シルバーセカンド開発日誌
 ここはゲーム開発者SmokingWOLF(スモーキングウルフ)の開発日誌です。
 【現在の目標】→ ウディタ3.5のバグを落ち着かせる! & 『片道勇者2』の開発!
 ※以前のブログが使えなくなったので、ただいまこの開発日誌に移転中です。
開発日誌 6/12

2017-11-04 (土)   『ゲーム開発者の地図』宣伝中!
【 『ゲーム開発者の地図』 宣伝中!】

すでに電子書籍『ゲーム開発者の地図』を手に取ってくださった皆さま、
読んでくださった皆さま、本当にありがとうございます!

実は『ゲーム開発者の地図』を先週リリースしたものの、
今は有効な宣伝方法に悩んでいるところです。本を売るのは難しいですね。

「あ、そんな本が出てたんだ」といま思われた方は、
よければ【前回の紹介記事】と合わせて、
購入ページにある「サンプル」だけでもぜひご覧ください。
前半8%くらいを読むことができます。

また、Kindle Unlimitedに加入している方なら全編無料で読めますので、
(まだ残っている方は)「Unlimited一ヶ月体験無料」などもあわせてぜひご検討ください。


【ゲーム開発者の地図 購入ページ(Kindle版のみ)】
価格 税込¥1,080、Unlimitedなら¥0


【Twitter上でいただいた本書へのご感想 一覧】


『ゲーム開発者の地図 ~20年の個人開発で学んだこと~』は、
私のゲーム開発経験で学んできた考え方をたくさん記した本です。
初~中級レベルの人にとっては失敗を回避するための情報があり、
上級者の方には復習になるかも? というようなご意見をいただいております。
読んでくださっただけでなく、
感想までつぶやいてくださった皆さまには本当に感謝しています!


どんな人に合うか分からないので、そういった情報のレビューもお待ちしてます。
遊ばれる側の人か、作られる側の人か、どれくらいの経験者か、などの情報も、
見る人にとって安心して手に取ったり、あるいは回避できる材料になると思います。




【そもそもKindleって何? どうやって見るの?】

前回、完全に紹介を忘れていましたが、KindleとはAmazonの
電子書籍を読むためのデバイス、あるいはアプリケーションです。

KindleアプリにはWindows版もスマホ版もあるので、
『ゲーム開発者の地図』はパソコンでもスマホでも
お好きな方法で読んでいただくことが可能です。
それぞれのダウンロードページは以下の通り!

【Windows版 Kindleダウンロードページ】

【Android版 Kindleダウンロードページ】

【iOS版(iPhone他) Kindleダウンロードページ】


Kindleアプリを開くとAmazonのアカウントにログインするよう求められます。
ログインして、AmazonでKindle書籍を買っていれば、
買った一覧が表示されるので、そこから
書籍をダウンロードして閲覧することができます。
特にスマホ版は通勤通学時にも読めるようになるので、私もよくお世話になっています。



【二度目にKindleに出してみた感想・動機】

元は開発日誌の記事内容ですが、本にして考えを一つの形にするのは、
自分の学んできたことを整理したり共有するにあたって、
とても良い機会だったと思います。
こういう機会でもないと、なかなか自分の考えをまとめたりしないものですから。

なお作る前は、競合する内容の本があまり存在しないようなので、
「運がよければ割といけるんじゃないかな」と最初は思っていました。
今はがんばっている最中です。

というのもKindleは本を紹介してくれるサポートが比較的に薄いため、
自前で宣伝し続けないと一瞬で売上げが0になる厳しい世界でした。
自分から発信しないと全世界から情報が消えるので、
完全にステルス状態になる感触です。
(本屋の雑多な新着コーナーやランキングを常にご覧になっている人って、
そんなにいらっしゃらない気がしますしね)

で、他の執筆者さんもそんなに何ヶ月も宣伝し続けないということもあってか、
日あたりの平均収益が3桁以下の本もおそらくかなり多く
(片道勇者開発記はそんな感じです)、
また一瞬だけ部門1位になった感じでは、部門ランキングトップ10以内でも
本1冊だけで生活ができそうな人が1人以上いるかいないか怪しいかも、
というくらいの印象でした。これは部門の人気度によっても変わるでしょうけれどね。

無論、日100円台の収益でも続けば
十分なサーバ代やいくらかの飲み物代になりますし、
もっと出ればおかず代やご飯代にも繋がるので、
最終的に数百円の収益でも維持できれば大いに助かります!

ちなみに本書を出した理由の半分は、
『片道勇者2』が来年(2018年)中にも出せなさそうな気配を感じたので、
厳しい生活を耐えるために日々のおかず代くらいは
継続収入を得ておきたい、という目的があったためです。

継続収入といえばファンクラブサービスなどを使おうかとも
思っていた時期もありましたが、こちらは新しいコンテンツを掲載し続けるなど、
サポートを継続していく必要があります。

それに対して、労力を先払いして書いた本を置いて、
たまに誰かにそれを見つけてもらうくらいの方が
精神的にもコストがかからないですし、開発ペースにも影響しないので、
「先に開発日誌などで記事を出して、それをまとめた本を出す」、
というのは、現状知る中では、自分に合ったいいやり方ではないかなと考えています。



【Kindleに出す上で知ったこと】

そしてここからは今後Kindleに出すかもしれない人に向けた情報です。
お金や、Kindleの販売システムの話なので、
興味のない方は飛ばしてくださって大丈夫です。

実は前回の『片道勇者開発記』をKindleに本を出すにあたって、
ロイヤリティ(印税)には35%コースと70%コースの2つがあることを知りました。
70%にするには、「KDPセレクト」という3ヶ月Kindle独占販売のコースに
本を登録する必要があります。

そして、前回出した『片道勇者開発記』は
Kindle独占販売じゃなかったので「35%コース」にしたものの、
現状では日々の缶ジュース代にも達していないので、
売れる頻度がこのような感じならば一本あたりの重みを上げるべきだと考え、
今回は70%コースを選ぼうとしました。

が! そのときに気付いたのが
70%コースにするための『KDPセレクト』に本を登録すると、
自動でその本が「Kindle Unlimitedに登録される」という点!

「Kindle Unlimited」というのは、ユーザの方が月額料金を払うと
Unlimited対応の本が読み放題になるというサービスで、
これに本が登録されると、要するにタダで本が読まれるようになります。
Unlimitedで読まれた本は売れたことにはなりませんが、
初回に実際に読まれたページ数が計測され、
ページ単価0.4円くらいの収益になるそうです。

で、それに関して、Kindleに出してる人の話を調べていて知ったのですが、
Kindleに出した本というのは結構な場合、Unlimitedの収益の方が多くなって、
本そのものの売上げはほとんど出ないようです。
そりゃ無料で読めるサービスがあるならそっちで読みますよね!
というより、中身もよく分からないものに対して
先にお金を出す方が本来おかしいというべきでしょうか。

今回の『ゲーム開発者の地図』は数が出ないことを前提とした
強気な値段設定なのですが、
そうでなくても値段にかかわらず、
70%コースでは本そのものの数はあまり出ないようです。
なのでUnlimited対応本に「X万円」などのとんでもない値段を付けて、
「まちがって1本でも売れればいい戦法」を取る人もいるとか!

そんなわけで「70%」のロイヤリティを選んでも、本単品が売れる数自体は
35%のときの半分以下になりそうな感じだったので、
「これは35%コースにするか、70%コースにするか、
最適解を選ぶのが難しい選択だな」と感じました。

すごく売れた作家さんによると、Unlimitedの方は読むのが無料なのもあって、
「人気が出れば」末永く読まれやすいらしいので、
継続収益を考えるなら70%コースはアリなようです。
誰にも気付かれなければ、結局読まれないんですけれどもね。

ただ、Kindleという場所自体、置いて自サイトから
リンクを貼っておくだけでも、もしかしたら何日かに1本ずつ売れていく可能性や
読まれていく可能性があるので、印税生活の第一歩や、
フリーゲームの収益化として、Kindleなどでファンブックのような本を
出してみるのは非常にアリだと思います。

かかるのは労力だけで初期投資は本当にゼロですから、
チャレンジするのも安いですし、複数の出版も気軽にいくらでもできます。
よほど人を傷つけるようなひどい内容でない限りは簡単に受理されるはず!
本にできそうなコンテンツや内容があったら、すでに公開済みの内容でも
きれいにまとめてどんどん出してみてもいいかもしれませんね!



何はともあれ、『ゲーム開発者の地図』は
どんな形でも「読んでくだされば」収益になります!

おそらく普段Amazonをご利用の皆さんならばすでに配られているであろう、
「一ヶ月Kindle Unlimited無料体験」を使ってもタダで読めるので、
まだ権利が残っている方は、それを使って読んでくださっても、とても嬉しいです。
もしよければぜひどうぞ。
(キャンペーンもやっているようで、
無料体験を使われた本に少しのボーナスが入るようです)

『ゲーム開発者の地図』 Amazon販売ページ


という感じで、ひとまずは月々のおかず代を得られるかどうかの
一つの賭けとして電子書籍も出すことができたので、
ここからはしばらく『片道勇者2』の開発に集中していきます。

ローグライクは開発の先が全く読めないので、
来年2018年にも出るかも怪しい状況ですが、
ぼちぼち状況をご報告しつつ、皆さまに最新情報をお知らせしつつ、
進めていきたいと思います。
 2017-11-04 (土) web拍手 by FC2 カテゴリ: 開発日誌




2017-10-28 (土)   『ゲーム開発者の地図』発売!
【『ゲーム開発者の地図』発売!】

ということで一部の方にはお待たせしました!
Kindleのゲーム開発本『ゲーム開発者の地図』がついに発売です!

購入ページはこちらから!

【ゲーム開発者の地図 ~20年の個人開発から学んだこと~】
Amazonページ ¥1,080 (Unlimitedなら¥0)






【内容は?】

本書は、この開発日誌内に載せてきた「ゲーム開発記事」を
読みやすく加筆、修正、再編し、さらに全7人の
ゲーム開発者(※ほぼTRPGリプレイのメンツです)による、
内容へのツッコミコメントを追加したものとなっております。

主なテーマは以下の通り!

-------------
◆第1章 ゲームバランス編

・「3ターン与えるダメージを1.3倍」にする補助魔法、使う?
・バランスが崩れやすい要素×3
・ゲームプレイの技量をレベルアップしてもらいたい!
・コラム 状態異常の話
・どんな武装が好み?
・好みの武装 コメント編

◆第2章 メイキング編

・初RPG制作で意図したこと 前・後編
・キャラクター作りで意識すること 前・後編
・私のゲームタイトルの付け方
・これまで作ったゲームタイトルを振り返る
・コラム ゲーム開発における小粒な話
・ゲームを完成させる作り方
・楽しくてレベルアップが早いゲームの作り方
・ゲーム開発中の悩みを解消するために試していること
・座談会 永遠に遊べるゲームがあるとしたら?
-------------

ゲームバランスに関わる話や開発そのものに関わる話など
およそ15個くらいの項目が用意されています。
本文に関してはあくまで私個人の『最新の偏見』なので、
あまり鵜呑みにせず、「へーこんな考え方もあるのか」くらいに
受け取ってくださるのがいいと思っています。


【本文見本】(クリックで拡大)




【新たに追加されたコメントコーナー】

Kindle本で新たに追加されたコメントコーナーでは、
TRPGリプレイ時ほどではないにしろ似たテンションで
愉快にゲーム開発あるある話をしていたり、様々なプレイヤー観や、
ゲーム開発者特有の生々しい苦労話などにも触れていますので、
ゲーム開発者を目指す方にとってはいくらか参考になる話もあると思います。

【コメント見本 状態異常の話】(クリックで拡大)




全体の量は完成品からHTMLタグとスペースを全部抜くと26.2万文字くらいで、
『片道勇者開発記』とほぼ同じだと思います(Kindle相当460ページくらいでした)。
秒間30文字という速さで読んでも8700秒、すなわち2時間半近くかかる計算です。



【まだ買ってないけど中身が気になる人へ】

「このお値段じゃ買う気がしないけど中身は気になる」という方も、ご安心ください!
コメントコーナーを除いた「本文」の内容は、
この日誌の「開発日誌」タグを追っていけば一通り閲覧できます。


なのでざっくりとした中身が気になるという方がいらっしゃいましたら、
ぜひこちら↓からご覧ください。

【「開発日誌」タグの記事一覧】
(パッと見この記事と同じページが出ますが、
下へたどると前の記事が見られます。
2017年1月~7月頃までの記事に、収録されている
「本文」部分の内容がほぼ全てが含まれています)



【そもそもKindleって何? どうやって見るの?】

KindleとはAmazonの電子書籍を読むためのデバイス、
あるいはアプリケーションです。
デバイス持ってる人はたぶん少数なので、
ここではアプリケーション版の話をします。

すごく簡単に言うと、Kindle本はAmazonのアカウントを持ってる人が
Kindleアプリをインストールすれば読めるようになります。

KindleアプリにはWindows版もスマホ版もあるので、
『ゲーム開発者の地図』はパソコンでもスマホでも
お好きな方法で読んでいただくことが可能です。
それぞれのダウンロードページは以下の通り!

【Windows版 Kindleダウンロードページ】

【Android版 Kindleダウンロードページ】

【iOS版(iPhone他) Kindleダウンロードページ】


Kindleアプリを開くとAmazonのアカウントにログインするよう求められます。
ログインして、AmazonでKindle書籍を買っていれば、
買った一覧が表示されるので、そこから書籍をダウンロードして閲覧することができます。
特にスマホ版は通勤通学時にも読めるようになるので、私もよくお世話になっています。



Kindle本『ゲーム開発者の地図』の方では、過去記事の読みにくかった部分を
読みやすくなるよう書き直していたり、コメントコーナーが追加されていたりしているので、
この開発日誌を読み込んでくださった方でも
それなりにお得感はあるよう意識しています。

一冊にしてまとめて読みやすくしておきたい方や、
もっと掘り下げた話を見てみたい方は、よければぜひどうぞ。

【ゲーム開発者の地図 ~20年の個人開発から学んだこと~】
(Amazonページへ)




【本書をもぐらゲームスさんに紹介していただきました!】

もぐらゲームスさんにて『ゲーム開発者の地図』を紹介していただきました!
こちらにも記事ページの一部抜粋があるので、よければこちらもご覧ください。

http://www.moguragames.com/entry/map-of-game-developer/
(アーカイブ)
 2017-10-28 (土) web拍手 by FC2 カテゴリ: 開発日誌




2017-10-14 (土)   『ゲーム開発者の地図』10月末発売!
【『ゲーム開発者の地図』、10月末発売!(予定)】

ということで現在作成中の、開発日誌の記事をまとめたり
色々コメントコーナーを追加したKindleゲーム開発本、
ついにタイトルが決定しました! 
その名も、

『ゲーム開発者の地図』

です!



内容がおおよそまとまってきたのに加えて、
そろそろ副業を入れた方がよさそうな状態だったり、
細切れの用件が入って開発が切れ切れになりそうな雰囲気になってきたので、
しばらくはKindleゲーム開発本の作業を優先的に進めることにしました。

Kindleゲーム開発本の発売は、今月『10月末』頃を予定しています!
といってもKindleさんちのチェックが通らないと売りに出ないので、
ある程度は前後する可能性がございます、ご了承ください!

なおKindle版では、元の開発日誌の内容を読みやすく再編したものに加え、
TRPGリプレイでいつもご協力いただいているゲーム開発者の方に、
記事に対してコメントしていただくコーナーを追加しています!

