シルバーセカンド開発日誌
 ここはゲーム開発者SmokingWOLF(スモーキングウルフ)の開発日誌です。
 【現在の目標】→ ウディタ3.5のバグを落ち着かせる! & 『片道勇者2』の開発!
 ※以前のブログが使えなくなったので、ただいまこの開発日誌に移転中です。
勉強メモ 1/1

2024-02-03 (土)   風来のシレン6に触れて学んだこと【ローグライクお勉強記】
先日、発売から遅れながらもようやく
『不思議のダンジョン 風来のシレン6 とぐろ島探険録』を
少し遊ばせていただきましたので、忘れないうちにゲーム開発者の視点で
「こういう部分いいですね!」と特に感じたところをメモしておこうと思います。

私も現在、デッキ構築ローグライクRPG『片道勇者2』を開発しているので、
よくできる工夫に気付けたならその意図は取り入れたいですからね!
もちろんゲームのコンセプトは違うので、ちゃんとかみ砕いて
理解した上で意図を取り入れていきたい所存です。

なお、この記事はシレン6のネタバレが満載ですのであらかじめご注意ください。

※「ローグライク」というゲームシステムについてここでは詳しく説明しませんが、
簡単に言うと「マップ上を1歩ずつ移動して、そのマップ上のまま敵に攻撃できたりアイテムを
使ったりするシステム」のRPGです(普通のRPGにおける「戦闘パート」という概念がない)

『風来のシレン6』はターン制で、自分が1歩あるいたり攻撃したりするたび、
全ての敵も1歩動いたり、あるいは1回攻撃してきたりします。
なお、だいたいのローグライクは死ぬとスタート地点に戻されてレベル1からやり直しなので、
「プレイヤーのうまさ」の方を上達させてクリアを目指すゲームジャンルとなっています。
危険な場面でどのアイテムを使うか、どう動くべきか、
そういった適切な判断が求められるのが面白いゲームです!




◆『風来のシレン6』ですばらしかった点、色々!

シレン6、最初のダンジョンクリアとその他ダンジョンの解放くらいまで
遊ばせていただきましたが、今作は
プレイヤーの感情面をさらにゆさぶる明確な意図を持った新要素
や、
まちがいなく遊びやすさ向上につながる新要素
がとても多かったように感じます!

特に「ゲーム面の仕組みやバランス周りだけでここまで
ドキドキワクワクできる感じの調整ができるのか!」と感心したので、
今回はその辺りも注目していきます。
ローグライクというゲームにおいて
「ゲーム部分で感情を盛り上げる仕組み」が今作はすばらしかったんですよ!

※逆に言うと、過去にたまにあった
面白くなりそうな気がするから搭載されたっぽいけどこれどうなの?」と
感じてしまう要素が今回全然なかったり、あるいは過去作から省かれたりしていました。
そういった部分をなくしたりするのも難しいはずなんですが、
今作はそこも含めてすごくしっかり取捨選択されている印象でした。




【バランス】「シレンのHP自然回復上昇」と「敵の攻撃力増加」で
体験がダイナミックに変化!


ここはみなさんもおっしゃっている大きなバランス調整点!
過去作と比べ、大幅に「シレンのHP自然回復上昇」と
「敵の攻撃力増加」が行われました。
たぶん「敵の耐久力(倒すための必要打数)」も全体的に上がった気がします。

これによる変化を2つの観点で見ていきます。


【1.戦術幅の増加、判断の楽しさアップ、スリルの生み方のうまさ】
1つめはゲーム面や体験に与えた影響について!
「戦術幅の増加」「判断の楽しさアップ」「スリルの生み方のうまさ」を
挙げていますが、それぞれ細かく見ていきます!

まず「シレンのHP自然回復上昇」と「敵の攻撃力増加」の変更で
どう変わったというと、少ないターンでHP回復が行えるため、
戦闘中の行動として

『敵が隣接した状態のまま、後退していったんHP回復した後、再度敵に攻撃する』

という行動が現実的な選択肢として増えました。
この記事では便宜上、その戦い方を『後退戦』と呼ぶことにします。
この「後退戦」を活用した具体的な戦闘の流れを紹介します。


【後退戦の例】
まず最初に、1歩あるくたびに主人公シレンのHPが2ずつ回復するとします。
(今作ではレベル10になるとこの速度で回復します!)

通路で敵Aと戦ってるとき、敵Aの一打で17ダメージを受けて
自分のHPが残り10になり、
「あと一撃当たれば敵Aを倒せるけど、次に自分が
攻撃を外したら敵Aの反撃で死ぬ!」という状況になりました。

自分が後ろの通路に一歩下がって自HPが10→12に回復するのを確認し、
あと4歩下がって20まで回復させて、
敵Aの一撃(17)に耐えられる安全マージンを確保しました。
こうすればシレンが次に攻撃を外しても生き残れるので、安全に戦えるわけです。

もし次のシレンの攻撃が外れて反撃を受けたら、
こちらの残りHPが20→3くらいになってしまうので、
また9歩くらい下がって攻撃します。
「ぐあー通路を9歩も下がるのー!? 9歩以内に
他の敵が来たりしないかヒヤヒヤするー!!」と思いながら!

そう! 理論上は無限にHPを回復し続けながら
戦い続けられるように見えますが、下がるということは
別の敵が前から来て、戦闘中の敵とはさまれる可能性がある
というリスクがあるのです!

そのため、「後退できそうな距離」は今作の戦闘で考慮すべき
重要なパラメーターの一つになったのですが、その正確な見積もりは
(ミニマップ上で敵を見られる状況でない限り)非常に困難です。

おまけに、高難易度のフロアに頻発する「1歩先しか見えない通路」内にいる場合は、
移動した後に前から来た敵から先制攻撃を受ける危険性まで発生するので、
安全マージンの取り方はもっと難しくなります。

もっと言えば、この戦法を使うことでよく発生する
「通路で前後マスを敵にはさまれた状況」はおそらくゲーム内で
トップクラスに悪い形で、一手で打てる有効な対策はかなりしぼられてくると思います。

「後退戦」は後退中に何も起きなければ満腹度の限り無限に
ダメージを与えられるハイリターンな技なのですが、
何か起きると非常にハイリスクな戦い方なのです。


【後退戦によるスリルの生み方がすばらしい】
この「後退中に別の敵が前から来て、元の敵とはさまれる可能性がある」
という部分、実際遊び手として体験してみると、
1歩後退するたびに感じる『ヒリ付き具合』がすごい!

この後退中のスリルの生み方が今作において
非常にすばらしいデザインだと感じまして、常に
「逃げてるときに他の敵が来たらヤバいぞ、ヤバいぞ」と思いながら
後退してHPを稼いで戦うプレイをする緊張感を
長く生み出せているのがとてもいいんですよ!

実際は1フロア内の敵の数が少なめのためか、
10歩くらいの後退で挟み撃ちになることはかなり少なく、
「ドキドキさせるんだけども実リソース的にめちゃめちゃにされることは意外とない」
という、私が思うゲームとして理想的な流れにできているのも好みの点です。
まあ「意外とない」だけで、打開策がないときに
1回それが起きたら即座にゲームオーバーなんですけどね!

もちろん調子に乗って長距離後退するとちゃんと挟み撃ちになります。
調子に乗らなくてもすぐ挟まれることがあります。どこまで運頼みするかの見極めが難しい!



【スリルを生む回数を増やすための敵のパラメーター設定】
また、今作は敵の「攻撃力」がかなり上がり、
レベル1で戦う最弱モンスターからの攻撃ですら
こちらが4打でやられてしまうようになりました!
シレンのHPが15しかないのに4ダメージとか出してきます!
最弱のマムル相手でも初期レベルで2体同時に戦ったら普通にやられかねません。

また「敵の耐久力」も、今作は序盤以外のほとんどの敵を倒すための打数が
「2~3打以上」、弱くない敵はほぼ「3打必要」に設定されており、
かつ敵の攻撃力が上がったため、こちらが1~2回ミスしただけで
簡単にピンチになるようになっています。
状態異常をかけてくる敵まで3打必要とか辛い!

このパラメーター設定により、相手次第では1体しかいなくても
「後退戦」が一定確率で発生するようになっていて、
結果として「後退戦」のヒリつき体験はだいぶ長い時間味わえるようになっています。

なおかつ、その状況を生むほど強い相手はだいたい1階層に
1種類以上は出現しているので、緊張感が途切れません。
(もちろん、1回くらい外しても殴り続けるだけで倒せる相手もある程度出ます)


本作は全体を通して「単体の敵なら確実に倒せるから何も恐くないやー」と
なってしまって緊張感がなくならないよう、
意図をもってしっかり敵の強さが設定されている感じがします。
物理攻撃しかしてこない単体相手でも運次第では特別な対応が必要になる
それがシレン6!

 でも私が、操作するだけで楽しさを感じて満足していた10歳のときにこれを遊んだとしたら、
きっと足を止めてのガチ戦しかしなくて難しすぎて投げてたと思います。
そういう遊び方しかできない人もいることは頭に入れておきたいと思います。
(イベント展示で『片道勇者プラス』のプロト版を幼女に遊んでもらったら方向転換ができずに
一方的に敵にやられてしまっているのを見てトラウマになったことがある私より)


※追記:敵の耐久力が高いと戦闘に文脈が出てくる
ちなみに、種族特攻の武器は「ダメージ1.5倍」になるらしいのですが、これだと
「3打」必要な敵は確実に「2打」以下で倒せるようになります。
特攻が硬い敵に対して確実に1打減らせる安心感があるので、しっかりありがたみがあります!
それでいて一撃では終わらないのでダメージを受ける可能性が依然残るため、
敵が多い場合に無思考に流れ作業で戦う展開も
そんなに発生しません(持ち込み武器などでしたら一撃ですが)。

また、「3打」必要となると、周囲の敵の位置関係も重要になります。
一撃で倒せる敵しかいないなら、部屋の中でも一列に並んでやってきていれば
前から切り伏せるだけですが、1体3ターンかかるなら通路に下がって戦うなど
必要な工夫が増えるわけですからね。
さらにその間に「通路側から敵が来ないか」というスリルも生まれる!

「倒すのにだいたい3打必要」という耐久力は、こういう「効力の見せ方」や
「考えどころ」が生まれるのかー、と、いい肌感覚を学べています。




【戦術と判断の幅が増えた!】
前作シレン5では、後半のHP回復速度が低かったので
「逃げながら戦う」ということは滅多になく、
「危機になった時点でとにかくアイテムを使って対応する」という
『アイテム消費してほぼ確実に安全を得る』
という打開策がだいたいの場面で最善手でした。

ですが今回、『ほぼノーコスト&ハイリスクハイリターン』
「後退戦」ができるようになったおかげで、
どこまで節約するかの柔軟な択が増加しました!

たとえば強い敵や多くの敵と遭遇した場合でも、
「敵にはさまれるリスクを負いながらアイテム消費なしでの後退戦をする」か、
「今すぐアイテム使って敵を無力化し、急な敵のおかわりにも対応できるようにしておく」
かの悩ましい選択が生まれています。
また、「後退戦」と「アイテム消費」を組み合わせれば、より少ないアイテム消費で片が付くでしょう。

後退戦のリスクの正確な見積もりは非常に難しいので、
何が正しかったのかの評価はコンピューターにも簡単に計算できず、
難しい局面では「誰が考えても同じ解になる」みたいな流れに
なりにくいのが今作の特にアツいところだと感じます。


そして今回、一番大事な点として言いたいのがここ!
伝統的ローグライクゲームはプレイが極まっていくと、
『より少ないリソースを使って危機を乗り越える判断をしていく』
という面白さを味わうゲームになっていくと考えていて、
これまでのシレンでもおおまかには

●安全に倒せる敵はその場で通常攻撃で倒す。
●ピンチのときはアイテムを消費するが、その中でもなるべく効果が小さいか
残弾に余裕があるものから使って節約していく。


という形でそれを実現していたと思うのですが、その両者のすき間に、今になって

●一定確率でハイリスクな状況に陥るが
アイテム消費なしで無限ダメージが出せる『後退戦』


という選択肢を現実的な形で増やしてくるというのが開発手腕としてすごい!

「なるほどこうやって選択肢の択を増やすと面白いのかー!」
と首がはずれるほどうなずいています。
特に「リソース消費なし」だけど「一定確率でかなりマズい状況になる」という点が、
プレイヤー感情としてのドキドキ感やギャンブル感も出せて無駄がない! ズルい!

この造りは実際に体験してみて非常に面白く感じたので、
こういった「判断の段階の生み方」は自分もうまく作れないか、
よく考えていきたいと思います。

※追記:なおフロア内の敵の位置が常に全て分かる『気配察知の腕輪』が取れたら
通路での挟み撃ちを回避しやすくなるため、マズい状況になる頻度をかなり減らせます。
今作、敵の位置が分かることはほぼノーコストで無限の火力を
発揮できるチャンスに繋がるので従来以上に強いです!



【まとめ】
●【ゲーム面】戦闘時のピンチにおいて、通常の
「アイテム消費あり+だいたい安全」の『アイテム消費』
という打開策に加え、
「アイテム消費なし+ハイリスク」の『後退しながらの戦闘』
という選択肢の幅が増えて判断を楽しくさせている。

●【感情面】「敵の高攻撃力化」「もっぱら3打必要な敵の耐久力」
「後退による素早い自HP自然回復」の組み合わせにより、
頻繁に「後退しながらの戦闘」が発生し、
スリルの感情を長い時間生み出せている。




【2.画面情報から危険度が分かりやすくなった】

こちらも引き続き「シレンのHP自然回復上昇」と「敵の攻撃力増加」に起因する話で、
画面情報から危険度が分かりやすくなったという話です!


