西暦1998年12月24日に、まだ少年だった私は、初めて自分のサイトを設立しました。
　インターネットの世界にこぎ出したその日、私は『SmokingWOLF（スモーキングウルフ）』というハンドルネームを名乗ることにしました。
　由来は、煙で情報を遠くに伝える「狼煙（のろし）」を逆さにして「煙・狼」にし、それを英語にしたもの。
　単純な語呂合わせのようでいて、今思えば、インターネットの世界で何かを伝えたいという気持ちがすでに心の奥底にあったのかもしれません。

　サイト名は最初、「Willfull SmokingWOLF's Room（気ままなスモーキングウルフのお部屋）」という名前でしたが、数年後に「Silver Second（シルバーセカンド）」という名前に改名しました。
　それは「銀メダルの二等賞」──すなわち「シルバーのセカンド」を目指すという意味で、この名前を選びました。
　その当時から、一番を目指す必要はないと思っていました。
　インターネットで数年過ごした中で、この広すぎる世界で一番になるのは現実的ではないと理解し、それでも二番手を目指す心意気を持って、すべてのすばらしい人々から学び、糧にしていきたいという意志と願いが込められています。
　そしてまた、自分が一番だと思い込むことは危険をまねくぞ、という自戒も込められていたのでしょう。
　
　当時はまだインターネットの黎明れいめい期でしたが、これらの命名には、これから飛び込む広い世界への夢と願いが込められていたように思います。
　私のハンドルネームとサイトの名前は、20年以上たった今でも、とてもしっくり来る名前だと思っています。
　
　
　インターネットの世界への夢と憧れを持ち続けながら、私はずっとここで生きてきました。
　
　私は少年時代から体が弱くて、遠くに行ったり、力強さで誰かの役に立ったり、色々なところへ行って多くの人と出会うことはできませんでした。
　けれど、このインターネットの世界では、どこにでも行けて、たくさんの人と出会えて、自分の『考える力』や『夢想する力』さえも誰かの役に立てることができました。
　この世界では、心の中で描く世界や夢を、無限に広げることができました。
　作ったゲームは、本当に、たくさんの人に遊んでもらえました。
　それまでずっと、自分の気持ちや伝えたいことを押し殺しながら生きてきた私ですが、
　自分の意志だけで始めたゲーム開発は、生まれて初めて、自分に存在価値があると感じさせてくれました。
　
　最初には考えられなかったほどの数々の試練にも出会いましたが、
　「今日も少しだけ誰かの役に立てたかもしれない」
　「誰かに喜んでもらえるものを作れたかもしれない」
　そう思える瞬間だけが、何度も私を前へ進ませてくれました。
　歩き続けるうちに、たくさんの、問題に対処する力や心構えも身につけることができました。
　さらにはみなさまから、想像もできなかったほどの、本当にたくさんのものをいただきました。
　
　このインターネットの世界がなければ、私の人生はとても小さな世界のままで終わっていたかもしれません。
　この世界で出会えたすべての人々、友達、協力者の方々、応援してくださった皆さま……
　そして、インターネット上で出会ったたくさんの作品やコンテンツ。
　それらのすべてが私を育ててくれました。
　そして、たくさんの感情を教えてくれました。
　悲しいことも楽しいことも、複雑な気持ちも悔しかったことも全部です。

　だから……このインターネットの世界で出会ったすべての人たちと、出会ったすべてのコンテンツに、心から感謝を申し上げたいと思います。
　私の人生に多くのいろどりを与えてくださって、そしてたくさんのことを教えてくださって、本当にありがとうございました。

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　これを書いている時点では、私は今もこのインターネットの世界で歩き続けています。
　時代が変わり、新たなものが生まれていく中で、それにどうやって適応していこうかと考え続けています。
　
　ただゲームを作るだけでなく、
　時にはみんなが交われる場所を作れるようにとサーバープログラムの作り方を学んだり、
　もっとみんなに見てもらうために動画の作り方を学んだり、
　AIみたいな新技術のよりよい使い方を考えたり……。
　
　新しい仕組みを知ることはいつも楽しく、ワクワクします。
　適応を求められる世界の変化は、いつも楽しいと思っています。
　もちろん大変なこともたくさんありますけれど、動かない世界よりは、動く世界のほうが大好きです。
　変わり続ける世界にいかに適応するか……それはどんなときも、私にとって楽しい挑戦でした。
　
　
　いつか私が眠りについたとき、『楽しかった』と思えるよう、私は今日も全力で生きています。
　このアーカイブサイトにあるのは、すべて、その道のりで生まれた足跡です。
　これからも、足跡は一つずつ増えていくでしょう。
　
　そしてある日、その歩みが止まって、静けさが訪れるときが来てしまうかもしれません。
　けれどその日が来ても……このアーカイブに、小さなともしびのように残る成果物たちが、
　これから歩き出す誰かにとって、静かな道しるべになってくれるかもしれません。
　もしくはあなたが私を知っていて、私のことをなつかしく思いながら見てくれているかもしれません。
　そんな願いを込めて、私はここにアーカイブを残しています。
　このアーカイブは、私がせいいっぱい生きた証あかしを残す墓標として、きっと役目を果たしてくれるでしょう。
　

　……ふと目を閉じれば、1998年の冬の自分が、今も胸の奥にいます。
　夢だけを抱えて、ただ前を向いていたあの少年に、今の私は誇れるだろうか？
　そう問いかけながら、私は今も、前に向かって歩き続けています。


　　『明日の自分が、今日の自分より強くありますように』


　まだ少年だったときから唱となえ続けてきた、この愛すべき祈りと共に。


　
　　　　　　　ゲーム開発者　SmokingWOLFより