たとえば効果が見える装備が楽しいという話で、

A「マンゴーシュみたいに回避率が上がる装備を付けた場合なんかは、
『マンゴーシュで避けた!』みたいに装備の効果で避けたことが
明確に分かった方が個人的にアツいですね!」


B「上がった回避率分も足して最終的にただの『回避』扱いでまとめるのが
作る側的に一番ラクなんですが、遊ぶ側はそれぞれの装備で
避けたことが分かる方が大事……耳が痛い! ちぎれる!」


のような、プレイヤー側であり開発者側の両面の立場での意見や、
記事へのツッコミ、あるいはさらなる考察が色々と増えていますので、
「開発日誌のときの内容だけじゃ足りないぞ!」
と思われた方には、よりお楽しみいただけると思います。

企業勤めでゲーム作っているとなかなか言えないかもしれない
(個人)ゲーム開発者の生々しい苦悩!
そういった情報も含めての、『ゲーム開発者の地図』と銘打っております。

発売予定日は10月末頃! 場合によっては11月前半です! よければお楽しみに!
 2017-10-14 (土) web拍手 by FC2 カテゴリ: 開発日誌




2017-09-30 (土)   Kindleゲーム開発本 2
【Kindleゲーム開発本の話】

今週は『片道勇者2』のゲーム終了画面処理を進めていましたが、
『片道勇者』のサポートやら何やらもあってあまりご報告できる内容がないので、
お絵かき1枚と「Kindleゲーム開発本」の話の復習でお茶にごしです!

「ゲームバランス編」の章イラスト

※開発日誌子ラッシー。元は2001年頃に描いた10月の記念イラストでした。


「ゲーム開発記事をまとめたKindle本出します!」の話ですが、大きく
「ゲームバランス編」と「メイキング編」に章を分けることにしました。

「ゲームバランス編」では、ゲームバランスや上達してもらうことへの意図、
個人的に好きな武装についてなどをまとめており、
「メイキング編」ではキャラ作りやタイトル作りや全体の作り方において
意図していることをまとめています。
これまでに開発日誌で書いた内容を振り分けた感じですね。

現在は、「Kindleゲーム開発本」に私のことを知らない人のための補助情報や、
時代が変わってもなるべく読みやすくなるよう、
いろいろと説明や文脈を追加しているところです。
私が作ったゲームの紹介なども巻頭に足しておく必要があるでしょう。

テキスト分量は『片道勇者開発記』が25.7万文字だったのに対し、
今回のKindle本はたぶん25万文字ちょっとくらいになりそうです。
つまり、文字数だけなら近い同じ量だと思います。

Kindle本は引き続き、ゲーム開発が進まなくなったときに編集を続けていきます。
追加のお絵かきも何枚か足す予定です。



【片道勇者開発記 ~四年の旅路~】

ちなみに、今回出す予定の本の前にも『片道勇者開発記』という本を出しています!

『片道勇者』開発をどう進めてきたのか、何に悩んだのか、どう意図したのか、
そしてコンシューマ展開の経緯やサイドストーリー小説など
いろいろと記されているので、
先に私の開発話に触れてみたいとお思いの方はぜひこちらもどうぞ!



『片道勇者開発記』公式ページ(ゲーム版)
※『片道勇者』と同じくウディタ製のゲーム版書籍です、BGMやエンドロールが付いてる豪華版です。

『片道勇者開発記』Amazonページ(Kindle版)
※こちらは普通にKindle本です。Kindleアプリを入れればWindowsでも
スマホでも読めますのでたまに読み直したい場合はこちらがオススメ?




以下は拍手コメントで複数いただいた内容です。コメントありがとうございます。

>『片道勇者2』のアルファ版のテストに参加したいんですが
>どういった形で行われますか?                .


まだ決めていないんですが、『片道勇者1』のアルファテストでは
おおみそかにレンタルチャット内でファイルを公開して
その場でリアルタイムに話をうかがっていました。
今回も似たような形で行うかもしれません。
(今はレンタルチャット解約状態なのでまた借りることになるでしょう)

ゲームファイル自体は一週間くらい開発日誌でも公開して、
毎週見に来てくださる方は触れられるようにするつもりです。

ただ、アルファはデータが各1~2個ずつしかないバージョンで、
可能性を測ったり基本システムや情報量をチェックすることが主目的なので、
ゲームとしては全然面白くないと思います、その点はご了承ください。
それでも、シルドラゼロのときみたいに「操作が直感的じゃなさすぎる」といった
方向性の再調整ができるので、アルファテストは大切だと考えています。

今のところ想像以上に必要な処理が多くて、
アルファテストまでたどりつくまでだいぶ遠そうです。
すでに基本システムのサイズが『片道勇者プラス』並みになっているので、
作業速度が特に遅いわけではないようなんですが、この調子だと
目標に向けて効率良くやっていかないと終わらなさそうです。
 2017-09-30 (土) web拍手 by FC2 カテゴリ: 開発日誌




2017-09-16 (土)   ゲーム開発Kindle本出します!
【ゲーム開発Kindle本、編集しています!】

ようやくメドが付いてきたのでお知らせします!

長い開発期間中の餓えを少しでも回避するための一環として、
ゲーム開発に関わる、この開発日誌の記事をまとめたKindle本の発売を決定しました!
「ゲームを完成させる作り方」のような、あの記事群ですね。

読もうと思えばこの開発日誌内で無料で読めるものですが、
まとめて読みたい人向けに少し再編して、記事への再考察(?)や
おまけコーナーを加筆したKindle版を空いた時間で作成しています。


※主に収録されるのは、このキャラ(ラッシー)のお絵かきが載ってる記事です。
記事がたくさん集まったらいつか一冊にしようと考えていましたが、
おまけ分を入れたら『片道勇者開発記』とすでに同じくらいの文字量に
なっていたので作成を決定しました。


2017年内には出したいと考えていますが、
開発に疲れたときしか触ってないので編集ペースがゆっくりなのと、
読みやすさを上げるために「寝かせては修正」をこれから何度か繰り返す予定なので、
完成は少し先になりそうです。

もし、手元に置いておいて、たまにまとめて読み直したいなーと
お思いになった方がいらっしゃいましたら、
よければあとしばらくお待ちいただけますと幸いです。
(※なんとTwitterですでに1人いらっしゃいました、ありがとうございます!)

私の開発日誌を知らない人と情報や考え方を共有するのにも使えるかもしれませんし、
何よりすでに無料公開されてる内容なので、売れなくて私がもだえることがあっても、
読者の方が読めなくて困るということはほとんどないと思います。
もちろん、発売後もここの記事は残しておきます。

あと「援助の窓口が欲しいんだけどないの!」と言ってくださる方もいらっしゃるので、
そういう方向けの窓口の一つになるといいかなという期待もあります。

なお、今回は『片道勇者開発記』と違ってゲーム版はありませんのでご容赦ください。
同じデジタル媒体がネット上で販売されてると
Kindleの印税が半分になってしまうためです。


2011年11月頃にゲーム開発のあれこれをまとめた本を出してみたいなと
開発日誌でほんの一言だけ言っていましたが、
『片道勇者開発記』がそれに半歩踏み込んだものだとすると、
本番は6年経ってようやく実現しそうです。

ということで、もし気になる方がいらっしゃいましたらお楽しみに!
遅くても年内には出せると思います。
 2017-09-16 (土) web拍手 by FC2 カテゴリ: 開発日誌




2017-07-01 (土)   開発で最近試していること
【ゲーム開発で最近試していること色々】

今回は私が最近のゲーム開発で行っている、
自分にとって有効そうだと考えているいくつかの試みについて整理してみました。

私と似た悩みを抱えている人や、私に近いタイプの人には、
部分的に役立つ部分もあるかもしれません。
以下の項目だけ見て分かる方には、飛ばしてくださっても大丈夫だと思います。

●最初: 「面白そうに見えるゴール」を先に考えてから作る。
●中盤: 見た目をきれいにする作業はやる気が減りそうなタイミングに回す。
●全編: 絵は最後まで徐々にブラッシュアップし続けるよう作る。
●一定頻度: 段階ごとに人に見せて方向性を確かめる。
●リリース前: できれば余裕を持って終わる。






【最初:「面白そうに見えるゴール」を先に考えてから作る】

まず私は、「できるだけ多くの人に遊んでもらいたい」という欲求が強いのですが、
どうやれば自分の作ったゲームを知ってもらえるか考えるのに四苦八苦しています。
「作ったものを面白そうにアピールすること」がいかに困難か、
何度も思い知らされました。
たとえば「自分にとってそこそこ自信のあるゲーム」ができあがったとき、
その完成品から「とても興味を惹かれるキャッチコピー」を考えるのは、
実はとても難しいことだと思っています。

実のところ、これまでの私のゲームを見直しても、
「分かりやすく興味を惹くキャッチコピー」が思いつかないゲームが結構あります。
たとえば『シルフェイド幻想譚』の場合、目新しい要素が実は少ないので
「ストレス少なめの時限フリーシナリオRPG!」くらいしか言えません。
コンテストに投稿したことによって目立つことができた面は
大きいと思いますが、その他は『シルフェイド』という名前が付いている、
ということが実質的に最大のアピールポイントで、
作品の概要情報や、キャッチコピーが普及力に貢献できた部分は
あまり大きくはないでしょう。

そんなわけで私は、基本的には『ブランド』に頼るアピールのみがメインで、
作品紹介による宣伝面ではかなり苦戦していると感じていました。

そこで、私はここ数年でこう考えるようになりました。

自分のような宣伝が苦手な人間にとって
「面白そうに感じさせるキャッチコピーや見た目」
を考えることがボトルネックになるのなら、
その「一目で面白そうに感じる部分」を先に考えておいてから
ゲームを作った方が普及力を上げやすくなるのでは?
 と。

たとえば、以下のいずれかのような方法でゲームを作るのです。

●遊びたくなりそうな宣伝文句を先に考えて、それに合わせてゲームを作る。
●遊びたくなりそうな画面写真を先に考えてみて、それに合わせてゲームを作る。
●やたら興味をひかれる物語紹介だけ先に作って、それに合わせてゲームを作る。


これらは、私のような宣伝が苦手な人間には一定以上、
効果が上げられるやり方かもしれません。

さっきも言いましたが、「完成済みのものを面白そうに紹介する」のは意外に大変です。
ある程度の開発能力を身に付けているなら、「作った後のもの」を面白そうに見せるより、
先に「面白そうに見える状態」を考えておいて、
それにたどり着けるものを作る方がたぶんいくらか簡単
です。
特に「画面写真」は、作った後からではなかなか面白くいじりようがない!

「物語説明」もそうです。一度読んでみれば物語の内容自体はすごく面白いのに、
いざ「紹介用のあらすじ」を書いてみるとなかなか面白そうに書けない、
あるいは興味を惹くのに苦労する、といったことはないでしょうか?
私は、あらすじで興味を惹くことを意識していなかったので、
そこで悩んだことが何度もありました。

こういった苦労があるのならいっそ先に
「面白そうに見せるためのゴール」を考えておいて、
チャンスがあればそれに近付ける、という作り方は一つの手です。

私の場合、『片道勇者』がその方法で生まれたもので、
最初に『強制横スクロールRPG!』という
「興味をひきそうな宣伝文句」が生まれて、そこから開発が始まりました。

思いついた時点では果たして面白くなるのか、
どんなジャンルのゲームになるかは全く分かりませんでしたが、
最終的には『強制横スクロールRPG』という期待を満たせる程度の作品に作りあげ、
目新しいキャッチコピーにより新鮮さを伝えることができたと考えています。

もしこれがただのローグライクRPG、あるいは説明が難しいローグライクRPGだったら、
見てもらえる人の数は今の半分以下や、1/4以下になったかもしれません。

もちろん、こういう作り方で失敗してしまう場合も当然あると思いますが、
今はどこへ出すにしても作品数が増えすぎて、
まず「少しでも興味を持ってもらえるかどうか」が
一番のネックになっているのではないか
、と私は考えています。

そんな環境で少しでも目立てるようにすることを考えると、
上記のように先に「面白く見えるゴールを作ってから挑む」、
言い換えれば、「企画重視」の考え方をするほうが生き残りやすいのかも?
という考えで、私は今の状況を見ています。

ただし、「自分の力量」以上にこういった考えに縛られてしまうと息苦しくなるので、
取り入れるべき度合いは当人の能力や状況によって変わってくるはずです。
「なんでもそれなりに面白いものに仕上げられるようになったけど、
何を作ればウケるんだろ」
くらいの気持ちを持っている人向けかもしれません。

『片道勇者』でもそうでしたが、「企画重視」のテーマは開発においては扱いが難しい、
大変なじゃじゃ馬になりやすいものだと思っています。
『片道勇者』も、その時点の私の能力を考えれば、
「たまたま運が重なったから一本として完成させられた」という危ういものでしたから。



<本職の人にとっては当たり前のことかも?>

なお企業さまなどにおいては、偉い人に企画を承認してもらう都合上、
「企画」という名の「面白そうに見えるゴール」を偉い人に見せてから
プロジェクトが始まることが多いのではないかなと思います。
そういう意味では、これは企業的な作り方の一部を
取り入れた方法とも言えるかもしれません。
(企業さまにおいては、「売れるか否か」という判断もそこに入るのでしょうけれど)

一方、個人開発の私の場合だと「偉い人に承認してもらう」といった制約がないため、
「どうやれば興味を持ってもらえるものにできるか」を全く考えずに作ってしまって、
完成した後に「これどうやって面白そうに紹介するんだよ!」と
悩んでしまうということを、私は15年以上も繰り返してきてしまいました。

「自分が作りたいものを、可能な限り面白そうに見せるためのゴール」
を最初に考えておくこと

宣伝文句を考えたり、面白そうな画面写真を選ぶのに苦労する状況は、
どのみち作る前でも作った後でも必ず1回は遭遇するのですから、
後になって方針を変えにくい状況になってからそれを考えるよりは、
先に考えておいた方がいい未来に繋がるかもしれません。



【中盤:見た目をきれいにするのはやる気が減りそうなタイミングで】

以前、「ゲームを完成させる作り方」というのをご紹介しました。
それは「レベル1」で最低限の骨だけ作って、
「レベル2」で肉付けして短編を完成させて、
「レベル3」で追加の実装を行う、という方法です。

ゲーム開発は最初から全ての素材が揃っている状態から始まるわけではなく、
必ず「グラフィックを良くする作業」、あるいは
「正式な画像を作成・導入する作業」がどこかに入ります。
そして「完成させるゲームの作り方」では、
「レベル1」では画像はサンプル画像でもラフ画でもよくて、
「レベル2」で本番の画像にする、という感じの話をしました。

そして、その「レベル2」内の部分的な工夫として最近考えているのが、

「本番画像を搭載する、立ち絵を清書し始める」などの「見た目をよくする作業」は、
レベル2の肉付け作業中の『気力が減ってきたあたり』で行うようにすることで、
開発中盤あたりの飽きを少し緩和しやすくなるのではないか。


ということです。というのも、「見た目をきれいにしていく作業」は、
「作る→見た目がよくなってやる気が上がる→作る
→見た目がよくなってやる気が上がる」
の連鎖で、個人的にはものすごくモチベーションの
ブーストがかかる場所だと考えているからです。

ゆえに、そういった「おいしい部分」は最初から使い切らずになるべく温存しておいて、
やる気が下降気味になりそうなタイミングで少しずつ投入する
のが
持続性の面で効率的かもしれない、と最近考え始めています。

グラフィックを良くする以外にも、
あなたにとってやる気が回復しやすい作業があるなら、
それを部分的にでも温存しておくと、モチベーションの給水所として
役立てられるかもしれません。

だいたいの場合、私が無意識に開発を進めると
「楽しい作業」を先にやりたがってしまって、
苦しい作業だけが後に残って絶望することが多い
ので、
そんな苦労をするタイプの人には、
おいしいところを意識的に残しておくのは割と効果的な手段だと考えています。



【全編:絵は最後まで徐々にブラッシュアップし続けるよう作る】

これは主に、あなた自身が絵を作れる場合の話です。

個人制作の場合、ほぼまちがいなく、あなたは開発中に様々な面でレベルアップします。
「絵を描く能力」など、目で見て分かる力は特にそうで、
最初にしっかり仕上げて作ってみたつもりにも関わらず、
完成前になってちょっと変だと気付いてしまう場合が多々あります。

場合によっては、開発前半と後半で作ったキャラの絵のタッチが変わってたり、
あるいは上手下手が見て分かるほど差が付く場合さえあります。

だいたいの場合、こういう場面に遭遇すると後から
全部修正したくなる気持ちになってしまい、
開発の満足度的な意味でかなりキツい状況に陥ります。
でも、年単位の開発においてはこういう状況はたびたび発生します。
私は、なんとかこういう状況を避けられないかなと考えていました。