【バランス調整で見た目からの分かりやすさがアップ!】
配信しながら遊んでいる中、「自然回復速度アップ」と「敵の攻撃力アップ」の
修正で感じたのは、実は『見た目の分かりやすさの向上』でした。

1体のモンスターですら自HP満タン状態からガチバトルすると運次第で負ける中、
複数の敵に囲まれたりなんかしたら「通常攻撃で戦うだけじゃ絶対死ぬ!!」
というのが明確に分かるので、配信中も何度か敵に囲まれて
「ギャアアア!」と言ったと思います。

が、バランス自体はさらに厳しくなったように見えて、実は

●プレイヤー視点で特別な対応をすべき状況(アイテムの使用しどころ)が
分かりやすくなった。

●視聴者から見ても「ヤバい状況になった」というのが明確に分かる回数が増えた。
(とにかく2体以上の敵に寄られたらキツいので、見ればすぐ分かる)


という変化が起きており、これらはとてもいい点に感じました。
この動画時代だと一目で見て状況を把握しやすいというのは大事なので、
これはすばらしい修正のような気がします。



【自然回復速度が遅いゲームだと状況把握が難しくなる?】
ここまでは「自然回復大、敵の攻撃力も大」という前提のゲームの話を
してきましたが、一方で『自然回復速度が遅くてジリジリHPが減っていく中を
うまく生き残るゲーム』って、実は遊ぶ側も見てる側も
なかなかのマニアックさが要求されるのでは、という考えが私の中にあります。

どうなるかというと、以下のようになる場合があります。

●自然回復速度が遅いゲームは「敵の攻撃力も低めになりがち」で、
敵が複数でも「殴っても強引に勝ちにいける」という可能性が残りやすい。

→ この結果、プレイヤーとしてもアイテムを切るべきかどうかの判断が
かえって難しくなり、プレイヤー側にも視聴者側にとっても
「難解さ」を上げてしまっているケースがある。

●自然回復速度が遅いゲームはHP維持のために
「さほど危なく見えない場面でも予防的にアイテムを
切らないといけない場面」が発生しやすい。

→ しかし「危険になる前にHPを減らさないように対応している」様子は
直感的に『ピンチに対してうまくやっている』ようには見えづらく、
視聴者にとっての見どころが分かりにくい! 上級者同士の将棋みたく、
1画面では暗黙の文脈がパッと伝わりづらくなりやすいかも。



これらは「問題点」というよりはゲームの「味」と呼んでおくのが丸そうですが、
こういった点に対し、シレン6では「大きい交戦ごとにだいたい自HPが満タン」に
なっており、「画面内の敵が何体シレンに接近してるか」という部分だけ見れば
危険度が一目で分かります。

2体以上の敵に寄られたら本当にヤバいので実況プレイヤーの方も
「ギャー!」「ヤバい!」って言っちゃうでしょう!
私は言ってました。そういう部分も分かりやすい!

そういった意味でシレン6は「過去作よりデータ的には難しくなったけれど、
アイテム消費などで工夫をすべきポイントは旧作よりも分かりやすくなっている」
「視聴者も見ててピンチが分かりやすい」
という印象があり、
ゲームとしても動画コンテンツとしても、よりスッと頭に入ってくる感触がしました。

今が危ない状況かどうか、1画面を見て
プレイヤーも視聴者もパッと分かる仕組みになっているか?


これは動画映えを意識したゲーム開発において、非常に重要な点になると感じます。
自作ゲームも動画映えもなるべく狙っていきたい身としては、
そういった分かりやすさを出すための努力もしたいですね!


【まとめ】
●【ゲーム面】「敵の強化」と「ほとんどの戦闘開始時での自HP満タン化」
により、(自然回復が遅いゲームよりも)アイテム使用など
特別な対応をすべきタイミングが画面の状況から分かりやすくなっている。
●【動画配信面】パッと見て、敵の多さだけでまずい状況か否かが直感的に
分かりやすくなったので、視聴者にも親切になった(かもしれない)。




【バランス】特に条件を必要とせずプレイヤー有利になる要素があってうれしい!

ここから先は細かいお話です!

シレン6では、以下のボーナス要素があって、
私に「ラッキー!」と感じさせる効用が強かったです!
さらにこれらのボーナス要素は、特別なアイテムなしに入手可能です!

●高確率でアイテムが出るキラキラ:
通路や部屋の端にたいてい3個くらいのキラキラが埋まってることがあり、
通常攻撃すると割といいアイテムが2~3個手に入ります。たまに敵や罠も出ます。


↓こういったキラキラを攻撃するとアイテムや敵が! いいアイテムが出やすい気もしますが気のせい?

 
●柱の部屋:壊すとアイテムが出やすい「柱」が9個並んでる部屋などが
出てきてワクワクします。たぶんこれもたまに敵が出ます。



一方、これまでのシレンでは、

●壁を掘れる場合だけ入れる隠し部屋
→ アイテムやお金が大量に落ちているが、穴を掘るためのツルハシなどが必要。

●アイテムが3つ落ちている、水路に囲まれた小島
→ 場所替えの杖やマップ改変系アイテムで入る、割と良いアイテムが多い印象。


といった『特定アイテムを持っている場合だけ入れるお得な場所』が
用意されていたのですが、前述のように必要アイテムなしで
「探索だけで色々と特別なボーナスが手に入る(と感じられる)パターン」は
ほぼなかったか少なかった気がするので、今回のように
「探索するだけでもらえるボーナス」が新鮮でした。

こういう要素は「うれしさ」感情を増してゲームにメリハリを生み出すのに
役立っていると感じたので、ぜひとも参考にしたいですね!


そして思ったのが、おいしい展開に出会うのに、「ツルハシを持ってる」などの「特別な前提条件」なんて別にいらなかったんだ! ということ!

もちろん「前提条件がそろってるときだけうれしい要素」があると
狙っていく意欲が生まれて楽しいのですが、何割かのボーナスは
前提条件なしでもらえても何にも問題なかった!
確かにソーシャルゲームの「ログインボーナス」だって、「ログインする」という
低コストな行為でもらえるものですが、嬉しいと言えばちゃんと嬉しいですもんね。


【アイテム発生量の裏側について考える】

ちなみにこの流れを見て思ったのが、ゲーム開発側は
「全体のバランスが同じまま、こんな風に『喜ばしい体験』だけを
増やすこともできるんだよなあ」
ということでした。

たとえばすでに「地面ドロップ分」だけで完全にバランスが取れた
ローグライクゲームがあったとき、「喜び要素」をそこからバランスを
あまり変えずに足すこともできます。

それは「【通常の1Fあたりのアイテム取得数】を減らして全体のレア度を
下げ、【お手軽入手可能なボーナス分】にレア度の高いアイテムを回して、
総合的に普通通りのバランスになるようにする」
という単純な工夫!
誰でも思いつくけどたぶん意外とやれてない!

でもこうすれば、バランスほぼそのままで
プレイヤーへの「ラッキー!」という感情だけを増やすことだけができます!

どうせ同じ総リソースをプレイヤーに渡すなら
『もっとも喜ばれるあげかた』をした方が体験としてもいいですよね。

こんな風に『大きくバランスを変えずにラッキー感だけを追加で生み出せないか』
という意図を持っておくことは、ゲーム開発において非常に有用だと感じます。
今後もこれを意識して、同じものしかあげてなくても「喜び度」を
たっぷり上げていく工夫も考えていきたいですね!
TRPGでゲームマスターなどをやるときも、こういうテクニックは使えそうです。


【まとめ】
●【感情面】特別なアイテムを用意せずとも、探索しているだけで割と良い目の
アイテムが複数一気に取れる展開があり、プレイヤー感情的にうれしさが増加!

●【開発側視点のバランス】開発側としては、普段出てくるアイテムを少しだけしぼって
ボーナス分に回すことで、全体のバランスをたもったままプレイヤーの
「ラッキー!」感だけを上げることができる(かも)!




【バランス】神器という複数付与つき装備を見つけたときのちょっとした興奮!

シレン6は低確率ながら、最初から付与効果が複数付いている
強力な装備が手に入るようになりました。最大付与枠も多いそうです。
明らかに特別な武器なので、これはうれしい要素ですね!

が、それよりも「あ、これいい!」と思ったのが、
マップ画面上でも光っていて遠くからでも「おっ!」と気付ける
ようになっていること!
近付くと「フィーン!」という感じの何か出たっぽい音もする!
これはハック&スラッシュ系ゲームでレアアイテムが出たときの伝統的演出!

こんな風に

『レアアイテムを目立つようにお知らせして、
拾うまでのディレイを生むことでプレイヤーをワクワクさせる』


という仕組みは、テンション上がりタイムを少しでも
長く生み出すために重要な方法です! 分かってるー!
色んなところから細かくワクワクできる要素を取り入れているのが
すごいしっかりしてるなあ、と感じました。自分も見習いたい!

 私の『片道勇者』でも特殊な付与が複数付いた装備はさらっと登場しますが、
「いっぱい付与が付いてることが遠くから分かるようになってる方が絶対にワクワクできる」ので、
私もそういうワクワク感強化の方向性はしっかり取り入れた方がいいなあ、と感じました。
他にも、「敵だらけのダンジョンの宝箱に強装備が入っている」と遠くから分かるようになれば、
コストを支払って取りに行くか悩めるようになったりして楽しいでしょうしね!


なお、神器の性能は「普通より高い基本攻撃力&印の枠数多め」
という感じだったので、合成ベースとして使うと強い感じでした。
驚異的に強すぎるというほどではありませんが、
「いいベース装備の神器を1本取れると強化の過程をグッと短縮できる」
という印象で、取れるとしっかりうれしいアイテムになっています!


【まとめ】
●【バランス面】特殊能力がいっぱい付いてたり能力枠が多く性能も高い神器が
まれに登場し、遠目に見ても分かるようになっている。
見つけたときにテンションが上がる程度にちゃんと強い。

●【感情面】明確なレアアイテムが遠くから見えたり
音で知らせてくれるとしっかりテンションが上がる!




【バランス】『デッ怪』が登場する、スリルある
ステルス攻略フロアが登場、「夜」システムの進化系?


過去作のシレン5では「夜システム」という、時間が経つと夜になって
めちゃめちゃ強い敵だらけになる代わりに、シレン側も回数制限ありで
強力な技を使えるようになるという状況が一定頻度で発生する局面がありました。

基本的には「敵になるべく合わないように進んでね」「技を活用して進んでね」
というステージだったと思いますが、それまでのプレイの文脈と
だいぶ切り離された状況になる部分もあり、好みが分かれるシステムでした。

今回はその夜システムと似た立ち位置のシステムなのか、
『デッ怪』という存在がダンジョンにまれに登場するようになっています。

『デッ怪』は工夫しないとまともに倒せない巨大な敵で、
攻撃力もすさまじい代わりに、鈍足でしか行動しない敵です。
プレイヤーは「うわああああ!」と言いながら
そのフロア中で『デッ怪』から逃げまわることになります。

『デッ怪』は一定時間で消えますが、『デッ怪ホール』という
ミニマップに常時表示される穴から何度でも召喚されます。
一見、ただのお邪魔キャラクターが出るだけのシステムのように思えます。


【でもちゃんとリスクとリターンがある挑戦ステージだった】
が! 後で知ったのですが、実はこの『デッ怪』にやられないように
フロアを全部回ると『デッ怪』ホールが消えてほどほどに良いアイテムが
もらえるっぽくて、新たなステルス挑戦フロアという形式になっていることが分かりました。

それを知ると「味変(あじへん)の一つとしてこういうのもアリだなあ!」と思ったのですが、
初回プレイ時はそのメリットや、『デッ怪』ホールのつぶし方に気付きませんでした。

先にゲーム内で教えてもらっていたらワクワクしながら挑めたと思うので、
「目立つように報酬があることを情報公開してもらってもよかったかも?」
とは感じましたが、どこかで説明があったのを見逃したか、
見ても覚えてなかっただけかもしれませんね。


この『デッ怪』は、従来の「夜システム」で目指したかったかもしれない
『強い敵がいる中をドキドキしながら進む楽しみ』の方向性をそのままに、
より面白さが生まれる形にブラッシュアップされたものになった印象で、
リスクとリターンが分かるとワクワクできます。

以前狙った内容を良い方向に再構成されている見本として、
これは開発者として勇気をもらえる部分です。
「体験させたい感情」は同じでも、より良いやり方はきっと色々あるんだ!
という希望が持てます。



【バランス(これは昔から)】「腐ったおにぎり」という存在の納得感

これはたぶん初代からなので、シレン6特有の話ではなく伝統的な話なのですが、
「あーこれは納得感の強いバランスだなあ!」と感じられたので取り上げておきます。

シレンシリーズには、『腐ったおにぎり』という食料アイテムがあります。
デロデロの罠などを受けておにぎり系アイテムが腐るとこうなってしまいます。

食べると「混乱」「睡眠」「目つぶし」「まどわし」「力が3下がる」という
ペナルティのいずれか1つを受けますが、満腹度は一定量回復します。
どうしても食べるものがないときはこれのお世話になるわけですね。

で、何がいいかってこの『腐ったおにぎり』、「ちから-3」みたいな
最も被害が大きいハズレ被害を引く確率って、
おそらく20%しかないっぽいことなんですよ!

