付けてそうな気がしますね。そうでもないです?
別の発明家の名前を取って、トーマス君とかエジソン君の方がメガネっぽいでしょうか。

ちなみに「トーマス」は、昔のRPG
『ロマンシング サ・ガ3』にも同名のメガネの人がいたので、
そういった観点でもメガネの人っぽいイメージが付いているかもしれません。
それもまた「名前に付いたイメージ」だと思いますので、必要なら利用できそうです。
被りすぎてるとパロディに思われたりして場合によってはマズいので、
そこは気をつけますけれどね。



ということで、キャラ作りの見た目や名前についてざっくり書いてみましたが、
いかがでしょうか。
共感できるところも、そうでないところもあるかもしれませんし、
「まだこんなレベルにしか達してないのか!」と思われるところもあるかもしれません。

ここに関してはまだまだ自信のない分野ですが、少しずつ便利な方法を見つけて
目指す方向へ効率化させたいなと考えている最中です。

そして、何だかんだで語ることがまだいっぱいあるので
キャラ作り編は次回も続きます!
よければお楽しみに。



他に聞いてみたいことや、私の想像力を試したい内容、
この記事へのコメントやご感想などあればぜひ拍手コメントからどうぞ!
お答えできそうなものは随時お答えしていきます。

← 今回のような記事を
 1冊の本にまとめたゲーム開発本、
 『ゲーム開発者の地図』、
 Kindleで好評発売中です!
 2017-02-25 (土) web拍手 by FC2 カテゴリ: 開発日誌
開発日誌 7/25


▲一番上へ戻る


 

アーカイブサイトへ

Copyright © SmokingWOLF / Silver Second