そこで、やり方を変えて個人的に今のところうまくいきそうだと考えている方法が、
「絵の一つ一つを100%に仕上げて次に行く」のではなく、
「絵は一気に仕上げず、最後まで全てをまんべんなく
ブラッシュアップし続けるつもりで描く」
ようにする方法でした。
やり方を整理すると、以下のような感じです。

1.最初は雑なキャラクターのラフを書いて、そのままゲームに導入する。
2.開発が進むにつれ、全キャラを『徐々に』ブラッシュアップしていく。
変なところに気付いたら直す。
3.「仕上げ」をするのは開発が終わる直前あたりにする。


この方法には、以下のような利点があると考えています。

●あとあと精神的に楽になる。
1枚ずつ100%にしていって「一旦完成したもの」を
あとで描き直す状況に遭遇すると精神的にゲッソリしますが、
一方で「最後まで全部未完成にして、全て平均的にずっと微調整し続ける」
という前提で作業すると、終わり際だけでなく、その道中もだいぶ気が楽になります。

私の場合、時間が経てばどのみち過去の絵が下手に見えてくることは分かっているので、
「時間をかけて絵を良くしていけばいい」という環境にしておくことで、
未来の自分を恐れるストレスを感じにくくする効果がある気がしています。
そういったストレス源があると、気付かないうちに
モチベーションにもじわじわダメージを受けてしまいがちです。

さらには「今すぐうまく描けなくても、不安にならずにメインの仕事を進められる」
といった効果も得られるので、個人的にはこの点が助かっています。


●クオリティを均質にしやすい。
平均的にブラッシュアップしていくことで、
「一枚だけ気合を入れすぎて、他も同じように描けなくて苦労する状況」
が起きにくくなります。
言い換えれば、クオリティを均質にしやすくなる利点があると考えています。

これとは逆に「最大クオリティで仕上げた一枚に質を合わせる」ように
作ろうとしてしまうと、個人的には意外と大変です。
描く対象によってモチベーションが変わってくるのもあって、
普通はそうそう全部に対して最大に近いクオリティは出せないはずなんですが、
不慣れだった自分はなぜかピークの成果を出し続けられると思ってしまうのです。
そして、うまくいかないギャップで苦しむことになりました。


●新たな発見を取り入れやすい。
「描きかけの画像」があると、自分のセンサーが強化されやすいというのも利点だと思っています。
「いま若い男性キャラを描いてるんだけど、どうやったらかっこいい
細マッチョを描けるだろう、他の人はどう描いてるのかな?」とか、
「かわいい女の子キャラって、どこをどうすればかわいく見えるんだ?」など、
いま抱えている課題をよりよく解決するための情報に、
より敏感になれる期待があります。
「未来の自分」を育てる価値が出てくる、とも言えるかもしれません。

一方で、「一つ一つを完成させてしまった」後に
よりすばらしい方法に気付きそうになった場合、
一度完成させたものを修正するコストは心理的にも非常に大きいので、
新たな発見から無意識的に目を逸らしてしまうかもしれません。割と私がそうです。

仮に「新たな発見」を受け入れるにしても、
いちいち修正し続けると永遠に開発が終わらないので、
たいていは「よりよくできる可能性を知りながら無視し続ける」という、
かなりの精神力を消費する行為に挑戦することになりがちです。
だからこそ、「いま仕上げず、最後までいじってもいい」
という前提のまま置いておくことは、
ストレスを低減させる大きな効果をもたらすのではないか、と考え始めています。



誰かと協力して開発している場合は、こういった方法はやりにくいかもしれませんが、
個人開発なら作りかけのものが大量にあってもそんなに困らないので、
これから試していきたいと考えている方法です。
ただ「作業の順番が変わるだけ」で、いずれはやることですからね。

私の中では、「完成品の絵をさらに作り直させたがる未来の自分」が
無意識のうちに『敵』のような存在になってしまっていて、
これまでも意志力で何度も殴り倒してきた
のですが、だんだんと疲れてきました。
どうせなら今回のやり方のように、「未来の自分」と一緒に協力する方向性でやった方が
丸くおさまりそうかなと感じています。



【一定頻度:段階ごとに人に見せて方向性を確かめる】

ゲーム開発初期はテストプレイをお願いできる友達が
いないことが多いので難しいのですが、
できれば「開発の各段階ごとに他人に見てもらう」ようにすると、
色んなことが分かります。
これは以前の「楽しくて学べるゲームの作り方」の記事で述べた
「小さく作って、そのたびに見てもらう」やり方の「内輪版」とも言えます。

プロトタイプの段階でも、人に見せることで
以下のことに気付く機会を得ることができます。


【中度】 インターフェースや分かりやすさの確認。
→ 初めての人にとって操作が直感的でない部分や、
ルールの分かりづらい部分を知ることができます。
特に、開発者側は「『初めての人にとって分からない部分』が分からない」
ことが多いので、貴重な情報になるはずです。


【中度】 難易度の確認。初めての人にも適正か?
→ 基準の難易度が適正かどうか、という点が早めに分かるでしょう。
開発者好みのバランスで作ると、意外と最初から難しくしてしまいがちです。
配信プレイでも、横で見てるのでも何でもいいのですが、
実プレイの光景を生で見ていれば、
あまりに苦戦してイライラしている様子などを確認できる確率も高いので、
もしそうであれば想定するバランスの修正が必要でしょう。


【重大】 そもそもの方向性に問題がないか?
→ 自分が普通だと思っていたゲーム内容や操作は、
もしかしたら他人にとって非常にやりにくいものになっているかもしれません。
ゲームの「方向性」の善し悪しを、完成前に知ることができるのは重要です。

たとえば私の場合、『シルフドラグーンゼロ』の開発時、最初は操作しにくい
「エストック」の機体しかなかった状態のプロトタイプをテストしてもらったら、
「操作が直感的じゃなくてやりにくい」と言われたので、
分かりやすい操作性の「ギガント」と「ラプター」を追加したという経緯があります。

もし、テストしてもらって出たその指摘がなければ、
私は確実に「エストック」の機体のみでリリースしていたはずで、
まちがいなく遊ぶ人を選ぶゲームになってしまっていたでしょう。
完成後に「機体」を追加するなんてのは修正箇所が多すぎて大変でしょうから、
早期に方向性の問題に気づけたのはとても大きな収穫でした。
方向性の問題は、早く気づければ気づけるほど対応が容易になります。


<初めての人は大事>

それと「段階ごとに見てもらうとよい」と言いましたが、
もし残せるようなら「一度もプレイしていない人」を
最後まで残しておくと後で助かります。
というのも、「ゲームのやり方が理解できない」と指摘してくれる可能性が
あるのは初見の人だけだから
です。
一度見せれば初見ではなくなってしまうので、「初めて」の人は貴重です。

今なら、内輪での配信プレイもしてもらいやすいので、
身内で映像を流してもらいながらゲームを遊んでもらっているところを見て、
「自分が一切説明せずに遊べるか」などをチェックするとよさそうです。
そして遊ぶ人が分からずに困っているところに遭遇しら、きっと解説のために
あなたは口出しをしてしまうでしょうから、
その「口出ししたところ」のタイミングで言ったことを、
そのままチュートリアルに追加することで、
よりよいチュートリアルに仕上がっていくはずです。

また私の視点だと、「ゲームが下手な人」はもっといいです。
「知ってて当然」のことさえ知らない人にもやさしく教えられる、
あるいは遊べるゲームができれば、遊んでくれる人の幅も広がるでしょう。

一方で、「知ってる人ならチュートリアルを無視できる」ようにする配慮も大切です。
できる人とできない人、両対応した配慮をしていきたいです。



【リリース前:できれば余裕を持って終わる】

ゲーム開発は、「少し余裕を持ってリリースする」ことが
非常に大事だと考えるようになりました。
なぜかというと、プレイ人数が一定以上確保できるゲームをリリースすれば、
ほとんどの場合、自分が気付かなかったゲームの問題点を、
リリースの直後からプレイヤーさんが指摘してくれるからです。

「ウディコン(私が開催しているゲームコンテスト)」で
滑り込み投稿しておられる方などを見ると、
たまに地獄のような状況を目にすることがあります。
たとえばあなたが完全に疲れ切った状態で、
「もうこれで開発の苦労から解放される……」と
思いながらゲームをリリースしたら、その直後から様々な報告が大量に届く
のです!
数々のバグ報告! こうしてくれという要望、などなど!

ですが、あなたが身体的、精神的に限界オーバーしてるときにそれらを抱えてしまうと、
慣れない内は「あなたをこれ以上働かせようとする意見」の全てが
まるで敵のように見えてしまうことも多々ある
と思います。
真っ当なバグ報告や要望ですら、受け止める余裕がなくなって
「ア゙ア゙ア゙ア゙ー!!」と叫びたくなってしまうこともあるでしょう。

私にも、今でもたまにそう感じることがありますが、そういった心理面の問題の多くは、
「自分の残りの元気・気力が足りないこと」によって発生しがちです。
私の場合に限れば、ゆっくり休むことで心理面の問題は
8割以上解消されると思っています。

とはいえ、冷静にそれらの問題点を指摘する意見を見たときに、
「明らかに直した方がよさそうなもので、かつあなたが直せるもの」なら、
修正しておいた方が、これから遊んでもらう人達にも
もっと喜んでもらえることでしょう。
早く直せれば直せるほど、その問題で被害を受けるプレイヤーさんも
減るわけですからね。

もちろん、様々な事情を加味した上で大変そうなら後回しにするのも大切な判断ですが、
余裕がないほど退く判断をするのも難しくなってしまいます。
何かの拍子に爆発したり折れたりしてしまわないよう、
リリース前にはできれば「身体的・精神的な余力を残しておく」、なおかつ
「リリース後の何十日かくらいは、その対応に追われる覚悟をしておく」

というのも大切なことだと、今の私は考えています。

今となっては、「リリースした一秒後からは、しばらく休むことはできないだろうな!」
くらいの覚悟でいる方が、たぶんうまく回るだろうと思うようになりました。

私の場合、ひどいケースだと、『片道勇者プラス』のときは
リリースしてからたった一ヶ月で1000行にも渡るバグ修正リストができてしまいました。
まさかそんなにたくさん直すことになるとは思っていませんでしたが、
これまでの開発の経験から、リリース直後から多くの問題報告が来ることは
なんとなく覚悟していましたので、心身が衰弱した状態で公開することだけは
なんとか避けようと当時の私は考えていました。
しかし、その心身の準備をしていても限界を一時オーバーしていましたからね!

とにかく、もしあなたが「リリースさえできれば解放される!」と考えて
今もボロボロになりながら開発を進めているのなら、
「実はリリース後の方が激しい戦争が始まる可能性がある」ということだけ
頭の隅に置いてくださると、万が一そうなった場合にショックを
受けにくくなるかもしれません。
私もいまだに、大変さが最大想定を越える場合がたびたびあるので、
覚悟が不十分だと痛感しています。

なるべく無理しない程度に進められるのが一番ですが、
どんなときでも想定外の事態というのは発生してしまいます。
いつでも対応できるよう、できるかぎり余力を常に残しておきたいですね。



以上、「ゲーム開発で最近試していること色々」でした。いかがだったでしょうか。
あくまで私個人にとって有用だと考えている方法や心構えですが、
部分的にはお役に立てる内容もあるかもしれません。

ちなみに、今回述べた試みのほとんどは「順序を変える」という手段を取っています。
面白そうなゴールを「先」に考えるとか、
見た目をきれいにするのは「後回し」にするとか、
絵は「最後まで徐々に」ブラッシュアップするなど、これらは
いずれやることを先に行ったり後回しにしたり薄く引き延ばしたりする形です。

基本的にこういった「順序の変更」だけなら新たなコストを大きくかけずに済むので、
少ない負担で取り入れられるのかなという印象があります。
ただ複数人で開発する場合だと、作業を分けたりすることで
管理のコストが増大したりする危険性があるので、そこは注意が必要ですが、
一人ならば管理コストの問題も起きにくいですしね。

他にも、「順序の変更」によって精神的に楽になったり、
より効率的になる部分がどこかに潜んでいるかもしれません。
ただでさえゲーム開発は苦しみが大きく、アウトプットに苦戦する場面も多々あるので、
自分の力を最大限に発揮できる開発順序を生み出せるよう、
今後も考えていきたいと思っています。



他にもし何か「こんな話題を聞いてみたい!」というお話がございましたら、
ぜひ拍手コメントからお送りください!
答えられそうなものはどんどんお答えしていきます。


← 今回のような記事を
 1冊の本にまとめたゲーム開発本、
 『ゲーム開発者の地図』、
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 2017-07-01 (土) web拍手 by FC2 カテゴリ: 開発日誌




2017-06-10 (土)   ゲーム開発話 小粒編
【ゲーム開発話 小粒編】

今回はいただいたコメントやご質問などにお答えしていきます!
様々なコメント、いつも本当にありがとうございます。




●ゲームのストーリー作りは、自分が面白いと思う話を考えるか
プレイしてくれる人が面白いと思う話を考えるか、どちらと捉えて作りますか?
自分はあまり世のゲームのストーリーにハマれないことが多いので気になります。


私の場合は、ストーリー作りは開発の回数を重ねるほど、
「自分が面白い」と「プレイしてくれる人が面白い」が両方混ざってきています。
いま現在意識している方向性を一言で整理するなら、以下のような感じです。

「『自分が面白いと思う話』を、自分が我慢できる範囲で
『プレイしてくれる人が面白い』と思えそうな範囲に寄せて作る」


これはストーリーだけでなくゲームそのものにも言えますが、
私が自分の好みを100%反映すると一部の人に凄く刺さるものになる代わりに、
多くの人にとって「なにこれ合わない!」となってしまうものができがちです。
なので今は、できる限り多くの人に楽しく遊んでもらえることを目指すにあたって、
「好み80%、配慮(=我慢)20%」という感じを意識しています。

たとえば私が「好み100%」でゲームを作るとどうなるかというと、
『シルフドラグーンゼロ』が「エストック」の
機体しか選べないゲームになったりします。
(※エストック=直感的でない操作の機体。他2種の機体は明快な操作だが
実はそれらは配慮のために後付けしたものだった)

そしてストーリーに関して、私がまったくユーザ寄りにせずに、
ただ「自分が面白い」と思うものを100%投入したのが
『レジェンドオブレストール』です。
そこで学んだことを糧に、少しプレイヤーさん向けに寄せようかなと考えたのが
『シルフェイド見聞録』や『シルフェイド幻想譚』だった気がします。

そういうわけなので、私が一切の配慮をせずに
『自分にとって面白い』と信じて作ったゲームが見たい方は、
ぜひ『レジェンドオブレストール』を遊んでみてください!
「薄めていないソーダみたいな味」(?)と
どなたかが評価してくださった記憶があります。

あと、私が好みを全力を出すと頻繁にバッドエンドにしたくなってしまうので、
ゲームのクリア時には必死にハッピーエンドっぽく描写するようにがんばっています。
ハッピーエンドはたいていの場合、私にとって「配慮」の部分です。
一方、ゲームオーバー場面などは堂々とバッドエンドにできるので「好み」の部分です。

一本道ストーリーは基本的にハッピーエンドが求められがちなのでどうしても苦手で、
何かを書きかけても途中で手が動かなくなることが多いです。
一方で、「がんばった人が目の前にいるから喜んでもらいたい」と
自然に思えることもあってか、TRPGでハッピーエンドを演出するのは楽しいですね。



●SmokingWOLFさんがゲーム製作を続けられる理由を聞いてみたいです。
(生活のため、というのはあるかと思いますが、
それ以外でモチベーションになっているものがあれば)


すごいおおざっぱな一般論でいうと、精神的な面では、
「投入した労力に対して相応以上の満足感があるから」だと思います。
それがあれば、「生活できないから」という理由でやめることはあっても、
続けられる状況下であればずっと続けるでしょう。
逆に満足感がないと、たとえ生活の糧で
やっていることでも続かないことが多い気がします。

「ゲーム開発」は、私にとっては全力で挑戦してみても
なかなか最適と思える解にたどり着けない、超絶難しいゲームですが、
一本作るたびに色々な発見があって次に活かせるので、とても楽しく感じています。
「前回覚えたこの『意図』を使えば次はうまくやれるはず!」
という感覚があると楽しいのは、きっとどんなゲームでもお仕事でも同じだと思います。



●最近は、スマホで無料の(しかもそれなりに高品質の)ゲームが
あったりして、以前とはフリーゲーム界隈も変わってきたように思います
(コンパクで盛り上がっていた時代が懐かしい)。SmokingWOLFさんは
この辺の変化について、どのような感想を持っておられるでしょうか?