他のペナルティも、敵が10ターン以内に来ないところで食べれば
仮に目が見えなくなってもすぐ回復して何の被害も受けませんし、
仮にハズレを引いて「ちから」が下がったとしても、「背中の壺」や
「毒消し草」みたいなアイテムでちからを回復する方法もあります。

そして満腹度自体はちゃんと増えるので、
「2割くらいでしか後遺症リスクがないなら許容できるし、
工夫して食べれば問題が起きにくいのはいいなあ」と私も感じられたので、
良いデメリットの作り方として注目すべき部分だな!
というのを今になって感心していました。


なお、『腐ったおにぎり』をプラス効果の『焼きおにぎり』というアイテムに
変換する方法もあるので、『腐ったおにぎり』を持ち続けるという
選択肢にも意味があります。

こんな風に、「デメリットはほどほどなので気軽に食べることもできる」
「焼けるチャンスを待って置いておく選択肢もある」と、複数の選択肢に
ちゃんとバランスのよいメリットデメリットがあるので、
『腐ったおにぎり』はすばらしいデザインのアイテムだ! と感じたのでした。

【プラス効果のランダム効果として強い効果も入れられる】
ちなみにこの逆で、『特製おにぎり』という、食べると
「腹減らず状態」「しのび足状態」「拾い識別状態」「HP全回復」という
4つの良い効果の中から1つが抽選されるプラス面のおにぎりもあります。

特にその中の効果の一つ、「拾い識別(そのフロア中、拾ったものを自動識別できる)」
が付くと、高難度の完全未識別ダンジョンで超有利になったりするので、
こちらも興奮度が高いです!

が、おそらく25%でしかそれを引けないので、強すぎるのはそうなんですが
プレイ全体を通して見るとそこまで強すぎるわけでもありません。

こういったランダム効果もうまく設定できると「やった!」と
プレイヤー感情をゆさぶるのに使えそうなので、よく覚えておきたいと思います。



【配慮】マップに「通ったマス」が表示される!

さて、ここからは配慮のお話! まずマップに通ったマスが表示されます!
なんてすばらしいんだ!

何がいいって、このゲームは「罠」という見えないトラップが部屋に
存在するため、一回通過したマスは安全地帯になるんですよ。
次からは、一度通ったマスを通れば罠に遭遇することはありません。

が、過去作では通ってきたマスなんていちいち全部覚えているわけもなく、
必死になってそれを覚えている方が探索においていくらか
有利になってしまうというずいぶんな記憶ゲーになっていました。
といいますか、さすがに私は面倒で、記憶することをを諦めていました。

ですが今回は「通ったマス」がミニマップを見れば分かるようになっているので、
記憶力に頼る時代は終わりました! いい時代です!
そう、「記憶すべき内容」はツールに頼って、我々は
創造的な作業や判断力を要求される作業をやるべきなんですよ!



【配慮】戦闘テンポがいい! メニューもいつも通り瞬間!

戦闘テンポがよく、メニューもいつも通り瞬間展開されます! 
攻撃モーションは素早く、『片道勇者』と同じかそれ以上の
戦闘テンポなので遊びやすい!
メニュー表示も一瞬で、メインの操作テンポ周りの
不満点は何も思いつきませんでした。

このあたりは基本といえば基本なんですが、
プレイ時のほぼ全ての操作に影響してくるので最重要部分です!
自分も常々、気をつけていきたい点です。



【配慮】一回戦った敵のHPと攻撃力と特殊能力が図鑑で分かる! 敵ダメージも推定可能!

シレン6では、冒険中でも敵の能力を図鑑で簡単に見られるようになりました。
特殊能力についての説明もかなり詳しめに書かれています。

 ※「そんな仕様あったの!」と言われそうな内容も網羅!



特にこの図鑑、遠くからでもいいので新たな敵に一度攻撃すれば、
その時点で図鑑から敵のHPや攻撃力などが確認できるようになるのがあまりに強力!

被ダメージも「敵の攻撃力-シレンの盾防御力」で
計算できる感じだったので戦闘の見通しが立てやすくなっており、
ローグライク作品として非常に遊びやすくなっています。
体を張ってダメージを受けて敵データを学んでいく必要性が
薄くなっており、これこそ時間のない現代人向けの素敵な仕様です!

そしてなにより、マップ上から「見渡す」で敵にカーソルを合わせれば
すぐ図鑑にアクセスできるので、HPや攻撃力や特殊能力を
すぐに思い出すことが可能です。
近付いたら超ダメージを与えてくるかもしれない相手もすぐ分かって安全!

「いちいち図鑑を確認する」という工程を要求される部分は
ゲーマー向きかもしれませんが、こだわる人に対するローグライクとしての
「フェアさ」が行きすぎているほどに便利ですばらしすぎる!

ここまでの仕様は私もなかなか真似できない部分ですが、
複雑な能力を持ったモンスターを出現させたり、急に攻撃力の高い
モンスターを出したりするゲームなら、これに近い配慮は
しっかり入れた方がよさそうだと感じます。

 ちなみに『片道勇者プラス』でもこの図鑑ほどできていないにせよ、
大ダメージを与えてくる敵は先に教えないとフェアさが足りないと思ったので
「危険な攻撃力の敵は赤く点滅して遠目にも分かるようになっている」
みたいな配慮を入れて対応していました。




【配慮】一度見たアイテムの価格や売値が図鑑で分かる! もう値段を覚えなくていい!

上と同じく、アイテムの効果や、
「価格」や「売値」も冒険中に確認できるようになりました!
これまで攻略本を見なければ分からなかったことが
ゲーム内で分かるようになっており、遊び手視点で非常に感動しました。

特に上級難易度のダンジョンでは値段でアイテムの識別をする場面が
増えてくるので、それをチェックできるのはすばらしい!

従来は、なかなかここまでゲーム内での情報公開が
されてこなかった印象があるので、ここに来て殻を一枚やぶってくれた感触があります。
こういったデータ面での配慮は、私も参考にしたいくらいです。

わがままを言うなら、さらに一歩進んで買い物時に
「過去に見たどのアイテムの値段と一致してたか」の候補まで
出てたら超最高でしたが、さすがにそこは自分でチェックしましょうって感じでした。
自分でローグライクを作るときは、そこまでこだわれそうなら
開発こだわりポイントになるかもしれませんね。



【配慮】攻略したダンジョンの敵テーブルが見られる!

踏破したダンジョンのフロアは、
敵の出現テーブルが見られるようになります! すごい!

実際に出会ったモンスターだけしか表示されませんが、
前述の通り、敵の詳細スペックも見られるのでもはや攻略本が必要ありません!
なんということだ!
いやそもそもWikiに駆逐されてて攻略本が出せるご時世なのか分かりませんが!

敗北しても、あとからデータを見て攻略プランを練ることができるのはすばらしいと思います。
実装もきっと面倒臭いでしょうに、よくがんばってくれました! ありがたい!



追記:【バランス】通常攻撃は簡単に命中率100%にできないらしく、
良い意味で緊張感ゼロにさせない信念を貫いている


どうも今作、これまでにあった『必中の剣』みたいな100%必中の
「武器」や「印(効果)」がだいぶ入手困難になったっぽくて、
通常攻撃戦闘においての「確実性」を実現するのが
かなり難しくなった印象があります。

必中効果、存在するのは存在するらしいのですが、
SNSで見た感じ特定の裏ダンジョンでしか出ないという感触で、
私はいまだに見たことがありません。
2024-2-2時点で攻略サイトを見てみても「必中の印」の情報が
まだ載ってなかったり、あるいはアイコン画像が歯抜けになっている
(攻略班が撮影できてない?)くらいですからよほどなのでしょう。

おそらく確率面の緊張感をゼロにしない意図で
『ノーコストの行動に100%の安心感を作れていた』要素への
アクセスを難しくしたのではないかと思いますが、こういう細かいところまで
対応してるのは『なるべく多い時間、緊張感の維持をさせたい』という
意図を貫いてる感じでしっかりしてるなあ! と思ってしまいました。

あまり詳しくないのですが、従来は『必中の剣』系は
最初の30Fダンジョンでも割と入手しやすそうなアイテムだった記憶があります。

「100%の確実性を得られるのは『杖や巻物などのアイテムを消費』する場合だけ」
という風にほぼ固めて、『通常攻撃には小さくとも確率的な不安要素を
残したり、攻撃を外した場合のサブプランを想定させるようにして緊張感を生み続ける』


アクセスしにくくされた要素からも、プレイヤーにどう感じさせたいかの意図が
にじみでていて、強い信念のもとで取捨選択や取得難易度の設定が
行われたのだなというのが感じられます。



追記:【バランス】裏ダンジョンがこれまでよりなじみやすそうに感じられる!

現在、大量に出てきたクリア後ダンジョンなども眺めているのですが、
今作はクリア後ダンジョンの
「段階的に『もっと不思議』に慣れさせようとしてる配慮」
が優れていそうだったり、
「これなら楽しく遊べそうかな?」感がしっかりにじみでてたりと、
ガチ性よりも面白さにちゃんと振ってる感じがあって、
遊ぶ前からワクワクをかきたてられています。従来作よりもです!

いや、その、これまでの裏ダンジョンって私みたいなライトプレイヤーだと
「元気なときにやろうかな」ってなっちゃってなかなか
触る気力が出なかったところもあるんですよ!
プレイテンポが今回ほどでなかったのが心理的にジワジワと
モチベーションを削っていた、などの要因も密かにあったかもしれませんが。

でも今回は、草や巻物なども未識別になってしまう
「もっと不思議」系のダンジョンでも、一部のダンジョンは
完全に未識別なわけではなく、
「未識別アイテムにカーソルを合わせると3択の識別候補が示されて、
どれかを推測する」という段階が間に入ってたりして
とても遊びやすそうです! これを考えた人すごい!


こういった「なじみやすさを上げようとしている部分」の肌感覚は
プレイに慣れてしまうと忘れがちで、かつ開発側だと真っ先に
意識からはずれやすい部分なので、こういう配慮をすべきであることは
しっかり記憶に焼き付けておきたいと思います。



以上、ちょっと遊んで感じた点をとりとめもなく書いてみましたが、いかがだったでしょうか。
私がこう感じたという話なので「いやそこは解釈違いだよー」などは
あるかもしれませんが、たとえ誤解でもゲーム開発の
役に立ちそうな意図をたくさん得られた気がします。

シレン6は全体を通して、「感情をゆさぶる仕組み作り」が従来以上に上手だったり、
「(作るのも手間がかかりそうなのに)あればうれしい補助機能」が
存分に搭載されてたりと、満足の塊みたいな一作でした!

過去作と比べるだけでも、感心するほどたくさんの配慮や、
盛り上げるための様々な仕組みが取り入れられており、
ゲームのブラッシュアップとはこうするんだぞ、
というすばらしいお手本を見せてもらった気がします。


私がどこまで学べるか分かりませんが、
すばらしい意図はいくらでも使えるようになりたい!
できる部分から、吸収できるところはしっかり学んでいきたいと思います。
 2024-02-03 (土) web拍手 by FC2 カテゴリ: 開発日誌, 勉強メモ




2023-05-27 (土)   ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダムお勉強メモ
 ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダム(以下ティアキン)を
ちょっと遊ばせていただいたので忘れないうちに
自分が「これいいな!」と思った部分のメモをさせていただきます!
とりとめもなく脳内公開している感じですが気になる方はぜひ!

 なお、ゲームプレイ面で思いっきりネタバレしているので、
まだまだ未知との遭遇や初めて感を楽しみたかったり
自分の想像力を試したいという方は閲覧をご遠慮ください!

能力のたった一言の使い方説明ですら、すごいネタバレ、
といいますか大きな示唆(しさ)を与えてしまいます。
自分で気付くのも楽しいゲームです。

スクラビルドなんだこれ…! と思いましたがどう考えてもSNS時代に向いている能力だと思います



【ゲームの「広がり」がすごい】


●基本能力の習熟時間や想像力の要求度がすごくて飽きない

 ゼルダシリーズはブレスオブザワイルドに続き、
序盤で能力のほとんどが集まるため、今回も20時間くらいで
慣れて味わい尽くしちゃうかもしれないなあ、と思っていました。

 ですが、その能力、どれも扱いが難しい! といいますか
『習熟時間や想像力の要求度』がすごいんですよ!


◆物体を動かして接着できる『ウルトラハンド』は組み合わせ次第で
本当に何でもできる! パーツ次第で空も飛べる!
これを活用した物理演算パズルが楽しい!
看板支えをいくらでも遊びたい!
 
◆武器と素材を組み合わせる『スクラビルド』は、想像力を働かせて組み合わせれば
便利装備が作れる! 火を噴く頭パーツと武器をくっつけたら
火がちゃんと出て火種として便利! ケムリダケと盾を組み合わせると
ガード時に敵の視界を奪えて背後を狙えて強い! 盾トロッコでスケートも! などなど。
 
◆頭上を貫通して移動できる能力『トーレルーフ』は、そもそも
頭上を通り抜けるという発想がこれまでのゲームで全然求められこなかったせいで、
今いる場所からでも上に貫通できるという発想につながらなくて、
使いこなせるまでの要求習熟時間が長い!
洞窟からでも地上とか建築物内に抜けられるとか有り!?
 
◆物体の時間を戻せる『モドレコ』、これもこれまで想像慣れしてなくて
マスターできるまでの時間が長い!
敵の投げてきたものにも使えるとかすぐ思いつかない!
しかもウルトラハンドで動かしてモドレコすることで、
一度空中に浮かせて落ちたものに乗って
高いところに移動するなんてこともできるんですよ!
 