ここ数年で、フリーゲームを遊んでいらした人が
企業製の基本無料ゲームに流れていったり、
フリーゲーム内でも遊ぶ人でも色んなジャンルに
散り散りになったりしている感じはします。
一方で、ツールを提供している側としては「ゲームを作りたい人」が
昔より減るどころか逆に増えている感じがあって、
「作る人が増えて、遊ぶ人は色んなところに散ったのかな?」という感触があります。

立場ゆえにそう感じている部分もあるでしょうけれど、
でも例えばウディコンでは、年々「投票者」様の数が減っていても
「作品数の減りはすごく遅い」ので、私には作る人が増えているように感じています。

スマホに関しては、
「スマホすごい! どこでも遊べる上に、外からでは
遊んでるように見えないあたりが日本人的に最高のゲーム機だ!
そりゃこれは流行りますよ!」 と思っています。
私も面白いゲームができればスマホに展開することも
検討しているくらいには、大きい波になっていると考えています。
(果たしてそこで収益が上げられるかは別ですが!)

フリーゲームを出せる場所は昔と比べると増えた気がするんですが、どうでしょうね?
昔は盛り上がりどころが一カ所に集まっていたかもしれませんが、
今はホームページ時代からSNS時代になって投稿の場が散っている気がするので、
全てを総合すれば、投稿側の熱は昔より
盛り上がっているのではないかなと想像しています。

一方で、全てを知るには情報収集のコストが上がりすぎて追いつけないので、
一カ所あたりの「遊ぶ側の人」の数は昔より減少していたりして、
「昔と同じ情報収集コストで探せる範囲内では盛り上がりが落ちたように見える」
と感じておられる方も多いのではないかなと思います。
私も、作品が増えすぎて探すのが大変になったのと、自分の開発に忙しくて、
いつしか情報を追いかけられなくなってしまいました。

今はSNSなどで「このゲーム面白いよ!」と情報を発信してださる方を経由して
初めてそのゲームを知るということも多くなったので、
一カ所にみんな集まる時代は終わって、
小さな口コミが徐々に伝わっていく時代なのかなと思っています。



●キャラづけネタは以前にもありましたが、好かれる(嫌われない)
キャラクター作り(※性格や発言など精神的な部分)、というテーマは
如何でしょうか。(微)エロあり下ネタありBLネタあり、と自分は苦手だと
思う要素がありながら、不思議と不快感を感じたことがありません。
キャラクター作りというよりは、ウルフさんの表現力の賜物、という部分も
ありますが……そのあたり、工夫や苦労話があれば聞いてみたいな、と思いました。


その辺りはあまり深く意識したことがなくて、この前、人にシモネタ入りの初案を
見せたら「ちょっと過激じゃないですかね!」みたいなことを
言われた程度にはたびたびツッコまれています。

たぶん「セーフ」の許容ラインが私と近いか、もっと危険域にある人だけが
私の描写を不快感なく感じられる、というだけのことではないかなと私は考えています。
『シルフェイド見聞録』も「十分アウトだ」、「合わない」、
「ウマコ!」とおっしゃる方も多いので、
人によってセーフのラインがおのおの違うのだろうなとは常々感じています。

じゃあどうしていけばマシになるかというと、最近は
「具体的な部分は想像させるような表現にとどめる」ようにすれば
人に応じたレベルで想像できるのでいいのかな? と今は考えています。

たとえば、
小学生の方が見てもその人の経験の範囲で想像できるし、
大人の方が見れば大人らしい想像ができるし、
汚いのが嫌いな人はきれいな想像もできる。
個々人が求めるものを映し出せるような、
そんな鏡のような描写を目指したいなと考えています。
そういう目的においては、「なすがままにされてしまうだろう」なんて
とても便利な言葉ですね!



●わたしもウディタいじりでかれこれ1000時間以上は夢中になっているのですが
UDB(CDB)の立て方はいまだに大変悩みます。このあたり、ウルフさんのご経験で
なにかあれば話題にしていただけると嬉しいなーと思います。


データベースを作る手順はいつも

1.「項目がほとんど入っていない空のDBを作る」
→ たとえば「名前」と「グラフィック」「HP」しか入れてない
「ユニットDB」を最初に作ります。



2.「処理を実装していく中で必要になったら項目を足す」
→ さっきの「ユニットDB」に「攻撃力」「防御力」などを追加します。



1~2の繰り返し。


という感じの、プロの開発者の人からは怒られそうなひどい作り方をしています。
要するにほとんど行き当たりばったりですが、ウディタはDBの項目追加がやりやすいので、
個人で開発している分にはあまり困らないと思います。

「いま処理を作っているけど何の項目が必要か分からない!」 という場合は、
もう少し整理が必要だと思います。
「どこに何を入れれば効率的か」を考え始めると私も頭が沸騰してしまいます。



●途中で英題が『Katamichi Brave』から『One Way Heroics』へと変えたのも
何か理由があってのことだと思うので、よろしければお聞かせください。


PLAYISMさんから海外展開用に翻訳したタイトル
「One Way Heroics」をいただいたので、
そのタイミングで『Katamichi Brave』から表記を切り換えました。

次は仮の英語タイトルを付けずに、付けてもらうのを待とうかなと思っています。



●シル見の当初のプロットを伺いたいです。

一番最初から決まっている部分である、
「主人公が医者を目指す少年エシュターで、ヒロインが不治の病の少女シーナ」
という構成にしたところから推測できると思いますが、
「最終的に主人公が女の子の病気を何とかするストーリー」
をメインにすることだけぼんやり想定していました。

シル見は永遠に連載し続けるつもりだったので途中はあいまいで、
次の話の展開を考え始めるのはいつも毎話をリリースした後でした。
途中で最終回の展開だけは色々ぼんやり考えていましたが、
その一つは少しアレンジして『シルフェイド学院物語』内で描かれています。



●開発日誌や開発記を読んでて思ったのですが、(製作者サイドから見た)
欲しい意見や欲しくない意見―あるいは反映しやすい意見としずらい意見―
とはどのようなものがありますか?


ゲームの改善や、知見を得るために欲しいご意見は主に以下の通りです。

「~~が面倒臭く感じる」
「~~が理不尽に感じる」
「~~の部分がつまらないです」
「ここにあの情報を出して欲しい」
「ここにバグがあります!」


ややネガティブっぽいコメントが多いと思われるかもしれませんが、
上の3個あたりは遊ばれた人にとっての間違いのない真実です。

また、どれも全て「そもそも私が気付いてなかった」部分が原因であることが多いので、
言っていただければ「何か対応を考えようか」、あるいは
「次回作からその辺も配慮できないか考えてみよう」と
初めて思考コストを投入できるようになります。
そしてそれができるようになった分だけ、今後の配慮の向上に繋がるはずです。

基本的には、「制作者が気付いていない」ことによって
発生する問題はかなり多いと考えているので、
プレイヤーさんからの多くの主観的コメントは全て大歓迎です。

もちろん、「ここが面白く感じた」「このキャラが好き」といった
ポジティブな部分へのコメントも大歓迎です。
たまたま一定数の人に対してうまく希望に沿うものが作れたということで、
「喜ばれやすい成果物」に近付ける意図であったことが分かるからです。
何より、私自身の精神的栄養に繋がりますしね。

ゲーム開発初心者の頃は、作れるものの中でどの部分がウケがいいのか知るためにも、
このポジティブなコメントがたくさん必要だと思います。


一方で難しいかもしれないこととして、「こういう仕様にしてほしい」系のご意見は、
他の部分と干渉せずに低コストで面白みを上げられそうなものならすぐ採用できますが、
他の部分が色々こじれそうな場合や、自分の好みじゃない、
導入によって得られそうな面白さと実装コストが見合わなさそう、
と判断した場合は反映しにくいと思います。

コストが安くて安全性さえ高ければできることも多いので、
その要望が出た意図を汲み取った上で、他の場所の問題も
一気に解決できるような方向性で何かできないかなー、
と考えることが多いです。要するにコストをかけるにしても、
できるだけ一気にたくさんのことを解決できるようにしたいと考えています。



●数年前、某有名Civプレイヤーが何でゴブリンを兵糧攻めしないのか?
という趣旨のツイートで話題になりました。その話の中でその方は
「命懸けの冒険者が生存確率を高める為に物理的に可能な全ての手段を
講じないとしたらその世界は全く非現実的だ」という理由から、TRPGにおける
GMはPLの一見理不尽に思えるような提案でも一考し、咄嗟に筋の通った
ルールを構築すべきであるという論で話を進めていたように思います。
 そこでTRPGを幾度となくプレイされていて、その上実際に新作の
TRPGの開発に携わったウルフさんにお聞きしたいのですが、
ウルフさんは上記の論についてどう思われますか?


ゲーム開発とは微妙にずれていますが面白そうなお話!
私はTRPG属性がカオス寄りで、事故や意外な展開が大好きなので、
個人のGM側としては
「無茶振りっぽい案でも面白かったら有りじゃないですかね!
 その場で何か考えますよ!」
と考えている派です。刑事役PCなのにいきなり「銃の威力を試したい」などといって、
突然何の罪もないそこらの住人を撃ってみたりするPLさんよりはだいぶ良心的です。

個人的には、GMをする方が多い立場として
PLさんからそういった無茶振りに近い提案が出ること自体はもう前提としていて
(何十人かと遊べば、必ず何度かは無茶振りが出るはずです)、
そういった状況で私がご提案できそうなGMさんが使えそうなやり方は、

GM「兵糧攻めか、いいぞ! じゃあ実行するための費用と期間を考えてみよう。
まず兵糧攻めに必要な包囲人員に払う報酬とその間の食料一式から計算だ。
たぶんゴブリン退治の報酬だと圧倒的な赤字になると思うけど。
なお空腹ルールは人間と同じものを使用して……」


とその場ですぐ思いつけるようなら言ってみるか、
そうでない場合、自分の知識や裁定力で瞬発的に手に負えなさそうだと思ったら、

GM「その願いはゲームシミュレータとしての自分(GM)の能力を越えていそうだ!
そこまでしなくて大丈夫なクエストだから、
他になんか自分の手に負えそうな案はない?」


なんてお手上げ宣言してしまってもいい気がしています。
ゲーム内リソースとルールの限界に加えて、基本的には
「GMが制御できるキャパシティの範囲内」で遊んだ方が楽なのがTRPGですし、
何よりそういう場面では早めにGM側から技術的に困難であることの主張と
方針転換の催促を宣言しないと、モメ方がヒートアップして
雰囲気が悪くなってしまう場合も多いですからね。

もちろんPCの皆さんとも協力して処理の仕方を考えていくのも楽しいので、
もしその卓にそういうのが好きなPCさんが多いなら、
協力してルールのアイデアを考えるのも楽しいと思います。

GM「すぐには思いつかないので案を一緒に考えてくれないか!?
 認めた範囲で採用するよ!」


みたいな感じですね。いざというときに備え、
「お手上げして別の案を求める」、「PLの手を借りてみる」という
選択肢を入れておくことで、
きっともっと落ち着いてGMができると思います。

ということで個人的なご提案としては、円滑さ重視を目的として
「GMさん側は手に負えないような状況ならメタ(ゲーム外の都合)でもいいので
早めにお手上げ宣言する」
「PLさん側はGM的に難しそうな提案をするなら同時に
GMさんの手に負えるかも聞いてみる」

といった感じで意識しておくといいのかなと考えています。
え? ヤバいPLさんは「今からすること」がGMの手に負えるか
そもそも聞いてこないって?
ハハハ! ズギューン!(罪のない住民を射殺する音)

上記は割とGM側の立場のお話ですが、PLとしての私も回数を重ねるごとに、
「こうしてみたいんだけど処理できる?」とか
「これもしかしてとっとと進んだ方がいい?(=テンポ破壊するほど警戒しすぎ?)」

などGMに聞くようにした方がいい場面も
あるということを徐々に学びつつあります。
特に、GMさん側の経験が少ない場合は余計にです。

なお、私がGMやるときによく関わるTRPGプレイヤーさんは
ゲーム開発者同士なのもあってか、

「GMがダンジョンを用意してない気がするから
行くのはやめた方がいいんじゃ?」


といった感じのことを言っていただけるくらい優しいので、
ある意味で助かっていますがどこか切なくなったりします。
でも仮に私が準備してなくても、5分いただければ
「判定に成功したら1歩進める4マス分くらいのミニダンジョン」
を出したりするといった工夫もできるので別に行っていいんですよ!?

刑事役PCの人が突然いきなり住民を射殺しても、そのまま上手に話の筋を戻して
物語を進められてしまうGMさんもいれば、対応不能なGMさんもいます。
良くも悪くも、人を見てプレイしなければならないのがTRPGの楽しいところであり、
難しいところでもあるなあと思いますが、PLさんからの提案の実現が難しいと思ったら
とりあえずGMさん側としては堂々と
お手上げしていいんじゃないかなと私は考えています。



<おまけ ゴブリン退治は恐いかも?>

ここからは主題ではないお話です。今回のお話だとゴブリン退治は
「特に兵糧攻めするほどでもない仕事」という文脈で使われていて、
TRPG慣れしている人なら私も含め、
無意識にそんな感じで受け取っているかもしれません。
でも前提なしで想像してみると、ゴブリン退治はかなり恐い戦いになる気がします。

たとえば私が一人の冒険者の場合でも、
「数が不明なゴブリンが洞窟に潜んでいる」という情報しかない状況だったら、
実は洞窟内がゴブリンたちの集合住宅になっていて、
うかつに入ったら死んでしまう危険性を考えるでしょう。

なので私もおそらく、パーティの死傷率を抑えるためにも、

「食料集めにゴブリンが洞窟から出てくるまで待ち、
少し離れたところで仕掛けて各個撃破」
(もしこの時点で手に負えない量になったら退却して依頼者に任務遂行が難しいことを報告)

「帰ってこないのを心配したか、腹を空かして仕方なく出てきたゴブリンを同様に狩る」

(もし洞窟への煙攻めがGMに許可されたなら実行して外で待ち伏せ。でも洞窟内を
いぶすのは実は相当に難しそうです。入口を埋めないとうまく行きにくいでしょうし)

「まだ生き残りがいないか洞窟探索開始、隠れても無駄だぜグヘヘ」


という、ほぼ兵糧攻め(=包囲戦)に近い作戦を最初に提案してみると思います。
とにかく「相手の戦力を少しずつ削るか、ある程度正確な数を知るための作戦」
を取るでしょう。

GMさんの殺意やリアリティ重視度などにもよりますが、
一般的な「最初のゴブリン退治クエスト」的な雰囲気で何も考えずに
洞窟に入った場合、もしかしたら以下のような展開が待ち構えているかもしれません。

GM「洞窟に入った4人のPCたち。だが夜目がきくゴブリンにはすでに気付かれており、
洞窟内の少し広い場所に出たところで、待ち伏せしていた20体以上の
老若男女様々なゴブリンから一斉に投石攻撃を受けた! 20回分のダメージ!」


こんな状況に陥って一瞬で仲間が何人か死んだらたまったものではありません!
でも、このくらいの展開ならゴブリン相手でも普通にありえそうな気がします。
ある程度の知能がある敵対種族の住み処に入るのは、情報不足の中では危険すぎます。

そして、戦術眼・戦略眼に優れた人ほどそういった
「ありうる」最悪の想定をすると思うので、
GMさんはそういった傾向のPLさんがあまりにも慎重に考えすぎるようなら、
円滑に進めるためにも、安心してもらうための情報提供を意識すると
いいのかなという気がしています。

GM「60年生きてる長老の記憶によると、この地方のゴブリンは3匹以下の
グループが住み着いた事例しか聞いたことがないとのことだ。
だからとっとと突入して! お願い!」


さすがにこうぶっちゃけられれば「じゃあ突入するかー」となるかもしれません。
といいますか、私自身が「慎重に考えすぎるPL」になってしまいがちなので、
似たタイプのPLさんがもしうっかり過剰に策を練りすぎたり慎重になりすぎて
ゲーム進行を遅らせてしまっているようなら、
GMさんから指摘していただけると嬉しいです、という立場です。

慎重タイプのPLさんは、究極的にはサイコロを振らないで
任務を遂行する手段まで考え始めますからね!
「サイコロに頼る状況に陥った時点で作戦負けである!」
ウォーゲーム出身の人や、少しのミスで即死するゲームを多く経てきた人には、
それに近い発想をする人も多いかもしれません。


<便利な時間制限>

あと、今回の件にも関わる話ですが、TRPGのミッションには
常に「日数制限」を付けた方がいいかなと私は考えています。 
明確な制限がなくても、一日経つたびに何のためか分からないダイスを振って、
「一日ごとに裏で状況が進んでいきますからねグヒヒ(本当は何も考えてない)」
というやり方でも構いません。

『シルフェイド幻想譚』みたく、最終的には時間が余り気味だったとしても、
「時間制限」があることで最も効率的な判断が求められますし、
かつ状況次第で「情報不足でも行くしかない」という意識が働くので、
ゲーム進行を円滑にしたり勇気を働かせてもらうにあたって便利な方法です。

時間制限は遊ぶ方もドキドキできますし、メタな見方をすれば
「その日数の中で解決できるミッション」であることも暗黙に明示されるわけです。
2日以内に解決しなければならない冒険なら、
さすがに突然ゴブリンが20体も出てくることはないでしょう。
でも、これが一ヶ月も与えられたら敵が20体くらい出るかもしれませんし、
もしかしたら何か裏の事情があるのかもしれません。
時間制限一つとっても、様々な情報を与えることができるはずです。



ということで、今回は以上です。いかがだったでしょうか?
皆さまの多くのご意見コメント、本当にありがとうございます!