◆過去のクラフト品をコストを支払ってどこでも作れる能力『ブループリント』は、
そもそも作れるものが無数にありすぎて可能性無限大!
私はコスパ優先マンなのでプチ戦車や板2枚で作ったプチ坂が
戦闘で大活躍でしたが、巨大戦車やロボットを作る人も!



 といった具合に、使い方の幅の広さがすごかったり、性質が新しすぎて
すぐに使いこなせない能力ばかりで20時間程度ではとても習熟しきれず、全然飽きないんですよ!
1個1個が能力バトルマンガのキャラクターが持ってるような応用性がありますし、
そんなのを組み合わせて使えてしまうのでもっとすごいことになってしまいます。

これらの少ない能力でゲームの面白みを過去作から大幅に広げているのが
すごいと同時に、こういう「習熟に時間がかかる能力」や
「想像力やパーツ次第でできることが広がっていく仕組み」が
ゲーム寿命に直結するのだということを強く分からせられてしまいました。

 いっぱいゲーム慣れすると、「新作なんだけど類似能力の使い方をほぼ習熟済み」な
ことがあったりしてプレイヤー的にゲーム寿命が長持ちしないことが結構あるんですが、
ティアキンはほとんどそれをはずしてきててすごいです。

 そして同時に、特定の能力に頼らなくても別解で突破できるように
してあることも多い「ゆるさ」もあるのがすばらしい!
人によって差がある習熟度を、一律に線引きしてこないのがえらい。



<ゲームの「延長」と「広がり」の差>

 実は前作ブレスオブザワイルドは、最初の能力を得たら基本的に
もうどこまでも行けて、能力の拡張は「元の能力の機能向上」や
「より強い装備や新しい料理が出てくる」ことによる「延長」という感触が強くて、
20時間くらいプレイすると
「だいたいゲーム部分の楽しみは一通り味わいきっちゃったかな?」
と感じるところもありました。

 これはどんなゲームでも同じで、絶対に逃れられない運命です。
私は立派なゲームでも10時間くらいでそれに達することが多くて、
20時間も「広がり」を感じ続けながら遊べたならものすごいゲームだと評価します。

 ですが今作はそんなレベルを圧倒しており、ゲームを進めていくうちに、

●プレイヤーが気付きにくい能力の使い方がほこらで提示され、新たな使い方を学べる。
 
●使えるクラフトパーツが増えるたびに新しいクラフト品が作れるようになる。


 といった、私が求める真の意味での「広がり」に出会えてばかりで、
一般のゲーム寿命を味わい尽くしているであろう十分なプレイ時間が過ぎても
今のところ全然飽きる気配がありません。

 そう、「延長」ではなく「広がり」、『新しい側面が見え続ける』のです!
「味変(あじへん)」とも友人が言ってくれましたが、まさにそれです。
 今作は何十時間あそんでも「ゲームを味わいきった感」が来ないので「すげー!」と言っています。

 とにかく、開発者側で数々の試行錯誤があったであろう中で、
最終的にティアキンに選ばれたリンクの能力を並べてみると、

「初見でも直感的に使えて便利さがある。それと同時に
『習熟に時間がかかる能力』や
『想像力が求められる能力』であること」


 という方針で特に強力なものが選ばれていると感じます。

これらは私が「ゲームの寿命を長くする」というテーマで考えてきたときに
ほとんど言語化できたことがない『意図』だったので、
それをズバッと提示されたことにハンマーで頭を殴られたような衝撃を受けました。

たとえば習熟時間に関しては、「トーレルーフ」は
頭上の物体を貫通できるだけのシンプルな能力なのに、
プレイヤー視点だと最初はそれができる場所を意識するのが難しくて
全然使いこなせないんですよ!
常にトーレルーフ準備状態で歩いてみると驚くほど使える場所が多い!
想像力が要求される能力に関しては言うに及ばず!

もちろん、こういったプレイ寿命の長い能力を生み出すには
想像力を反映するための「大量のバリエーション豊かなデータや組み合わせの作成」、
そして「処理を安全に動かすための果てしない検証や、安全に動かせる堅牢な仕組み」
が必要で、ただ平均的なゲームを作る場合よりも多大な努力が必要なはずです。

 特に何度も話題に出る「トーレルーフ」なんて絶対バグの原因になりそうな気が
するんですがどう回避しているんでしょうか! 全ての地面に使用可能判定を記録している?
何か安全な突き抜け判定の仕組みを編み出している?
 分かりませんが従来のゲームでの同機能の実装例があまりに希少なことを考えると、
その搭載の難しさを乗り越えた努力には頭が下がります。




●パーツ入手によるクラフトの拡張が徐々に
遊びの幅を広げられて楽しい!


 (アクション)RPGは、「後半になって新しい技を1個もらったけど、
前にもらった強化版みたいな効果だからプレイ感はあんまり変わらないなあ」
ということが起きがちなゲームで、「後半に追加される能力」で
さらに面白さの幅を「広げられる」よう設計するのは、
開発者としてかなり難しいことだと認識しています。

 さっきも言いましたが、従来要素の「延長」はしやすい一方で、
プレイ寿命を延ばすための遊びの「広がり」を作るのは難しいんですよ!
出てくる要素が従来の「延長」ばっかりになってきたな、と思ったら、
そこが私がゲームに飽き始めるタイミングになります。

 ですが、今作では「広がり」の一つとして
「マップを探索するにつれて使えるクラフトパーツ(ゾナウギア)が増える」
という要素があって「これは長期的なクラフト面での成長にワクワクできて面白い!」
と思った点でした。

 というのも、今作のクラフトパーツって何か1個パーツが増えれば、
それまでに持っているX個のパーツと合わせて
一気に化学反応の広がりが増えることがあるのです! 

 なのですでに何十個のパーツが使えるようになっていても、
さらに違う効果の新種のパーツが出てくるのはうれしい!

 また、本作は単純な「あるパーツの強化版」みたいな「延長」的パーツが
ほぼなくて全部の効果が違うのもすばらしい点!
とにかく新パーツが出てくるたびに化学反応が広がる期待が生まれているのです。

 従来のクラフトゲームではもはや標準搭載されているこの遊びの広がり方ですが、
こういった「化学反応的なゲームの広がり」は自分のゲームでも
ぜひ狙っていきたい部分です。たとえばクラフトでなくとも、
アイテム同士の化学反応でワクワクできるような造りにもできるはず!

 確か『[片道勇者開発記](https://amzn.to/3Wx5gNv)』あたりでも
「命中率が低いけど攻撃力だけ超高いツルハシに命中アップ効果を
付与したらどうなっちゃうんだ!?」みたいな感じで、とにかく
「これと従来のアレを組み合わせると何ができちゃうんだ……!?」
と想像できる楽しさはワクワクしますよね、
ということを言った気がしますが、まさにそういうものです。
 といいますか、今言った例もある意味でスクラビルドや
クラフト的な話かもしれません。合成要素ってやっぱ強いなあ!

 こういった化学反応的なワクワク作りは今後のゲーム開発人生でも
超重要になってくるでしょうから、色んな形で生み方を増やしていきたいと考えている点です。




<おまけ クラフトパーツがガチャで手に入ることで
死にパーツを少しでも減らそうとしている工夫>


 今作、「クラフト用にどこでも出せるパーツがガチャで手に入る」という
仕組みになっていて、これも面白い点でした。
ガチャ装置に特定のアイテムを入れると、そのガチャに入っている
4~5種のアイテムからランダムでパーツが出てくる仕組みです。

 「欲しいのだけ買える」仕組みだと絶対に1個も買われない
死にパーツが出てくるでしょうから、こういう形にしたのはとてもいい方法だと感じました。

 開発者が無思考にデザインした場合、入手方法は
「好きなパーツを買える」という仕組みにしがちだと思うのですが、
その場合「実際に使ってみると有用だったとしても最後までそうと
気付かれずに買われない死にアイテム」がかなり高い確率で出てくるんですよ! 
 普通のRPGでも、よく分からない消耗品をわざわざ買わない人は多いですよね。
私も効果を確実に理解しているものしかほぼ買いません。

 でも今回のガチャ式では、買い物式と違い
「とりあえずもらったので使ってみるか」という出会いのきっかけがありました。

 たとえば私は「おきあがりこぼし」というパーツの意味がよく分からず
放置してたのですが、ガチャで出た分を余らせてたので気軽に1個試すことができ、
有用性に気付くことができました。
これ効果を理解すると色んなところで使えるんですよ!
後にほこらでさらなる応用例が提示され、さらに学ぶことができました。

 そうでなければ使ってさえいなかったでしょうし、
仮に使い方を学んでも買うほどではなかったと思いますから、
「ガチャでついでに出てなんか余ってるから使ってみるかー」というきっかけも、
力は弱めにせよ重要な誘導な手段なのだと感じました。

 ※ちなみに「おきあがりこぼし」は、「起動すると接着されたパーツごと上を向く」という、
言葉で聞いてもたぶんよく分からないパーツで、車体の安定を維持したり、
砲を大量に貼り付けた板を垂直に立たせるのに使えるものです。
地面に落ちた大きな板に貼り付けてその端にリンクが乗ったまま板を
縦に起き上がらせれば、簡単なリンク吹っ飛ばし装置も作れます。
地味ですが幅広い使い方のできるパーツです。




●ほこらを遊んだり新しい設計図を手に入れるほど
新しい使い方が分かっていく、という形の広がり


 さっきもこの題目に近いことを言いましたが、さらに掘り下げて話します。

 まずほこらはメインシナリオとは独立した謎解きステージなのですが、
今作のほこらは能力やクラフトパーツのチュートリアルになっている
ステージも多く、たくさん遊んでいくと
「え、こんなこともできるの!?」みたいなことにだんだん
隠された使い方に気付かされていく形になっていました。

 一部クエストを進めて得られる「新しい設計図」も同様で、
かなり実用的なクラフト品が作れるようになっており、
ちゃんと有用なクラフトパーツの組み合わせ例を提示してくれます。

 これ、どちらも本当によい出し方で、
「ゲーム側から具体的な例を数例ずつ提示してくれることでプレイヤーの中で急に色んなものが繋がって、
応用のきっかけが生み出せるようになる」
ことって結構あるんですよ!
少なくとも私に関しては!

 「実用かつ具体的な応用例を時間をあけて1つずつ提示していく」、
この方法は、個人的に好みで非常に良いと思っている手法の一つです。
私自身は開発ジャンルの影響もあって開発側としてあんまり
使えてない手法なんですが、自由度の高いクラフト系ゲームにおいては
超重要ではないかなと思っています。
 

 そもそも今作のリンクの能力は、クラフトパーツと合わさって
使い方が無限に広がっていく感じでして、ほこらのステージバリエーションも非常に豊富!

 前作のほこらは能力や既存ダンジョンギミックの応用を突き詰めた
ガチな謎解きに重点が置かれていた印象でしたが、
今作は能力やパーツの新しい発見や遊びに気付かされるステージであることが多く、
ほこらが非常に面白かったです。

 こういった、『暗黙の使い方が明らかにされていく』という方向性で
ゲームの「広がり」を感じられたのは久々の体験で、
色々なゲームを遊び込んできたつもりの自分でもとても新鮮さがありました。

 「ゲームが進むにつれて(知っていればすでに使えていたはずの)新しい使い方を学べる」という見せ方も
『ゲームが広がる感』につながるんだなー!
 と学べたので、自作品でも
そういった工夫が取り入れられそうなら取り入れていきたいですね!

 そういった「すでに使えたはずの隠れ技を学べる」一例としては、
たとえば古いゲームですが初代『風来のシレン』の
「フェイの問題(特定のアイテムやシステムを使わせたり、
隠されたルールや効果を使わせてパズル的にステージを攻略する)」
などもその一種かもしれません。

 また、死亡時のアドバイスで「アレをこうやって使うと生き残れるぞ」
という紹介をすることも、広義で見れば「ゲームが広がる感」に
繋がるやり方の一つだと思います。

 これらどういう経緯であれ、
「じゃあ次はこのテクニックや使い方を取り入れて遊んでみよう!」
と思えればもっと遊びたくなります!
ティアキンはそれが定期的に提示されてくるのがいいんですよ。

 もちろんその中には「実用面では使えなさそう~」と感じるテクニックも
多いんですが、Twitterなどを見てるとその使えなさそうな使い方を応用した
動画を上げておられる方もいらっしゃったりするので、そういう意味でも
ゲームの広がりを感じたり、自分もやってみたいと思うことがありました。



【リソース周りの配慮や工夫】


●戦うほど「保有武器の総火力」が確実に増やせる仕組みになった!