他にもし何か「こんな話題を聞いてみたい!」というお話がございましたら、
ぜひ拍手コメントからお送りください!
答えられそうなものはどんどんお答えしていきます。


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 2017-06-10 (土) web拍手 by FC2 カテゴリ: 開発日誌




2017-06-03 (土)   ゲームタイトルを振り返る
【これまで作ったゲームタイトルを振り返る】

前回は「私のゲームタイトルの付け方」だったので、
今回はこれまでの私の主要作品に付けてきたゲームタイトルを
振り返って自己レビューしてみます。



今回は、私が作ってきた主要作品に対して、
<名前から推測されるイメージ><実際のゲーム内容>
2つについてそれぞれ述べていきます。
「名前から推測されるイメージ」は、私がタイトルだけを見た場合に
どんなゲームだと予想するか、という主観です。



●レジェンドオブレストール(アドベンチャーゲーム)

<名前から推測されるイメージ>
レジェンド(伝説)とあるので、レストールという人物による
壮大な物語のRPGっぽい印象があります。
あるいは大陸以上の世界を股に掛けたシミュレーションRPGかもしれません。
何にせよ戦いが多そうなイメージです。

<実際のゲーム内容>
これはゲーム一覧の古いところに置いてある私の処女作です。
耳長の青年レストールが主人公の、マッチョや亜人やモンスターと共に
一つの街で繰り広げる日常コメディADVです。ほとんど街から出ません。
タイトル命名の際は、「誰に向けて送り出すか」といった一切の考慮はなく、
ただひたすら雑に決められたタイトルです。
当初は友達にしか見せないつもりのゲームでしたから。

せめてかっこよくしようと思ったんですが、
今では「レジェンドオブ~~」はありきたりすぎてイマイチかもしれません。



●シルフェイド見聞録(アドベンチャーゲーム)

<名前から推測されるイメージ>
『見聞録』なので、『シルフェイド』という地での冒険もののようです。
新たな地での出会いや発見が多そうなRPG、
あるいは紀行物ADVっぽい印象です。

<実際のゲーム内容>
実際は『シルフェイド』という世界で、
ノーマ学院に入学した医者を目指す少年エシュターが
学校内で繰り広げるドタバタコメディが中心になっているADVです。
『見聞録』的な場面まで行ってないので、少し名付けを失敗してしまった感があります。

いずれ旅に出る予定があったり、話のコアに
『見聞録』が関わる予定だけはありましたが、
作り始めたときはそんなことを一切考えていませんでした
これはたぶん、前作がレジェンドオブレストール(レストールの伝説)
というタイトルにも関わらず
割とほのぼの生活コメディものだったので、その流れを汲んだものと思われます。
要するに、「かっこよさそう」というだけで名前を決めました。

あと、当時の私は背景のグラフィックがほとんど描けなかったので、
ほとんどの物語を学院内で進行せざるを得なかったというのも理由の一つにあります。
「劇中で行ける範囲」の制約は、そのまま「私が作れる素材の種類と量」に
左右されていたのです。



●シルフェイド幻想譚(RPG)

<名前から推測されるイメージ>
『シルフェイド』世界のお話っぽいですが『幻想』なので
ファンタジー世界のお話のようです。
人によってはファンタジー童話の物語系なゲームにも見えるかもしれません。
たぶんADVかRPGのどちらかだと思いますが、幻想って付くゲームはRPGが多いかも?

<実際のゲーム内容>
シルフェイド世界の浮遊島を舞台にした半フリーシナリオRPGです。
おおよそ内容から外れていないタイトルだと思っています。

ただこのタイトル名には少し問題があって、一部の漢字変換ソフトだと
『譚』の字がなかなか出ない場合があるらしく、それで
正式名称の普及力が少し低下してしまった感じがあります。
それでも、「シルフェイド」や「シル幻」といった略称のおかげでだいぶ救われました。
当時はSNSがそんなに流行っていなくて、掲示板時代だったせいもあるかもしれません。
(掲示板の名前を見て語り場を探しに行くことはあっても、
自分から打つ機会は今より多くなかったため)



●シルエットノート(アドベンチャーゲーム)

<名前から推測されるイメージ>
「シルエット」はおそらくファンタジーというよりは
「現代」や「未来」を感じさせる用語で、
「ノート」という単語から、これも現代感や、何かを調べるゲームである雰囲気が
予想されるかもしれません。アドベンチャーで
探偵ものっぽく感じられるかもしれませんね。

<実際のゲーム内容>
近未来の海上都市アクアフロートで繰り広げられる、ときどき魔法少女もので
ときどき学園ものでときどきサスペンスなアドベンチャーゲームです。
登場キャラクターはある程度シルフェイド系に登場したキャラを元にしており、
シルフェイド系列であることをほんのり示すために、
「シル」から始まる単語を選びました。

あえて『シルフェイド』と付けなかったのは、初の有料ゲームだったということもあり、
シルフェイドの名前に頼らずいくら売れるか挑戦したかった、という理由でした。



●モノリスフィア(マウスアクションゲーム)

<名前から推測されるイメージ>
モノリス(石柱、四角っぽいイメージ)とスフィア(球体)を繋げた名前から察するに、
どことなく幾何学感があるので、前知識なしだと
パズルゲームっぽい印象があるかもしれません。
というか、一番最初はパズルゲームのつもりで作ってたんですよ。

<実際のゲーム内容>
実際は女神モノリスが力の源である
(モノリ)スフィアを集めにいくアクションゲームです。
前回の「新ブランドなら分かりやすい名前の方がいいかも」という話の筋からすると、
あまり直感的じゃないゲームタイトルかもと個人的に思っている一本です。
だったらどう名付ければより効率的か、というのも、すぐ思いつかないんですけれどね。

語感の面では、『モノリスフィア』は割とよく付けられた方だと思います。
英語では『Monolith Sphere』となっています。
英語名だとこの矛盾したような名前に「おっ?」と思えるかもしれないので、
個人的に好きです。
日本語だとその効果を活用しきれていない気がします。



●シルフドラグーンゼロ(シューティングゲーム)

<名前から推測されるイメージ>
「ドラグーン」という単語がいかにもシューティング風なので、
これは多くの人がシューティングゲームだと推測できると思います。
かつて『シルフィード』というシューティングゲームも家庭用にあったので、
「シルフ」部分もシューティングゲームを想起させるかもしれません。
また、「ゼロ」と付いていれば竜に乗った
ファンタジーものだと誤解する人は減るでしょう。
(「シルフドラグーン」だけだと「風の竜騎士」みたいに
捉える人もいるかもしれません)

「ドラグーン」はその語感から、日本では「竜に乗った騎士」みたいな意味で
使われるケースも多いらしいのですが、
元の意味は「竜騎兵」→「銃で武装した騎兵」のことだそうです。
作中でも、近世ヨーロッパの竜騎兵から名前を借りて航宙戦闘機に付けている、
といった記述を入れています。

<実際のゲーム内容>
航宙戦闘機ドラグーンを駆って戦う1画面全方位シューティングゲームです。
だいたいゲームタイトル通りな感じがしますが、
全方位シューティングっぽさはさすがに出せませんでした。

これは『シルエットノート』の作中ゲーム『シルフドラグーン』が元で、
本作はその続編なのですが、そもそも元の方に「シルフ」を付けたのは
「シル」シリーズの系列であることをアピールしたかったからだったと記憶しています。

あと「ゼロ」が付くと、ゲームタイトルのかっこよさが
簡単にいくらか増える感じがしたので、
開発開始時にはとりあえず「ゼロ」を付けることを決めていました。
ストーリーも、この『ゼロ』のタイトルに合わせて作られています。



●シルフェイド学院物語(育成シミュレーション)

<名前から推測されるイメージ>
『シルフェイド』という学院で繰り広げられるお話を描いたゲームのようです。
アドベンチャーか、RPGか、といった感じでしょうか。
『物語』と付いている場合、個人的にはアクションゲームっぽさを感じにくくなって、
ターン制など非リアルタイム進行のゲームっぽさを感じます。

<実際のゲーム内容>
実際は、このゲームは『シルフェイド』島の学院で1年を過ごす、
近未来世界の育成シミュレーションゲームです。
タイトルだけ見ると『シルフェイド』の学院のお話っぽいので、
これこそ学園内のお話が多かった『シルフェイド見聞録』に
本来付くべき名前だった気もしますね。

『シルフェイド』と名前が付くゲームを並べてみると、
登場キャラやトーテムという存在や世界観が近いだけで、
結局のところベースとなる世界や時代は毎回変わってるので、
『シルフェイド』の定義とは一体何なのか考えさせられます。



●片道勇者/片道勇者プラス(ローグライクRPG)

<名前から推測されるイメージ>
ゲームタイトル名から察するに、「片道」なので出発したきり二度と帰って来られない、
「勇者」の冒険を描いたゲームのようです。

「勇者」と付いているので、ジャンルはいかにもなスタンダードRPGを想像させます。
クラシックな画面に大きいドットのキャラクターが歩き回ってるような、
そんなゲームかもしれません。


<実際のゲーム内容>
このゲームは『闇』によって画面左から世界が呑み込まれていく中、
二度と戻ることのできない一方通行の冒険を繰り広げるローグライクRPGです。
主人公が勇者だったり、魔王を倒しに行ったりするゲームなので、
ほぼタイトル通りの内容かもしれません。ドットはそこまで大きくないですけれど。

『片道勇者』は伝わりやすい名前ですし、
人によってはほんのり悲壮感も伝わってとてもいい名前だと思います。
(とても鉄砲玉っぽいあたりが)
これほど短く、かつ何かを想像させられそうな名前はもう付けられない気がします。



●プラネットハウル(マウスアクションゲーム)

<名前から推測されるイメージ>
「プラネット」という名前が付いてるので少しSFっぽい気がします。
「ハウル」は分かる人には分かる「遠吠え」という意味の単語なので、
分かれば動物っぽいニュアンスを掴めるかもしれません……が、
多くの人にはあんまりピンと来ないかもしれませんね。

SF感が伝わる一方、ジャンルは分かりにくいと思われます。
惑星を股に掛けたSFアドベンチャーか、異色のSF RPGか、アクションゲームか、
あるいは星ごとどうにかする惑星シミュレーションゲームかもしれません。

<実際のゲーム内容>
獣人系のキャラがいっぱい出てくる、
宇宙を舞台とした変則操作の機体を操るマウスアクションゲームです。

タイトル案として『アストロ・ケモノーツ』
(「アストロノーツ=宇宙飛行士」にかけた名前)
という案が一瞬出たのですが、開発に関わる人が完全に私一人だけだったら
もしかしたらそう名付けていた可能性もいくらかあったかもしれません。
ちょっとお間抜け感があるので厳しい世界観には合わない感じもありますけれど、
アクションゲームっぽさが出るのと、獣人が出ることが非常に分かりやすいからです。

もう一つは『星の遠吠え』というタイトル案もあって、
「SF小説みたいなタイトルになるね」と共同開発者の方と話していました。
結局、アクションゲームっぽさを重視して『プラネットハウル』に決定した気がします。
日本語名のタイトルだと、あんまりアクションゲームっぽくない気がしたもので。



という感じです。いかがだったでしょうか。

ジャンルが伝わりそうなタイトルもあれば、全然分からないものもあります。
特に変則操作アクション系はジャンルが分かりにくい名前だったので、
タイトルで変則操作アクションっぽいアピールができれば、
そういうのが好きな(おそらく少数派の)人がもっと見つけてくれたかもしれません。

この多ゲーム時代、タイトルそのものが詳細情報を見てくれる確率に影響するのは
ほぼ間違いないので、今後もますますゲームタイトルの名付けは
重要になってくる気がしています。

たくさん作っていても、タイトルを付けるのはいまだに難しいことです。
中身が面白いことは大前提ですが、
「見ただけでおいしそうに見えるゲームタイトル」が付けられれば最高です。
中身が味なら、ゲームタイトルは香りの一部なのですから。

ゲームタイトルは普段あまり他人と比べないところなので、記事を書いていて、
「せめて自分に刺さるタイトルを見つけたらメモしておこう」と思い直しています。
ゲームタイトルは人にゲームをアピールするにあたって重要なパーツなので、
これまで以上によく考えていきたい部分です。



他にもし何か「こんな話題を聞いてみたい!」というお話がございましたら、
ぜひ拍手コメントからお送りください!
すでにいくつかいただいております、ありがとうございます!
答えられそうなものはどんどんお答えしていきます。

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 2017-06-03 (土) web拍手 by FC2 カテゴリ: 開発日誌




2017-05-27 (土)   私のゲームタイトルの付け方
【私のゲームタイトルの付け方】

ご要望をいただいたので、今回は「ゲームタイトルの付け方」について、
個人的に意識していることをお話しします。


※人形とおもちゃの世界に飛ばされてしまった愛称ラッシー(仮本名ラーシア)の少女が
重量比の軽い人形軍団を蹴り飛ばしたりトランプの兵隊を四つ折りにしたりして
「これで暴力の快感に目覚めたらどうしよう……」などと不安になりながら元の世界に帰るべく旅をする物語で、
マウスだけで遊べるジャンプ方向アナログな「地上戦ベースのモノリスフィア」みたいになる予定でした。



といっても「タイトルの決め方」ってあまりに感覚的な話なので、
私も断定できるようなことはほとんどありません。
基本的には、私がこれまでやってきて「うまくいったかな」と思うことや、
私が開催しているゲームコンテストを見ていて感じたことなどを記していきます。
方向性としては、
「なるべくゲームのポテンシャル限界まで普及させる・人気を取る」ために
私が目指している内容です。