<まず前作でどう感じていたか>

 ここでは武器の話をします。今作の武器まわりについて語る前に、
前作ブレスオブザワイルドにあった武器まわりで
「つらさ」を感じていた部分について紹介させていただきます。

 まず、前作も今作も武器には「耐久力」があります。
なので、手持ちの武器の「攻撃力×耐久力」から導き出せる
「総火力」は常に気にしなくてはいけません。

 そして前作では敵と戦うとき、個人の感想ですが
「この敵を倒して火力の元は取れるんだろうか……?」
 という不安が常につきまとっていました。

 というのも、前作は

「敵を倒して得た武器がしょっぱいことがある」

「先行入手できる強い武器はほこらなどからの宝箱産であることも多く、
使うのがもったいなく感じることが多い」

 という形になっており、要するに
『敵と戦って火力収支が確実に増えるという保証がない』という状況や、
『貴重な武器かもしれないものを使うのはもったいない』状況が頻繁に発生し、
敵と戦うことや強い武器を使うこと自体に常に結構なストレスがあったんですね。

 最後まで遊んでみるとその点は全く問題ない設計だったと思うのですが、
情報が少ないプレイヤー視点では、プレイがかなり進むまで
なかなかゲームを信用することができませんでした。

 何なら武器の消耗を抑えるために、時間がかかっても
クールタイム制の無限バクダンで戦う人も多かったのではないかなと思います。
(そしてそのバクダンがあったおかげで、武器管理のストレスが許される面もあったかもしれません)

 なお、ゲーム後半は「壊れても一定時間で再生する中威力の無限武器」が
手に入るので、そういった問題はある程度解消されていました。



<今作の武器システムはどう変わったか>

 本作ティアキンでは、拾える武器の攻撃力は全体的に低めで、
後半になっても攻撃力10以下の武器を拾うことがザラにあります。

 ですがこのゲームは前作ブレワイと違い、敵を倒すと
「攻撃力の元」ともいうべき素材がアイテム欄に半無限に保有可能で、
それを武器とスクラビルド(合成)することで攻撃力の高い武器を作れる
ゲームシステムになっています。強い敵は強い素材を確実に落とします。

 その結果、『強い敵と戦っても安定して火力収支が増やせる』という安心感が生まれ、
強敵と戦うストレスがかなり減少しました。

 といいますか、強い相手とは戦えば戦うほど武器の火力密度を上げられて
逆にお得になりました。
これは前作の不安を感じていた身にとってはすばらしい改善点です!
(といっても、私は1つめの神殿開始あたりまで敵素材と
組み合わせるのに気付かなくてだいぶケチってましたが)

 また、数値バランスの面でも納得の内容で、
「この数値設定なら何となく遊んでる場合でも不安を感じにくいのか!」
と学ぶところがある設定でしたので、以下にメモしておきます。



<武器の火力収支はどんな数値バランスだったのか>

 ここでは序盤から戦える強敵『黒ボコブリン』を対象としてお話を進めます。
 黒ボコブリンは同型のザコ敵の中では上から2番目くらいに強い敵で、
高ランク帯エリアでは複数体同時くらいに出てくることもある敵です。

 そして黒ボコブリンの素材を使うと、序盤で確定入手できるものだけで
「攻撃24で推定43回分使える『黒ボコエッジ』」が簡単に作れます。
 (最初の村にある「避難壕」で頻繁に入手可能な武器「騎士の剣 攻撃力7」に、
序盤からハイラル城の少し奥で戦える黒ボコブリンを倒して得られる
「黒ボコブリンの角(スクラビルド攻撃力17)」をスクラビルドする)


 体力が推定250の黒ボコブリンを倒して上記の『黒ボコエッジ』が
1本作れると考えた場合、手持ち火力が
「攻撃24×43回=1032点」ぶん増やせます!(ラストヒット分は考慮外とします)

 言い換えると、
「体力250の黒ボコブリン1体を倒すことで、
黒ボコブリン4体分を倒せる総火力1032点の武器」
が作れる計算になるわけです。
黒ボコブリンを倒せば、火力収支で見て約+300%の儲け! 超大もうけ!

 実際のプレイではこの記事を書くまで武器の使用回数などを
正確にカウントせずにあいまいに戦っていましたが、
それでも火力収支で不安になることはなかったので、
この感触を出せるこのバランスは絶対に重要な数値だと感じました。

 「中~上級クラスの敵を相手にして+300%以上の収支で
ようやく不安を感じない感触になるのかー!」と思ったので、
私含むプレイヤーの直感は結構欲が深いんだなあと感じます。
 (なお、検証してませんが一番上級の白銀系モンスターだと
収支+100%~150%くらいまで下がるケースもあるかもしれません。
逆に、もっと弱い敵は収支%がさらによくなりそうでした。幅は+700%~+100%くらい?)


 そして同時に、
「強い敵に挑み続けるほど保有武器の攻撃力濃度が上がっていって
火力の総計が増えていく」という形になっているのがすばらしい好循環を産んでいるな!
と感じました。RPGなんですから、リソースや時間を投入するほど
一方的に資産が増え続けてもいいんですよね。

 という風に、「前作では敵を倒しても入手できる武器が不透明なせいで
火力収支が増やせるという信用があまりなかった」のに対し、
「今作は確実に火力が増やせるという信用を与えられる造りになっている」点、
そして「そう感じさせるための火力収支の数値設定がされている」点など、
このあたりは自分が作るときも大事にしたいと感じた点です。



<プレイ中の誤解 何らかの無限武器があるとやっぱりうれしい>

 実は私は、ティアキン開始時に攻撃力1のボロボロの聖剣を持っているのを見て

「お、攻撃力1のマスターソードが使える! これたぶんゲーム進行と共に
徐々に攻撃力が上がっていくやつでしょ! 『火力は最低でも無限に使える武器』を
1本用意してくるとは前作の武器への不安をカバーしててえらいなあ!」 

 と誤解していました。ただこの理屈自体は有効な案かもしれないとは思っていて、
実は「ギリギリ戦える程度に低火力だけど無限に使える武器」が
1つあるだけでも安心させやすいのかなと思っていたのです。

 たとえば攻撃力が【最大ハート個数/2】点で無限に使える
「素手パンチ」という攻撃ができるだけでもけっこう安心感が
出るんじゃないでしょうか。

その場合ほとんどの人が格闘家リンクになってしまいそうな上に、
かえって戦闘時間が延びそうですけども! 安心の代わりにテンポが悪くなるのもなあ!
それを考えるとうっかり低火力無限武器を入れるというのも難しい問題ですね。

 いちおう物語が進めば、
「壊れたら一定時間で再生する、(今作のベース武器としては)かなり高火力な無限武器」
が手に入ります。後半の敵ほど火力収支率が悪そうなのは、
その武器で戦うことも加味されているからかもしれませんね。

 なお、前述の攻撃力1のマスターソードですが、
一瞬で壊れて二度と戻りませんでした。
私の想像は全く合っていませんでした。悲しい。

 

<おまけ 武器の使用回数>

 ちなみに、武器の総火力の計算のために検証した武器の使用回数は以下のような感じでした。
 これらは「木」をひたすら通常攻撃して切り倒しまくり、武器が壊れるまでの回数を検証しています。

【武器が壊れるまでのヒット数】
 騎士の剣(スクラビルドしない):18回 
 黒ボコエッジ(騎士の剣+黒ボコブリンの角を合成):43回
 黒ボコブレード(丈夫な太棒+黒ボコブリンの角を合成):51回(「丈夫」効果により耐久度が高い)

 「元の武器は朽ちてボロボロなのですぐ壊れる」というゲーム内情報はありましたが、
スクラビルドしただけでこんなに耐久度が増えるとは予想外でした。どんどんスクラビルドしましょう。



●「数を気にせず使ってほしい!」というアイテムはまともに使い始める時点で
100個くらい持ってても問題ない


 前述のように火力リソースは潤沢に与えられる形になっていましたが、
このリソース面の話は戦闘周りだけでなくティアキン全体におよんでいます。

 たとえば「アカリバナの種」という、投げると明かりになるアイテムがあります。
地底マップの、特に序盤ではそれを設置していかないと
視界の確保が大変なのですが、なんとこのアイテム、
私が地底に下りた段階でもう100個以上も持ってました。それくらい集まりやすいのです!

 さすがにこれだけあると20mごとの高頻度でポンポン投げてもいいなーと
思えるくらいに気が楽で、ケチな私でもいきなり
「消費を気にせず使えそう!」と思えたのは重要な体験でした。

 ガンガン使って欲しいアイテムは、
「無思考に使いすぎた場合だけ数が減るけど、そうでもない限りほぼ減らないし、
何なら使う現地にもけっこう落ちてるよ」くらいにしていいんだなー!
という良い「ゆるさ」の見本として勉強になりました。

 今作は見つけたアイテムを拾っていればアイテム切れを起こす不安がほとんどなく、
ストレスフリーで非常によかったです。

 でも最強の範囲火力として使っていた「バクダン花」だけは一度なくなりました。
とはいえこれがほぼ無限に補給できると、爆撃しまくりゲームになって逆に
「無思考プレイ」になってたでしょうから、使い所を考えさせるいいバランスだったと思います。



●「拡張に使うのがおすすめな分」と「消費分に使っていい分」を
別アイテムにしてほんのり誘導してくれている親切さ!+在庫制限の配慮


 このゲーム、クラフト周りに関わる鉱石として「ゾナニウム」と「大きなゾナニウム」というアイテムが入手できます。
 この「ゾナニウム」と「大きなゾナニウム」、それぞれ以下の用途に使われます。


【ゾナニウム】
・『ブループリント』(過去のクラフト品を作る能力)のコストとしてたくさん使う
・「バッテリー回復用の消費アイテム」を作る(低効果、ガチャ用途でまれに補充する)
・「バッテリーの拡張素材」を作る(効率は悪め)

【大きなゾナニウム】
・「バッテリー回復用の消費アイテム」を作る
 (強力なアイテムだがドロップ品でも必要分くらいは拾えるので滅多に作らない)
・「バッテリーの拡張素材」を作る(高効率!)


 で、数値バランスを見てよい点だと感じたのが、
「大きなゾナニウム」の方は「ぜひバッテリーの拡張に使ってください」という
雰囲気の交換バランスになっていたこと!
なんと交換バランス的に、「大きなゾナニウム」1個で
普通「ゾナニウム」の20個相当のバッテリー拡張力があるのです!

 ちなみに「大きいゾナニウム」は、ある程度「地底」の奥地まで行けば
採鉱で「ゾナニウム」10数個あたり1個くらいのペースで
手に入る感触でした(検証なしの主観です)。

 これにより、バッテリー拡張にはまず「大きなゾナニウム」を使っていけばいい、
という感じになっていて、普段クラフトで消費する普通の「ゾナニウム」は
基本的にそのまま残しておいていいよ、というのが
ほのめかされているように感じられて、

「どの割合で拡張と消費に振り分けるか」
という難しさを要求してこない空気になっている


のがすごく助かりました。
(でも序盤「ゾナニウム」でしかバッテリー拡張できないと思っていた頃は
拡張の手間が膨大に感じて大変でした)

 もしこれが普通の「ゾナニウム」一種類しかなかったとしたら、
「何割くらいを消費用に置いといて何割をバッテリー拡張に使えばいいんだー!
ああー拡張に使いすぎて消費分が足りなくなったー!」

となるかもしれず、その配分を考えるストレスや不安を感じやすくなっていたと思います。

 本作は前作よりもリソース周りの不安を可能な限り
減らしていきたいような印象だったのですが、このような
「常に不足しがちな素材」の使い方に対して不安を減らす一つの形として、
こうやって「拡張に有利な素材」と「消費に有利な素材」に分ける

この手法は非常に納得のいく工夫に感じました。

 もちろん単純に
「バッテリー『拡張』専用の素材と『消費』専用の素材で完全に分ける」
という手もありますけど、前述の仕組みのいいところは、
「最大までバッテリー拡張したあとにも消耗品として変換できて、
活用しどころがなくならない点」ですね!
 「大きなゾナニウム」で作れるバッテリー回復(一時的に無限になる)アイテムは
それはそれで強力で価値があります。

 特定のリソースが『拡張専用』だと、拡張が限界まで達したときに
ポイントの存在意義がゼロになるので、
「主に拡張用だけど、最後まで何らかの消耗用にも使えるようになっている」
という形はリソースの意味をなくさせないために重要だと思います。

 ……はい、私も何度か自分の開発で
『拡張し終わると完全に無意味になるリソース』を作ってしまったことがあります。
こういうリソースがあると、どうしてもやりこまれる遊び手の方にとって
地味にションボリ感が出ちゃうので気をつけないと!

 ちなみに序盤「ゾナニウム」でしかバッテリー拡張できないと思っていた頃は
拡張の手間が膨大に感じて大変でした。
「大きなゾナニウム」概念にもっと早く気付いていれば……!


<一定時間ごとに一定個数ずつしか交換できない仕組みのおかげで
採掘以外のこともしようと思えた>


 そして、「ゾナニウム」らをバッテリー拡張アイテムへ変換するときは、
「精錬するのに時間がかかる」という理由で
プレイ時間ごとに交換個数の制限があります。

 このプレイ時間ごとの交換制限、最初は
「先が長いなあ~」と思う面もあったのですが、
後半まで進めて色々分かってくると
「バッテリーがマックスに成長するまでずっと採掘ばっかりする人が出るから」
という理由で設けられているのかも、ということに気付きました。

 時間ごとに一定数しか買えないこの制限は、

 「他のこともやってほしいので一旦在庫なくなったらしばらく採掘しなくていいよ!」

という暗黙の誘導として働いていたのです。
なんせ私も気付かずにこの誘導通りに動いてましたからね!
おかげで採掘はほどほどにしつつゲームを進めることができました。
もし自分もそうしてほしい部分がでてきたら、
こういった「定期在庫補給システム」を導入しようと思います。


 あとこの制限は私にとって、序盤に効率が悪い普通の
「ゾナニウム」→「バッテリー拡張アイテム」の変換をしていた頃に発生しえた

「『ゾナニウム』を全部交換したらもっと効率いい
『大きなゾナニウム』交換が出てきて後悔したー!!」


 という状況を回避するのにもとても役立っていました。
それでも普通「ゾナニウム」が効率の悪いバッテリー素材交換に
結構吸われてしまった上に「これバッテリー増やすの効率悪すぎでしょ!」と
何回も言ってましたけど!

 とにかく、不利な交換をしすぎないようにする「事故防止」の観点でも、
この「一定時間ごとに一定数しか買えない制限」が機能していて巧いな!
と後になって私は感じていました。
(でも最初から『大きなゾナニウム』交換が公開されていてもよかった感じはしました)



●クラフト乗り物を多用することが推奨されている地底で
クラフト材料が大量に手に入る好循環


 リンクのクラフト品再現能力『ブループリント』を使うと「ゾナニウム」を消費していくのですが、
『地底』では徒歩での移動が大変な代わりに鉱石「ゾナニウム」を手に入れやすく、
「ゾナニウムを手に入れたそばからじゃんじゃん消費して乗り物を作って
移動すると快適にプレイできるよ!」という好循環が回っていました。

 『地底』は徒歩だと最大ライフが奪われる危険地帯が多いので
小型な乗り物でも乗る価値が大きい上、後半は地形も過酷になるため、
乗り物の工夫を存分に楽める形になっています。

何にせよ「ゾナニウム」をすぐ補給できる見込みがあるので
ほとんどケチらなくていい、という適度な安心感が与えられています!

 地底ではクラフト能力を使って欲しい感満々だったので、
そういう場所で能力を使うための消耗品がジャンジャン手に入るようにして
回すようにしてあるのが素直にいいなあ! と感じられたマップ構成でした。
前述の「アカリバナの種」の話もそうでしたが、他の部分でも一貫して
消費への不安をなくしたり、ケチりすぎなくていいよう構成されているのです。
(とはいえゾナニウムはけっこう減り気味だったので節約はしました)

 『開発側で遊び手にやってほしいことがあるなら、
それを行う際の不安を減らす仕組みにする』


 一言で言えばゲームとしては非常に当たり前の方針ですが、ティアキンでは
リソース面でかなりそれを徹底して実現しようとしている感触がありました。
 そしてそれに実際に触れて、実際に余計な不安なく気持ちよく楽しむことができたので、
自分もこの肌感覚はうまく取り入れていきたい点だと感じました。



【攻略周りの幅広さ】

●消耗品を使うことを推奨される「戦闘の難しさ」、でもガチ戦もできる

 本作ティアキンはかなり敵が強いバランスに感じます。
特に前半での集団戦が大変!

 戦闘はアイテム一切なしの「ガチ戦」方針で遊ぶと、
たぶん『ダークソウル』シリーズにおよぶくらいの難しさになる場面もあると思います。

 ですが一方で戦闘中の工夫もやり放題で、しっかり集めていると
使い切れないほどたまる消耗品をガンガン使うことで戦闘が有利になるように
作られています。「消耗品を使った工夫をさせたいがゆえの
過酷な戦闘難易度になっている」と言っていいほど!

 たとえば弓矢に素材を付けて飛ばすのがとてもお手軽になっているので、

・凍結アイテムを付けて撃って敵をだいぶ長い時間動けなくさせる
・混乱させるアイテムを敵に撃ちだして仲間割れさせる
・燃焼物で敵拠点にある爆発物を爆破して敵を巻き込む


といったことができます。
敵の数が多いときは余っているアイテムを遠慮せず使っていく方が有利!

 「ここで使って後でなくなっちゃったらどうしよう!」と感じた消耗品は
ほぼありませんでした。
「戦闘バランスが厳しいならリソース周りがゆるゆるでも面白いんだなー!」
という生の体験ができたのはとてもよかったです。
むしろアイテムをケチったせいでやられたことの方が多いでしょう。

 もちろん無思考に同じアイテムばかり使うとだんだん減っていくので、
「色んなアイテムをまんべんなく使うことでほぼリソースを切らさず戦っていける」
という工夫しどころは残っています。

 私はたびたび入手難度が適度に高めな範囲火力「バクダン花」を
弓矢で撃ちまくってたので、それだけなくなってしまうことがありました。
バクダン花だけは「脳みそ筋肉な人にも分かりやすい緊急用火力源」
という立ち位置だと思っているので、こうなっていいはずです。

 また消耗品を使うだけでなく、前作通りスニーキングしながら「ふいうち」で
敵を減らす戦法ももちろん有効ですし、クラフトで作った自動兵器で
敵拠点を襲撃したって構いません。

とにかく本作は、発想や工夫次第で色んな戦法が取れて
戦闘のアクション要求度を下げられるのが魅力!
勝てないなら頭脳や消耗品でブースト可能!

「工夫する甲斐があるほどの難易度」だからこそ工夫が楽しい! これ大事!

 という感じで、ティアキンの戦闘においては
「ガチ戦←←→→工夫プレイ」の幅広いグラデーションの中で
遊べる感があって今のところ非常に楽しめております。

この遊びの幅の広さは、いいゲームマスターのもとで遊ばせてもらっている感がありますね。


●謎解きの攻略手段が豊富

 SNSなどでゼルダ情報を追っておられる方にはもうご存じでしょうけれど、
謎解きや課題の突破手段が今回あまりに豊富です。

 たとえば「トロッコの(2本の)レールが1本途中で少し切れてるのに
向こう岸に行かねばならない!」という状況に対して、

「1本のレールにぶらさがれる乗り物を作る」
 
「超長い乗り物で切れてる部分を無視できるようにする(!?)」
 
「(アクションゲーム力を発揮し)細いレールの上を歩いていく(!!?)」


 など突破手段はさまざま! 
「とにかく何でもいいから問題を解決できる工夫をしてください」という、
まるでTRPGでもやっているかのような自由度なので、
攻略後に「これ模範解答だったのか……?」と思うこともたびたびです。

 もちろん特定の能力を正しく使わないといけない、
気付くのが難しい高難易度の課題もあるのですが、
そういうのは最悪解けなくてもメイン攻略には影響が少ない場所に
配置されていたりする印象でした。

 基本的には人それぞれの突破方法があるので、
プレイ済みでも他人のゼルダ配信の見応えがあります!
「自分はこうしたけど他の人はどうしたんだろう?」が見られるのはとても面白い!
同じゲームでも色んな人の配信を見るのが楽しい!
ゲーム配信時代に非常に向いている方向性だと感じます。

なおここでは動画配信の話に焦点を当てましたが、
他にも「SNS向け」に機能している部分としてクラフト要素が
しょっちゅう話題の元になっていて、色んな面で今の時代に合った
有利要素が詰め込まれていると感じます。すごい!




 以上、色々述べてきましたが、まとめると今作ティアキンは

●ゲーム的な「広がり」の潜在量がすごくて飽きない
 → 直感的なのに習熟時間と想像力を要求される基本能力
 → パーツ入手によって段階的な広がりを与えてくれる
 → ときどき実用的な例を提示して能力の使い方を広げてくれる


●リソース周りの「不安」が可能な限り削られている
 → 安心感のある火力リソース補給システム!
 → 大量に使うアイテムは使い始めの時点で100個くらいあげちゃえの精神
 → 不足気味なアイテムは「拡張」と「消費」に使う分のアイテム種を分けてほんのり誘導してくれている
 → 特定の能力を推奨するエリアでは、そのコストを現地調達できる仕組みにして安心して能力を使えるように


●正面対決だとかなり難しいが「工夫すれば有利になる」という戦闘
 → 厳しい戦闘難易度にして、余りやすいリソースを使って工夫するありがたみを産んでいる
 → 難しいだけで、うまい人は正面戦闘で突破できるようになっている!


●自由度の高い謎解き
 → 人それぞれの突破方法が通用する場所も多く、プレイ済みでも他人の配信に見ごたえがある!


 という感じで、今作はゲーム的な「広がり」が掘っても掘っても出てくるし、
リソース面では非常に遊びやすく作られており、戦闘においては
ガチ戦~工夫プレイの間の幅広い許容度の中で遊べるという魅力がありました。

 用意された1つの解法で解いていく昔のゼルダシリーズとは
大きく違った自由さや幅広さがあって非常に面白いです!

他にもマップ構成や今作固有の移動方法やストーリー構成や
クエストの見せ方やそのほか私が意識してない点など
色々見るべき部分はいっぱいあるのですが、
アマチュアのいちゲーム開発者として優先的に気付いたのは
今回挙げさせていただいた辺りでした。

何かまとまった量で良い工夫や良い意図に気付けたら、
またメモしていきたいと思います。
せっかく遊ばせていただいたのですから、面白くするための意図や、
ストレスを感じさせないよう配慮してくれている工夫などは
どんどん見つけて取り入れていきたいですね!

たとえ知っていても、自分でも実践できるようになるにはまだまだ修行が必要です。
ゲーム開発道は果てしない!
 2023-05-27 (土) web拍手 by FC2 カテゴリ: 開発日誌, 勉強メモ




2023-01-28 (土)   ファイアーエムブレムエンゲージ お勉強メモ
【ファイアーエムブレムエンゲージ お勉強メモ】

今回は『ファイアーエムブレム エンゲージ』(以下FEエンゲージ)という
2023年1月20日発売の最新のゲームを遊ばせていただいたので、
ゲーム開発にかかわりそうな、勉強になった点の自分用メモを残しておきます。

やっぱり最新のゲームには最新の配慮があったり、
従来作と比べた工夫がいっぱいあったりしてすごく勉強になります。


※エンゲージではDLC内でしか出てこないチキさん


【ここいいな! と思った点のメモ】

ということで、今回はFEエンゲージを遊んで気付いた点や
個人的にいいなあと思ったところを挙げさせていただきます。

良い配慮の話などは、前作までにあったとしても
まるで初めてかのように述べていきますのでご容赦ください。
過去作の細かい仕様と比較できるほどにはやりこんでなかったり忘れたりしているので!

あと、まだそんなに遊べていないので
これらの内容は第一印象によるものだと思ってください。
遊び込んでいくと最初は良かった点が逆に悪い点に変わることもあると思います。


◆1. エンゲージシステム(固有能力追加装備)の
戦闘面の面白さへの貢献がすごい


今作の目玉となる新システムとして、キャラに強力な固有能力を
付けられる指輪を装備させられる『エンゲージシステム』が搭載されました。
(なお、ゲーム内ではガチャして引けるミニ指輪みたいなのもありますが、
この記事内では「指輪」といったときはエンゲージ可能な
紋章士の指輪のみを指すものとします)


<前提 エンゲージシステムとは?>

 前提として、エンゲージできる指輪は最初は数個しかなく、
指輪を付けたキャラは以下の特典を得られます。

- 指輪を付けてるだけで能力補正や、方向性が大きく異なる固有能力を色々得られる。

- ゲージが最大までたまっていると好きなタイミングで
『エンゲージ』状態に変化でき、3ターン持続する。ゲージは戦闘で増える。

- エンゲージ中は指輪別のエンゲージ中専用の固有能力が発揮され、
さらに専用武器を使えるようになったり、必殺技が使える(1エンゲージ中1発まで)。
専用武器はなんとクラスが一致してなくても使える(!)。

- 指輪を付けて経験を重ねると、特殊能力の効果が上昇 &
クラスチェンジ先が広がる & 特定ポイントを払ってそれら能力の一部を習得可能になる。
(といってもタイミングの問題でスキル習得機能は今のところあまり使えてないです)



具体的にどんな指輪があるかというと、たとえば序盤に手に入る指輪3つだけでも、

「エンゲージ中に剣を装備していると回避率が合計+40%以上にできる指輪」
「10マス先の敵付近にワープ+魔法攻撃できる必殺技が使える指輪」
「エンゲージ中に移動力+5できる上に行動後にさらに
2マス動ける指輪(基本の移動力は4~6なのに!)」


のように、古いFEから考えるとほぼルール破壊級の能力が使えてしまいます!

また、エンゲージ状態は3ターンしか維持できないというのもいい長さで、
「短すぎることはないけど無思考に発動するといざというとき困る」
くらいの時間設定となっています。

1エンゲージ1回の必殺技も強そうに見えて破壊力の面では
強すぎないよう調整されている印象で、
どちらかというと『便利さ』を上げる効果の方が大きそうです。

このあたりの肌感覚は、バランス調整面でも学ぶところが大きい部分です。
威力がそんなに上がらなくても、便利さが強烈に上がると必殺技感が出せる!



<エンゲージシステムの強み1 好きなキャラをたくさん活躍させられる>

ここから本題です。このシステムだと
「同じレベル同士のユニット」なら指輪を付けているキャラが
実質ほぼエース的存在になるのですが、ライトに遊ぶ人間視点の
嬉しい点として「好きなキャラを選んで機能強化できる」という点がとてもよかった!

というのも、このエンゲージシステム、キャラクター重視のFEにおいて、
「自分の好きなキャラをいっぱい活躍させてあげたい」
という願いを直接叶えてくれるので、その点が特にすばらしいと感じたんですよ!

これまではFEでは「レベルを優先して上げまくれば強いよ」
「貴重な強化アイテムを使ってパワーアップできるよ」
「クラスチェンジが自由」などのお気に入りキャラ強化・カスタム要素がありましたが、
そのどれも一定のリソースや特別な労力を支払う必要がありました。

が、今回のはリソースさえ必要なくただ指輪を渡すという選択をすれば
その瞬間に一定量強くなる! ラク!