主な内容は以下の通りです。

●「英語」や「難しい漢字」を避けて覚えやすい名前に。
覚えやすいほど普及力の面で有利になりそう。

●『内容が伝わりやすいゲーム名』は、ライバルが多い中ほど有利そう。

●『前に遊んだゲームの関連作品だと分かる』よう、
ブランドを意識して名前を付けると長続きするかも。

●同じゲーム名がないか調べておく。


ネットを検索すれば他の方もたくさん似たような話をしておられるので、
これだけ読んで全部分かる人には飛ばしてくださっても大丈夫だと思います。

ここからは、各内容の詳細説明です。



【「英語」や「難しい漢字」を避けて覚えやすい名前にすると
普及力の面で有利そう】


もうこれは誰もが言っている話なんですが、「SNSなどでの普及力を上げる」目的なら、
「英語」や「難しい漢字」を使うのを避け、
覚えやすいゲーム名を目指す方が普及力の面で効率的です。

「打ち込みにくい文字」「誤字を誘発する単語」「長い名前」は、

●見た人がゲーム名を記憶することが難しくなる。
●情報を拡散してくれる人がゲーム名を打ち込むためのコストも増大する


ことから、人の頭に入るのも、場に出てくる回数も減ってしまいます。

逆に入出力コストが小さければ小さい名前であるほど、
人々への「ゲームタイトル」の記憶回数と出現回数は増えます。
「覚えやすく、入力しやすく、短い名前」というのはそういう点でとても有利で、
「正式名称の普及度」が段違いに上がります。

ユニーク(単一)な名前を目指す目的でも、難しすぎたり、
打ちにくい単語はあまり使わない方がいいだろうと今は考えています。

私の付けたゲーム名だと、『片道勇者』が覚えやすさと入力しやすさの面で
最もうまくいった例になりそうです。

一方、『シルフェイド幻想譚』は昔、
「譚」が漢字変換ソフトで出ないケースがあったり、
読み方が分からない人が一定数いらっしゃったので、
その点がちょっとマイナスに働いたかもしれないと感じているケースです。

なお、長いゲーム名でも「略称」がうまく流行すれば
普及の面での問題は小さくなります。
が、うまいことインターネットの検索対策をしないと
「略称」を検索してもサイトが見つからないことがあるので、
ゲームの公式サイトがあるなら公式ページ内に必ず略称も入れた方がいいと思います。

私のツール『WOLF RPGエディター』では、一時期「ウディタ」と入れても
直接サイトが見つからなかったので、公式サイトの先頭にも
「ウディタ」という略称を書いたという経緯があります。


<日本でリリースする場合、英語は不利かも?>

日本でアピールするにあたって、
「英語のゲーム名」は注意した方がいいかもしれません。
『Elona』ほどに誤字が発生しにくく
短いゲームタイトルなら全く問題ないと思いますが、
以下の条件に当てはまりそうなものは普及力の面で不利になると考えています。

●7文字以上のスペルの英単語が含まれる。
●スペルをまちがえそうな単語である(flightなど難しめです)。
rとlで迷う、erやorなどが入る英単語、など。


こういった単語が含まれる名前だと、SNSなどでは
「ゲーム名を間違えるリスク」などから名前を気軽に入力されにくくなってしまうので、
カタカナを使う場合より普及力が一定以上低下すると思っています。
日本で出す場合は、せめてその英語のタイトルを
そのままカタカナにした方が有利かもしれません。

たとえば「Celestial Silfade Story」は
私が雑に付けた『シルフェイド幻想譚』の英語名ですが、
もし正式名称がこの英語名の方だったら、
掲示板などで滅多に入力されなかったと思います。
特に「Celestial」の部分! 長い! エルとアールがややこしい部分もある!
ので、まだカタカナで『セレスティアル シルフェイドストーリー』
にする方がいいかもしれません。
それでも長すぎてあんまりですけれどね!



【『内容が伝わりやすいゲーム名』は、
ライバルが多い中ほど有利そう】


今はフリーゲームどころか、企業さまが送る
基本無料ゲームでさえもあまりに大量に出ていて、
ゲームのタイトルを覚えることも、全ゲームの詳細情報をチェックするのも
大変な時代になってしまいました。

こんな状況になると、個人開発のゲーム、あるいは企業製の「新作ブランド」も、
「一つ一つが注目される確率」は相対的にかなり低下すると私は考えています。

では、過去の資産に頼れない新作ブランドで売り出す場合は、
一体どんな名前にするのが普及させるにあたって効率的でしょうか?
そう考えた場合、だいぶ昔ながらの命名法である、

●ジャンル名やゲーム内容が強く伝わるゲーム名

を付けることは、割と強力な策なのではないかなと思っています。
というのも、

●現在はゲームの数が多すぎて、「名前のみ表示された一覧ページ」から飛んで
「詳細ページ」まで見てくれる人が割合的に減っているため


です。サイトにもよりますが、ダウンロードサイトで多くのゲームが並んでいる場合、
まず一番最初の一覧に出るのは「ゲーム名」と
「バナー・アイコン」(+あって短い紹介文)が主で、
「詳しい紹介内容」はそのゲーム名をクリックして飛んだ先で表示されます。
現実世界の店舗で棚に置いてもらう場合も、ほぼ同様でしょう。

その中で少しでもお客さまに見てもらおうとするなら、
「ゲーム名」と「バナー・アイコン」だけでなんとか自分の作品に
注意を割いてもらうべく、情報を届けることが最重要です。

たとえば今のSteamでは、一日20~30件ずつゲームがアップされるので、
うちみたいな宣伝力に圧倒的に劣るところが何かゲームを出した場合、
「見ただけで興味を引く可能性がある名前+バナー・アイコン」でないと
ほとんど注目されずに流れてしまうリスクがあると考えています。
「ゲーム一覧」に並んでいる時点でお客様を引き寄せるかなりの努力をしないと、
そもそもゲーム詳細ページまで開いてくれないでしょう。

1日何十本もゲームがリリースされている中で、
あなたがたまたま「ゲーム詳細ページ」まで飛んだゲームがあるのでしたら、
それは作者様やパブリッシャー様が「ゲーム一覧」の時点で
うまくお客様を引き寄せる仕事ができている、ということなのだと思います。


<たとえばどんな名前を付ける?>

たとえば名前が決まっていないファンタジーのシミュレーションゲームがあるとします。
それは、重厚で練り込んだ世界観がバックにあるゲームですが、
そこであえてジャンル名重視の
「タクティクスナイツ」という名前で売り出すことを考えてみます。

『タクティクスナイツ』なら、ファンタジー系シミュレーションRPGに興味がある人なら
ゲームタイトルだけ見て「もしかしたら好みに合うヤツかな?」と思われるでしょうし、
そのまま詳細説明ページまで見てもらえる確率も上がりそうに思えます。
もちろんその際、同時に表示されるであろうバナーやアイコンも、
雰囲気の方向性を伝えるのに役立つでしょう。

一方で、これが『タクティクスナイツ』という名前でなく、
ゲーム世界の名前から取って『クロモア・ロコマ』なんて名前にしていたら、
その名前だけではシミュレーションRPGを探している人は
クリックしなくなるかもしれません。

代わりに、「独特なアート系の雰囲気のゲーム」を探している人には
クリックされやすくなる名前かもしれませんし、アイコンの雰囲気と名前から
「世界観重視のRPG」を期待する人もいるかもしれません。
そういうお客様は、詳細ページを見て期待と違うゲームだと気付いたら
前のページに戻ってしまうかもしれませんけれどね。

「ゲーム名」は多くのプレイヤー候補を獲得するための「第一の網」です。
自分の欲しい作品を探している人に少しでも見つかりやすくなるよう、
「タイトル」で中身のジャンルや方向性などを表現できれば強力です。

先の『クロモア・ロコマ』の例を取っても、名前の付け方一つで、
「第一の網」にかかるお客様の層が恐らくガラっと変わってしまうので、
私としては一番興味を持ってもらえそうな人に届くよう名付けたいと思います。


それと、「バナーやアイコン、画面にこだわっておけば
タイトルはザツでもいいんじゃ?」

と思われることもあるかもしれません。
しかし、SNS上では
画面やアイコンなしでゲームタイトルの文字だけが挙がる
ことが一番多いので、そこで名前を見た
潜在ユーザさんに興味を持ってもらうためにも、
「ゲームタイトルそのもの」の重要度はとても大きいと考えています。


<分かりやすさ重視の弱点>

「分かりやすさ重視のゲームタイトル」は、もっぱら
「新しいゲーム性を持った作品」に使いやすい方法かもしれません。
ただこの発想で命名する場合、失敗するとタイトルがかっこ悪くなりがちだったり
あるいは雰囲気を伝えにくくなりがちなのが難点という気がしています。

たとえば前の方のイラストにある例の『ジャンプガールラッシー』は、
ジャンルの分かりやすさと引き替えに、メルヘン感の伝わり方が
だいぶ削れてしまっている印象があります。

一方で『片道勇者』は、「内容が伝わる名前」という方向性においては、
「かっこよさ」は微妙ながら「王道っぽさ」「RPGっぽさ」「戻れないゲーム性」は
伝わりやすいと思うので、そういった意味では
バランスがよい名前にできたと考えています。



【『前に遊んだゲームの関連作品だと分かる』よう、
ブランドを意識して付けると長続きしそう】


これはさっきの「内容を表現したゲームタイトルを付ける」とは
少し別の方向性になるかもしれません。
こちらは、私の経験談やブランドについてどう考えてきたか、
ということをお話しします。

私が本格的にインターネット上でゲーム制作者として活動し始めたとき、
長くやっていくことを前提にしていたので、
『ブランド』を確立していくべきだと考えていました。
最初に意図していたのは、以下の点です。

●タイトルを見ただけで同じ開発者が作ったということを分かるようにしたい。

→ たとえば私が最初に意図していたこととして、『シルフェイド』という世界を、
私が開発するゲームの共通の世界観として使うことで、
今後もタイトルを使い回しできるようにすることや、
連作にしてプレイヤーさんに続けて興味を持ち続けてもらうことを考えていました。
遊ぶ人は「作った人の名前」ではなく先に「ゲームタイトル」を見るはずなので、
同じ人が作ったということを示すなら
それをタイトルに込めた方が有効だと考えたのです。



『シルフェイド』という名前は当時、
競合がないオリジナルな名前であるにもかかわらず、
割と覚えやすく、たまたま私が思いついた名前の中では最高のものでした。
それもあってか、今では割と多くの人に認知されて感謝の限りなのですが、
仮にうまくいかなくても、
基本的には共用世界観としてずっとこの名前を使っていくつもりだったのです。

そして実際のところ、『シルフェイド見聞録』と『シルフェイド幻想譚』までは、
この発想はうまくいったように思えます。
今でも、『シルフェイド』と付いていれば
それだけで興味を持ってくださる潜在プレイヤーさまも、
たぶん少なくないと思います。時間経過と共に、徐々に減ってはいるでしょうけれどね。


<ブランド付けの分岐点 方向性が違うゲームも同じブランドにすべき?>

そしてあるとき、『シルフェイド』のブランド付けの分岐点が訪れました。
私が初めてアクションゲームを作ろうとしたときに、
そのゲームに『シルフェイド』と付けることも考えたのですが、

『ジャンルが大きく違う場合は完全に別のゲームタイトルを付けた方がいいかも』

と立ち止まることになりました。
プレイヤーさんから、以下のような感じ方をされるかもしれないからです。

●『シルフェイド』って名前が付いていたから、
これまでに近いゲーム性を期待して始めたのに、
いざやってみたら完全に人を選ぶアクションゲームじゃないか! なんだこれは!


これは、それまでアドベンチャーやRPGとして
2作出していた『シルフェイド』シリーズの次に、
マウスアクションゲーム『モノリスフィア』を作る際に私が想像していたことで、
「あまりにゲーム性が違う場合は同じ名前を付けるのは危ないかな」と考えていました。

それまでに、『シルフェイド』という名には
「とりあえずほぼ誰でも遊べるゲーム」という印象が
根付いてきた感じだったので、それはそれで大事にしたいなと私は思いました。
もしここで『シルフェイド』という名前に対し、
「この名には人を極めて選ぶゲームも含まれる」
という警戒感を持たれてしまったら、
安心感という意味でのブランド価値は一定量落ちてしまうでしょう。
それはちょっと今後を考えるともったいないかな、と私は考えました。

その結果、私は新作のアクションゲームに、
まったく別の名前である『モノリスフィア』と名付けることにし、
世界観も新たなものにしたのです。


<同じ名前を、大きく異なるジャンルで使えるか?>

ちなみに、家庭用ゲームの世界では
「元がアクションやシューティングゲームだったシリーズの世界観を
シミュレーションゲームとして出したりしてうまくいっている例」

などもあったので、「アクションにするから別の名前にしよう」という発想が
よかったのかどうかは、今になっても分かりません。

例えば家庭用ゲームにおいて、●●という名のアクションゲームが、
「●●ウォーズ」というリアルタイムストラテジーゲームになったり、
▲▲というシューティングゲームが
「▲▲タクティクス」という戦略シミュレーションゲームになったり、
といった事例が過去に存在しています。それなりにうまくいっていました。

ただ、このケースでは「リアルタイム進行」のアクション/シューティングゲームから
ある程度進行がゆっくりめまたはターン制のシミュレーションゲームになっていたので、
その部分もある程度うまくいっていた理由なのかもしれません。
理屈を付けるとしたら、以下の通りです。

●「激しいアクションゲームができる人が、シミュレーションゲームを遊べる可能性」
はそれなりに高いと予想される。

●逆に「シミュレーションゲームしか遊ばない人が激しいアクションを遊べる可能性」
は低そうな気がする。
(仮にアクション化するなら、ゆるめで素直なゲームの方がよさそう?)


上記の推測はたぶん、ある程度は合っていると思うのですが、
こういった仮説の上では、『モノリスフィア』に
『シルフェイド』系の名を付けようとした例のように、
「ターン制ゲームのシリーズと同じゲームタイトル」を付けて
「人を選ぶ変則操作のアクションゲーム」を出すのは危険すぎる
気がしています。

結果として、それまで『シルフェイド』という名前を使っていたけれど、
変則操作マウスアクションゲームに『モノリスフィア』という
新たな名前を付けたことには、今でも満足しています。

そして、もし違うジャンルでブランドを使い回す場合は、
「アクションゲームのブランドをターン制ゲーム化する」
(ゆるい方向に変化させるのはOK)
という方向性で使った方がいいかもしれない、と今は思っています。

私はこういった発想で、ブランド面を意識したゲームのタイトルを付けてきています。


<現状のブランド>

今のところ、私の作るゲームでは、以下のような使い分けで
ブランド化していくことを考えています。

●『シルフェイド』シリーズ
 → 攻略法を知れば割と誰でもクリアできる、
お話が多めの固定ステージ進行のターン制ゲーム。
ランダム生成なゲームはあまりこの名を使わないようにしたいと考えています。

●『片道』シリーズ
 → 腕前を問われる、お話少なめのアドリブ重視ターン制ゲーム。現在次回作開発中。
これも最初は、『シルフェイド』と付けてしまうと
「なんだこれは!」と言われそうだったので、
『シルフェイド』の名は使わず、別名として『片道勇者』と付けました。

●その他:オリジナル名の変則アクション
 → 人を選ぶ、変わった操作性のアクションゲーム。もちろんリアルタイム進行型。
シリーズ・ブランド化する前提としては部分的にでも
「世界観の共有」が必要だと思うので
毎回世界観が変わるアクションではブランド化はなかなか難しそうです。

ちなみに、アクションゲームではそこまでギチギチに物語を詰めなくてもいいので、
私のネタの中で使われずに浮いている短いストーリーや
世界観を突っ込むのに便利に使わせていただいております。

●それ以外のゲーム
 → 世界観が違っても、付けられそうならとりあえず「シル」だけでも
名前の先頭に付けてみて、うちのゲームっぽさをアピールします。
すごい雑な発想ですが、『シルエットノート』もその考えで名付けられました。
『シル』と先頭に付いたゲーム名を見たとき、ごく一部の人でいいので
なぜか私のことを一瞬思い出せるくらいには
印象に残せるといいなという期待があります。



という感じです。ブランドを考慮して名前を付けられれば
それまでの「知名度資産」とでもいうべきものを活かしやすくなるので、
ゲーム開発人生を長続きさせやすい気がしています。
長く続けていきたいとお考えの方は、よければぜひご一考を。



【同じゲーム名がないか調べておく】

最後に。すごく当たり前ですが、思いついたタイトルは必ず検索エンジンでかけて、
同名の既存作品がないか調べておきましょう。

といっても、今回述べた中の「内容が伝わりやすい名前」を付ける場合、
「ありきたりな単語」だけで分かりやすいゲームタイトルを組もうとすると、
かなりの確率ですでに同名のゲームが存在するんですよね!