特に、どのキャラも精一杯個性付けされていて、
お気に入りキャラが人によって変わりそうなFEにおいては
非常によく合うシステムだという印象がありました。
『せっかく買ったゲームなんだから、好きなキャラをいっぱい活躍させたい!』
という心の奥底の需要に非常にマッチしたシステムで、自分自身、
「好きキャラをいっぱい活躍させられると遊ぶ側としてこんなに嬉しいんだ!」
という感覚をこれまで以上に味わえました。
なお私は中級者なので難易度はノーマルです。

私の場合は新キャラが加入したとき、
「キャラ的な好き度2割+能力8割」で評価してキャラをベンチ行きにするか
育てるかを判断するのですが、指輪で底上げすれば「好き度」で選べる確率が
5割以上に上がるため、珍しく「好き」で遊ばせてくれやすいという喜びがありました。
(でもアンナさんはとてもかわいかったのに斧持ち適正的に
ナチュラル筋肉ブシュロンさんの能力値の方が明らかに向いてそうだったので
アンナさんはベンチ入りになりました。体格が低いキャラ辛い)



<エンゲージシステムの強み2 組み合わせ次第で戦術の広がり方がすごい>

また、攻略を色々考えたいという人にも、
エンゲージシステムによって従来以上に戦術考察の幅が出そうなのがすごい!
かつ、指輪を着けるキャラによって戦術の変わり幅が大きいので、
人によって違う攻略方法が見られる期待が従来作より大きいのも良い点です。
特にこの点は動画配信への効用が大きい感じがしていて、
本作は『今の時代に適応すべく進化を目指したFE』といっていいかもしれません。

 というのも、序盤の3つの指輪でさえ、付け替え先を変えれば、

・砦にこもってエンゲージしてレイピア装備で普通に回避100%突破するアーチャーやシーフ
・エンゲージ中に魔法が使えてしまったり10マス先の敵付近にワープする夢のアーマーナイト
・移動力が元は4なのにエンゲージ中は移動力9になる超速アーマーナイト


 みたいなキャラが容易に作れちゃうんですよ! アーマーナイトの夢が広がる!
 もちろん指輪の数は少ないので、ありきたりなキャラに付けた方が
有利な場面も多いはずですが、一方で
「え、そのキャラにその指輪を付けるとこのマップでそんな攻略ができるの!?」
 みたいな組み合わせが色々ありそうだと感じられるので、
『攻略パターンを編み出すワクワク感』が従来作に比べて格段に大きくなっています。

こんな感じで、SRPG系のゲームにこういった
『任意のキャラに強力な固有能力をつけられる機能』を付けられるのは、
私が想像していた以上に『自分の好きなキャラを活躍させたい』派や
『意外な攻略法を見いだしたい』派、『他人の攻略も知りたい』派など、
色んな人の楽しさを呼び起こせるんだなあ! という印象がありました。

 うちでも、仮にSRPGを作るならシルフェイドシリーズから
『トーテム』(宿すと強くなる精霊)をシステム化しようかなと
考えていたことがありましたが、このエンゲージシステムほど強くしたり、
付け替えできるようにしようとは思っていなかったので、目からウロコが落ちました。

「後付けの固有能力をここまで強くしてもゲームとして成立するんだ!」
(もちろん他のシステムによるサポートやバランス調整もあってこそだけど!)


という具体例が味わえて、今回は非常に勉強になりました。
もちろん、それを活かすには考え抜かれたマップや敵配置も重要なはずです。


今回もFEと聞いて、
『ストーリー上で与えられたキャラ戦力を活用してうまいこと戦う』
というほぼいつも通りの遊びしか期待してなかった身ですが、
戦闘面においてはエンゲージシステムによって
「付けるキャラを変えるだけで戦術が変わる」という化学反応による期待以上の楽しみや、
これまで以上にプレイヤーの「好き度」でキャラを選びやすくなった点、
さらには他の人の攻略法も知りたくなるという、非常に良いシステムだったように思います。

ちなみにうちの序盤は、指輪は最初に持っていたキャラに
ほぼそのまま使わせてましたが、エンゲージ中に移動力が超上がる指輪だけは
元のキャラから外してペガサスナイトの人に持たせていました。

これもありきたりの発想ではありますが、
『移動力が倍になったペガサスナイトは地形を無視して救援できるのできっと強い
(し、再移動させれば弱点である弓兵の射程からも逃れやすい)』理論です。
極端な能力が付くゆえに、こういった「オレ理論」を実現しやすいのがとてもいい!
序盤からもらえるのが戦術を大きく左右する強烈な効果の指輪なのも、
出す順番としてよく考えられていると思います。



<まとめ 固有能力追加システムは多方面への面白さの寄与度が大きい>

 これまでの要素をまとめると、エンゲージシステムは

『ライト層は好きなキャラを従来よりもっと活躍させやすくなった』
『ハードコア層にはこれまで以上に戦術考察の幅が広がる』
『動画実況時代においてもプレイヤーごとの個性が出しやすい』


という点で、個性豊かなキャラクターが登場するこのゲームにおいては、
幅広いプレイヤーが幸せになれそうな機能だと感じました。

『ユニットを選んで強力な固有能力を後付けできるシステム』は
とても楽しいということが分かったので、もし今後私がSLGを作るとしたら、
そういった選択肢も一考すると思います。
といいますか、多キャラゲーならSLGに限らず有用そうな感じがしますね!



◆2.攻め側が有利になるブレイクシステム+チェインアタック搭載、
クラスの尖り方の調整で色んなキャラを使う利点が増えた


次は基本戦闘システム周りへの改善のお話です。
上記項目名が詰め込みすぎですが、これらひとまとめで「攻め有利」と
「色んなキャラを使う利点アップ」の両方に絡んだ調整だったのでまとめてお話しします。


<ブレイクシステムとチェインアタックで従来のバランス問題を解消>

育成可能なSRPGだと、バランス次第では
「ものすごく強いユニット1体がいれば多少の相性不利なんて
ものともせずに敵を反撃で倒せるじゃーん」という状況が出てくることがあります。

過去作のFEでは実際そうなりやすい作品がいくつかあり、
「相性が悪い相手が来ようが1キャラで大量の敵を抱えたり
反撃で倒しまくれるのはゲームバランス的にどうなの」
とほんのり物議をかもすことがありました。
FEは基本的に、囲まれたり1ターン中に大量の攻撃を受けたからといって
弱くなったりはしないゲームなのです。

ですが今回のFEエンゲージでは、
守り側で弱点を突かれた場合のペナルティが大きくなっており、
 『守り側のとき、相性の悪い武器で攻撃を受けると
 <今の戦闘と次の戦闘で>一切の反撃ができなくなる』

という【ブレイクシステム】が追加されました。
強さと関係なく敵を一時無力化できますし、こちらだって一時無力化されます。
また重要な点として、「攻め側」のときは相性の悪い武器で反撃を受けてもブレイクされません。

ついでに歩兵系の職業がよく持っている『連携』能力を持ったキャラに
囲まれていると、他キャラから攻撃を受けた際に
『どんなに回避率・守備が高くても80%の確率で受け側の
最大HPの10%分(端数切捨)の支援ダメージを受ける』

という【チェインアタック】も新たに搭載されました。
連携キャラがたくさんいればその回数だけ喰らいます。

序盤は敵からチェインアタックを受けても
1体あたり2~3ダメージしか追加ダメージを受けないので、
一見するとあまり脅威に見えません。

この2つの機能の搭載で何が起きたかというと、
いくら完璧そうな防御能力を持ったキャラでも、
一定以上の敵を抱えるとキャラがやられる可能性が高くなりました。

具体的には、まず「不利な武器で攻撃されてブレイクされ」→
「反撃不能になったところを他の敵から攻撃され」→
「囲まれた状態で攻撃を受けることで1回ごとに『連携』持ちの敵の数だけ
守備回避無視のチェインアタックを受ける」ので、
ザツに置いて囲まれればどんな守護神でもジリジリHPを削られて落ちるのです。

5体くらいの敵でも全員が歩兵系なら、
1~2体がまぐれ当たりして自HPが残り5割以下にされたら
あとは1発10%の連携ダメージが1発分→2発分→3発分と積み上がっていくだけで
トドメをさされる確率がかなり高くなるのが分かると思います。

これだと「無思考に強キャラ1体で大量に敵を集めて反撃で一定数の敵を削る」
というザツ戦法は基本的にやりにくくなるため、
「なるべく囲まれず、接敵したらみんなで一気に攻め込んで
近い敵をなるべく最高効率で一掃する」
というプレイが
これまで以上に求められるようになります。

チェインアタックは、一見そんな脅威ではないのに
たくさんの敵を抱えようとすると急に牙を剥き始めます。
普段はストレスになりにくいのに
油断すると危なくなるこのバランス感覚は見習いたい点ですね!

そしていくつかのFE過去作とFEエンゲージを遊んだ身としては、
これらのシステムの追加やクラスの個性付けによって、
『FEとしての基礎部分をほぼ変えずに今になってこんな調整ができるんだ!?』
と、その手腕に驚いていました。
 
もちろん、今の完成形になるまでにはたくさんの試行錯誤があったに違いありません。
最終的成果物として「『前作からの延長』としてほぼそのまま受け入れられるほどに
シンプルに新機能がまとめられているのに従来の問題点が解消されている」のは、
一開発者の視点だとただ『巧い!』の一言でした。


<強みの強化と弱みを突く能力の搭載、そして差別化>

今回はユニットの強みを増しつつ、別ユニットにはその強みを打ち消す能力も追加する、
という感じで、部分的にユニットごとの尖り具合を増やしつつ、
アンチユニット的存在の立ち位置が増しているのもよかったです。

たとえばアーチャーやシーフは「隠密」という能力が付けられており、
自分のいる場所の地形効果が2倍になるというだいぶブッ飛んだ効果があります。
例として、地形の「茂み」や「砦」では回避率+30%の補正を得られます。
2倍になるとなんと+60%です!
地形に立てこもった「速さ」の高いアーチャーやシーフなんて
攻撃が当たらなくて倒せないだろグヘヘ! と思えます。

が、ちゃんと対策もできるようになってて、
マージなど攻撃系の魔法使い職は『魔導』という能力を持っており、
「魔法攻撃時に地形効果を無視して攻撃できる」ようになっています。
つまり砦に立てこもったアーチャーでも、マージなら蹂躙できるのです。

他にも、アーマーナイト系は「ブレイクを受けない」という能力を得て
壁役として従来以上に強くなり、ノーマル難易度のザコ敵からの
物理攻撃に対してはほぼ無敵に近く、本当の意味でアーマーらしさを得ています。
あと移動力が通常歩兵と同じになったのも大きく、
進軍ペースを合わせられるようにもなりました。

ただアーマーナイト系は魔法耐性が低いので、
できれば敵の魔法ユニットだけでも先に何とか倒したくなります。
「弱点を突いてくる敵を優先的に倒せば強みだけ押しつけられるぜ!」
という工夫もここに生まれます。

こんな風に、
 『一部に対してほぼ無敵になれる強みを持つが、それを貫ける職業が用意されている』
という形で職業ごとの尖り具合や有利不利の度合いが
全体的に強化されており、この点もまた、『自軍に色んな職業を採用する動機』に
なっているのが面白さアップにつながっている印象でした。

仮に少数で編成するにしても、相性面で敵の守りを突破できる程度には
兵種をそろえた方が有利になるのです。
さっきのチェインアタックも使いこなせば、さらに人員の多さが活きてきます。

他にも、ここでは述べきれませんが職業面やアイテム面の細かい部分で、
従来うまく差別化できてない部分を上手に差別化し直している印象があり、
そういった調整も評価が高かった点です。
(回復職と攻撃系魔法使いの上位職がほぼ同じだったのを
前述の地形効果無視の有無で強く差別化しているとか、
重い武器に必ず後攻&1マス押し出し効果が付いたとか)


<これらの調整の結果として、多くのキャラに出番が生まれている>

 従来のFEは「攻撃力と回避率が超高い剣士や魔法使い」など、
強いキャラはだいたい誰に対しても強かったのが、今作はシステム的に
その強さを丸くされて「数や種類の優位」が活きる形になったので、
それぞれのキャラにこれまで以上の出番が生まれるようになりました。

『攻め』が有利になる都合上、数キャラだけを強化するプレイよりも、
1ターンの「手数」がしっかり必要になり、「キャラ数の多さ」も重要になってくるのです。

何なら、「ブレイクするためだけに初期レベルのキャラが
敵を殴りに行くと活躍できる状況」だって生まれるわけです。
といいますか、私のプレイで実際にありました。
当たって1ダメージでも通ればブレイクさせられるのでレベル1でも反撃は受けませんし、
続く攻撃者1人は安全に攻撃可能になるので、
レベル1キャラでもしっかり次に繋げられるのです。
「次の戦闘が終わるまで反撃できない」というブレイクシステムの
大胆なペナルティも、こう見るとよく考えられています。

他にも、チェインアタックのために敵の横に『連携』持ちレベル1軍団を
置くだけでも活躍できます。チェインアタックの「10%固定ダメージ」という設定は
弱いキャラも活かせる上に、ダメージが通らないほど堅い敵にも
ダメージを与えられる手段になっていて渋アツい設定です。

こんな風に下地のシステムはまったく同じように見せつつ、
数個のシステム追加やクラスの特性を使ってこれらの
抜本改革をおこなっている点は「すげぇ!!」の一言です。

そしてまた、こういう改善が『素の』FEからの面白さアップに
繋げられているというのも、自分の未来のSRPG作りについて学ぶべき点だと感じました。
『数キャラで無双する』のも楽しいのは楽しいのですが、
今作でおこなわれた大きな変更は
『戦術シミュレーションゲームとしては色んなキャラをうまく使うと有利になる方が面白いよね』
という『意図』による調整だったと感じています。
これは職業の差別化しなおしだけでなく、
そもそも『攻め』有利な形にしないとたぶん実現しにくい部分です。

そしてこの「色んなキャラをうまく使うと有利」という『意図』、
言われてみればSLG的に当然の話なのですが、
これまでのFEを遊んでいても私では言語化できなかった部分でした。