さっき挙げた『タクティクスナイツ』などは偶然にも
日本語ゲームにはまだなさそうですが、
こんなシンプルな名前ほど、
すでにその名前のゲームが存在していることが多いはずです。
『片道勇者』なども、こう名付けられたのはたまたま運がよかっただけです。

もしまだ誰も名付けていない
「非常に分かりやすく内容を表せるゲーム名」を思いついたのなら、
誰かとかぶってしまう前に、早く発表したほうがいいかもしれません。
できれば念のため、「商標」も検索しておくとよさそうです。



ということで、私がぼんやり考えている、
「なるべく普及させる/長続きさせるつもりで考えているタイトルの付け方」
として意識していることを一通り紹介させていただきました。

ゲームタイトルは潜在ユーザさんに興味を持ってもらう第一の網である都合上、
名前が違っていればここまで遊ばれなかっただろうな、と思うゲームも、
私が開発してきた中にはあります。
一方で、名前がイマイチで私が作ったことに気付かれていなかったり、
覚えにくかったりしたであろうものもあるので、
中にはゲームタイトルが普及の足を引っ張ってしまったものもあると思います。

「違うタイトルで同じゲームを出す」ことはできないので、
ゲーム名の差による効果を検証することはなかなかできません。
なので、今回お話ししたこともどれだけ有用か、私にはあまりハッキリしません。

最終的には皆さんのお好きなように付けてくださればいいと思っていますが、
寄せられる範囲で、
「潜在ユーザさんに興味を持ってもらえる確率が高まる」よう意識してみたり、
「ゲーム開発を長く続けることも考慮に入れて名付けてみる」ことで、
ゲームのポテンシャルを最大限に引き出す結果を出せるかもしれません。


できれば私も、他の人のも並んだゲーム一覧を眺めて、
ゲームタイトルやバナー・アイコンを見ただけで
「これは商品ページを開きたくなる」「これはそうではなさそう」
と直感できるセンスも鍛えていきたいですね。

私の場合はSteamをときどき見ているんですが、
つくづく「分かりやすいタイトルは強いな!」と感じます。
私が詳細ページまで飛ぼうと思えるゲーム名は、

●内容が想像できる、自分の興味と合うゲーム名
●どこかの記事ですでに見たことがあるゲーム名


の2つだけでほぼ100%になります。
皆さまのゲーム選びにおいても、これと近い基準の方は多いかもしれません。

自分のゲームも、せめて「詳細ページ」まで見てもらえるよう、
興味を持ってもらえるゲーム名にすることを心がけたいです。



来週はこのお話のおまけとして、私の各ゲームの名前について
簡単に自己レビューしていこうと思います。

そして「こんな話を聞いてみたい」などの拍手コメントをお寄せくださっている皆さま、
いつも本当にありがとうございます! お答えできそうなものは、
ぜひ今後の記事で取り上げさせていただきたいと考えております。


← 今回のような記事を
 1冊の本にまとめたゲーム開発本、
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 2017-05-27 (土) web拍手 by FC2 カテゴリ: 開発日誌




2017-05-13 (土)   楽しくて学べるゲームの作り方
【楽しくて学べるゲームの作り方】

前回から引き続き、今回もゲームの作り方のお話です!

前回の記事でご紹介した『完成させるための作り方』は、
「あまり楽しくない部分もあるので、たぶん経験者向けです」と私は言いました。

では、初心者におすすめな「楽しくて、かつ経験値を多く得られる作り方」には、
どんな方法があるでしょうか?

今回お話しするのは、あくまで私の体験を元におすすめするやり方ですので、
だいぶ主観が強いですし、どれほどの人にお役に立てる話かは分かりません。
また、このやり方は「完成させること」を前提にしていませんので、
それも念頭に置いた上で、読み進めてくだされば幸いです。





【初心者向けの作り方、まずどんな『方向性』?】

前回の最後にも言いましたが、「一つ一つのものを面白く作るコツ」さえ
よく知らない状態でいきなり大きなものに挑むと、
10個作ったもののうち、1~2個くらいしか面白く作れない
かもしれません。
そうなった場合、たとえ完成しても辛い結末しか待っていないのは明白です。

よって初めてのうちは「大きなものを完成させる」ことよりも、別の方法で
多く経験値を得て、一つ一つのものを面白く作れるようになったり、
その他の経験を積むことを優先した方がたぶん効率的ではないか、と考えています。

そこで今回ご紹介するやり方の大きな方向性は、以下の通りとなります。


< 『楽しくて得るものが大きい作り方』の方向性 >

●作る面白さや短期的な満足感を重視して作る。
●なるべく素早く、多く評価してもらえる形態で作る。
●プレイヤーからのフィードバックをすぐに反映できる形で作る。
●完成させることは考慮に入れない。



それぞれについて、少し詳しく説明します。


●作る面白さや短期的な満足感を重視して作る。
→ あなたが初心者の人なら、ここはもう当然外せないところです!
といってもどんなことでも、たぶん無意識に取りかかると、
自然と面白さ重視の方向性になってしまうと思います。


●なるべく素早く、多く評価してもらえる形態で作る。
→ よりテンポ良く、たくさんの回数評価してもらう方が
当然、経験値の溜まり方が早くなります。
最短でたくさん評価してもらうにあたって、よさそうな方法を目指します。


●プレイヤーからのフィードバックをすぐに反映できる形で作る。
→ プレイヤーの人から送られてきた意見を取り入れ、実験してみるのは重要です。
「これがダメなら、一体どうやれば君たちは満足するんだ! これか!?」
と腹の内で思いつつ、色々試して、何度も見てもらうやり方を目指します。


●完成させることは考慮に入れない。
→ 今回のやり方では、「完成させる」ことは二の次とします。
「完成させるように作る」だけで作る面白さが相当に削がれるためです。

というのも、完成させようとすると、計画性が要求されたり、
追加の不安が生まれたり、素材作成へのコスト配分やペース配分も必要だったりで、
思考にかかる総コストが大幅に上がってしまう割に、
部分部分への満足感が減ってしまいやすくなります。

なので慣れない間は「楽しいところだけ最低限の手間で味わってもらう」ということで、
今回のやり方は完成させることを考えずにとにかく「作る面白さ」を重視します。
もちろん、最終的に完成してしまう分には全く問題ありません!

あと、私はゲーム作りに初めて触れてからの最初の数年間、
「完成を目指そうとしてしまって、ずっと詰まっていた」ので、
それも「最初は完成させない」ことをおすすめする理由の一つです。

私と似たタイプの人だと、たぶん、ただ「完成させる」という要求を入れるだけでも、
簡単に何年も完成させられない状態になってしまうことでしょう。
きっと、「よいものを出さねば」と思っている人ほど、そうなってしまうと思います。

あの頃は、「人にお見せするからには『よいもの』でないといけない」
と内心では思っていながらも、
最初から上手に作ることなどできなかったので、
作ってみた一個のものにさえ満足できず、
ずっとゴールのない『練習』や『試行錯誤』をし続けて、
先に進まなくなってしまいました。

具体的には、完成品を作る気概だけはあったものの、
全然進まないまま細部を何度も作り直してみたり、
ドットやマップやイベント作りを色々試したりするだけになってしまい、
結局いま振り返れば、何年もかけて完成させるふりをして
「経験を貯める作業」に従事するだけ
になってしまっていたのです。

ですが、こうなるくらいなら、最初からもっと
効率的に経験を貯めることを目的にしたほうが、
人生の時間を無駄にせずに済むかもしれません。
それに、一人で悩んでいたことの7割くらいは実は大した問題ではありませんでしたし、
本当に大事なことは、
「実際に人に見せて意見をもらって、初めて気付いた点」の方が
圧倒的に多かった
のです。


私は上記の経緯で一度挫折した後、たまたま新たな取り組み方を選んだのですが、
それは偶然にも、レベルアップする目的において非常に効果的なやり方でした。
今回はそれをご紹介します。



【初心者の人におすすめする作り方】

ということで、いよいよ本題の「初心者の人におすすめする作り方」です!

早速ですが、「面白さや満足感を重視」「素早く多く評価してもらう体制」
「フィードバックを反映してすぐ試せる」「完成させることは考えない」
の4つが揃った、私がゲーム開発初心者の人におすすめするゲームの作り方は、
以下のようなやり方です。



<1.何も考えずに、前から順に『全力の質』で作る>
全力でゲームを前から作る。素材やテキスト全てに対し、
後先を考えずに全身全霊で労力やネタを詰め込んでいいものとする。
ゲームシステムも、動くならまずは一部分からだけで構わないとする。

<2.一定以上できたら、そのたびに必ず『見てもらう』>
作ったものが「少し」できたら、必ず人に見せて意見や感想をもらう。
「少し」のペースは、数週間から一ヶ月程度、最大でも三ヶ月くらいが望ましい印象。
見せるのは友達でもSNSの知り合いでも一般公開でも、範囲や対象は自由。

<3.『やる気が尽きるまで1→2を続ける。飽きたらやめる>
ひたすら1→2の手順を繰り返してゲームを大きくしていく。
やる気が尽きたり飽きたりしたら、完成していなくてもそこで終わってよい。
あるいは、1→2の手順が1回で終わる
「ミニゲームをいくつも完成させ続ける」やり方もOK。



一言で言うと、
「小さい単位で全力で作って、少しずつ人に見てもらう」というやり方です。
連載形式で出していくやり方や、徐々にアップデートしていく方式、
あるいはミニゲームをポンポン出していくような形になるでしょう。

実は、前回の記事で最初に「完成させられなかった失敗例」として挙げた
「全力で前から順にひたすら絵やデータを作っていく」というやり方は、
「一番早く開発の満足感を得る」ことにおいては非常に効率的な方法でした。

そして今回ご紹介した上のやり方は、その「一番早く満足感を得る方法」に加えて、
「たくさんの経験値を得るため」の工夫として『見せる』手順
混ぜた方法となっています。

私の場合は、最短で多くの経験値を得られる『修行』を楽しくやるにあたって、

「全力で少しずつ作る連載形式を取り、
1話分をアップデートしたらそのたびに見てもらう」


というやり方をこれまで3回ほど使いました。

その3回中、2回は未完になってしまいましたが、とにかくこのやり方の一番重要な点は、
『完成させるためのペース配分だとか後先をまったく考えずに、
全身全霊で自分の力をぶつけて好きなものを作って』

そしてそれを『見せて』いくことです。

『見せる』の部分が特に重要ですので、
いくら恥ずかしくても絶対にそこは外さないでください。
私も相当な勇気がいりましたが、そのとき誰かに何度も『見せて』いなければ、
今の私はここにはいなかったでしょう。

どのくらい勇気がいるかというと、公衆の面前で
下着を全開にして見せるくらい恥ずかしいです。
さらに『物語』のように、見られるのが自分の『内面』だったりすると、
もしかしたら全裸になるくらい恥ずかしいかもしれません。
創作はそもそも自分の見えない部分をさらす行為なので、どうか耐えてください。

といっても私の場合は運がいいことに、最初は学校の友達だけに見てもらって、
そこで「これなら次は広い場で見てもらっても大丈夫かな?」と自信をもらった上で
インターネット上に公開する流れを取ることができました。
内気で恐がりだった私では、一人だと
インターネット公開までできなかったでしょうから、
いい友達に巡り会えたのも今ここにいる理由だと思います。



この『少しずつ全力で作っては見せる』やり方には、
私がゲーム開発者としての初期段階の栄養を得るために
とても大きな利点がありました。

このやり方で私が得ることができたものを、以下に挙げていきます。



【質の最大値を知ることができる】

まずペース配分や後先を考えずに全力で挑むことで、
自分が作れる「質の最大値」を知ることができます。
絵だけはすごくきれいに作れるとか、お話だけは面白く作れるとか、
快適なインターフェースが自作できる、キャラのドット絵がすごく動く、など、
何かしらの点であなたのピーク値を出せるはずです。

「完成させる」方向でいくと、どうしても労力やアイデアを
ある程度配分せざるをえなくなり、
『あとさき考えずにやたら全力で作る』といったことがやりにくくなるため、
「どこまでも遠慮なく質の最大値を試し続けられる」のは
「完成させない」前提だからこその最大のメリット
です。

もちろん「全力を出した結果、どういう評価をもらえるか」
という点に着目するのはもっと重要です。
期待通りの反応を得られてその技にもっと自信を付けられるかもしれませんし、
あなたが得意だと思い込んでいた技術が
実はそれほど評価を得られないかもしれません。

あるいは、自分としては平凡だと思っていたことが
なぜか異常に評価されたりして、自分の新たな『素質』を知る
かもしれません。
この話は、2つ後ろの項目でも述べていきます。



【量の限界を知ることができる】

限界の質で作り続けていれば、いつかやる気の減少や飽きなど何らかの原因で
続けられなくなるでしょうから、そこで開発を終わりにします。
(これに備えて、プレイヤーさんにはいつ開発を打ち切るか分からないことを
あらかじめ伝えておくといいでしょう)

開発を続けられなくなった時点で、
「あなたが最大値の質を出し続けた場合に、一体どのくらいの『量』を作れるのか」
ということが分かるはずです。これは後々、貴重な情報になります。

たいていの場合、意外と多くのものを作れないことを知るかもしれません。
「よく動くキャラクターのドット絵を描けるが、いざやると10体くらいが限界だった」
「無限に書けると思っていたが3時間プレイできるくらいの
テキストを書くのが限界だった」
などです。

この『量』に関しては、『期間』と言い換えてもいいと思います。
最初に情熱を持って始めて一本を開発するにあたって、
一体どのくらいの期間までなら飽きずに続けられるか。
それはあなたにとっては三ヶ月かもしれませんし、一年かもしれません。
それが分かっていれば、本格的に一本作るときに、
無理のない計画を立てやすくなります。

私の場合はとても意欲的な状態でも、1年くらい経った辺りから
気力が目に見えて減少し始めるようなので、
できる限りそれまでに決着を付けられるようにするか、
あるいはコアのところを開発し終われるように意識しています。

たいてい、この『期間』をオーバーすると
作れるものの質が急激に低下していく
と思うので、
密度の高いゲームを作りたいならば、開発期間の設定は重要です。



【自分の素質や弱点、高コストな部分を知ることができる】

作ったのがほんの一部分であれど、一定以上の人に見てもらうことで、
「あなたが平凡だと思っていた成果物なのになぜか評判がよかったもの」、
言い換えると、
「あなたが通常攻撃やパッシブスキルみたいなつもりで使ってるのに、
実は大きな成果を発揮できていた『素質』」

に気づく機会も増えるはずです。

というのも、自分にとって一番得意なことってたいてい
「無意識にやれてしまう」ことなので、
自分自身では気付けないことが多いと私は考えています。
なので「普通に作っただけなのになぜか高い評価をもらった」部分というのは
おそらくあなたにとっての強い『素質』であり、
それは今後もずっと多用できる武器になります。
なにせ、「低コストで高い結果を出せる」んですからね。

それ以外にも、
「作るのは好きなんだけど、なぜか不評ばかりな部分(苦手な技)」
「ウケはすごくいいんだけど、作るのが大変な部分(MP消費が激しい強い技)」
などに気付くこともあるでしょう。
早期にそれらを学べれば、今後の「自分の使い方」を考えるにあたって重要な材料になります。

たとえば、新たなゲームを作るときにも、

●「低コストで大きな効果が出せていた」技をなるべく多用できるような設計にする。
●「MP消費が激しいけどウケはいい部分」は要所ごとに使うようにする。
●「どうがんばってもウケが悪かった部分」はそもそも多く作らずに済むようにする。


といった風に、周りからの評価によって自分を知れば知るほど、
「自分を最大限に活かせるゲーム開発」ができるようになっていくはずです。
「他者からのウケがいい技」を中心に使って作ったゲームは、
そりゃ基本的には良い品質になります。自分の強みは遠慮なく活かしましょう。

私の場合、人からの評価で
「自分はキャラ作りやセリフを書くのが得意なのかも」と感じましたが、
後に、それをメインに据えると期待した量が全然作れないことを知りました。
実は、それをメインの武器にするにはMP消費が大きすぎたのです。
一部の小説家の人のように、ものすごい量の文章を
バリバリ生産し続けることはできません。

今はそういったMP消費が多い技は、なるべく要所要所だけに使うか、
あるいは量が足りなさそうな場合は他の人の手を借りるように意識しています。



【自分の作ったもので喜んでもらえることを知る】

「一部分だけを作って誰かに喜んでもらう」ということは、
実は「完成品を見て喜んでもらう」ことよりもある程度簡単
だと私は考えています。
なぜかというと、一部分だけに最高の情熱とアイデアを詰め込んで作った「密度」は、
ほとんどの場合、「完成品」よりも高くなるからです。
何より、1回あたりの挑戦のコストが段違いに少なくて済みます。

そしてゲーム作りの原体験として、
「自分の作ったものが、一部分といえど喜んでもらえた」
という経験を少しでも早い内に得ておくのは、後々とても大事になります。
喜んでもらえるかどうかは運次第とはいえ、見てもらう回数を増やせば、
それだけ「自分の力で喜んでもらえる部分」を発見するチャンスが増えるはずです。

「誰かに喜んでもらえた部分」は、今後も自信を持って作れるようになると思います。
ゲーム開発では大きな我慢が必要になることもたびたびありますが、
経験に裏打ちされた「たぶんここは喜んでもらえるだろう」という自信は、
心をとてつもなく折れにくくします。
その「自信」は開発におけるほぼ全ての面において、あなたを助けるでしょう。

なお、最初はその自信を得た影響でいくらか
『慢心』してしまうこともあると思うんですが、
どこかで怒られたり、慢心のせいで失敗したりすることで、
いずれバランスの良い『自信』に調整されていくはずです。

大人になるまで、生きててずっと自分の存在意義を
確認できなかった私のような人の場合、
「自分の意志で始めたことで誰かに喜んでもらえた」という体験をしてしまうと、
嬉しすぎて何年かおかしくなってしまいます。でもきっと、いつか通る道です。



【細かい部分への肌感覚を学ぶことができる】

「小さく作る」のに比べ、「完成品を作る」ことで
逆に不利になってしまう点があります。
その中でも『評価や意見、感想をもらうこと』に関しては、
完成品の方に以下の不利な点があるのではないかと私は考えています。

●完成品を一気に見てもらっても、含まれている要素が多くて
目立つところしかコメントされないことが多く、
細部のどこがよかったかがあいまいになりやすい。


ほとんどの場合、完成品をまるっと見せたときには、
プレイヤーさんはゲーム全体のうちで最も気になったところの
いくつかしかコメントしてくれないことが多いはずです。

そしてたいてい、一番目立ついい点、あるいは悪い点に
注目が集まってしまって、その影響で他の
細かな「いい部分」「悪い部分」を教えてもらい損ねてしまうこともあるでしょう。

たとえば「完成品」を見せて、
劇中のワンシーンや物語のどんでん返しが非常によかったとしたら、
そこだけがみんなの主なコメントとして挙がってしまって、
せっかく作ったゲームシステムや細々としたキャラクター、
小ネタなどの細部についてはコメントされにくくなると思います。
それによって、街の住人にもいっぱい面白い会話を作ったのに、
どれにも何のコメントがない
、なんてことは日常的に起こりえます。

すごく丁寧にレビューしてくれる人や、凄くたくさんの人に遊ばれたなら、
細かい点にコメントしてもらえることもあるのですけれど、
私の印象的には、完成品を一回見せてコメントをもらえる部分はたいてい
「全体の10%にも満たない場所から」で、
作った内の残り90%の部分はコメントに挙がりません


一方、「小さな部分ごとに見せて評価してもらう」ようにすれば、
作った単位ごとにコメントをもらうことができ、
善し悪しを細かく把握しやすくなります

また、もし足した「小さな部分」の中であなたが「新たな挑戦」をしたならば、
「その挑戦した部分だけ」の善し悪しをプレイヤーさんに
評価してもらえる可能性も上がります。
そしてそこに問題があれば、そのたびに直して、見せて、次の評価を待てばよいのです。

「新たに作った部分や改善した点について、一つ一つフィードバックをもらえる」
という状況は、ゲーム開発についてまだ何も知らない状態から、
色々試行錯誤してみたり、ゲーム開発の知見を得るにあたってものすごく強力です。
プレイヤーさんも、見るものが少なければ新たな範囲だけを
注視してコメントしてくれるので、
例えば「5%分」を作って見せれば、
うち半分の2.5%分くらいに意見をもらえる可能性があります。

そうやって細かく見せたことで、最終的に100%分作ったうちの合計50%の部分について
何かしらのコメントがもらえたとしたら、
完成品から10%のコメントをもらう場合に比べ、
単純計算でなんと5倍の速度で経験値が溜まるのです!
これらの数値は仮のものですが、得られる情報はまちがいなく何倍にもなります。

私にとっては、そうやって得てきた様々な肌感覚が今でも非常に役に立っていますし、
細かい部分への配慮について学ぶきっかけにもなりました。


逆に、「見てもらう」ことをしていなかった期間は
ずっと自分の力に対して疑心暗鬼のままで、
「自分が何をすれば人に喜んでもらえるのか」を知ることができないまま
でした。
本当に、ただ『人に見せる』ことをするようになった瞬間から
急激に世界が開けたのです。

私の見て来た中では、ゲーム開発の初期の成長が早かった人は、だいたい何らかの形で、
「小さいものを作って、早いサイクルで人に見てもらう」
という体験をしている人が多いような気がしています

実は、彼らが持っていたのは「短期間で多くを学べる才能」ではなく、
「自分の『育成』の仕方が、とてつもなく効率がよかった」だけかもしれません。


なお、細かい部分についての反応を見たいならば、
今では「実況配信プレイをしてもらう」という方法も強力です。
(実況配信プレイ:ゲームをプレイしながら声でもコメントしつつ
映像配信するプレイのこと)
友達に実況配信でテストプレイしてもらうだけでも、
たくさんの情報を得られるはずです。

昔は、ゲームへのコメントを得る方法といえば、
掲示板などに書き込まれる「自発的に言ってもらう発言」しかありませんでしたが、
実況プレイなら細かい部分への不満や、楽しめている点も把握しやすいので、
小さい単位での情報収集が以前よりも容易になっていると思います。

とにかくどんな手段でもいいので、細かい部分への反応を収集することに
どん欲になることが、レベルアップのためには一番重要なことだと私は考えています。

耳が痛い意見もたくさん飛んできますが、
そのたびにそれまで気付かなかったことに気付いたり、
または自分とプレイヤーの感覚が微妙に違うことを知ったり、
あるいは意見への対応がうまくいかなくて大変な目にあう経験もするでしょう。
しかしそれを繰り返していくうちに、
だんだんとうまく作れるようになっていくはずです。



ということで、
「完成させる前提を持たずに、全力で少しずつ作っては見せていく」やり方の
利点をまとめると以下の通りです。

●自分が出せる『質』の最大値を知ることができる。
●その質で作れる『量』の最大値を知ることができる。
●気づかなかった自分の『素質』、『弱点』を知ることができる。
●『自分の作りたいものを作って喜んでもらえる』ことを知ることができる。
●作ったものごとにプレイヤーがどう感じるかという、
『細かな部分への肌感覚』を知ることができる。


私が未完にさせてきてしまった作品によって得た上記の情報は全て、
今でもずっと私の支えになっていますし、
より良い成果物を作る重要なヒントになっています。

未完の連載ADV『シルフェイド見聞録』は、1話を公開後、
短い方だと1~3ヶ月くらいのスパンで新しい話を作って
皆さんに見てもらっていたと思います。

普通、ゲーム開発ではそんなスパンで新作をリリースしたり、
感想をもらえることはありませんが、『シルフェイド見聞録』では
途中で自作の戦闘システムを入れたり、物語の見せ方を少しずつ変えてみたりと、
やりたいことも織り交ぜて色んな感覚を掴んでいくことができました。

意外とプレイヤーさんは期待通りには遊んでくれないことや、
同じ課題でもできる人とできない人がいることや、
同じ内容に対してもつまらないと思う人や面白いと思う人がいることや、
自分がこういう意図で作ったものは賛否両論だったけど、
こういう意図で作ったものは多くの人に受け入れられやすいとか、
「自分の手の動かし方」に対する様々な知見をこの身で感じることができたのです。

たとえ頭では分かっていることでも、
「自分がどう考え、どう手を動かしたか」というインプットと
「皆さんの反応」というアウトプットの組み合わせが大量にそろって、
初めて理解できた
ことは山ほどあります。
これまで開発日誌に書いてきた数々のことも、まさにそうして得たものです。

初めて完成させられた中編RPGの
『シルフェイド幻想譚』で運良く良い評価を得られたのも、
その前に「小さなものを早いサイクルで見てもらっていた」ことで
多くの経験を得られたからこそだと私は考えています。



【この方法、『完成品』に対しても使えます】

復習ですが、前回はレベル1「最低限の骨を作る」→
レベル2「肉付けをする(短編完成)」→レベル3「成長させる」、という順に進め、
レベル3でやる気や時間がなくなったら終わり、という方法をご紹介しました。

そして今回の「少しずつ作っては見せる」やり方は、
前回の「完成させる作り方」のレベル3「成長させる」だけを抽出して、
そこに『小さい単位で見てもらう』工程を挟んだもの
ということもできます。

つまり、『完成させる作り方』でレベル3まで達した後、
徐々にアップデートしながら小さい単位ごとに『見せる』方法にすれば、
今回の利点をほぼそのまま得ることができる
のです!

「早期アクセス(アーリーアクセス)」や「リリース後に随時アップデート」
といった形でリリースしているゲームは、そういったやり方に近い気がします。
開発者側もプレイヤーさん側も楽しみやすい上に、
開発の経験値も溜まりやすくて、一石二鳥です。

私の場合は、『片道勇者プラス』のベータ版を公開した後などがそれに近い状態でした。
ほぼ毎日のようにバグ修正や微調整を計10~20点くらいやっては、
そのたびに皆さんに見てもらうという大変なサイクルを繰り返していたのですが、
当時はその大変さを乗り越えられてしまうほどに、
「修正に対してフィードバックをもらえるループ」が楽しかったと思います。
そしてもちろん、その過程で得られた知見も山ほどありました。

ある程度熟練した開発者の人でも楽しくやれる上に、さらなる成長もしやすい!
私は今になっても、『少しずつ作って見てもらう』というのは
素敵なやり方だと感じます。


<まとめ>

小さい単位ごとに見せることで、『細かく反応や意見をもらう』というのは、
小さく作って見せていく最大の利点であり、
大きな完成品を一度に見てもらうことではなかなか得られないことだと思います。

ゲーム作りが初めてで、何もかもが未知である状況下では、
この方法を使ってまず自分の能力について知ったり、肌感覚を学んだり、
自分の力で作ったものが誰かに喜んでもらえる機会を増やすのが、
きっと楽しくて、最終的には自分の強化にも繋がるのではないかなと私は考えています。

何より、何も知らない状況で最初から大きなものを作ろうとすると、
致命的に見当違いのものを作ってしまう可能性が高くなってしまいます。

まず少しの労力を色んな方向に使ってみて、あなたの力で喜ばれる方向性を学んで、
効率的に喜ばれる方法が分かったら、その方向により大きく力をそそげばいいのです。
大きなものを完成させるのは、色々なことを掴んでからでも遅くないと思っています。

……と、私は考えているのですけれど、いかがでしょうか。



【おまけ 昔の話とこれからの話】

最後に、私が初めて人にゲームを見せたときの、昔の話をします。

私は子供時代からずっと「ゲームは完成させないとダメだ!」と思っていましたが、
結局、何年間も何も完成させられままでした。
ゲーム作り自体はずっと続けていたものの、
あるとき、目標にしていたゲームコンテストが終了してしまい、
目指す場所を失った私は絶望にくれてしまいました。

ある日、完全に吹っ切れた私は、何だかんだでたった5分間しか遊べない
レジェンドオブレストール1の「1話だけ」を作って友人に見せたのですが、
それが思った以上に喜んでもらえました。
「誰にも指図されず、完全に自分の意志だけで生みだしたもの」で、
なんと友達に笑ってもらえたのです!

そのとき、「すごいものを作らなくても楽しんでもらうことはできるんだ!」
という、当時の自分にとって衝撃的な事実を私は生まれて初めて知りました。
その原体験は今でも、私の開発における心の支えになっています。
それ以後、その友人たちに対してレジェンドオブレストール1を「連載」し続け、
それが一段落ついたあたりでこのサイトが生まれることになりました。

私にはこういう経験があったので、初心者の人や自信のない人は最初はぜひ、
「量はほんの少しでもいいから、自分が全力で作れるものを作ってみて、
それを見てもらって、運が良ければ喜んでもらう」

という挑戦をおすすめしたいと思っています。

そして、その繰り返しの中であなたの自信が溜まったら、ようやく、
一本を完成させるつもりで作り始めてもいいかもしれません。


私自身も今後、手探りで始めていかねばならない新たなことをすることになったら、
「いつ打ち切るか分かりません!」と叫びながら少しずつ全力で作ってみて、
細かく意見をいただきながら学んで、力尽きた時点で終わるという、
今回のやり方を使うことになりそうな気がします。
もちろん途中で終わるにしても、打ち切り三回目ともなればある程度マシな終わり方に
できるようになっていることを期待したいんですけれどね。


ゲームを完成させるのは難しいことです。
私は、一番最初にゲーム開発に触れてからその10年後に至るまで、
一本も中編を完成させられないままだったので、
人によっては「一定以上のサイズのものをただ完成させる」ことでさえ、
まず多くの経験を重ねることが必要になるかもしれません。

しかし、完成させられないこと自体は、それほど嘆く必要はないと考えています。
最初から「完成品を作る」ことだけに意識を取られてしまうよりは、
「規模にかかわらずあなたの作ったもので誰かが喜んでくれるのだ」ということや、
「自分がどんなものを作れば人に喜んでもらえるか」を学ぶ
ことの方が、
より重要なことだと私は思っています。

皆さんが持っている創作の『武器』は、最初はみんな『未鑑定』です。
自分の武器が全部「???」の状態ではいきなりボス戦に挑みたくはないと思うので、
最初は色んなシチュエーションの小さな戦いを繰り返して、
数多くの自分の武器の性能を知ることが先決です。

そしてある程度、自分の武器についての知識を得て、いくらかの戦い方も知ったなら、
そのときこそいよいよ長くて大きな戦いに挑むときです!
己の武器に適した戦いを選べばきっと大きな壁でも打ち破れるはずですし、
運が良ければ高い成果を得ることもできるでしょう。

評価してもらえるかどうかは、最後は運です。
でも、歩いて行く道のりは、あなたが選ぶことができます。
私が紹介させていただいた方法に限らず、あなたにとって、
いつか一番いいやり方が見つかることを祈っています。



以上、長くなってしまいましたが、私なりの
「楽しくて学べるゲームの作り方」について紹介させていただきました。

今回の方法は、
「私がやってきた中で、たまたま、楽しみながら一番経験値を得られたやり方」
というだけなので、合理性を追求して試行錯誤してきた結果ではありませんし、
人によっては合わない可能性もあると思います。

他にももっといい方法があると思いますが、今回のやり方が、
よりよい方法にたどりつくための一つの手がかりにでもなれば幸いです。



他にもし何か語って欲しいことや、開発において聞いてみたいこだわり部分などが
ございましたら、ぜひ拍手コメントからどうぞ! 


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開発日誌 6/12


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