つまり、SLG開発未挑戦の私は、うっかりすると自分の未来の開発で
取りこぼしかねなかったり、気付くのが遅れる可能性がある部分だったのです。
将来のSLG作りのためにも、伝統的なSRPGの面白さを上げる1つの『意図』として、
この点はよく覚えておきたい部分です。

ただ、育成対象を好きに選べるゲームで
これを実現しきるのはかなり難しい課題だと思います。
それをシステム的に強キャラの活躍を丸くしつつ職業特性を尖らせつつ
ステージ構成も込みでうまく実現しているのが今作エンゲージ! なのだと思います。


以上の面で、今作はFEとして戦闘面が非常によく練り直されており、
「生まれ変わっている」と言ってよいものに仕上がっていると感じました。
何度も言いますが、『これまでと一見あまり変わらないように見せつつうまく改善している』
のが作り手視点で見ると巧い! この手腕は素晴らしいと感じます。



◆3.いちいち別画面を開かずともマップ画面だけで
多くの情報把握ができる


 ここからは「遊びやすさ」の話です。
 この項は「マップ画面だけでも攻めるための情報が
色々分かるようになってると遊びやすくていいよね!」という話なのですが、
今作はこれまでの機能改善の積み重ねで、
マップ画面や、移動先を選択する時の細かいインターフェースがとても便利でした。

インターフェース自体は優劣が明白になりやすい点なので、
FEエンゲージで採用されている以下のような点だけでも、
自分がターン制のグリッド式SRPGを作るときは注意すべき点だと感じます。


<移動先として敵の攻撃範囲内を選んだら、
敵から赤線の弧が出て攻撃範囲に入ったことが分かる>


最近では普通になった機能かもしれませんが、
移動先を選ぶ際に、敵の攻撃範囲に入ったか否かが
分かりやすく表現されています。

初期のFEでは敵の移動マス数を手で数えて
範囲内に入っているかを調べなければならない時代もありましたが、
作品が進むごとに親切になり、今の形は非常に直感的になっていると感じます。

さすがに今回は敵が攻撃しようとしている味方キャラを教えてはくれませんが、
攻撃範囲内かどうかが分かるだけで十分すぎる感じでした。


<戦闘後の敵のHP減少量が分かる>

ユニットの移動先を選ぶ際、カーソル(あるいはキャラ)を動かして
敵付近に持って行くだけで敵のHPゲージが光り、
「このマスから攻撃した場合はこの敵のHPがこれだけ減るよ」
というゲージ減少幅を表示してくれます、非常に親切!

これにより、カーソルを動かすだけで今とどめを刺せる相手がどれか、
すぐに分かります。もう敵を選んで一体一体戦闘シミュレーション情報を
いちいち見て判断する必要はないんだ!

といっても命中率がシビアになると確実に倒せなくなるので、
そんなに単純な話ではなくなります。
ですが、補助情報として各ユニットの命中・回避率をマップの
敵味方ユニット上に表示可能になっており、そこも手抜かりがありません。



<アイテムを持っている敵にはアイコンが出る。
状態異常や一時強化中でもアイコンが付く>


今作は、マップ上の敵に色々便利な情報アイコンが付いています。
「敵がこっそりアイテム持ってるー! ステータスを開かなくても分かるようにしてくれよー!!」
と以前からすごく思っていたので、アイコンでアイテム持ちを
表示してくれるこの配慮はうれしい点でした。個人的には、
もし高難易度でザコ敵までスキル持ちになるようだったら
そういうスキルマークがマップ上で出てくれてもいいまでありますが、
あまりに多いと邪魔かも。

何はともあれ、敵のステータスを全部開いてスキルを
全部確認しながら進軍するのは大変ですし、
そのチェック作業自体は面白さに寄与しにくい部分なので、
もうこの確認作業が必要なSLGは配慮の面では
前時代的なものになりつつあるのではないかと思います。



他にも述べられてない工夫はいっぱいありますが、こんな感じに
詳細情報を確認する手間を減らせるようなインターフェースの配慮は
ぜひ積極的に学んでいきたい部分です。

理想を言えば「マップ画面だけで進軍するために必要な
ほとんどの情報が分かる」といいのですが、多すぎると見にくいので、
見せる情報の取捨選択は、作る側としてはいつも悩みますね。




【まとめ】
ということで第一印象の範囲で色んな面で言いたいことだけ
言わせていただきましたが、まとめると以下の通りです。


◆ユニットを選んで強力な固有能力を後付けできるエンゲージシステムは、
『好きなキャラをたくさん活躍させたいライト層』、
『戦術を練りたいハードコア層』、『攻略にプレイヤーごとの個性を求める動画実況勢』
など幅広い層の満足度が増やせそう。

→ 限られたキャラに「職業と無関係に強力な固有能力を追加できるシステム」は、
FEでなくとも色んなゲームシステム上で面白さに貢献できる仕組みのような感じがします。

◆ブレイクシステムとチェインアタックの搭載によって『攻め』が有利になり、
強みの部分の強化や対抗ユニット化を含めた職業の個性付けの
調整によってFE過去作でときどき定石になってた
『数人だけを超強化する方針』では戦いにくくなった。
結果として『色んなキャラを使った方が強い』というSLG的楽しさが増した。

→ 『色んなキャラを使った方が強くなるよ』というシステム面の誘導は、
伝統的SRPG作るときは特に注意しようと思いました。
育成の自由度が高いゲームだと実現がかなり難しそうですけれど!

◆マップ画面や移動先選択時にもより多くの必要な情報が分かるようになり、
いちいち敵詳細をチェックする負担が減って遊びやすさがアップ!

→ こういう、プレイコストを減らしつつ判断がしやすくなる配慮は
もう遠慮なく全力で吸収していきたいです。



【終わりに】

 以上、感じた点をちらちらメモしてみましたがいかがだったでしょうか。
たぶんガチレビューされている方に比べればざっくりな内容だと思いますが、
開発において大事そうな意図もいくつか整理できたように思います。

ゲームシステムは基本的に1作品あたり完成品の1つしか見てもらえないので
自分だけでは経験値が溜まりにくく、シリーズを経て変わった部分の
「改善意図」や「具体策」の組み合わせを外から
ほんの一部でも学ぶことには大きな意味があります。

特に『配慮』の面に関しては年々進歩していく部分なので、
定期的に最新の『配慮』に触れて感覚を磨いていきたいですね!
ゲームの中でも、インターフェースは好みよりも「優劣」がつけられやすい点ですから
ここはもう必死で最先端に追いついていかねばならないと考えています。

SRPGも1本くらい作りたいなあ! 
『シルフェイド幻想譚』みたいに攻略順が好きに選べて
時間とともに世界の状況が変わっていくSRPGとかいかがですか?


 
というわけで刺激もいただいたので、以後も空いた時間で
FEエンゲージの攻略を進めつつ、自分の開発もがんばっていきます!
といってもいまだに毎日とか隔日でウディタを更新し続けているので、
まだしばらくはウディタ修正が必要かもしれません。

どうなるにせよ、やれることをやれるペースで進めていきます! がんばるぞー!
 2023-01-28 (土) web拍手 by FC2 カテゴリ: その他, 勉強メモ




2019-02-09 (土)   バイオハザードRE:2のマップがよかった話
【バイオハザードRE:2のマップがよかった話】

遊ばせてもらったゲームで感動した工夫をお勉強がてら開発日誌に載せておきたい!
と思ったので、今回は最近発売された『バイオハザードRE:2』を
遊ばせていただいたときのお話をさせていただきます。

まず『バイオハザードRE:2』は最近発売された
TPS(三人称視点シューティング)の探索型ゲームで、
ゾンビやクリーチャーを倒しつつ様々な施設内を探索したり
アイテムを集めたり謎解きをしてお話を進めていくサバイバルホラーゲームです。

とてもデキが良かったので、歯ごたえのあるゲームを遊びたい人や
リソースのギリギリ感を含めたサバイバルを楽しみたい人に特におすすめです。

ゲームの主な特徴は以下の通りです。

●基本的に銃を撃って敵を倒していく、狙いは手動。
効率よくダメージを与えるにはある程度の射撃テクニックが必要だが
弾を潤沢に使っていいなら敵の攻撃を受けずに進めるシーンも多い。

●持ち運べるアイテムが少ないので、
謎解きアイテムや銃、弾丸や回復アイテムも含め、
何を持ち歩くか、アイテムを拾うか否かの判断が常に問われる。

●手に入る弾が少なくて全ての敵を倒すには足りないため、
よく通る部屋かどうか、敵を回避しやすい場所かどうかなどを加味して、
倒すべき敵を選ぶ必要がある。


で、こういうゲームのどこがよかったかというと、なんと「マップ機能」!
これまで見たどのゲームよりもマップに感動して伝えずにはいられなかったので、
今回は1記事として取り上げさせていただきました。

まずバイオハザードRE:2のマップ表示はおおよそ以下のような感じになっています。
(これはマップ表示画面の一部をそれっぽく再現して描いた画像です)


マップ表示はこんな感じなのですが、これのどこがよかったかというと、

●アイテムの取り残しがあるとそのエリアが赤く表示される。
→ こういった探索ゲームで「もう調べる必要のないエリアが明示される」
というのは、ホラー&サバイバルゲームの両面の意味で
「無駄に色んな場所をウロウロしたくない」気持ちと非常にマッチしていました。

●見つけた謎解きギミックのうち、未攻略分がマップに表示される。
→ どこに何の謎解きがあったか思い出せなかった場面、
他のゲームなどで遭遇しなかったでしょうか。
本作では見つけたギミックの場所は全て表示されるので、アイテムボックスから
何の謎解きアイテムを出してどういうルートで移動すれば効率的か、
「マップ画面上だけで移動計画を立てられる」のが最高によかったです。

●一度アイテムの近くに寄ればそのアイテムと位置が表示され続ける。
→ これが便利! 近づきさえすればマップにアイテムが表示されるので
マップをときどきチェックすればアイテムの取りこぼしがない!
アイテムの場所までマップに残るゲームってそんなになかった気がしますが、
バイオRE:2ではアイテム枠が少ない都合上、
「アイテムを取らず一時的に残しておいて後で回収する」シーンも多いので、
より効率的な回収ルートを考える際にとても役に立ちます。



【「無駄に動きたくない」感情を満たしてくれるマップ】

弾が少ない都合上、敵を残す判断をせざるを得ないこのゲームでは、
道を行き来するたびに、「倒さず残してたり新たに追加された敵」に遭遇することは避けられず、
そのたびに弾を消費するかダメージを負いそうになったりするため、
アイテム回収や謎解きを進めるにあたって
最適なルートを検討できるこれらのマップ機能は非常にマッチしていました。

というかですね、どうやってもトドメをさせない不死身の大男が
ドア開けながら普通にずっと追ってくる状況とかあるんですよ、このゲーム!
しかもそういうときに限って弾がほとんどなかったりしてめちゃ恐い!
そんな中でも、逃げたり隠れながら探索を続けなければならないのです。

そういう状況下でのこのマップ機能は、ゲーム中もっともよく感じる、
「恐いし資源も足りないので無駄な行き来をしたくない、最短ルートで進めたい!」
という「気持ち」を満たしてくれるので、
頻繁にゲームオーバーになるほどの難易度であるにも関わらず、
全体を通して個人的にはアンフェアな感じがほとんどなく、
納得してゲームを進めやすくさせる元になっていた気がします。
(※ただしゲーム慣れした人間でこれなので、キツいと感じる人も多いはずです)

もしマップにギミック位置が表示されず、かつプレイ時に場所を忘れてしまっていたら
続けるモチベーションが出なくなってしまいそうなくらいには、
すごくプレッシャーを感じる場面もあるこのゲーム!
そこがサバイバルホラーとして最高に面白かった点でもありますが、
これほどの便利なマップ機能がなかったら、理不尽感マシマシだったり
プレッシャーが強すぎて折れてしまう人が多くなり、評価が下がったかもしれません。
そういう意味では、評価がちょうど最大限になるいいマップだったように思います。

「記憶力の不足によるペナルティ」をまったく与えない、
こういった配慮は自分も本当に見習っていきたいと思います。
「難しかったりプレッシャーが強いゲームでも、
配慮がしっかりしていれば納得して遊びやすいのだ」
ということを思い出させてくれる、学びのあるマップ機能でした。

特に「地図だけ見て色んな計画を立てられるマップ」というのは、
今後の私もならっていきたいところです。
地図はあってもそれだけじゃどうすればいいか分からないマップ表示もたぶん多い!



【バイオハザードRE:2はいいぞ】

ちなみに『バイオハザードRE:2』は、初回でも1ストーリー6~7時間くらいで
クリアできるくらいのボリュームで、忙しい中でも
満足感のある楽しいゲーム体験をさせてくれたおすすめの一本です!
ただしたぶん難しく感じやすい仕組みになっていると思いますので、
その点だけはご注意を。

私は1周目のスタンダード難易度でも10回以上死にましたが、
「マップ機能」や「次の目的」の表示のおかげで次にやることが常に明快だったので
迷ったり謎解きに詰むこともほとんどなく素直に「恐怖とサバイバル感」を
味わえたのがとてもよかったです。

ホラー部分も、(『バイオハザード7』の強烈さに比べれば)グロさとか
びっくりさせるとか気持ち悪さがあるといった演出はおそらく控えめでしたし、
「リソース面でも怖がらせてくれる」というのは
個人的に求めていた点なので好きですね!
 2019-02-09 (土) web拍手 by FC2 カテゴリ: その他, 勉強メモ
勉強メモ 1/1


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